『紫の一本』(むらさきのひともと)は戸田茂睡による江戸時代前期の仮名草子。浅草の隠者遺佚入道と四谷の下級武士陶々斎(陶々子)が気の赴くまま江戸各地を渡り歩く設定で、遺佚が和歌、陶々斎を漢詩を詠み、漫才的な問答を行い、時に騒動に巻き込まれる。江戸の地誌としての体裁を取っているが、近代以降は文学的な価値が評価されている。成立は奥書・後書に天和2・3年とあるが、作中に貞享年間の詠歌を載せる。