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「ピューマ」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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{{Redirect|クーガー}}
{{Redirect|クーガー}}
{{生物分類表
{{生物分類表
| 名称 = ピューマ
|省略 = 哺乳綱
| fossil_range = {{Fossil range|Middle Pleistocene|0}}
|名称 = ピューマ
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| 画像キャプション = ピューマ ''Puma concolor''
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|status_ref = <ref group="a" name="cites">[http://www.cites.org/ CITES homepage]
* [http://www.cites.org/eng/app/appendices.php Appendices I, II and III]
</ref><ref group="a" name="iucn">[http://www.iucnredlist.org/ The IUCN Red List of Threatened Species]
* Caso, A., Lopez-Gonzalez, C., Payan, E., Eizirik, E., de Oliveira, T., Leite-Pitman, R., Kelly, M., Valderrama, C. & Lucherini, M. 2008. [http://www.iucnredlist.org/apps/redlist/details/18868/0 ''Puma concolor'']. In: IUCN 2012. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2012.1.
</ref>
|status_text = [[絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約|ワシントン条約]]附属書I
| 地質時代 = [[新生代]][[第四紀]][[更新世]]中期[[イオニアン]]([[w:Middle Pleistocene|en]])- [[完新世]][[サブアトランティック]]([[古気候学#サブボレアル・サブアトランティック(有史時代)の気候|*]])
| 地質時代 = [[新生代]][[第四紀]][[更新世]]中期[[イオニアン]]([[w:Middle Pleistocene|en]])- [[完新世]][[サブアトランティック]]([[古気候学#サブボレアル・サブアトランティック(有史時代)の気候|*]])
| 省略 = 哺乳綱
|上目 = [[ローラシア獣上目]] {{sname||Laurasiatheria}}
|目 = [[ネコ目]] {{Sname||Carnivora}}
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| 科 = [[ネコ科]] {{sname||Felidae}}
| = [[ピューマ属]] {{Snamei||Puma (genus)|Puma}}
| 亜科 = [[ネコ亜科]] {{Sname||Felinae}}
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|種 = '''ピューマ''' ''P. concolor''
| 属 = [[ピューマ属]] ''[[w:Puma (genus)|Puma]]''
|学名 = ''Puma concolor'' ([[カール・フォン・リンネ|Linnaeus]], [[1771年|1771]])
|シノニム = ''Felis concolor''
| = '''ピューマ''' ''[[w:Puma concolor|P. concolor]]''
| 学名 = '''''Puma concolor''''' <br /><small>({{AUY|[[カール・フォン・リンネ|Linnaeus]]|1771}})</small>
|和名 = ピューマ
| シノニム = ''Felis concolor''
|英名 = [[w:Cougar|Cougar<br />Mountain lion<br />Panther<br />Puma]]
| 和名 = '''ピューマ'''
|生息図=[[ファイル:Puma range.png|250px]]
| 英名 = Cougar<!--標準英名のみ表記。Pumaは別名。-->
|生息図 = [[file:Puma range.png|200px]]
|生息図キャプション = ピューマの生息分布図。元々は北米の東部と中部にも分布していたが、それらの地域では人間によって駆除された。
|生息図キャプション = ピューマの生息分布図。元々は北米の東部と中部にも分布していたが、それらの地域では人間によって駆除された。
}}
}}
'''ピューマ'''([[学名]]:'''''Puma concolor'''''、[[英語]]名<!--標準英名のみ表記-->:Cougar)は、[[南アメリカ大陸]]のほぼ全域と[[北アメリカ大陸]]の広域に生息する、[[ネコ目|ネコ目(食肉目)]]- [[ネコ科]]の大型[[肉食動物|肉食性]][[哺乳類]]の一種(1[[種 (分類学)|種]])。[[ネコ亜科]]- [[ピューマ属]]2種中の1種。<!--以上、第一定義-->


[[新生代]][[第四紀]][[更新世]]中期[[イオニアン]]([[w:Middle Pleistocene|en]])に出現したと考えらる。北は北米大陸の[[ロッキー山脈|ロッキー山系]]最北端から南は南米大陸南端の[[パタゴニア]]平原までを平地から[[標高]]3,900mの高地まで、湿地の森林地帯から[[砂漠]]地帯までと非常に広い範囲の多様な環境に適応し生息している。今日の北アメリカでは、場所によって[[絶滅]]あるいは絶滅の危機に瀕しており、保護活動も行われている。
'''ピューマ'''(''Puma concolor'')は、[[哺乳類|哺乳綱]][[ネコ目]](食肉目)[[ネコ科]][[ピューマ属]]に分類される食肉類。

== 分布 ==
{{節スタブ}}
[[北アメリカ大陸]]、[[南アメリカ大陸]]
;''P. c. concolor''
:[[ガイアナ]]、[[フランス]]([[フランス領ギアナ|仏領ギアナ]])、[[ベネズエラ]]<ref name="fn1">今泉忠明 『野生ネコの百科 第4版』、データハウス、[[2011年]]、114-121頁。</ref><ref name="fn3">今泉吉典監修 『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』、東京動物園協会、[[1991年]]、160-161頁。</ref>
;''P. c. cabrerae''
:[[アルゼンチン]]<ref name="fn1"/><ref name="fn3"/>
;''P. c. capricornensis''
:[[ブラジル]]<ref name="fn1"/><ref name="fn3"/>
;''P. c. costaricensis''
:[[コスタリカ]]、[[パナマ]]<ref name="fn1"/><ref name="fn3"/>
;''P. c. couguar''
:[[アメリカ合衆国]]([[ノースカロライナ州]]、[[ペンシルベニア州]])、[[カナダ]]([[ケベック州]])<ref name="fn1"/><ref name="fn3"/>
;''P. c. puma''
:[[チリ]]<ref name="fn1"/><ref name="fn3"/>

{{出典の明記|date=2012年7月|section=1}}
新生代第四紀更新世中期イオニアン([[w:Middle Pleistocene|en]])に出現したと考えらる。北は北米大陸のロッキー山系最北端から南は南米大陸南端のパタゴニア平原までを平地から標高3,900mの高地まで、湿地の森林地帯から砂漠地帯までと非常に広い範囲の多様な環境に適応し生息している。今日の北アメリカでは、場所によって絶滅あるいは絶滅の危機に瀕しており、保護活動も行われている。


== 呼称 ==
== 呼称 ==
分類学上、本種をピューマ属とせず、[[ネコ属]]の下位に置いて「ピューマ亜属」とする学説もあり、その場合の学名は[[シノニム]]としての '''''Felis concolor''''' である。
{{出典の明記|date=2012年7月|section=1}}
分類学上、本種をピューマ属とせず、ネコ属の下位に置いて「ピューマ亜属」とする学説もあり、その場合の学名は[[シノニム]]としての''Felis concolor''である。属名''Puma''や英語での通俗的異名<ref group="脚注">分類学上の「異名(シノニム)」と区別すること。</ref>[[wikt:en:puma|puma]](プーマ)の語源を辿ると、スペイン語名を経ているが、そもそもの由来は南米のペルーやエクアドルに暮らす先住民族ケチュアの言語でのその名puma<!--(プーマ{{要出典}})-->に源流がある。種小名''concolor''([[wikt:en:concolor|concolor]]、コンコロル)はラテン語で「同じ色の」「1色の」の意。英語での呼称はほかに、標準的英語名である [[wikt:en:cougar|cougar]] (クーガー。[[ポルトガル語]]経由で、トゥピ語[[[w:Tupian languages|en]]]名か[[グアラニー語]]名起源とされる)を始めとして、[[wikt:en:mountain lion|mountain lion]] (マウンテン・ライオン、「山ライオン」やAmerican lion (「アメリカライオン」)がある。また、[[北アメリカ]]では単にlion、[[wikt:en:panther|panther]]、[[wikt:en:catamount|catamount]](カタマウント)などと呼ばれる場合もある。もちろん、lion、panther、catamount は一般にはそれぞれライオン、ヒョウ、ネコ科の野生動物(山の猫)を指す英語名である。

== 形質 ==
[[体長]]100-190[[センチメートル]]<ref name="fn3"/>。尾長60-90センチメートル<ref name="fn3"/>。[[体重]]35-110[[キログラム]]<ref name="fn3"/>。全身の毛衣は淡褐色や褐色、灰色や灰褐色<ref name="fn1"/><ref name="fn3"/>。種小名''concolor''は「同色の、単色の」の意。腹面の毛衣は白い<ref name="fn1"/><ref name="fn3"/>。尾の先端は黒い<ref name="fn1"/><ref name="fn3"/>。

[[虹彩]]は淡黄色<ref name="fn1"/><ref name="fn3"/>。[[瞳孔]]は丸い<ref name="fn1"/><ref name="fn3"/>。


[[学名|属名]] '''''Puma''''' や英語での通俗的異名<ref>分類学上の「異名(シノニム)」と区別すること。</ref> '''[[wikt:en:puma|puma]]''' (プーマ)の語源を辿ると、[[スペイン語]]名を経ているが、そもそもの由来は[[南アメリカ|南米]]の[[ペルー]]や[[エクアドル]]に暮らす[[先住民族]][[ケチュア]]の言語でのその名 '''puma''' <!--(プーマ{{要出典}})-->に源流がある。
生後6か月以内の幼獣には暗色の斑点が入る<ref name="fn1"/>。乳頭の数は6個<ref name="fn1"/>。


[[学名|種小名]] '''''concolor''''' ([[wikt:en:concolor|concolor]]、コンコロル)は[[ラテン語]]で「同じ色の」「1色の」の意。英語での呼称はほかに、標準的英語名である '''[[wikt:en:cougar|cougar]]''' (クーガー。[[ポルトガル語]]経由で、[[トゥピ語]][[[w:Tupian languages|en]]]名か[[グアラニー語]]名起源とされる)を始めとして、'''[[wikt:en:mountain lion|mountain lion]]''' (マウンテン・ライオン、「山ライオン」)や '''American lion''' (「アメリカライオン」)がある。また、[[北アメリカ]]では単に '''lion'''、'''[[wikt:en:panther|panther]]'''、'''[[wikt:en:catamount|catamount]]''' (カタマウント)などと呼ばれる場合もある。もちろん、lion、panther、catamount は一般にはそれぞれ[[ライオン]]、[[ヒョウ]]、ネコ科の野生動物(山の猫)を指す英語名である。


== 生物的特徴 ==
{{出典の明記|date=2012年7月|section=1}}
=== 形質 ===
[[画像:Cougarskull.jpg|thumb|left|頭蓋骨の写真]]
[[画像:Cougarskull.jpg|thumb|left|頭蓋骨の写真]]
[[画像:Puma concolor paw.jpg|thumb|ピューマの足の裏]]
[[画像:Puma concolor paw.jpg|thumb|ピューマの足の裏]]
ネコ科の中では、ヒョウ、ライオンなどのヒョウ亜科ではなく、イエネコを含むヤマネコと同じネコ亜科に属し、ネコ亜科では最大級の大きさである。オスは体長(頭胴長)約1- 1.8m、体重約65-100 kgに達し、メスは一回り小さい。成獣の体は黄褐色の毛で覆われ、無紋、耳の縁と長い尾の先だけが黒い。幼獣は体中に黒~黒褐色のヒョウのような斑紋があり、尾には黒い輪があるが、これらは成長とともに消えていく。敏捷で瞬発力に優れ、高さ4 m、幅12 mほどの跳躍した記録が残されている。なお嗅覚が鋭い。また、ネコ科の大型肉食獣の中では特に眼球が大きく、視力が高い。寿命は野生のもので12年ほど、飼育下では25年程度。基本的に単独行動であり、オスでは平均の広さ250 km<sup>2</sup>(半径 9 km の円)程度の縄張りを持つとされる。比べ、メスの縄張りは狭く面積はその半分から3分の1程度となる。ただし、縄張りの広さは環境に左右され、餌が豊富で条件がよい地域ではオスの縄張りが1頭当り25 km<sup>2</sup>(半径3 kmの円)程度の地域もあるという。主にネズミ、リス、ウサギ、アライグマ、ナマケモノなどの小型哺乳類や、[[鳥類]]、爬虫類、魚類、バッタなどの昆虫を食べ、シカなどの大型哺乳類やヤマアラシを捕食する場合もある。狩りの方法は、地面に伏せて獲物に忍び寄り、後ろや物陰から瞬発力を利用して一気に飛びかかるというもの。獲物の行動を止めるため、顎や喉笛に食いついたり、獲物を転倒させて、腹部に食いついたりもする。捕食された動物の中には、飛びつかれた際の衝撃による骨折が死因のものも見つかっている。ピューマは広い縄張り且つ単独行動の種であるため、生息地域に人間が住んでいる場合でも見かけることは少ない。これまでにおいて人間への直接被害は多くないが、人間の子供、屋外で飼育しているペット、家畜などは襲われないよう注意されている
[[ネコ科]]の中では、[[ヒョウ]][[ライオン]]などの[[ヒョウ亜科]]ではなく、[[ネコ|イエネコ]]を含む[[ヤマネコ (種)|ヤマネコ]]と同じ[[ネコ亜科]]に属し、ネコ亜科では最大級の大きさである。オスは[[体長]](頭胴長)約1- 1.8m、体重約65- 100 kgに達し、メスは一回り小さい。成獣の体は黄褐色の毛で覆われ、無紋、耳の縁と長い尾の先だけが黒い。幼獣は体中に黒~黒褐色の[[ヒョウ]]のような斑紋があり、尾には黒い輪があるが、これらは成長とともに消えていく。敏捷で瞬発力に優れ、高さ4 m、幅12 mほどの跳躍した記録が残されている。なお[[嗅覚]]が鋭い。また、ネコ科の大型肉食獣の中では特に[[目|眼球]]が大きく、視力が高い。寿命は野生のもので12年ほど、飼育下では25年程度。


基本的に単独行動であり、オスでは平均の広さ250 km<sup>2</sup>(半径 9 km の円)程度の縄張りを持つとされる。比べ、メスの縄張りは狭く面積はその半分から3分の1程度となる。ただし、縄張りの広さは環境に左右され、餌が豊富で条件がよい地域ではオスの縄張りが1頭当り25 km<sup>2</sup>(半径3 kmの円)程度の地域もあるという。主に[[ネズミ]]、[[リス]]、[[ウサギ]]、[[アライグマ]]、[[ナマケモノ]]などの小型哺乳類や、[[鳥類]]、[[爬虫類]]、[[魚類]]、[[バッタ]]などの[[昆虫]]を食べ、[[シカ]]などの大型哺乳類や[[ヤマアラシ]]を捕食する場合もある。狩りの方法は、地面に伏せて獲物に忍び寄り、後ろや物陰から瞬発力を利用して一気に飛びかかるというもの。獲物の行動を止めるため、顎や喉笛に食いついたり、獲物を転倒させて、腹部に食いついたりもする。捕食された動物の中には、飛びつかれた際の衝撃による骨折が死因のものも見つかっている。
== 分類 ==
32亜種に分ける説もあったが、一方で分子生物学的解析から6亜種のみ認める説もある<ref group="a" name="iucn"/>。
* ''Puma concolor concolor'' (Linnaeus, 1771)
* ''Puma concolor cabrerae'' (Pocock, 1940)
* ''Puma concolor capricornensis'' (Nelson & Goldman, 1929)
* ''Puma concolor costaricensis'' (Merriam, 1901)
* ''Puma concolor couguar'' (Kerr, 1792)
* ''Puma concolor puma'' (Morina, 1782)


ピューマは広い縄張り且つ単独行動の種であるため、生息地域に人間が住んでいる場合でも見かけることは少ない。これまでにおいて[[ヒト|人間]]への直接被害は多くないが、人間の子供、屋外で飼育している[[ペット]]、[[家畜]]などは襲われないよう注意されている。


=== 下位分類と分布 ===
{{出典の明記|date=2012年7月|section=1}}
[[ファイル:Puma.jpg|thumb|180px|[[フロリダパンサー]]<br />ピューマのフロリダ亜種。米国、[[フロリダパンサー]]国立野生動物保護区にて撮影。]]
[[ファイル:Puma.jpg|thumb|180px|[[フロリダパンサー]]<br />ピューマのフロリダ亜種。米国、[[フロリダパンサー]]国立野生動物保護区にて撮影。]]
ピューマは非常に広い範囲に生息しており、地域により形態的特徴が異なっている。北中米・南米併せて20- 30種類程度の亜種に分類される場合が多い。亜種の分類には非常に異同が多い。
ピューマは非常に広い範囲に生息しており、地域により形態的特徴が異なっている。北中米・南米併せて20-30種類程度の亜種に分類される場合が多い。亜種の分類には非常に異同が多い。北米では1900年代に入り、アメリカ合衆国の多くの州でピューマが害獣指定され、狩猟による駆除が行われたことから、ほとんどの地域で個体数が激減した。特に、東部と中部ではピューマはほぼいなくなった。1970年代までにはこの指定は解除されたが、それまでにカナダから米国東部(ニューイングランド地方からテネシー州まで)に広く分布していた北アメリカ東部亜種(ペンシルベニア亜種''P. concolor couguar'')や、米国中部(五大湖西岸からカンサス州まで)に分布していた北アメリカ中部亜種(ウィスコンシン亜種''P. concolor schorgeri'')はほぼ絶滅したと考えられている。また、米国南部(ルイジアナ州から東側、フロリダ州まで)に分布していた北アメリカ南部亜種(フロリダ亜種''P. concolor coryi'')がフロリダ半島の湿地帯の森林にわずかに残されており、厳重な保護下に置かれている。この結果、北アメリカで確実にピューマが分布している地域は、カナダ西部から米国西部、メキシコにかけての西海岸寄りの一帯だけになっている。西部諸州でも狩猟によってピューマは激減し、さらに1980年代まで狩猟(ゲーム・ハンティング)の対象動物ではあり続けたため、西部のいくつかの亜種(カリフォルニア亜種''P. concolor californica''など)も、一時分布が限局され、個体数の減少が深刻になったときもあったが、1990年代以降は個体数と分布がかなり回復傾向にある。なお北アメリカ東部で稀に目撃される個体は、ペットが野生化したものの可能性が高く、上記亜種とは関連しないと考えられている。中米では、ニカラグアからパナマにかけて分布している中央アメリカ亜種(コスタリカ亜種''P. concolor costaricensis'')が絶滅の恐れのある種に指定されている。保護区内での個体数は比較的安定しているものの、増加の傾向は見られていない。一方南米では殆どの地域にピューマが生息しており、21世紀に入り絶滅の恐れがある地域および亜種はない。種の学名と同じ亜種名 ''concolor'' を持つ原名亜種は、ブラジル亜種(''P. concolor concolor'')で、ベネズエラからブラジル北部に分布する。ピューマは、ベルクマンの法則にしたがう種として知られている。カナダ西部のブリティッシュコロンビア州に生息する北アメリカ北西部亜種(''P. concolor missoulensis'')や、南アメリカ最南端に生息するパタゴニア亜種(''P. concolor patagonica'')などの体格は、赤道地方の亜種の倍近い大きさがある。ベルクマンの法則の通常の解釈では、その理由は体の容積と表面積との関係で、寒い地域では体からの熱を奪われるのを防ぐため、体の容積に対して表面積が小さくなるように体が大型化するというものだが、ピューマの場合には、その原因は餌の違いではないかという指摘もある。
。なお、ピューマのうち、北アメリカ東部亜種・北アメリカ南部(フロリダ)亜種・中央アメリカ(コスタリカ)亜種の3亜種は、ワシントン条約で国際間の取引が禁止されている。


北米では、[[1900年代]]に入り、[[アメリカ合衆国|米国]]の多くの州でピューマが[[害獣]]指定され、狩猟による駆除が行われたことから、ほとんどの地域で個体数が激減した。特に、東部と中部ではピューマはほぼいなくなった。[[1970年代]]までにはこの指定は解除されたが、それまでにカナダから米国東部([[ニューイングランド]]地方から[[テネシー州]]まで)に広く分布していた北アメリカ東部亜種([[ペンシルベニア州|ペンシルベニア]]亜種、学名:''P. concolor couguar''、英名:Eastern cougar)や、米国中部([[五大湖]]西岸から[[カンサス州]]まで)に分布していた北アメリカ中部亜種([[ウィスコンシン州|ウィスコンシン]]亜種、学名:''P. concolor schorgeri''、英名:Wisconsin cougar)はほぼ絶滅したと考えられている。また、米国南部([[ルイジアナ州]]から東側、[[フロリダ州]]まで)に分布していた[[フロリダパンサー|北アメリカ南部亜種]](フロリダ亜種、学名:''P. concolor coryi''、英名:Florida panther)が[[フロリダ半島]]の湿地帯の森林にわずかに残されており、厳重な保護下に置かれている。この結果、北アメリカで確実にピューマが分布している地域は、カナダ西部から米国西部、[[メキシコ]]にかけての西海岸寄りの一帯だけになっている。西部諸州でも狩猟によってピューマは激減し、さらに[[1980年代]]まで狩猟(ゲーム・ハンティング)の対象動物ではあり続けたため、西部のいくつかの亜種(カリフォルニア亜種、学名:''P. concolor californica'' など)も、一時分布が限局され、個体数の減少が深刻になったときもあったが、[[1990年代]]以降は個体数と分布がかなり回復傾向にある。なお北アメリカ東部で稀に目撃される個体は、ペットが野生化したものの可能性が高く、上記亜種とは関連しないと考えられている。
== 生態 ==
[[落葉樹林]]や[[熱帯雨林]]<ref name="fn3"/>、[[亜高山帯針葉樹林]]、[[草原]]、藪地、[[湿原]]など様々な環境に生息する<ref name="fn1"/>。[[夜行性]]だが<ref name="fn3"/>、人間の影響がない地域では昼間に活動することもある<ref name="fn1"/>。春季や冬季は5.6-15.6平方キロメートル、夏季から秋季には10.3-17.1平方キロメートルの行動圏内で生活した例がある<ref name="fn1"/>。オス同士の行動圏は重複しないが、雌雄やメス同士の行動圏は重複することもある<ref name="fn1"/>。茂みや岩の隙間、洞窟などで休む<ref name="fn1"/>。地上5.5メートルの高さまで跳躍することができる<ref name="fn1"/>。


中米では、[[ニカラグア]]から[[パナマ]]にかけて分布している中央アメリカ亜種([[コスタリカ]]亜種、学名:''P. concolor costaricensis''、英名:Costa Rican puma)が絶滅の恐れのある種に指定されている。保護区内での個体数は比較的安定しているものの、増加の傾向は見られていない。一方、南米では、殆どの地域にピューマが生息しており、21世紀に入り、絶滅の恐れがある地域および亜種はない。種の学名と同じ亜種名 ''concolor'' を持つ原名亜種は、[[ブラジル]]亜種(学名:''P. concolor concolor''、英名:Brazilian puma)で、[[ベネズエラ]]からブラジル北部に分布する。
食性は動物食で、中型から大型の哺乳類([[シカ科|シカ]]、[[ペッカリー科|ペッカリー]])、[[爬虫類]]、[[昆虫]]などを食べる<ref name="fn3"/>。


ピューマは、[[ベルクマンの法則]]にしたがう種として知られている。カナダ西部の[[ブリティッシュコロンビア州]]に生息する北アメリカ北西部亜種(学名:''P. concolor missoulensis'')や、南アメリカ最南端に生息するパタゴニア亜種(学名:''P. concolor patagonica'')などの体格は、赤道地方の亜種の倍近い大きさがある。ベルクマンの法則の通常の解釈では、その理由は体の容積と表面積との関係で、寒い地域では体からの熱を奪われるのを防ぐため、体の容積に対して表面積が小さくなるように体が大型化するというものだが、ピューマの場合には、その原因は餌の違いではないかという指摘もある。なお、ピューマのうち、北アメリカ東部亜種・北アメリカ南部(フロリダ)亜種・中央アメリカ(コスタリカ)亜種の3亜種は、[[絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約|ワシントン条約]]で国際間の取引が禁止されている。
繁殖形態は胎生。妊娠期間は90-96日<ref name="fn1"/>。1回に1-6頭の幼獣を産む<ref name="fn1"/><ref name="fn3"/>。授乳期間は3か月<ref name="fn1"/>。生後2-3年で性成熟する<ref name="fn3"/>。


== ピューマが見られる施設 ==<!--動物園非限定-->
== 人間との関係 ==
;日本
日本では[[1955年]]に[[栗林公園動物園]]が初めて飼育下繁殖に成功した<ref name="fn3"/>。
* [[岩手サファリパーク]]
;''P. concolor coryi''、''P. concolor costaricensis''、''P. concolor couguar''
* [[盛岡市動物公園]]
:ワシントン条約附属書I<ref group="a" name="cites"/>
* [[日立市かみね動物園]]
* [[いしかわ動物園]]
* [[大内山動物園]]
* [[日本平動物園]]
* [[福山市立動物園]]
* [[東山動植物園|東山動物園]]
* [[天王寺動物園]]
* [[愛媛県立とべ動物園]]
* [[福岡市動植物園]]
* [[平川動物公園]]


== 画像 ==
== 画像 ==
<gallery>
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Puma face.jpg|ピューマの顔
画像:Puma face.jpg|ピューマの顔
Cougar closeup.jpg|ピューマの面構え
画像:Cougar closeup.jpg|ピューマの面構え
Cougar Nevada.jpg|メスのピューマ。生体は人間と同じくらいの大きさになる。
画像:Cougar Nevada.jpg|メスのピューマ。生体は人間と同じくらいの大きさになる。
Mountain Lion441.jpg|食事風景。ピューマは、[[シカ|鹿]]などの[[哺乳類]]を待ち伏せする狩りを行う。
画像:Mountain Lion441.jpg|食事風景。ピューマは、[[シカ|鹿]]などの[[哺乳類]]を待ち伏せする狩りを行う。
Mountain lion kittens.jpg|ピューマの幼体
画像:Mountain lion kittens.jpg|ピューマの幼体
MountainLion.jpg|[[アリゾナ州|アリゾナ]]ソノラ砂漠博物館にて撮影
画像:MountainLion.jpg|[[アリゾナ州|アリゾナ]]ソノラ砂漠博物館にて撮影
06g.jpg|[[アルゼンチン]]の動物保護区で撮影
画像:06g.jpg|[[アルゼンチン]]の動物保護区で撮影
Puma Pfote.png|ピューマの足跡
画像:Puma Pfote.png|ピューマの足跡
Cougar track.jpg|ピューマの前足の足跡。約10cmほどの大きさ。
画像:Cougar track.jpg|ピューマの前足の足跡。約10cmほどの大きさ。
Pumapard-1904.jpg|[[1904年]]に撮影 本種とジャガーの種間雑種
画像:Pumapard-1904.jpg|[[1904年]]に撮影
Cougar snow.jpg|雪山のピューマ
画像:Cougar snow.jpg|雪山のピューマ
MountainLionAttackProtocol.jpg|ピューマがいることを示す警告標識
画像:MountainLionAttackProtocol.jpg|ピューマがいることを示す警告標識
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== 参考文献 ==
== 脚注 ==
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== 脚注 ==
{{reflist|group="脚注"}}


== 出典 ==
== 出典 ==
{{wikispecies|Puma concolor}}
{{Commons|Category:Puma concolor}}
{{Wiktionary|en:puma}}
{{Wiktionary|en:puma}}
{{Wiktionary|en:cougar}}
{{Wiktionary|en:cougar}}
124行目: 98行目:
* Shivaraju A, and Dewey T.(2003): [http://animaldiversity.ummz.umich.edu/site/accounts/information/Puma_concolor.html Animal diversity web - Puma concolor](The Universiry of Michigan Meuseum) - ピューマ全般の情報(英語)
* Shivaraju A, and Dewey T.(2003): [http://animaldiversity.ummz.umich.edu/site/accounts/information/Puma_concolor.html Animal diversity web - Puma concolor](The Universiry of Michigan Meuseum) - ピューマ全般の情報(英語)
* [http://www.panther.state.fl.us/index.html Florida Panther Net] - 絶滅が危惧されているフロリダ亜種(フロリダ・パンサー)保護を中心としたピューマ全般の情報(英語)
* [http://www.panther.state.fl.us/index.html Florida Panther Net] - 絶滅が危惧されているフロリダ亜種(フロリダ・パンサー)保護を中心としたピューマ全般の情報(英語)
* {{リンク切れ|date=2012年7月}}Mortensen, C and Macaulay, T: [http://www.mortay.com/Cougar/Lion.shtml The Mountain Lion on the Web] - ピューマの特徴、生態、特にカリフォルニアなどピューマの生息する地域で生活する注意点など(英語)
* Mortensen, C and Macaulay, T: [http://www.mortay.com/Cougar/Lion.shtml The Mountain Lion on the Web] - ピューマの特徴、生態、特にカリフォルニアなどピューマの生息する地域で生活する注意点など(英語)
* {{リンク切れ|date=2012年7月}}Meiri, S. et al.(2004):[http://www.blackwell-synergy.com/links/doi/10.1111/j.1095-8312.2004.00310.x/enhancedabs/ Carnivores, biases and Bergmann's rule.] Biological Journal of the Linnean Society 81(4), 579. - ネコ目の動物では、ベルクマンの法則に従う種と従わない種がある(英語)
* Meiri, S. et al.(2004):[http://www.blackwell-synergy.com/links/doi/10.1111/j.1095-8312.2004.00310.x/enhancedabs/ Carnivores, biases and Bergmann's rule.] Biological Journal of the Linnean Society 81(4), 579. - ネコ目の動物では、ベルクマンの法則に従う種と従わない種がある(英語)
*{{出典無効|date=2012年7月}}[http://big_game.at.infoseek.co.jp/ 巨大動物図鑑]-ピューマについての説明がある他、ピューマが他の肉食獣と戦った情報もある。
*[http://big_game.at.infoseek.co.jp/ 巨大動物図鑑]-ピューマについての説明がある他、ピューマが他の肉食獣と戦った情報もある。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Commons|Puma concolor}}
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* [[ピューマ属]]

* [[フロリダパンサー]] :ピューマの代表的亜種の一つ。
* [[フロリダパンサー]] :ピューマの代表的亜種の一つ。
* [[ジャガランディ]] :ピューマに最も近縁の種であり、[[ピューマ属]]の1[[種 (分類学)|種]]。
* [[ジャガランディ]] :ピューマに最も近縁の種であり、[[ピューマ属]]の1[[種 (分類学)|種]]。
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* [[プーマ]] :スポーツ用品メーカー。
* [[プーマ]] :スポーツ用品メーカー。


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2012年7月24日 (火) 09:00時点における版

ピューマ
生息年代: 中期更新世–0
ファイル:Mountain lion.jpg
ピューマ Puma concolor
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
地質時代
新生代第四紀更新世中期イオニアンen)- 完新世サブアトランティック*
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
上目 : ローラシア獣上目 Laurasiatheria
: ネコ目(食肉目) Carnivora
亜目 : ネコ亜目 Feliformia
: ネコ科 Felidae
亜科 : ネコ亜科 Felinae
: ピューマ属 Puma
: ピューマ P. concolor
学名
Puma concolor
(Linnaeus1771)
シノニム

Felis concolor

和名
ピューマ
英名
Cougar
ピューマの生息分布図。元々は北米の東部と中部にも分布していたが、それらの地域では人間によって駆除された。

ピューマ学名Puma concolor英語名:Cougar)は、南アメリカ大陸のほぼ全域と北アメリカ大陸の広域に生息する、ネコ目(食肉目)- ネコ科の大型肉食性哺乳類の一種(1)。ネコ亜科- ピューマ属2種中の1種。

新生代第四紀更新世中期イオニアンen)に出現したと考えらる。北は北米大陸のロッキー山系最北端から南は南米大陸南端のパタゴニア平原までを平地から標高3,900mの高地まで、湿地の森林地帯から砂漠地帯までと非常に広い範囲の多様な環境に適応し生息している。今日の北アメリカでは、場所によって絶滅あるいは絶滅の危機に瀕しており、保護活動も行われている。

呼称

分類学上、本種をピューマ属とせず、ネコ属の下位に置いて「ピューマ亜属」とする学説もあり、その場合の学名はシノニムとしての Felis concolor である。

属名 Puma や英語での通俗的異名[1] puma (プーマ)の語源を辿ると、スペイン語名を経ているが、そもそもの由来は南米ペルーエクアドルに暮らす先住民族ケチュアの言語でのその名 puma に源流がある。

種小名 concolorconcolor、コンコロル)はラテン語で「同じ色の」「1色の」の意。英語での呼称はほかに、標準的英語名である cougar (クーガー。ポルトガル語経由で、トゥピ語en]名かグアラニー語名起源とされる)を始めとして、mountain lion (マウンテン・ライオン、「山ライオン」)や American lion (「アメリカライオン」)がある。また、北アメリカでは単に lionpanthercatamount (カタマウント)などと呼ばれる場合もある。もちろん、lion、panther、catamount は一般にはそれぞれライオンヒョウ、ネコ科の野生動物(山の猫)を指す英語名である。

生物的特徴

形質

頭蓋骨の写真
ピューマの足の裏

ネコ科の中では、ヒョウライオンなどのヒョウ亜科ではなく、イエネコを含むヤマネコと同じネコ亜科に属し、ネコ亜科では最大級の大きさである。オスは体長(頭胴長)約1- 1.8m、体重約65- 100 kgに達し、メスは一回り小さい。成獣の体は黄褐色の毛で覆われ、無紋、耳の縁と長い尾の先だけが黒い。幼獣は体中に黒~黒褐色のヒョウのような斑紋があり、尾には黒い輪があるが、これらは成長とともに消えていく。敏捷で瞬発力に優れ、高さ4 m、幅12 mほどの跳躍した記録が残されている。なお嗅覚が鋭い。また、ネコ科の大型肉食獣の中では特に眼球が大きく、視力が高い。寿命は野生のもので12年ほど、飼育下では25年程度。

基本的に単独行動であり、オスでは平均の広さ250 km2(半径 9 km の円)程度の縄張りを持つとされる。比べ、メスの縄張りは狭く面積はその半分から3分の1程度となる。ただし、縄張りの広さは環境に左右され、餌が豊富で条件がよい地域ではオスの縄張りが1頭当り25 km2(半径3 kmの円)程度の地域もあるという。主にネズミリスウサギアライグマナマケモノなどの小型哺乳類や、鳥類爬虫類魚類バッタなどの昆虫を食べ、シカなどの大型哺乳類やヤマアラシを捕食する場合もある。狩りの方法は、地面に伏せて獲物に忍び寄り、後ろや物陰から瞬発力を利用して一気に飛びかかるというもの。獲物の行動を止めるため、顎や喉笛に食いついたり、獲物を転倒させて、腹部に食いついたりもする。捕食された動物の中には、飛びつかれた際の衝撃による骨折が死因のものも見つかっている。

ピューマは広い縄張り且つ単独行動の種であるため、生息地域に人間が住んでいる場合でも見かけることは少ない。これまでにおいて人間への直接被害は多くないが、人間の子供、屋外で飼育しているペット家畜などは襲われないよう注意されている。

下位分類と分布

フロリダパンサー
ピューマのフロリダ亜種。米国、フロリダパンサー国立野生動物保護区にて撮影。

ピューマは非常に広い範囲に生息しており、地域により形態的特徴が異なっている。北中米・南米併せて20- 30種類程度の亜種に分類される場合が多い。亜種の分類には非常に異同が多い。

北米では、1900年代に入り、米国の多くの州でピューマが害獣指定され、狩猟による駆除が行われたことから、ほとんどの地域で個体数が激減した。特に、東部と中部ではピューマはほぼいなくなった。1970年代までにはこの指定は解除されたが、それまでにカナダから米国東部(ニューイングランド地方からテネシー州まで)に広く分布していた北アメリカ東部亜種(ペンシルベニア亜種、学名:P. concolor couguar、英名:Eastern cougar)や、米国中部(五大湖西岸からカンサス州まで)に分布していた北アメリカ中部亜種(ウィスコンシン亜種、学名:P. concolor schorgeri、英名:Wisconsin cougar)はほぼ絶滅したと考えられている。また、米国南部(ルイジアナ州から東側、フロリダ州まで)に分布していた北アメリカ南部亜種(フロリダ亜種、学名:P. concolor coryi、英名:Florida panther)がフロリダ半島の湿地帯の森林にわずかに残されており、厳重な保護下に置かれている。この結果、北アメリカで確実にピューマが分布している地域は、カナダ西部から米国西部、メキシコにかけての西海岸寄りの一帯だけになっている。西部諸州でも狩猟によってピューマは激減し、さらに1980年代まで狩猟(ゲーム・ハンティング)の対象動物ではあり続けたため、西部のいくつかの亜種(カリフォルニア亜種、学名:P. concolor californica など)も、一時分布が限局され、個体数の減少が深刻になったときもあったが、1990年代以降は個体数と分布がかなり回復傾向にある。なお北アメリカ東部で稀に目撃される個体は、ペットが野生化したものの可能性が高く、上記亜種とは関連しないと考えられている。

中米では、ニカラグアからパナマにかけて分布している中央アメリカ亜種(コスタリカ亜種、学名:P. concolor costaricensis、英名:Costa Rican puma)が絶滅の恐れのある種に指定されている。保護区内での個体数は比較的安定しているものの、増加の傾向は見られていない。一方、南米では、殆どの地域にピューマが生息しており、21世紀に入り、絶滅の恐れがある地域および亜種はない。種の学名と同じ亜種名 concolor を持つ原名亜種は、ブラジル亜種(学名:P. concolor concolor、英名:Brazilian puma)で、ベネズエラからブラジル北部に分布する。

ピューマは、ベルクマンの法則にしたがう種として知られている。カナダ西部のブリティッシュコロンビア州に生息する北アメリカ北西部亜種(学名:P. concolor missoulensis)や、南アメリカ最南端に生息するパタゴニア亜種(学名:P. concolor patagonica)などの体格は、赤道地方の亜種の倍近い大きさがある。ベルクマンの法則の通常の解釈では、その理由は体の容積と表面積との関係で、寒い地域では体からの熱を奪われるのを防ぐため、体の容積に対して表面積が小さくなるように体が大型化するというものだが、ピューマの場合には、その原因は餌の違いではないかという指摘もある。なお、ピューマのうち、北アメリカ東部亜種・北アメリカ南部(フロリダ)亜種・中央アメリカ(コスタリカ)亜種の3亜種は、ワシントン条約で国際間の取引が禁止されている。

ピューマが見られる施設

日本

画像

脚注

  1. ^ 分類学上の「異名(シノニム)」と区別すること。

出典

  • Shivaraju A, and Dewey T.(2003): Animal diversity web - Puma concolor(The Universiry of Michigan Meuseum) - ピューマ全般の情報(英語)
  • Florida Panther Net - 絶滅が危惧されているフロリダ亜種(フロリダ・パンサー)保護を中心としたピューマ全般の情報(英語)
  • Mortensen, C and Macaulay, T: The Mountain Lion on the Web - ピューマの特徴、生態、特にカリフォルニアなどピューマの生息する地域で生活する注意点など(英語)
  • Meiri, S. et al.(2004):Carnivores, biases and Bergmann's rule. Biological Journal of the Linnean Society 81(4), 579. - ネコ目の動物では、ベルクマンの法則に従う種と従わない種がある(英語)
  • 巨大動物図鑑-ピューマについての説明がある他、ピューマが他の肉食獣と戦った情報もある。

関連項目

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