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ニューポート級戦車揚陸艦

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ニューポート級戦車揚陸艦
基本情報
艦種 戦車揚陸艦(LST)
命名基準 アメリカ合衆国の郡
就役期間 1969年 - 2002年
前級 デ・ソト・カウンティ級
次級 なし
要目
軽荷排水量 4,790 t
満載排水量 8,500 t
全長 159メートル (522 ft)
最大幅 21.3メートル (70 ft)
吃水 5.3メートル (17 ft)
機関方式 マルチプル・ディーゼル方式
主機 ディーゼルエンジン×6基
推進器スクリュープロペラ×2軸
バウスラスター (800hp)
出力 16,000 bhp
速力 最大22ノット / 持続20ノット
航続距離 14,250海里 (14kt巡航時)
搭載能力 最大で貨物2,000トン
乗員 個艦乗員: 士官12名+曹士174名
揚陸部隊: 将校20名+曹士411名
兵装50口径3インチ連装速射砲×2基
Mk.38 25mm単装機銃
 ※一部艦で後日装備
Mk.15 20mmCIWS
 ※一部艦で後日装備
12.7mm機銃×2~4挺
レーダーAN/SPS-10 対水上捜索用
・LN-66 航法用
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ニューポート級戦車揚陸艦(ニューポートきゅうせんしゃようりくかん、英語: Newport-class tank landing ship)は、アメリカ海軍が運用していた戦車揚陸艦(LST)の艦級。基本計画番号はSCB-405[1]

設計

本級の最大の特徴が、従来の米LSTが踏襲してきた艦首門扉の廃止である。これによって艦首形状は通常の艦船と同様の波切りのよいものとなり、長さ/幅比7.5という細長い船型とあわせて、抵抗は大幅に軽減された。さらに揚陸時の操艦のためにバウスラスターも設置された。船体内の車両甲板と上甲板に車両や資材を搭載する点ではLST-1級以来の構成が踏襲されているが、本級では船体全幅いっぱいの上部構造物を船体中央に設けており、上甲板が前後に二分されているため、上部構造物の左舷側に車両連絡通路が設けられている[1]

主機方式は、前任のデ・ソト・カウンティ級と同様にディーゼルエンジン6基を減速機で2軸の推進器にまとめるマルチプル・ディーゼル方式とされた。ディーゼルエンジンとしてはアルコ16-251(LST-1179〜1181ではGM 16-645-E5)が採用され、合計出力16,500馬力を確保した[2]。これによって、アメリカ海軍揚陸艦部隊が悲願としてきた20ノットでの艦隊行動がついに実現された[3][4]。なお、6基のディーゼルエンジンは2基ずつ第1~3機械室に設置されており、左舷煙突に2室分の、右舷煙突に1室分の排気を導いているため、前者のほうが太くなっている[1]

装備

上記の経緯より、本級の揚搭装置は従来のLSTとは全く異なり、艦首に突き出した固定デリック・アームと、普段は上甲板上に格納されている道板を用いたものとなっている。この道板はアルミ合金製で重量75トン、長さ34メートル、非使用時は艦首甲板両舷の溝に入れ込むかたちで格納されている。ビーチングすると、まず艦首突端の扉を左右に開いたのち、艦首前端のピボットによって道板を浮き上がらせる。グリースによって道板を滑らせつつ、上甲板下のウインチを用いて繰り出していき、デリック・アームによって支持することで、岸と連絡するのである。車両甲板前端には上甲板と連絡するランプが設けられており、車両甲板に搭載された車両はここを通じていったん上甲板に上がったのち、道板を通じて岸に降りていく。なお、道板だけでは長さが不足する場合も多く、この場合には後部舷側に搭載されていた4基のポンツーンを道板の先に接続することで延長していた[4]

車両甲板には1,765 m2の搭載余面を確保しており、前後端に転車台を設けている。また艦尾側にも下端ヒンジ式のランプを設けており、必要であれば水陸両用車を発進させることも出来る。AAV7装甲兵員輸送車であれば23両、M48中戦車であれば29両、2トン半トラックであれば41両を搭載できた。また、さらに主甲板にも2トン半トラック29両を搭載できる。物資搭載量は、輸送任務時には2,000トン、ビーチング時でも500トンであった[2]。物資の揚降のため、艦尾甲板両舷に力量10トンのデリック・クレーンを備えていた[1]

上部構造物直後の両舷には、タルボット・カウンティ級以降踏襲されてきた上陸用舟艇2隻搭載のウェリン式ダビットが1基ずつ設置されており、標準的には人員揚陸艇(LCPL)1隻と車両人員揚陸艇(LCVP)3隻が搭載されていた。また米LSTとしては初めて艦尾甲板にヘリコプター甲板を設定しており、242 m2の面積を確保した[2]

個艦防空用として、上部構造物後部両舷に50口径3インチ連装速射砲を1基ずつ装備していた。これらはMk.63 砲射撃指揮装置による管制を受けていたが、これは1977年から1978年にかけて撤去され、大西洋艦隊所属艦ではファランクスCIWS 1基を搭載した[2]。またAN/SLQ-32(V)1電波探知装置の後日装備も検討されたが、これは実現せず、一部艦でMk 36 SRBOCのみが搭載された[5]

配備

1965年1966年1967年度計画で計20隻が建造された。1971年度計画で更に7隻の建造が検討されたが、これは実現しなかった。その後、1994年より退役を開始し、2002年までにアメリカ海軍での運用を終了した。退役艦の多くは海外に売却されて再就役している[1]

特にオーストラリアに供与された艦は、カニンブラ級として大改修が行なわれた。前甲板ではアーム及び道板が撤去され、ここにLCM-8型揚陸艇2隻を搭載するとともに、その揚降用として艦橋直前に70トン級クレーンが1基設置された。また後甲板はヘリコプター甲板とされ、上部構造物内にヘリコプター4機分のハンガーを設置することで、簡易のヘリコプター揚陸艦となった。

同型艦一覧
 アメリカ海軍 退役/再就役後
# 艦名 就役 退役 再就役先 # 艦名
LST-1179 ニューポート
USS Newport
1969年 1992年  メキシコ海軍 A-411 パパロアパン
ARM Papaloapan
LST-1180 マニトワック
USS Manitowac
1970年 1993年  台湾海軍 LST232 中和
ROCS Chung Ho
LST-1181 サムター
USS Sumter
LST233 中平
ROCS Chung Ping
LST-1182 フレズノ
USS Fresno
1969年  ペルー海軍 (予定)
LST-1183 ピオリア
USS Peoria
1970年 1994年 実艦標的として海没処分(2004年)
LST-1184 フレデリック
USS Frederick
2002年  メキシコ海軍 A-412 ウスマシンタ
ARM Usumacinta
LST-1185 スケネクタディ
USS Schenectady
1993年 実艦標的として海没処分(2004年)
LST-1186 カユーガ
USS Cayuga
1994年  ブラジル海軍 G-28 マットソ・マイア
NDCC Mattoso Maia
LST-1187 タスカルーサ
USS Tuscaloosa
1993年  チリ海軍 (予定)
LST-1188 サギノー
USS Saginaw
1971年 1994年  オーストラリア海軍 L-51 カニンブラ
HMAS Kanimbla
LST-1189 サンバーナディーノ
USS San Bernardino
1995年  チリ海軍 LST 93 ヴァルディヴィア
Valdivia
LST-1190 ボールダー
USS Boulder
1994年  モロッコ海軍 (予定)
LST-1191 ラシーン
USS Racine
1993年  ペルー海軍 (予定)
LST-1192 スパータンバーグ・カウンティ
USS Spartanburg County
1994年  マレーシア海軍 A1505 スリ・インデラ・プラ
KD Sri Indera Pura
LST-1193 フェアファックス・カウンティ
USS Fairfax County
 オーストラリア海軍 L-52 マノーラ
HMAS Manoora
LST-1194 ラ・ムーア・カウンティ
USS La Moure County
2000年 実艦標的として海没処分(2001年)
LST-1195 バーバー・カウンティ
USS Barbour County
1972年 1991年 実艦標的として海没処分(2004年)
LST-1196 ハーラン・カウンティ
USS Harlan County
1995年  スペイン海軍 L-42 ピサーロ
SPS Pizarro
LST-1197 バーンステーブル・カウンティ
USS Barnstable County
1994年 L-41 エルナン・コルテス
SPS Hernán Cortés
LST-1198 ブリストル・カウンティ
USS Bristol County
 モロッコ海軍 407 シディ・モハメド・ベン・アブダラ
Sidi Mohammed Ben Abdallah

参考文献

  1. ^ a b c d e 「アメリカ揚陸艦史」『世界の艦船』第669号、海人社、2007年1月、1-135頁、NAID 40015212119 
  2. ^ a b c d Bernard Prezelin (1990). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 1990-1991. Naval Institute Press. p. 824. ISBN 978-0870212505 
  3. ^ 阿部安雄「アメリカ揚陸艦の歩み」『世界の艦船』第669号、海人社、2007年1月、137-143頁、NAID 40015212119 
  4. ^ a b 「アメリカ揚陸艦のメカニズム」『世界の艦船』第669号、海人社、2007年1月、144-151頁、NAID 40015212119 
  5. ^ Robert Gardiner, ed (1996). Conway's All the World's Fighting Ships 1947-1995. Naval Institute Press. p. 621. ISBN 978-1557501325 

外部リンク