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- 古代ギリシア語の動詞は非常に複雑な形態論的特徴を見せている。これは、名詞・形容詞・代名詞・冠詞・数詞などの格変化と同様に、インド・ヨーロッパ祖語の形態論から受け継がれた特徴である。とりわけ、動詞のシステムはインド・ヨーロッパ祖語の多くの要素を残しており、中でも、ラテン語では消滅している中動態の存在は、古代ギリシア語の際立った特色(複雑さ・難解さまで含めて)となっている。 古代ギリシア語には多くの方言(en)があったが、この項目では、紀元前430年頃から紀元前330年頃までの期間にアテナイで話されていたアッティカ方言の形態論と統語論を中心に取り上げる。 古代ギリシア語の動詞には、4つの法(直説法、命令法、接続法、希求法)、3つの態(能動態、中動態、受動態)、3つの人称(1人称、2人称、3人称)、3つの数(単数、双数、複数)がある。
* 直説法には7つの時制がある。現在、未完了過去(en)、未来、アオリスト(単純過去)、現在完了、過去完了、未来完了(最後の2つは使用が稀)。
* 命令法と接続法には3つの時制のみがある。現在、アオリスト、現在完了。
* 希求法、不定詞、分詞には4つの時制(現在、アオリスト、現在完了、未来)と3つの態がある。 直説法以外では、時制の違いは動詞の行為が行われる「時」の違いではなく、「相(アスペクト)」の違いを表している。 動詞は人称に応じて語形変化し、どの人称かは人称語尾で示される。動詞の語形変化を「活用」(conjugation)と呼ぶ。例えば、動詞 λύω(lúō、「私は解放する」、1人称単数、"I free")の活用は、2人称単数:λύεις(lúeis、「君は解放する」、"you free")、3人称単数:λύει(lúei、「彼/彼女は解放する」、"he/she frees")のように続く。単数と複数でそれぞれ1人称・2人称・3人称の3つの人称、双数では2人称(「君たち2人」)と3人称(「彼ら2人」)があるが、双数の使用は稀である。 動詞の活用の型には、「ω動詞(ō動詞)」(または「語幹形成母音動詞」、thematic verb)と「μι 動詞(mi動詞)」(または「非語幹形成母音動詞」、athematic verb)の2種類がある。「ω動詞(ō動詞)」は語幹形成母音(thematic vowel)の/o/か/e/が入ることを特徴とし、「μι 動詞(mi動詞)」はそれが入らずに語根に直接、語尾が付く。活用語尾のパターンは「本時制」(primary tense)と「副時制」(secondary tense)に分かれ、前者は直説法の現在・未来・現在完了・未来完了、及び、接続法で用いられ、後者は直説法の未完了過去・アオリスト・過去完了、及び、希求法で用いられる。 直説法の過去時制を作るには、語頭(語幹)に「加音」(augment)(en)の母音ε-(e-)を付ける。例えば、λύω(lúō、「私は解放する」、"I free")は、未完了過去で ἔ-λυον(é-luon、「私は解放していた」、I was freeing")、アオリストで ἔ-λυσα(é-lusa、「私は解放した」、"I freed")となる。加音が現れるのは直説法のみで、その他の法、不定詞・分詞では用いない。完了時制を作るには、語頭の子音と母音/e/の結合形を語頭(語幹)に付ける。これを「畳音」(reduplication)(en)と呼ぶ。例えば、λέλυκα(léluka、「私は解放したことがある」、"I have freed")、γέγραφα(gégrapha、「私は書いたことがある」、"I have written")となる。畳音ができない動詞では加音となる。例えば、ηὕρηκα(hēúrēka、「私は見つけたことがある」、"I have found")となる。完了時制の畳音(と加音も)は全ての法、不定詞・分詞に現れる。 (ja)
- 古代ギリシア語の動詞は非常に複雑な形態論的特徴を見せている。これは、名詞・形容詞・代名詞・冠詞・数詞などの格変化と同様に、インド・ヨーロッパ祖語の形態論から受け継がれた特徴である。とりわけ、動詞のシステムはインド・ヨーロッパ祖語の多くの要素を残しており、中でも、ラテン語では消滅している中動態の存在は、古代ギリシア語の際立った特色(複雑さ・難解さまで含めて)となっている。 古代ギリシア語には多くの方言(en)があったが、この項目では、紀元前430年頃から紀元前330年頃までの期間にアテナイで話されていたアッティカ方言の形態論と統語論を中心に取り上げる。 古代ギリシア語の動詞には、4つの法(直説法、命令法、接続法、希求法)、3つの態(能動態、中動態、受動態)、3つの人称(1人称、2人称、3人称)、3つの数(単数、双数、複数)がある。
* 直説法には7つの時制がある。現在、未完了過去(en)、未来、アオリスト(単純過去)、現在完了、過去完了、未来完了(最後の2つは使用が稀)。
* 命令法と接続法には3つの時制のみがある。現在、アオリスト、現在完了。
* 希求法、不定詞、分詞には4つの時制(現在、アオリスト、現在完了、未来)と3つの態がある。 直説法以外では、時制の違いは動詞の行為が行われる「時」の違いではなく、「相(アスペクト)」の違いを表している。 動詞は人称に応じて語形変化し、どの人称かは人称語尾で示される。動詞の語形変化を「活用」(conjugation)と呼ぶ。例えば、動詞 λύω(lúō、「私は解放する」、1人称単数、"I free")の活用は、2人称単数:λύεις(lúeis、「君は解放する」、"you free")、3人称単数:λύει(lúei、「彼/彼女は解放する」、"he/she frees")のように続く。単数と複数でそれぞれ1人称・2人称・3人称の3つの人称、双数では2人称(「君たち2人」)と3人称(「彼ら2人」)があるが、双数の使用は稀である。 動詞の活用の型には、「ω動詞(ō動詞)」(または「語幹形成母音動詞」、thematic verb)と「μι 動詞(mi動詞)」(または「非語幹形成母音動詞」、athematic verb)の2種類がある。「ω動詞(ō動詞)」は語幹形成母音(thematic vowel)の/o/か/e/が入ることを特徴とし、「μι 動詞(mi動詞)」はそれが入らずに語根に直接、語尾が付く。活用語尾のパターンは「本時制」(primary tense)と「副時制」(secondary tense)に分かれ、前者は直説法の現在・未来・現在完了・未来完了、及び、接続法で用いられ、後者は直説法の未完了過去・アオリスト・過去完了、及び、希求法で用いられる。 直説法の過去時制を作るには、語頭(語幹)に「加音」(augment)(en)の母音ε-(e-)を付ける。例えば、λύω(lúō、「私は解放する」、"I free")は、未完了過去で ἔ-λυον(é-luon、「私は解放していた」、I was freeing")、アオリストで ἔ-λυσα(é-lusa、「私は解放した」、"I freed")となる。加音が現れるのは直説法のみで、その他の法、不定詞・分詞では用いない。完了時制を作るには、語頭の子音と母音/e/の結合形を語頭(語幹)に付ける。これを「畳音」(reduplication)(en)と呼ぶ。例えば、λέλυκα(léluka、「私は解放したことがある」、"I have freed")、γέγραφα(gégrapha、「私は書いたことがある」、"I have written")となる。畳音ができない動詞では加音となる。例えば、ηὕρηκα(hēúrēka、「私は見つけたことがある」、"I have found")となる。完了時制の畳音(と加音も)は全ての法、不定詞・分詞に現れる。 (ja)
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- 古代ギリシア語の動詞は非常に複雑な形態論的特徴を見せている。これは、名詞・形容詞・代名詞・冠詞・数詞などの格変化と同様に、インド・ヨーロッパ祖語の形態論から受け継がれた特徴である。とりわけ、動詞のシステムはインド・ヨーロッパ祖語の多くの要素を残しており、中でも、ラテン語では消滅している中動態の存在は、古代ギリシア語の際立った特色(複雑さ・難解さまで含めて)となっている。 古代ギリシア語には多くの方言(en)があったが、この項目では、紀元前430年頃から紀元前330年頃までの期間にアテナイで話されていたアッティカ方言の形態論と統語論を中心に取り上げる。 古代ギリシア語の動詞には、4つの法(直説法、命令法、接続法、希求法)、3つの態(能動態、中動態、受動態)、3つの人称(1人称、2人称、3人称)、3つの数(単数、双数、複数)がある。
* 直説法には7つの時制がある。現在、未完了過去(en)、未来、アオリスト(単純過去)、現在完了、過去完了、未来完了(最後の2つは使用が稀)。
* 命令法と接続法には3つの時制のみがある。現在、アオリスト、現在完了。
* 希求法、不定詞、分詞には4つの時制(現在、アオリスト、現在完了、未来)と3つの態がある。 直説法以外では、時制の違いは動詞の行為が行われる「時」の違いではなく、「相(アスペクト)」の違いを表している。 (ja)
- 古代ギリシア語の動詞は非常に複雑な形態論的特徴を見せている。これは、名詞・形容詞・代名詞・冠詞・数詞などの格変化と同様に、インド・ヨーロッパ祖語の形態論から受け継がれた特徴である。とりわけ、動詞のシステムはインド・ヨーロッパ祖語の多くの要素を残しており、中でも、ラテン語では消滅している中動態の存在は、古代ギリシア語の際立った特色(複雑さ・難解さまで含めて)となっている。 古代ギリシア語には多くの方言(en)があったが、この項目では、紀元前430年頃から紀元前330年頃までの期間にアテナイで話されていたアッティカ方言の形態論と統語論を中心に取り上げる。 古代ギリシア語の動詞には、4つの法(直説法、命令法、接続法、希求法)、3つの態(能動態、中動態、受動態)、3つの人称(1人称、2人称、3人称)、3つの数(単数、双数、複数)がある。
* 直説法には7つの時制がある。現在、未完了過去(en)、未来、アオリスト(単純過去)、現在完了、過去完了、未来完了(最後の2つは使用が稀)。
* 命令法と接続法には3つの時制のみがある。現在、アオリスト、現在完了。
* 希求法、不定詞、分詞には4つの時制(現在、アオリスト、現在完了、未来)と3つの態がある。 直説法以外では、時制の違いは動詞の行為が行われる「時」の違いではなく、「相(アスペクト)」の違いを表している。 (ja)
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- 古代ギリシア語の動詞 (ja)
- 古代ギリシア語の動詞 (ja)
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