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自動車盗

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

自動車盗(じどうしゃとう)は、自動車窃盗のことを指し、警察白書では窃盗の一形態に分類される[1]。自動車等の積荷や車両内から現金や品物を盗むことは車上狙いにあたる[2]ので同記事を参照のこと。

日本における自動車盗

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統計による窃盗の実態

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自動車窃盗の認知件数推移(1967年以降)
1967年以降の自動車窃の認知件数推移
認知件数
1967 35,466
1968 40,455
1969 47,563
1970 45,054
1971 38,009
1972 32,556
1973 29,418
1974 30,704
1975 32,318
1976 31,185
1977 31,827
1978 32,052
1979 31,772
1980 32,298
1981 33,452
1982 33,462
1983 34,714
1984 35,319
1985 34,781
1986 34,518
1987 32,951
1988 33,936
1989 35,877
1990 34,167
1991 35,366
1992 34,740
1993 35,648
1994 34,725
1995 35,730
1996 33,722
1997 34,489
1998 35,884
1999 43,092
2000 56,205
2001 63,275
2002 62,673
2003 64,223
2004 58,737
2005 46,728
2006 36,058
2007 31,790
2008 27,668
2009 25,960
2010 23,970
2011 25,238
2012 21,319
2013 21,529
2014 16,104
2015 13,821
2016 11,655
2017 10,213
2018 8,628
2019 7,143
2020 5,210
2021 5,182
2022 5,734
2023 5,762

法務省と警察庁の統計データより、1967年2023年の認知件数は、1967年~1969年にかけて急増し、4万7,563件となったが、1970年1973年にかけて減少し、1973年は2万9,418件と3万件を切った。しかし、翌年の1973年~1998年は、3万~3万6千件の間で増減を繰り返していたが、1999年2003年にかけて、急激に増加し、2003年は6万4,223件と統計のある1967年以降の数値で最多となった。そして2003年をピークに減少し、2021年は5,182件と1967年以降最少の件数となったが、2022年は2019年コロナウイルス対策の行動制限緩和により外出する人が増加し、人と出会う機会が増えたことから前年より増加して5,734件となり、2023年は5,762件となり2年連続増加している[3][4][5][6]

警察庁の2022年の統計データより、自動車10万台当たり7.3台であった。また、自動車のエンジンキー(イグニッションキー)が、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)に差し込まれていたままか、運転席又はその周辺に放置された状態で盗難に遭ったものは、全認知件数の約4分の1(1,443件)であり、残りの約4分の3(4,291件) は、そのような状態で無いにも関わらず、盗難に遭っている[7]

被害額別では、200万未満が全認知件数の約45.6%を占めていた。また、2013年 - 2022年の間で、被害額300万以上の比率が増え(2012年:約12.1 %→2022年:約38.0 %)、逆に200万未満の比率が減少している(2013年:約69.1 %→2022年:約45.6 %)傾向があり、段々と盗難する対象が高級車(高額車)へと変わりつつある。そして、盗難自動車が戻ってきた確率は、約24.8 %であった。また、自動車のエンジンキー(イグニッションキー)が、メインスイッチ(イグニッションスイッチ)に差し込まれていたままか、運転席又はその周辺に放置された状態で盗難に遭った自動車は約46.2 %、そうでない状態の場合は約17.6 %であり、前者の方が還ってくる確率が高い[7]

そして、警察等に認知されていない犯罪の件数(暗数)を含めて実際の犯罪実態を調べる目的で2000年以降数年に1回行われる法務省の2019年犯罪被害実態調査[8]により、自動車盗難にあったと答えた自動車所有者の割合は、2018年中に被害が遭ったと回答した者の割合は0.0 %、2014年 - 2018年の間に遭ったと回答した者の割合の場合は、0.2 %であった。また、この調査は2000年以降5回行われているが、被害に遭う割合は一貫して1 %未満となっており、2019年犯罪被害実態調査では、今までの調査の中で最も低い被害率であった。(5年以内被害率 2000年:0.7 %→2004年:0.7 %→2008年:0.9 %→2012年:0.9 %→2019年:0.2 % )

そして、被害を警察に届け出た割合は約85.7 %であった。しかし、残りは調査回答者本人だけでなく家族にも被害に遭ったかのかを含めて質問しているためか無回答であり、かつ保険会社へ盗難に対する補償を申請する為、警察に届け出なければならず、暗数になりにくいため、通常は殆どない。

また、自動車盗難で検挙された者の年齢層は、30代・40代が625人中でそれぞれ113人と132人あり、約18.1 %と約21.1 %を占めていたが、10万人当たりの検挙人員では、14 - 19歳の未成年・20代がそれぞれ約1.0人、約1.1人と他の年齢層よりも高い[7]

イモビライザーなどの盗難防止装置が普及しているが、これらの装備が標準化されている高級車に盗難対象がシフトした原因として、スマートキーController Area Network(CAN)を利用する専用ツールが犯罪者の間で売買されるようになり、利益が出る高級車を素早く盗めるようになったことが考えられる[9]。対策としてはハンドルやタイヤを物理的にロックするなど原始的な手法が有効とされる[9] [10]

自動車盗難事故実態調査

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日本損害保険協会は、自動車にまつわる盗難の保険事故をまとめたデータを公開している[11]。2022年の自動車盗難件数は全国で5,734件で、最も盗難件数が多い都道府県は愛知県の884件となっている[12]
2020年までワースト1であり、2021年はワースト1を脱して2022年にワースト5となった茨城県はワーストになる背景に、「田畑に囲まれてポツンとある広い家にクルマが2~3台並んでいる」と表現する位、住宅が密集されていない環境故に、地域の監視機能が必然的に低くなってしまうこと、加えて高度経済成長期以降移住した住民が多いため、古くから住んでいる人が多い地域よりも監視機能が弱いことに背景があることを指摘されている[13]

自動車盗難事故実態調査による盗難車車名別上位5位と車上荒らし被害品種上位5位
車体盗難 車上狙いの被害品[14]
調査年月 第1位 第2位 第3位 第4位 第5位 第1位 第2位 第3位 第4位 第5位
2000年11月 ランドクルーザー セルシオ クラウン アリスト ベンツ --- --- --- --- ---
2001年11月 クラウン ランドクルーザー セルシオ ベンツ アリスト --- --- --- --- ---
2002年11月 クラウン ランドクルーザー セルシオ セドリック
グロリア
ベンツ --- --- --- --- ---
2003年11月 ランドクルーザー クラウン ハイエース セルシオ マークⅡ オーディオ カーナビ 金銭・カード(ETCカード除く) バッグ類 タイヤホイール
2004年11月 ランドクルーザー マークⅡ クラウン RAV4 ハリアー カーナビ オーディオ バッグ類 金銭・カード(ETCカード除く) 外装部品(バンパー・ドアミラー等)
2005年11月 ランドクルーザー ハリアー マークX クラウン RAV4 カーナビ オーディオ バッグ類 外装部品(バンパー・ドアミラー等) 金銭・カード(ETCカード除く)
CD・MD・DVD等(ソフト)
2006年11月 ランドクルーザー マークX ハリアー RAV4 ハイエース
クラウン
カーナビ 外装部品(バンパー・ドアミラー等) バッグ類 オーディオ 金銭・カード(ETCカード除く)
2007年11月 ハイエース ハリアー ワゴンR マークX ランドクルーザー カーナビ バッグ類 金銭・カード(ETCカード除く) 外装部品(バンパー・ドアミラー等) CD・MD・DVD等(ソフト)
2008年11月 ハイエース ワゴンR マークX ランドクルーザー セルシオ カーナビ 外装部品(バンパー・ドアミラー等) バッグ類 タイヤ・ホイール 金銭・カード(ETCカード除く)
2009年11月 ハイエース セルシオ
ランドクルーザー
ワゴンR
クラウン
マークX タント カーナビ 外装部品(バンパー・ドアミラー等) バッグ類 金銭・カード(ETCカード除く) タイヤ・ホイール
2010年11月 ハイエース セルシオ ランドクルーザー サーフ クラウン カーナビ 外装部品(バンパードアミラー等) バッグ類 金銭・カード(ETCカード除く) タイヤ・ホイール
2011年11月 ハイエース セルシオ ランドクルーザー クラウン プリウス カーナビ バッグ類 外装部品(バンパー・ドアミラー等) タイヤ・ホイール 金銭・カード(ETCカード除く)
2012年11月 ハイエース クラウン セルシオ プリウス ランドクルーザー カーナビ バッグ類 タイヤ・ホイール 外装部品(バンパー・ドアミラー等) 金銭・カード(ETCカード除く)
2013年11月 ハイエース プリウス ランドクルーザー セルシオ クラウン カーナビ 外装部品(バンパー・ドアミラー等) バッグ類 タイヤ・ホイール 金銭・カード(ETCカード除く)
2014年11月 プリウス ハイエース ランドクルーザー アクア セルシオ バッグ類 外装部品(バンパー・ドアミラー等) タイヤ・ホイール カーナビ 金銭・カード(ETCカード除く)
2015年11月 プリウス ハイエース ランドクルーザー アクア クラウン 外装部品(バンパードアミラー等) カーナビ バッグ類 金銭・カード(ETCカード除く) スポーツ用品(ゴルフバッグ等)
2016年11月 プリウス ハイエース ランドクルーザー アクア レクサス バッグ 外装部品(バンパー・ドアミラー等) タイヤ・ホイール 金銭・カード(ETCカード除く) カーナビ
2017年11月 プリウス ランドクルーザー ハイエース レクサス スカイライン カーナビ スポーツ用品(ゴルフバッグ等) バッグ類 金銭・カード(ETCカード除く) タイヤ・ホイール
2018年11月 レクサス プリウス ランドクルーザー ハイエース アクア 外装部品(バンパードアミラー等) スポーツ用品(ゴルフバッグ等) バッグ類 金銭・カード(ETCカード除く) カーナビ
2019年 プリウス ランドクルーザー ハイエース クラウン レクサスLS バッグ財布 カード有価証券 ナンバープレート 運転免許証 建設機械
2020年 プリウス ランドクルーザー レクサス(LX) クラウン アルファード バッグ・財布類 カード・有価証券 ナンバープレート 運転免許証 携帯電話
2021年 ランドクルーザー プリウス レクサス(LX) アルファード クラウン バッグ・財布類 カード・有価証券 ナンバープレート 運転免許証 携帯電話
2022年 ランドクルーザー プリウス アルファード レクサス(LX) レクサス(RX) バッグ・財布類 カード・有価証券 ナンバープレート 運転免許証 携帯電話
2023年 ランドクルーザー アルファード プリウス レクサス(LX) ハイエース --- --- --- --- ---

米国における自動車盗

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統計

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連邦捜査局の公表資料によると、2020年の自動車盗の件数はミシガン州で18,385件、オハイオ州で20,077件だった[15]

対策

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以下のような対策が有効とされている。

  • 短時間でも自動車から離れるときは鍵をかけ、給油時は鍵を抜く[15]
  • 管理人や警備員が配置され、照明設備のある駐車場を利用する[15]
  • 利用者の多い駐車場を利用し、大型車の間などの死角となる場所への駐車を避ける[15]
  • 盗難防止装置の付いた自動車を選択する[15]
  • 盗難時に判別できるよう自動車には目印を付け車台番号を控えておく[15]

Hot Wheels

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全米保険犯罪局(NICB:National Insurance Crime Bureau)は、毎年、最も盗難被害にあった車のランキング「Hot Wheels」を発表している[16]。これは警察から全米犯罪情報センター(National Crime Information Center)に報告された盗難データをNICBが分析したものである[16]

2019年の全米保険犯罪局(NICB)の分析では次のような調査結果となった[16]

  1. Fシリーズ(フォード)3万8938台
  2. シビック(ホンダ)3万3220台
  3. シルバラード(シボレー)3万2583台
  4. アコード(ホンダ)3万745台
  5. カムリ(トヨタ)1万5656台
  6. アルティマ(日産)1万3355台
  7. カローラ(トヨタ)1万2137台
  8. ラム(ダッジ)1万1292台
  9. シエラ(GMC)1万1164台
  10. CR-V(ホンダ)1万94台

脚注

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出典

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  1. ^ 警察白書(令和元年)
  2. ^ 自動車盗・車上ねらいの発生状況 - 神奈川県警
  3. ^ 法務省『令和5年版犯罪白書 第1編 犯罪の動向 第1章 刑法犯 第2節 主な刑法犯 1 窃盗 1-1-2-3図 窃盗 認知件数の推移(態様別、手口別)』(Excel)(レポート)Dec 2023https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/70/nfm/n70_2_1_1_2_1.html#h1-1-2-32024年4月7日閲覧 
  4. ^ 警察庁捜査支援分析管理官 (9 February 2024). 令和5年1月~令和5年12月犯罪統計【確定値】 第2表 窃盗 手口別 認知・検挙件数・検挙人員 対前年比較 (PDF,Excel) (Report). p. 10. 2024年4月8日閲覧
  5. ^ 法務省. “犯罪白書>昭和49年版の犯罪白書>目次>第1編 犯罪の動向>第2章 統計からみた昭和48年の犯罪の概観>第1節 刑法犯の概況>2 財産犯罪>I-15表 窃盗の主要手口別発生件数の推移(昭和44年~48年)”. 2020年7月19日閲覧。
  6. ^ 法務省. “犯罪白書>昭和47年版の犯罪白書>目次>第1編 犯罪の動向>第二章 統計からみた昭和四六年の犯罪の概観>一 刑法犯の概況>2 財産犯罪>I-13表 窃盗主要手口別発生件数の推移(昭和42~46年)”. 2020年7月19日閲覧。
  7. ^ a b c 警察庁『令和4年の刑法犯に関する統計資料 第2 罪種・手口別の認知・検挙状況 2 重要窃盗犯 (2) 自動車盗』(PDF)(レポート)Aug 2023、35-37頁https://www.npa.go.jp/toukei/seianki/R04/r4keihouhantoukeisiryou.pdf#page=412023年7月2日閲覧 
  8. ^ 法務省『令和元年版犯罪白書 第6編 平成における犯罪被害者 第1章 犯罪被害 第2節 犯罪被害についての実態調査 2 31年調査の結果』(Excel)(レポート)Nov 2019https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/66/nfm/n66_2_6_1_2_2.html2020年3月21日閲覧 
  9. ^ a b 日本放送協会. “鍵はかけていたのに… なぜ盗まれた?”. NHKニュース. 2021年11月6日閲覧。
  10. ^ 乙部修平 (2023年11月3日). “急増する自動車盗にローテクで対抗…昔ながらのハンドルロック、キャンインベーダーにも有効”. 読売新聞オンライン. 2023年11月3日閲覧。
  11. ^ 日本損害保険協会損害サービス企画部自動車グループ (12 March 2024). 自動車盗難事故実態調査 (PDF) (Report). 2024年4月7日閲覧
  12. ^ 警察庁 (2022). 令和3年の犯罪 第1 刑法犯 総括 5 年次別 都道府県別 窃盗 手口別 認知・検挙件数及び検挙人員 (Excel,PDF) (Report). 2022年7月2日閲覧
  13. ^ 和泉虎太郎 (2020年3月4日). “「住宅侵入盗」と「自動車盗」ランキング!茨城県がワーストになる理由【47都道府県・完全版】” (日本語). ダイヤモンドオンライン: pp. 2. https://diamond.jp/articles/-/230616?page=2 2021年3月29日閲覧。 
  14. ^ 2018年までは日本損害保険協会のデータ、2019年以降は警察庁の「令和4年の刑法犯に関する統計資料」の45~46ページの車上狙いと部品狙いの被害品数のデータからである。
  15. ^ a b c d e f 安全の手引き~海外で安全に暮らすために~”. 在デトロイト日本国総領事館. 2023年1月14日閲覧。
  16. ^ a b c アメリカで盗まれやすい車トップ10…第1位は4万台近く被害にあったピックアップトラック”. Mediagene Inc.. 2023年1月14日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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