コンテンツにスキップ

ラムダ・ドライバ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。PMmgwwmgmtwp'g (会話 | 投稿記録) による 2024年4月7日 (日) 08:30個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (tmp)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ラムダ・ドライバは、賀東招二の小説『フルメタル・パニック!』に登場する架空の兵器。作中では虚弦斥力場生成システムきょげんせきりょくばせいせいシステム)とも呼ばれ、使用する者の意思を物理世界に介入させるブラックテクノロジーの一種。斥力とは物質同士が遠ざけあう力のことであり、引力の反対の力である。 ラムダ・ドライバによる斥力場は見えないとされているが、アニメ版では視聴者に解かるように視覚化されている。

概要

主にアーム・スレイブに搭載された特殊な装置。表向きには搭乗者の意思によってTAROS(Transfer And Response ”Omni-Sphere")と呼ばれる装置を介して物理的な効果を発生させる仕組みのことを指す。 アインシュタイン重力場方程式の中に現れる斥力を表す宇宙定数と表記するところから、作中では「斥力発生装置」とも表記される事もある。

作中での運用方法

操縦者の意思によって作用場を機体周囲に展開してM9の40mm砲弾を跳ね返し、戦車の砲弾(APFSDS)すら無力化した他、『ずっと、スタンド・バイ・ミー』では5.5メガトン核爆発からレーバテインを守るなど、主に防壁として使用される事が多い。 作中ではラムダドライバによって発生された防壁を通常兵器で突破した描写は皆無だが、操縦者の意思の集中によって効果が発生するため、意識外からの超長距離狙撃などで不意を衝く形で突破をすることは可能。

また、防御のみならず攻撃にも使用可能であり、手持ち火器から発射された砲弾や対戦車ダガーに斥力を乗せて破壊力を上昇させることも可能。強度によるが、敵ASの装甲を軽々貫通するほどの威力を有する。また、指向性を持たせて見えない弾丸のようなエネルギー兵器として使用する事も可能。

機体の機動補助に使用する場合もあり、ARX-7 アーバレストは道路標識を踏み台に跳躍して見せ、スペック以上の跳躍を見せている(追いかけていたコダールmはそれができずに道路標識を踏み潰している)。Plan1501 ベヘモスの場合は、自重による倒壊を回避する為に利用されている。

レナード・テスタロッサが操るPlan1055 ベリアルに至っては、あらゆる物理法則を無視した動作が可能となっているが、これは搭乗者の資質による所が大きい。ARX-8レーバテインに搭載されたAI アルは、核兵器による爆発の威力や放射能から機体や搭乗者を防御している。

ウィスパードとして覚醒した千鳥かなめ曰く、充分な対策を練った通常の第三世代ASとラムダ・ドライバ搭載機との戦力比1:8

ミスリルでは最終的にM9でコダールと1対1で勝つ戦術を編み出しており、非ラムダ・ドライバ搭載機でもラムダ・ドライバ搭載機に勝てる事を証明している。とは言えこれはアーバレストがいた事によって部隊が全滅せずにラムダ・ドライバ搭載機との交戦データが複数回得られた事と、クダン・ミラが開発した『妖精の目』が得られたからこその結果であることは留意するべきであり、基本的に搭載機と非搭載機では絶望的な戦力差である。 特にラムダドライバは発動に予兆のような物がなく視覚的にも電子的にも映らないため、発動した時点で何らかの被害を被る事になる。『妖精の目』や知識がない状態で搭載機を相手した場合、生還するのも困難である。

作中においては、ラムダドライバ搭載機を相手にして全滅を免れた正規軍は米軍のデルタフォース部隊と中国軍のみ。どちらもミスリルによる介入により運良く全滅を免れたに過ぎず、多くの部隊が壊滅している。 特に米軍のデルタフォース部隊は精鋭揃いの米軍特殊部隊でありながら手も足も出ずに敗北している。 またミスリルも戦術が出来上がる以前は、「ラムダドライバ搭載機との交戦をせず、発見次第撤退」という命令が下されていた他、アマルガムによるメリダ島襲撃時には戦術が固まり、更に全ASに妖精の目を搭載していたのにもかかわらず、わずか3機のPlan1501 ベヘモスを相手に、選りすぐりを集めたミスリルの中でも屈指の実力を誇るSRT2名が死亡し、1名が重症に陥り、基地は陥落するにまで至っている。

ミスリル

ミスリルではARX-7 アーバレストのみが、確認されている唯一のラムダ・ドライバ搭載ASである。アーバレスト自体の操縦はM9と同様だが、『戦うボーイ・ミーツ・ガール』でAI アルに宗介の脳波パターンが登録されたため、ラムダ・ドライバを扱えるのは宗介のみとなっている。またM9D ファルケに搭載される計画もあったが、開発者であるバニ・モラウタの死により中止されている。

ミスリル壊滅後、情報部の残党が破壊されたアーバレストのコアユニットを回収、クダン・ミラによって復元されたAI アルと凍結されたARX計画の資材を用いて、本来なら存在しないはずのARXシリーズ8番目の機体ARX-8 レーバテインを建造した。アーバレストのコアユニットをそのまま流用している関係で、レーバテインもアーバレスト同様に宗介専用機となっている。

アマルガム

アマルガム側では、ラムダ・ドライバ搭載ASとしてPlan1056 コダールなどがあり、すでに量産段階に入っている。オペレーターが限られるという問題は『Ti971』と呼ばれる薬物を使用することで解決している。ただし、薬物によって再現される精神状態ではラムダ・ドライバの能力を十全に発揮することはできず、作中では宗介の駆るアーバレストには完敗している。もっとも、これはアマルガム製のLD搭載機が「通常型ASの駆逐」を目的に開発されたのに対し、アーバレストが「LD搭載型ASとの戦闘」を主眼に置いて建造されていることによる相性の問題も大きいと思われ、質は低くともラムダ・ドライバ非搭載ASやその他兵器にとっては充分過ぎるほどの脅威と言える。事実、作中では『妖精の眼』が開発されるまでは、ラムダドライバ非搭載AS相手には一方的な戦果を挙げていた。

TAROS

TAROSの機能はオムニ・スフィア転移反応と呼ばれる、構造材の内部に微細な結晶状の電子素子を埋め込み3次元的に連結する事で、オペレータの脳内の電気パターンを読み取ってAIユニットに転写するシステムである。これにより、前述の「使用者の精神パターンをトレースした疑似頭脳および神経系」を実現し、超AIシステムと組み合わせる事でアーバレストAIアルのように「人間のような感情を持つAI」すら生み出す事ができた。

  • アーバレストの大破から13年後に開発された自衛隊の試作ASブレイズ・レイヴンは、アーバレストの残骸を解析・模倣して作り上げたTAROSと視線誘導システムと組み合わせることで、装備されたアークジェット推進機「アジャイル・スラスタ」をダイレクトに制御している。また、AIに転写された脳内電気パターンはデータ化して抜き取ることが可能であり、無人ASの思考パターンとしても使用できる。ジオトロン・エレクトロニクス社はブレイズ・レイブンを一時的に鹵獲した際、同機のAIに蓄積された思考データをコピーし、無人AS「ケントゥリア」を開発した。

本来の名称とオムニ・スフィア

作品世界において、物理世界は一種の精神世界である《完全領域》(オムニ・スフィア)と相互に干渉しており、人間の意思は生身の状態でもオムニ・スフィアを通して分子が揺らぐ程度の干渉を物質に与えているとされる。

この干渉反応は脳と全身の神経系によって生じており、TAROSにより読み取った使用者の意思とオムニ・スフィアとの干渉反応を「ラムダ・ドライバ」のメインユニットである「小型の冷蔵庫大の、虹色の光の束が納まったシリンダー」へ大電力を与える事による高速連鎖反応で大規模に拡大させる作用が本来のラムダドライバの機能である。

つまり、前述の「ラムダドライバにより斥力を発生させ、それを操る」という説明は本来の用途を隠蔽するための偽装であり、実際にはラムダドライバを起動することによって「使用者の意思による物理世界の書き換え」が実現されている。また作中でも不自然と評されるほどに、兵器としては非効率な人型をしたアーム・スレイブが急速に普及したのは、このTAROSを搭載し最も効率よく稼働させるのが前提であったためだという可能性すら示唆されている。

TAROSの本来の名称は「オムニ・スフィア高速連鎖干渉炉」であり、本作世界の起源に関わる重要な装置である。その研究は数十年前のソ連にある<ヤムスク11>という名称の秘密研究都市で行われ、ソフィアという名の被検体と動物の脳を大量に使用した有機素子によってプロトタイプが製作された。そこで大規模な全力稼働テストを行っていた「1981年12月24日グリニッジ標準時11時50分」頃に重大な事故が発生、装置を中心として建造された<ヤムスク11>の住人は全て精神汚染により死亡、その時刻に地球上で生まれた子供の脳にも影響を与えた。「ウィスパード」が誕生したのはその時である[1]

オムニ・スフィアでは、物理空間における時間や空間の制約を受けずに情報を伝播する事が可能であり、その性質とTAROSを用いれば究極的には未来予知や歴史の書き換えすら可能となる。その究極系とも言える装置が終盤で登場した「TALTAROS(オムニ・スフィア転移反応時空通信変容炉)」である。

また原作小説10巻『せまるニックオブタイム』では、クルツ・ウェーバーとその師匠であるヴィルヘルム・カスパーが狙撃を行う際、TAROSを経由せずオムニスフィアから物理世界への干渉を行っていると思われる描写がある。

派生技術

妖精の目

『踊るベリー・メリー・クリスマス』における、南沙諸島の海賊拠点での戦闘よりM9に実装されたラムダ・ドライバ観測機器。開発者はクダン・ミラ。使用すると、スクリーンに暗視スコープのような緑色のフィルターがかけられたようになり、色の濃淡でラムダ・ドライバの効果範囲や強弱を見分ける。これにより、M9でもラムダ・ドライバ搭載機と互角以上の戦闘が可能になった(もっとも操縦者の技量差や連携、援護攻撃を加味してだが)。

妖精の羽

『せまるニック・オブ・タイム』において、ARX-8 レーバテインに追加された装備。機体周辺の一定領域におけるラムダ・ドライバの影響を無効化する機能を持ち、ラムダ・ドライバ・キャンセラーとも呼ばれる。その使用に際しては、ラムダ・ドライバとは逆に「そうした超常現象が起きることは無い」というイメージを働かせる必要がある。

ただし、自らもラムダ・ドライバの使用が不可能になる上、消費する電力の余りの多さに機動性が阻害されるという欠点を抱えており、さらには使用時間にも限りがある。

アイザイアン・ボーン・ボウ

ベリアルに装備された大型の弓。実際に矢を射る武器ではなく、ラムダ・ドライバの力場を矢と化して超高速で射出する。発射された瞬間に被弾するほどの凄まじい速度で飛来するため、回避はほぼ不可能(宗介とアルの技量をもってしても、当たる場所をずらす程度で精一杯)であり、さらに『矢』自体が不可視であるため、ラムダ・ドライバでの防御に必要な『盾』のイメージも難しく、事実上防御も不可能な武器となっていた。

メリダ島での最終決戦で、レーバテインの左腕を犠牲にしての165mmデモリッション・ガンの発射によって破壊された。

ラムダ・ドライバ搭載機

脚注

  1. ^ 小説10巻『せまるニックオブタイム』