倦怠期の表現・描写

TOP > 人物表現 > 恋愛 > 倦怠期


カテゴリ検索 単語の意味
倦怠期の表現・描写
整頓せずにつめ込んできた憂鬱が扉の留め金の弱っている戸棚からなだれ落ちてくるのは、きまって夕方だ。夜が近づくにつれ下がってきた部屋の温度や、紙ばさみに目を落としている絃の、まだ会社での緊張が解けていない肩が、なぜか耐えられないほどに切ない。  鍋が煮えるまで、またはグリルで魚が焼けるまでの、何もすることがないこの空白の時間を、私はうまく過ごせない。おかえりなさいから夕食を食べるまでの、日常の隙間の四十分が人を絶望させる力を持っているなんて、絃に会うまでは知らなかった。台所から漂う魚の焼けるいい匂いが部屋に満ち、日が落ちて暗くなってきた外に対して蛍光灯の放つ光は嫌味なくらい隅々まで部屋を白く照らし、ソファの黒革は太ももの裏に冷たい。帰ってきてから絃がほとんどしゃべっていないことがどうしても気になる。思わず口を開いてしまう。
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ気まずい倦怠期
(部屋を出ていく決心がつかない)やっと自分専用の水飲み場を見つけて、飲んだ水が指の先の細胞まで行き渡ってもまだ、涙となって外に流れ出てもまだ、顎を上向けたまま蛇口の下を離れずにいた。飲みこぼした分が内股で座っている脚を濡らしても、周りが呆れて誰もいなくなっても、身体が冷たくなってもまだ動かない。まだまだ飲みたりないのに水は枯れてきて細くなり、一滴でも逃がさないように舌をつき出している。
綿矢 りさ「しょうがの味は熱い (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ倦怠期同棲・一緒に暮らす
(通いなれた女の部屋)この臭いと懶惰が俺の生活に融け込み、同色の色合いみたいに適応を遂げたのである。恰も、動物が己れの穴の温みと臭気とに懶く屈んで眼を閉じているようなものであった。或は、俺の落伍的な怠惰が、その温みを女とこの部屋に染したのかもしれなかった。
松本 清張 / 真贋の森「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録 amazon関連カテ倦怠期
女との間に醱酵した陰湿な温もり
松本 清張 / 真贋の森「松本清張ジャンル別作品集(3) 美術ミステリ (双葉文庫)」に収録 amazon関連カテ倦怠期
夫には刺のある沈黙を貫く
平野啓一郎「ある男」に収録 amazon関連カテ黙る・沈黙倦怠期
僕は前にも増して彼女の前でふざけるようになった。嫌な予感が入りこむ 隙間 を埋めたくて死に物狂いでふざけた。
又吉直樹「劇場(新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ胸騒ぎ・嫌な予感倦怠期
サトウとの生活は錆付いた沼のようにひっそりと淀んでいた。
小川洋子 / 冷めない紅茶「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon関連カテ倦怠期
(熱情が冷める)弾力を失ったゴム糸のように間抜けてゆるく、二人の間は段々と延びて行くように感じられた。
直哉, 志賀「暗夜行路 (新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ興ざめ・白ける倦怠期
あと 7 個の表現が登録されています
ログインして全部見る
カテゴリ検索 単語の意味
人物表現 大カテゴリ