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'''ケイトー研究所'''(ケイトーけんきゅうじょ、[[英語|英]]: Cato Institute)は、[[リバタリアニズム|リバタリアン系]]の[[シンクタンク]]。本部は[[ワシントンD.C.]]。 |
'''ケイトー研究所'''(ケイトーけんきゅうじょ、[[英語|英]]: Cato Institute)は、[[リバタリアニズム|リバタリアン系]]の[[シンクタンク]]。本部は[[ワシントンD.C.]]。 |
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リバタリアニズムの立場から、「公共政策と政府の役割に関して公に疑問を呈する」かたちで[[公共政策]]に「伝統的なアメリカの原理としての[[小さな政府]]、個人の自由、[[市場経済]]、[[平和]]などの拡大のための議論を深める」使命を掲げている。 |
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研究所は[[1977年]][[カリフォルニア州]][[サンフランシスコ]]で[[エドワード・クレーン]]、[[マレー・ロスバード]]、[[チャールズ・コーク]]らにより設立された。研究所の名前は、18世紀の2人の英国人による[[ジョン・ロック]]の思想を広めた随筆『[[マルクス・ポルキウス・カト・ウティケンシス|ケイトー]]の手紙』に因み、ロスバードによって命名された。 |
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その後、ロスバードとクレーン、コークとの意見の相違が目立つようになり、[[1981年]]にロスバードは研究所を離れた。同じ年に本部をワシントンへ移し、キャピトル・ヒルに並ぶシンクタンクの最初のものとなった。そして[[1993年]]、現在地のマサチューセッツ通りに移転した。 |
その後、ロスバードとクレーン、コークとの意見の相違が目立つようになり、[[1981年]]にロスバードは研究所を離れた。同じ年に本部をワシントンへ移し、キャピトル・ヒルに並ぶシンクタンクの最初のものとなった。そして[[1993年]]、現在地のマサチューセッツ通りに移転した。 |
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2002年12月ケイトー研究所のウェブサイトはウェブマーケティング協会の「最も参考になるウェブサイト」に選ばれ、また[[アレクサ・インターネット]]の調べでは9月までの「過去3ヶ月間で最も人気のあったシンクタンクのサイト」に位置付けられた |
2002年12月ケイトー研究所のウェブサイトはウェブマーケティング協会の「最も参考になるウェブサイト」に選ばれ、また[[アレクサ・インターネット]]の調べでは9月までの「過去3ヶ月間で最も人気のあったシンクタンクのサイト」に位置付けられた<ref>{{cite news|date=2002-11-26|author=Richard Morin & Claudia Deane|url=http://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn/A39246-2002Nov25?language=printer|title=The Hot New Americans Get Hotter|newspaper=ワシントン・ポスト|archiveurl=https://archive.today/20120915103601/http://www.washingtonpost.com/ac2/wp-dyn/A39246-2002Nov25?language=printer|archivedate=2012-09-15}}{{リンク切れ|date=2024-09}}</ref>。 |
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実際には[[フェデックス]]創業者の[[フレデリック・W・スミス]]、フォックスCEOの[[ルパート・マードック]]、[[アルトリア]]、[[ジョン・M・オリン財団]]やチャールズ・コークなど共和党とケイトー研究所の双方に巨額の寄付をする者も多い。またケイトー研究所も他のシンクタンクの例に漏れず、ワシントンに集まる共和党関連の作家やロビイストなどの人材を抱えている。 |
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これらに拘らず、共和党とケイトー研究所の間には立場の違いがある。共和党員でケイトー研究所の[[レッセフェール|自由放任]]経済を支持するものは少なく、その証拠としてケイトー研究所も強く支持していた[[2005年]]の[[ジョージ・ウォーカー・ブッシュ|ジョージ・W・ブッシュ]]の[[社会保障]]の更なる民営化案が共和党多数の議会で審議拒否されたことを挙げる場合もある。経済政策以外の面でも政府の介入を嫌う性格から、 |
これらに拘らず、共和党とケイトー研究所の間には立場の違いがある。共和党員でケイトー研究所の[[レッセフェール|自由放任]]経済を支持するものは少なく、その証拠としてケイトー研究所も強く支持していた[[2005年]]の[[ジョージ・ウォーカー・ブッシュ|ジョージ・W・ブッシュ]]の[[社会保障]]の更なる民営化案が共和党多数の議会で審議拒否されたことを挙げる場合もある。経済政策以外の面でも政府の介入を嫌う性格から、ブッシュ政権の強権発動に対しては批判的であった<ref>{{cite web|date=2006-05-01|author=Gene Healy & Tim Lynch|url=https://www.cato.org/white-paper/power-surge-constitutional-record-george-w-bush|title=Power Surge: The Constitutional Record of George W. Bush|publisher=ケイトー研究所|accessdate=2024-09-17}}</ref>。 |
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ケイトー研究所はその社会保障の民営化計画を1995年に策定し、2002年には「民営化」という用語をきらった共和党員へのレトリックとして「社会保障選択」計画へと改名した |
ケイトー研究所はその社会保障の民営化計画を1995年に策定し、2002年には「民営化」という用語をきらった共和党員へのレトリックとして「社会保障選択」計画へと改名した<ref>{{cite news|date=2005-01-23|first=Mike|last=Allen|url=https://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A29418-2005Jan22.html|title=Semantics Shape Social Security Debate|newspaper=[[ワシントン・ポスト]]|accessdate=2024-09-17}}</ref>。ケイトーの案は社会保障を被用者にその負担分の半分 (6.2%) に投資する権利を与え、その分将来社会保障を受ける権利差引くというものが含まれていた。この案は個人による投資がリスクによる相殺分以上に利益をもたらすという前提であり、議論となっている[[エクイティ・プレミアム・パズル]]論と同じ前提からのものである。 |
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外交・治安政策については、[[湾岸戦争]]・[[イラク戦争]]などに代表されるアメリカ政府の対外介入路線への批判、同盟政策における米軍の海外展開(前方展開)戦略や、同盟国への過度のコミットメントへの批判的提言という共通性を有している。日米の同盟関係についても、在日米軍基地の撤廃や日米安保の漸進的解消によるアメリカの関与の極小化を主張しており、その代替手段として、[[日本の核武装論|核武装]]も含む日本の自主防衛推進を主張している<ref>「米国の東アジア安全保障政策に関するケイトー研究所の提言―今世紀末までに日米安保条約の解消を」『世界週報』1995年3月28日号</ref>。国内の治安政策でも同様に米国[[愛国法|愛国者法]]への反対や、同性愛行為を違法と定めたテキサス州刑法などを違憲とした2003年の連邦最高裁による[[ローレンス対テキサス州事件]]の決定を支持したことで知られる。 |
外交・治安政策については、[[湾岸戦争]]・[[イラク戦争]]などに代表されるアメリカ政府の対外介入路線への批判、同盟政策における米軍の海外展開(前方展開)戦略や、同盟国への過度のコミットメントへの批判的提言という共通性を有している。日米の同盟関係についても、在日米軍基地の撤廃や日米安保の漸進的解消によるアメリカの関与の極小化を主張しており、その代替手段として、[[日本の核武装論|核武装]]も含む日本の自主防衛推進を主張している<ref>「米国の東アジア安全保障政策に関するケイトー研究所の提言―今世紀末までに日米安保条約の解消を」『世界週報』1995年3月28日号</ref>。国内の治安政策でも同様に米国[[愛国法|愛国者法]]への反対や、同性愛行為を違法と定めたテキサス州刑法などを違憲とした2003年の連邦最高裁による[[ローレンス対テキサス州事件]]の決定を支持したことで知られる。 |
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ケイトー研究所はまた米国の幾つかの州で行われた1998年のタバコ産業規制を強く批判し<ref>[http://www.cato.org/pubs/pas/pa-371es.html Constitutional and Antitrust Violations of the Multistate Tobacco Settlement]{{リンク切れ|date=2024-09}}</ref>、労働力の確保や警察力の削減の視点から移民規制の緩和を主張し<ref>{{cite web|date=2004-12-03|first=Daniel|last=Griswold|url=https://www.cato.org/publications/commentary/immigration-beyond-barbed-wire|title=Immigration: Beyond the Barbed Wire|publisher=ケイトー研究所|accessdate=2024-09-17}}</ref>、[[財政赤字]]の際の企業に対する増税に反対して米国憲法に「均衡予算拒否権条項」を設けるように主張している。 |
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ケイトー研究所はまた[[地球温暖化]]に対しても科学的な主流派とは異なる「温暖化懐疑派」の立場から報告書を発表し、2003年12月以降、いずれも温暖化懐疑派である[[パトリック・マイケルズ]]、[[ロバート・ボーリング]]、[[ジョン・クリスティ]]らを雇入れ、 |
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{{quotation|誰にも短期間で地球温暖化を食い止める方法は分からない。国連の[[気候変動枠組条約]]の[[京都議定書]]が50年間完全に守られたとしても温暖化に対する顕著な効果は上がらないだろう。|"Chapter 47 of the Cato Handbook for Congress, 107 Congress"}} |
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としている。温暖化と[[異常気象]]を関連付けた2003年5月のワールドウォッチレポートに対してもジェリー・テイラーは |
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ケイトー研究所は定期刊行物として''Cato Journal''、''Regulation''などを発行し、''Cato Supreme Court Review''や''Cato Policy Report''などと題して政策研究や書籍の販売を行っている。 |
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*''Social Security: The Inherent Contradiction'' |
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2024年9月17日 (火) 04:18時点における最新版
標語 |
「個人的自由、自由市場、平和」 "Individual Liberty, Free Markets, and Peace" |
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設立 | 1974年 |
設立者 | エドワード・クレイン、チャールズ・コーク、マレー・ロスバード |
ウェブサイト |
www |
ケイトー研究所(ケイトーけんきゅうじょ、英: Cato Institute)は、リバタリアン系のシンクタンク。本部はワシントンD.C.。
リバタリアニズムの立場から、「公共政策と政府の役割に関して公に疑問を呈する」かたちで公共政策に「伝統的なアメリカの原理としての小さな政府、個人の自由、市場経済、平和などの拡大のための議論を深める」使命を掲げている。
設立
[編集]研究所は1977年カリフォルニア州サンフランシスコでエドワード・クレーン、マレー・ロスバード、チャールズ・コークらにより設立された。研究所の名前は、18世紀の2人の英国人によるジョン・ロックの思想を広めた随筆『ケイトーの手紙』に因み、ロスバードによって命名された。
その後、ロスバードとクレーン、コークとの意見の相違が目立つようになり、1981年にロスバードは研究所を離れた。同じ年に本部をワシントンへ移し、キャピトル・ヒルに並ぶシンクタンクの最初のものとなった。そして1993年、現在地のマサチューセッツ通りに移転した。
2002年12月ケイトー研究所のウェブサイトはウェブマーケティング協会の「最も参考になるウェブサイト」に選ばれ、またアレクサ・インターネットの調べでは9月までの「過去3ヶ月間で最も人気のあったシンクタンクのサイト」に位置付けられた[1]。
政策
[編集]新自由主義を標榜することから共和党に近いとされるが、公式には無党派であり、また同党の宗教右派とは対立している。個人の自由を最大限に尊重するとの観点から、最低賃金の廃止、麻薬取締りの停止、女性や少数民族に対する積極的差別是正措置の否定、在外米軍基地の閉鎖と他国の戦争への不介入などを掲げる。
実際にはフェデックス創業者のフレデリック・W・スミス、フォックスCEOのルパート・マードック、アルトリア、ジョン・M・オリン財団やチャールズ・コークなど共和党とケイトー研究所の双方に巨額の寄付をする者も多い。またケイトー研究所も他のシンクタンクの例に漏れず、ワシントンに集まる共和党関連の作家やロビイストなどの人材を抱えている。
これらに拘らず、共和党とケイトー研究所の間には立場の違いがある。共和党員でケイトー研究所の自由放任経済を支持するものは少なく、その証拠としてケイトー研究所も強く支持していた2005年のジョージ・W・ブッシュの社会保障の更なる民営化案が共和党多数の議会で審議拒否されたことを挙げる場合もある。経済政策以外の面でも政府の介入を嫌う性格から、ブッシュ政権の強権発動に対しては批判的であった[2]。
ケイトー研究所はその社会保障の民営化計画を1995年に策定し、2002年には「民営化」という用語をきらった共和党員へのレトリックとして「社会保障選択」計画へと改名した[3]。ケイトーの案は社会保障を被用者にその負担分の半分 (6.2%) に投資する権利を与え、その分将来社会保障を受ける権利差引くというものが含まれていた。この案は個人による投資がリスクによる相殺分以上に利益をもたらすという前提であり、議論となっているエクイティ・プレミアム・パズル論と同じ前提からのものである。
外交・治安政策については、湾岸戦争・イラク戦争などに代表されるアメリカ政府の対外介入路線への批判、同盟政策における米軍の海外展開(前方展開)戦略や、同盟国への過度のコミットメントへの批判的提言という共通性を有している。日米の同盟関係についても、在日米軍基地の撤廃や日米安保の漸進的解消によるアメリカの関与の極小化を主張しており、その代替手段として、核武装も含む日本の自主防衛推進を主張している[4]。国内の治安政策でも同様に米国愛国者法への反対や、同性愛行為を違法と定めたテキサス州刑法などを違憲とした2003年の連邦最高裁によるローレンス対テキサス州事件の決定を支持したことで知られる。
ケイトー研究所はまた米国の幾つかの州で行われた1998年のタバコ産業規制を強く批判し[5]、労働力の確保や警察力の削減の視点から移民規制の緩和を主張し[6]、財政赤字の際の企業に対する増税に反対して米国憲法に「均衡予算拒否権条項」を設けるように主張している。
地球温暖化に対しては懐疑的な立場から報告書を発表している[7]。2009年には、チェリー・ピッキングを用いて「過去10年間の地球温暖化は止まっている」と主張する政治広告を出し、気候学者から「不正確」と反論されている[8]。
出版物
[編集]ケイトー研究所は定期刊行物としてCato Journal、Regulationなどを発行し、Cato Supreme Court ReviewやCato Policy Reportなどと題して政策研究や書籍の販売を行っている。
- 書籍の例
- Social Security: The Inherent Contradiction
- In Defense of Global Capitalism
- Voucher Wars
- You Can't Say That!: The Growing Threat to Civil Liberties from Antidiscrimination Laws
- Peace and Freedom: A Foreign Policy for a Constitutional Republic
- Restoring the Lost Constitution
- Reclaiming the Mainstream: Individualist Feminism Reconsidered
また彼らは1977年から1984年まで Inquiry magazine を発行していた。
脚注
[編集]- ^ Richard Morin & Claudia Deane (2002年11月26日). “The Hot New Americans Get Hotter”. ワシントン・ポスト. オリジナルの2012年9月15日時点におけるアーカイブ。[リンク切れ]
- ^ Gene Healy & Tim Lynch (2006年5月1日). “Power Surge: The Constitutional Record of George W. Bush”. ケイトー研究所. 2024年9月17日閲覧。
- ^ Allen, Mike (2005年1月23日). “Semantics Shape Social Security Debate”. ワシントン・ポスト 2024年9月17日閲覧。
- ^ 「米国の東アジア安全保障政策に関するケイトー研究所の提言―今世紀末までに日米安保条約の解消を」『世界週報』1995年3月28日号
- ^ Constitutional and Antitrust Violations of the Multistate Tobacco Settlement[リンク切れ]
- ^ Griswold, Daniel (2004年12月3日). “Immigration: Beyond the Barbed Wire”. ケイトー研究所. 2024年9月17日閲覧。
- ^ “Cato Institute”. DeSmog. 2024年9月17日閲覧。
- ^ Farley, Robert (2009年4月1日). “Cato Institutes claim on global warming disputed by most experts”. ポリティファクト (ポインター研究所) 2024年9月17日閲覧。