つかえていた澱が吐き出されるかのように、鬱病から抜け出す
萩原 葉子 / 蕁麻の家 amazon関連カテ爽快・すっきり・清々しい気分
胸がすいたように思う
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雲がちらちらと浮かんでいるものの、空の大半は澄んだ青色で、これは今の僕の気持ちと同じくらいに快晴だ
......ことになるのだ。 前の座席の背もたれからトレイを引っ張り出し、その上にペットボトルを置く。チョコレート菓子の封を開け、一つ口に入れた。上野駅を出て、地上に戻る。雲がちらちらと浮かんでいるものの、空の大半は澄んだ青色で、これは今の僕の気持ちと同じくらいに快晴だ、と思った。ゴルフの打ちっ放し場が見える。その緑の、巨大な蚊帳のようなネットが右へ流れ、しばらくすると校舎がやってくる。コンクリートの直方体をいくつか繫げたよう......
一陣の風がすっと通り抜けた感じ
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一月の元旦の朝のようにあらたまった気分
室生 犀星 / 杏っ子 amazon関連カテ爽快・すっきり・清々しい気分
百年の溜飲が一度に下りたかのようにすっきりする
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一重の皮を剥がれて、そのあとの生々しい肉が空気の中に浮き出されたような清爽な感じ
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon関連カテ爽快・すっきり・清々しい気分
法華経書写の功を積んだ時のような、のびのびした気分
......り下へぶら下って来る景色もない。それから一晩寝てあくる日早く眼がさめると内供はまず、第一に、自分の鼻を撫でて見た。鼻は依然として短い。内供はそこで、幾年にもなく、法華経書写の功を積んだ時のような、のびのびした気分になった。 所が二三日たつ中に、内供は意外な事実を発見した。それは折から、用事があって、池の尾の寺を訪れた侍が、前よりも一層可笑しそうな顔をして、話も碌々せず......
芥川龍之介 / 鼻 青空文庫関連カテ爽快・すっきり・清々しい気分
快哉を呼んだ
......がりはせん。今度は「何だ馬鹿野郎、人の桶へ汚ない水をぴちゃぴちゃ跳ねかす奴があるか」と喝し去った。吾輩もこの小僧を少々心憎く思っていたから、この時心中にはちょっと快哉を呼んだが、学校教員たる主人の言動としては穏かならぬ事と思うた。元来主人はあまり堅過ぎていかん。石炭のたき殻見たようにかさかさしてしかもいやに硬い。むかしハンニバルがア......
夏目漱石 / 吾輩は猫である 青空文庫関連カテ爽快・すっきり・清々しい気分
さわやかな風に吹かれているような感じ
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苦い清涼剤でも飲んだように胸のつかえを透かしていた。
......なくこだわってしまっていつまでも晴れなかった。葉子は口びるだけに軽い笑いを浮かべながら、胆汁のみなぎったようなその顔を下目で快げにまじまじとながめやった。そして苦い清涼剤でも飲んだように胸のつかえを透かしていた。 やがて事務長が座を立つと、葉子は、眉をひそめて快からぬ顔をした木村を、しいてまたもとのように自分のそば近くすわらせた。 「いやなやつっちゃないの。あんな話でもし......
有島武郎 / 或る女(前編) 青空文庫関連カテ爽快・すっきり・清々しい気分
昨夜は熟睡したせいか、頭がすっきりして気分がよかった。
......定員制だ。お時が途中下車したら、そこから穴があくはずだよ。それを調べてみようじゃないか。誰かをやって当時の車掌を尋問しよう」2 翌日、三原紀一は東京駅に行った。昨夜は熟睡したせいか、頭がすっきりして気分がよかった。疲労が一晩でなおるのも、やはり若さのせいだった。 彼は十三番ホームにたたずんで、八重洲口の方向を眺めていた。さも人を待っているというふうに、一時間以上も突ったっ......
自分は自分の自由を享楽していることであろう。伸子には、夫をつれて来て、この悦びや鮮やかな自然の印象を分ちたい気持が起らなかった。彼女の気持は逆であった。彼女は、この山々を、この矮樹林を、自分だけで眺められるからこそ、嬉しいのであった。傍から誰にも妨げられず、心全面で眺め、味い、感覚する、この快さこそ、実に彼女に、久しく失っていた自由の蘇生を感じさせるものなのであった。
......し彼の山々は―― ――彼の山々は―― 伸子は、自分の亢奮に驚いた。自分はこのように野原や山々へのノスタルジアにかかっていたのだろうか? そして、また何と貪慾に、
自分は自分の自由を享楽していることであろう。伸子には、夫をつれて来て、この悦びや鮮やかな自然の印象を分ちたい気持が起らなかった。彼女の気持は逆であった。彼女は、この山々を、この矮樹林を、自分だけで眺められるからこそ、嬉しいのであった。傍から誰にも妨げられず、心全面で眺め、味い、感覚する、この快さこそ、実に彼女に、久しく失っていた自由の蘇生を感じさせるものなのであった。 家じゅうに鏡はたった一つあるきりであった。水銀に
罅の入った古い掛鏡が、流しの横の柱に懸っていた。田舎へ来てから、伸子は毎朝顔を洗う時、気をつけてその鏡を覗い......
一瞬ひらめいて消えた火のような痛快味にしか過ぎない
......の」 それから、口の中の少しの飯粒も苦いもののように、懐紙を取出して吐き出した。 私は、この娘がそういうものになって暴れるときの壮観をちょっと想像したが、それも一瞬ひらめいて消えた火のような痛快味にしか過ぎないことを想い、さしずめ、「まあそんなに思い詰めないでも、辛抱しているうちには、何とか道は拓けて来ますよ」と云わないではいられなかった。 昨夜から今朝にかけて雪にな......
岡本かの子 / 河明り 青空文庫関連カテ爽快・すっきり・清々しい気分
朝もやが緑の木々を濡らしていそうに思えて頭の中も洗われているようだ
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雷が鳴るとせいせいしていい気持ち
......る櫟林の小道に、自動車はピタリと止ってしまった。遠くの、眉程の山裾に、灯がついているきりで、ざんざ降りの雨にまじって、地鳴りのように雷鳴がして稲妻が光りだした。雷が鳴るとせいせいしていい気持ちだけれど、シボレーの古自動車なので、雨がガラス窓に叩かれるたび、霧のようなしぶきが車室にはいってくる。そのたそがれた櫟の小道を、自動車が一台通ったきりで、雨の怒......
気分がいいので道端の無数の鳥の糞も、散った桜の花びらに見える
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気が済むと云う事は一番金のかからない愉しみだ。
......私だ。本当に死にたいなんて考えないのだけれど、私はまるで、兎がひとねむりするみたいに、死にたいと云うことをこころやすく云ってみる。それで、何となく気が済むのだ。気が済むと云う事は一番金のかからない愉しみだ。 死ぬと云えば、すぐ哀しくなってきて、何となくやりきれなくなる。 何でも出来るような気がしてくる。勇気で頭が風船のようにふくらんで来る。 昼から万朝報に行く。 ......
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫関連カテ爽快・すっきり・清々しい気分
朝の空気と日光があまりに心地よくて、心の無意識の領域までが日を浴びて半透明に明るむよう
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昼間の何かを吐き出しているのだ。 枕 に顔をうずめて泣き叫ぶかのように。
......程だ。はじめ私はそういうとき、彼女が泣いているのかと思った。 でも違う。顔をあげるととかげはすっきりしたいい顔をしている。甘い、柔らかい目をしている。 きっと、昼間の何かを吐き出しているのだ。枕に顔をうずめて泣き叫ぶかのように。 でなければ、疲れた自分から意識を切り離そうとしているに違いない。 そう思っていた。 しかし、その夜のとかげは、突如私のそんな疑問に答えたのだ。「実は、私子供の......
吉本 ばなな / とかげ「とかげ (新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ爽快・すっきり・清々しい気分
新しい風みたいなものが体内をかけめぐり、きっと明日の朝にはきのうまでのことがすっかりきれいにとり去られているだろう。
......新しい自分が始まる。新しい空気を吸って、見たこともない一日が生まれる。子供の頃、例えばテストが終わった放課後や、部活の大会があった夜はいつもこういう感じがした。新しい風みたいなものが体内をかけめぐり、きっと明日の朝にはきのうまでのことがすっかりきれいにとり去られているだろう。そして自分はすっかりいちばんおおもとの、真珠みたいな輝きと共に目を開くのだろう。いつもお祈りのようにそう思ったあの頃と、同じくらい単純に素直に、そう信じることが......
目が覚めたようなすっきりした顔
......おっかなくて聞けなかった。 部屋に彼女を入れ、明かりをつけた。つっ立っている彼女に、「顔洗いなよ。」 とタオルを渡した。萃は洗面所で思いきり水を出して顔を洗い、目が覚めたようなすっきりした顔で出てきたので、何だか緊張した。「咲にもコピーあげるの?」 前髪も濡れていて、泳いだ後みたいだった。「うん、そのつもり。」「もう、よせばいいのにな。」 と、彼女......
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon関連カテ爽快・すっきり・清々しい気分
何もかも言ってしまったことで、胸の中の重苦しさが減ったような気がする
僕の頭が混乱してくるとよくシャツにアイロンをかける。昔からずっとそうなのだ。《…略…》アイロンのスイッチを切り、アイロン台と一緒に押入れの中にしまってしまうと、僕の頭はいくぶんすっきりとしたようだった。
......ィーのアルデンテみたいに……。 そんなことをぼんやりと考えていると小説の筋がわからなくなってきたので、僕は軽い体操をしてからシャツにアイロンをかけることにした。僕の頭が混乱してくるとよくシャツにアイロンをかける。昔からずっとそうなのだ。 僕がシャツにアイロンをかける工程はぜんぶで十二にわかれている。それは 襟にはじまって 左袖・カフで終る。その順番が狂うことはまったくない。僕はひとつひとつ番号......<中略>......はスチーム・アイロンの蒸気音とコットンが熱せられる独得の匂いを楽しみながら、三枚のシャツにアイロンをかけ、しわのないことを確認してからタンスにハンガーで吊した。アイロンのスイッチを切り、アイロン台と一緒に押入れの中にしまってしまうと、僕の頭はいくぶんすっきりとしたようだった。 水を飲みたくなって台所に行こうとしたところで、また電話のベルが鳴った。やれやれ、と僕は思った。そしてそのまま台所に行こうか居間に戻ろうか少し迷ってから、やはり......
頭の中の霧が晴れる
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そうしたら不思議なことに、胸がすっきりしていた。 それはなくなると、まるでなかったことのように思えた。どういうふうに圧迫されていたのか、もう思い出せなかった。
......り払うように、目を閉じてそうした。私にはその髪の作った軌跡が、まるでスローモーションのように鮮やかに見えた。鞭のようにしなやかな曲線を描いて何かを振り払った。 そうしたら不思議なことに、胸がすっきりしていた。 それはなくなると、まるでなかったことのように思えた。どういうふうに圧迫されていたのか、もう思い出せなかった。させ子が何をしたのか。わからなかったが、私はさせ子を見つめた。「どうした?」 竜一郎がたずねた。「ううん、ちょっと頭が重くてね。」 と彼女は笑った。「大したこと......
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ爽快・すっきり・清々しい気分
陣治が三つのグラスにビールを注ぐ。その手つきがどことなくこれ見よがしなのは、窮地を救うために果たした自分の役割に気をよくしているからだ。
......」「ううん、かけてない」「そらあかんわ。ピッチリかけとかな餅が白うなってしまうんや。すぐかけてきて。麻奈ちゃんも手伝どうたって」 姉弟が席を立って走っていくと、陣治が三つのグラスにビールを注ぐ。その手つきがどことなくこれ見よがしなのは、窮地を救うために果たした自分の役割に気をよくしているからだ。乾杯もせず、それぞれが黙って一口飲む。グラスを口から離して、カタンとテーブルに置く三人のタイミングが申し合わせたようにぴったり同調して、妙にきまり悪い思いをする......
わたしは一度も気持ち悪くなったことがなかった。自分の内臓が全部空洞になっていくように、爽やかだった。
......坐っている時、わたしはいろいろと余計なことを考えてしまう。ビニール手袋の上に広がる液体のことや、口の中を這い回る蟻のことなどを考えてしまう。なのに病室にいる時、わたしは一度も気持ち悪くなったことがなかった。自分の内臓が全部空洞になっていくように、爽やかだった。 弟が自分にとってこんなにも好ましい人間だということを、わたしは今まで知らなかった。ベッドの脇のソファーに坐っていると、弟への気持ちがむくむくと盛り上がっていく......
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon関連カテ爽快・すっきり・清々しい気分
昼食をとるために、いったん裁判所を出た。寒い冬の空でさえ、仰ぎ見たときにこれほど清々しいと感じるのは初めてだった。