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てしお型巡視船

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
てしお型巡視船
なつい型巡視船
PM11 ゆうばり
基本情報
船種 500トン型PM
運用者  海上保安庁
就役期間 1980年 - 現在
前級 びほろ型 (改4-350トン型)
次級 あまみ型 (350トン型)
要目
常備排水量 630トン
総トン数 526トン (旧)[注 1]
全長 67.80 m
最大幅 7.90 m
深さ 4.40 m
吃水 2.63 m
主機 ディーゼルエンジン×2基
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力 3,000馬力
速力 18ノット
航続距離 3,200海里
乗員 33人 (最大搭載人員)
搭載艇 高速警備救難艇×2隻
レーダー JMA-159B 航海用×2基
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1番船のPM01 なつい

てしお型巡視船(てしおがたじゅんしせん、英語: Teshio-class patrol vessel)は、海上保安庁巡視船の船級。分類上はPM型、公称船型は500トン型[1][2][注 1]。配属替えに伴って1番船が改名したこと及びてしおが別船型の船名につけられたことより、なつい型巡視船とも称される[3]

来歴

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新海洋秩序の確立を目指して1973年に開幕した第三次国連海洋法会議を通じて、沿岸から200海里以内に所在する資源の管轄権を認める排他的経済水域(EEZ)の概念が提唱された。1977年には世界の主要国が続々と200海里のEEZを制定、日本もこれに追随するかたちで領海法および漁業水域に関する暫定措置法を施行した[1]

これによって、海上保安庁の警備すべき面積は、領海だけでも4倍、漁業水域も含めると50倍に拡大した。また1978年4月には中国漁船による尖閣諸島領海侵犯事件、また竹島周辺海域でも韓国側により日本漁船に対して退去勧告がなされるなどの事件が重なり、対応体制の確立が急務とされた。当時、主権回復直後に整備された350トン型PMが更新時期となっていたが、これらの情勢を受けて、代替となる巡視船は一回り大きく堪航性に優れたものとされることになった。これによって建造されたのが本型である[1]

設計

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本型の設計は、350トン型巡視船の系譜に属しており、その最終発達型であるびほろ型(改4-350トン型)の拡大改良型とされている。350トン型シリーズは改良・発展に伴って順次に船型を拡大してきたが、本型ではとうとう総トン数が500トンを越えたことから、公称船型は500トン型に変更された[2][注 1]

主機関は、改4-350トン型と同じく単機出力1500馬力(380rpm)の4サイクルディーゼルエンジンである新潟6M31EXないし富士6SD32Hの2基配置を踏襲している[4]。排水量が15トン増大したものの、全長を4.4メートル延長するとともに船首水切り部を細くして水抵抗が減少したことから、速力は18ノットを維持できた。なお8番船「くわの」より、操舵室に機関監視室を設けている[1]

船体は耐氷構造化されており、また10番船「そらち」は北方配備が予定されていたことからさらに強化されている。科員居住区を機関区画前方に集約したのは改4-350トン型と同様であるが、船体の延長に伴い、上甲板上に配置されていた諸室もできるだけ船体内に移動した。機関室通風筒を化粧煙突内に収めるなど作業面積を拡大するとともに、甲板機械の操作性の改善や自動操舵装置など、諸作業の合理化を図った。また居住区の拡大、完全冷暖房化、給湯装置、寝台の大型化、調理室の近代化など居住性の向上も図られた[1]。なお7番船「いさづ」は、配属当初海上保安学校の練習船を兼務していた為、後部上構が大型化されている。

兵装としては、新装備のJM61-M 20mm多銃身機銃を搭載した[5]。またレーダーとしては、改4-350トン型と同じく、Xバンド(9,375 MHz)のJMA-159Bを2基搭載している[6]

同型船

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一覧表

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計画年度 # 船名 建造所 就役 配属 解役
昭和54年度 PM01 てしお
→ なつい
四国ドック 1980年
9月30日
小樽第一管区
福島(旧小名浜)(第二管区
2013年
6月3日
PM02 おいらせ
→ きたかみ
1980年
8月29日
青森(第二管区)
釜石(第二管区)
2018年
2月5日
PM03 えちぜん
→ びほろ
1980年
9月30日
敦賀第八管区
函館(第一管区)
2013年
3月5日
昭和55年度 PM04 とかち 内海造船
田熊工場
1981年
3月24日
広尾(第一管区) 2017年
9月6日
PM05 ひたち 臼杵鉄工所 1981年
3月19日
鹿島第三管区 2018年
2月5日
PM06 おきつ 樽崎造船所 1981年
3月17日
清水(第三管区) 2011年
6月3日
昭和56年度 PM07 いさづ 東北造船 1982年
2月18日
舞鶴(第八管区)

松山第六管区

2017年
10月30日
昭和57年度 PM08 ちとせ 臼杵鉄工所 1983年
3月15日
留萌(第一管区) 2022年
8月28日[7]
PM09 くわの
→ まべち
内海造船
田熊工場
1983年
3月10日
徳島(旧小松島)(第五管区
八戸(第二管区)
2018年
12月28日
昭和58年度 PM10 そらち
→いさづ
東北造船 1984年
8月30日
紋別(第一管区)
舞鶴(第八管区)
2019年
6月21日
昭和59年度 PM11 ゆうばり 臼杵鉄工所 1985年
11月28日
網走(第一管区) 2023年
12月4日
昭和60年度 PM12 もとうら 四国ドック 1986年
11月21日
浦河(第一管区)
稚内(第一管区)
2024年
12月22日予定
PM13 かの
→ いしかり
→ むろみ
→ くろせ
内海造船
田熊工場
1986年
11月13日
下田(第三管区)
釧路(第一管区)
福岡第七管区
(第六管区)
昭和62年度 PM14 せんだい
→ つるみ
→ たかとり
四国ドック 1988年
6月1日
山川第十管区
横浜(第三管区)
下田(第三管区)
横須賀(第三管区)

運用史

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PM07「いさづ」は舞鶴保安部に配属、海上保安学校に派遣され、練習船として使用された。のちに3,000トン型PL「みうら」が配属されると、同船は松山保安部に配属替えになった。

PM10「そらち」は2018年09月に舞鶴保安部に配属替えとなり「いさづ」と船名を変更し、海上保安学校に派遣され、増えた学生の練習船として「みうら」と共に練習船業務にあたった。その後、「みずほ」から改名された2機搭載型PLH「ふそう」が舞鶴保安部に配属されて海保校に派遣されるようになり、同船は解役された。

このように順次に解役・除籍されて運用を縮小されていったが、2020年代にも、一部は耐用年数を超えつつ現役であった。2022年知床遊覧船沈没事故が発生した際には、事故発生当日に網走港に接岸していた「ゆうばり」は荒天のため、二次被害を避けるため出港を見合わせた(他の保安部署からの巡視船等に任せたため保安庁として捜索していない訳でない。但し、出動した巡視船も荒天の為、現着に時間が掛かったことより、地図上の直線距離で最短の位置にある保安部所属の「ゆうばり」が強風等海上荒天により出港が翌日になっていた。)ため、一部報道に老朽化、また、1番船の建造が昭和後期であり、その当時の設計においてバウスラスタが装備されていないことが出港出来なかった原因では無いか、と指摘が報道された[8]

脚注

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注釈

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  1. ^ a b c 総トン数500トン型ではあるが、総トン数の基準が途中で変更となったことから、本型でも途中の建造船から総トン数が変更され、新基準においては総トン数約330トン程と登録されている。

出典

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  1. ^ a b c d e 徳永 & 大塚 1995, pp. 29–128.
  2. ^ a b 海人社 2003, p. 76.
  3. ^ 海人社 2014, p. 146.
  4. ^ 佐藤 2008.
  5. ^ 中名生 2015.
  6. ^ Wertheim 2013, p. 387.
  7. ^ 「海上保安庁ニュース 巡視船"ちとせ"解役」『世界の艦船』第983集(2022年11月号)海人社 P.162
  8. ^ 網走海保の巡視船、事故後の救助に遅れ…「翌日到着」との複数証言も」『読売新聞オンライン読売新聞東京本社、2022年5月12日。2022年5月14日閲覧。

参考文献

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  • 海人社 編「海上保安庁全船艇史」『世界の艦船』第613号、海人社、2003年7月。 NAID 40005855317 
  • 海人社 編「警備救難業務用船 (海上保安庁船艇の全容)」『世界の艦船』第800号、海人社、39-90頁、2014年7月。 NAID 40020105550 
  • 佐藤一也「4サイクルディーゼル機関の技術系統化調査」『国立科学博物館 技術の系統化調査報告』第12号、国立科学博物館、2008年3月。NDLJP:11546649https://sts.kahaku.go.jp/diversity/document/system/pdf/044.pdf 
  • 徳永陽一郎; 大塚至毅『海上保安庁 船艇と航空』成山堂書店〈交通ブックス〉、1995年。ISBN 4-425-77041-2 
  • 中名生正己「巡視船 武装の歩み(下)」『世界の艦船』第825号、海人社、168-173頁、2015年11月。 NAID 40020597434 
  • Wertheim, Eric (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World (16th ed.). Naval Institute Press. ISBN 978-1591149545 

関連項目

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