P2Pは音楽の売上にそんなにダメージを与えていないよ、という研究

はてブではあまり話題になっていないみたいなのでご紹介。
合法的な音楽売上に対するP2Pの影響に関する調査というのをFelix Oberholzer-GeeさんとKoleman Strumpfさんという方が行ったそうです。結果はthe Journal of Political Economyに掲載されています。

A new study in the Journal of Political Economy by Felix Oberholzer-Gee and Koleman Strumpf has found that illegal music downloads have had no noticeable effects on the sale of music, contrary to the claims of the recording industry

http://arstechnica.com/news.ars/post/20070212-8813.html

つまり、違法なダウンロードって売上にものすごく影響を与えるというわけではなくて、音楽業界が主張するほどではないという調査結果が出たということだそうです。

The study reports that 803 million CDs were sold in 2002, which was a decrease of about 80 million from the previous year. The RIAA has blamed the majority of the decrease on piracy, and has maintained that argument in recent years as music sales have faltered. Yet according to the study, the impact from file sharing could not have been more than 6 million albums total in 2002, leaving 74 million unsold CDs without an excuse for sitting on shelves.

2002年に8億300万枚*1のCDが売れたわけですけれど、 それは前年比で8000万枚減った枚数なのです。音楽業界は、売上減退や低迷が違法ダウンロードとか海賊版のせいだとここのところずっと主張していました。でも、今回発表された研究によれば、ファイル交換による影響は2002年全体で600万枚以上のアルバム数ではないでしょうということ。出荷はしたけど売れてない(つまりP2Pによるダメージではない)7400万枚のCDについては、売れていない理由はよくわからないみたいですね。



【追記】 ブクマやコメントありがとうございます。

music will often have both high downloads and high sales figures

よくダウンロードされる曲はよく売れてるよ、とか

The study also highlighted the growth in DVD sales during that same period as a possible explanation for why customers weren't opening their wallets: they were busy buying DVDs.

DVDも売れてるんだから、みんなCDを買わないでDVDを買ってるんじゃないの、とかいろいろな指摘がされているみたいです。この調査が正確か、はまだよくわかりませんが、この調査においては検証可能性ではなく記述可能性に価値があるのでしょう。要するに叩き台として面白いということです。



これからきっと音楽業界がスポンサーとなって、今回の調査結果に反証しようとする研究が行われるのではないかと思います。でもそれは、ただ漠然と予想を述べているよりもずっと良い状況でしょう。
同じような調査を日本でもすべきだと思います。winnyなどP2Pによる影響などももちろんそうですが、新古書店が新刊書の売上に与えている影響とか、漫画喫茶の影響とか。都市伝説とか推計ではなくて実際どれくらいなのかというのが知りたいところですし、それを論拠に話を進めなければなりません。

*1:あってるよね?いつもmillionとかどきどきしながら換算します……。