ざわざわという音が、平らな煙みたいに目の高さを漂う
村上春樹 / めくらやなぎと眠る女 amazon関連カテ音(声)を聞く、聞こえる
聞くともなしに聞く
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音が耳の中に入り込んで苔のように張りつく
尾辻 克彦 / 父が消えた amazon関連カテ音(声)を聞く、聞こえる
音のツブテが耳に蝟集(いしゅう)する
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甘美な、生への誘惑のような音の波が、ホールの中をきらきらと光りながら走り抜ける
福永 武彦 / 草の花 amazon関連カテ音(声)を聞く、聞こえる
風が音をつれてくる
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全身に声がぎりぎりと銹(さ)びた錐(きり)のように刺し込んでくる
有吉 佐和子 / 三婆(水と宝石) amazon関連カテ音(声)を聞く、聞こえる
声がかすかな風のように胸に流れ込んでくる
光瀬 龍 / 百億の昼と千億の夜 amazon関連カテ音(声)を聞く、聞こえる
音が這うように伝わってくる
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陽照りで乾いた大地が雨に吸いこむように、声が胸にヒタヒタとしみこむ
石坂 洋次郎 / 丘は花ざかり amazon関連カテ音(声)を聞く、聞こえる
耳元に言葉の束を投げ込む
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勝恵の答えは、いつも水の流れのように淡々と鈴木の耳にひびいた
永井龍男 / 青電車「朝霧・青電車その他 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon関連カテ音(声)を聞く、聞こえる
言葉を水の流れのように聞く
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旦那らしきものの声は、水の壁に隔てられているかのように、ぼんやりとしか耳に入ってこない。
......齧って、お皿にべって吐いて、サンちゃんにあげたんじゃん。一回食べたやつをくれたの? そうだよ、俺が吐き出した果物、にこにこしながら、サンちゃん全部食べてたよ。 旦那らしきものの声は、水の壁に隔てられているかのように、ぼんやりとしか耳に入ってこない。だから俺、サンちゃんといるの楽なのかもしんない。この人なら、俺のうんこもにこにこ食べそうだなあって、あん時思ったんだよなあ。 その晩、旦那はゲームをやりだして以......
本谷 有希子 / 異類婚姻譚 amazon関連カテ音(声)を聞く、聞こえる
何もせずただじっと聞く
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大声が食堂の壁に反響して四方から耳を叩いた。
......の姿は臆病にさえ見えた。 衝立岩をやろうと言いだしたのは安西だった。三月前のことだ。うっかり承諾した。いま思うと本当にうっかりだった。「いた、いた」 聞き慣れた大声が食堂の壁に反響して四方から耳を叩いた。 安西がガニ股でドタドタやってきた。驚いたことに赤いTシャツ姿だ。「探したよオ、悠ちゃん、逃げちゃったかと思ったんさあ」「逃げる……?」 悠木が真顔を向けると、......
横山 秀夫「クライマーズ・ハイ (文春文庫)」に収録 amazon関連カテ音(声)を聞く、聞こえる
正面の青じろい時計はかっきり第二時を示し、風もなくなり汽車もうごかず、しずかなしずかな野原のなかにその振り子はカチッカチッと正しく時を刻んでいくのでした。 そしてまったくその振り子の音のたえまを遠くの遠くの野原のはてから、かすかなかすかな旋律が糸のように流れて来るのでした。
......見たまま、 「そうだろう」と答えました。 そのとき汽車はだんだんしずかになって、いくつかのシグナルとてんてつ器の灯を過ぎ、小さな停車場にとまりました。 その正面の青じろい時計はかっきり第二時を示し、風もなくなり汽車もうごかず、しずかなしずかな野原のなかにその振り子はカチッカチッと正しく時を刻んでいくのでした。 そしてまったくその振り子の音のたえまを遠くの遠くの野原のはてから、かすかなかすかな旋律が糸のように流れて来るのでした。 「新世界交響楽だわ」向こうの席の姉がひとりごとのようにこっちを見ながらそっと言いました。 全くもう車の中ではあの黒服の丈高い青年も誰もみんなやさしい夢を見......
ロックという弾丸が鼓膜を突き破りヒロトに刺さった。
......いの興奮ですよ。ウワーってはっきり見えたんだよ。『これだあ!!!』『ロックだ!! 俺は!』と思って。『はい生まれたぁ!』みたいな」 ヒロトがロックに出会った。 ロックという弾丸が鼓膜を突き破りヒロトに刺さった。「ヒロトの『十四才』って曲、ロックの原体験を歌ってると思うんだけど、正確に言えば、14才じゃなかったんだ?」「うん。歌は歌としてあるけど、それは歌であって実際に......
音が鼓膜に触れる
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乾からびた声が、霜に響くせゐか、凛々として凩のやうに、一語づつ五位の骨に、応へるやうな気さへする。
......うもない。 すると、外の広庭で、誰か大きな声を出してゐるのが、耳にはいつた。声がらでは、どうも、今日、途中まで迎へに出た、白髪の郎等が何か告れてゐるらしい。その乾からびた声が、霜に響くせゐか、凛々として凩のやうに、一語づつ五位の骨に、応へるやうな気さへする。 「この辺の下人、承はれ。殿の御意遊ばさるるには、明朝、卯時までに、切口三寸、長さ五尺の山の芋を、老若各、一筋づつ、持つて参る様にとある。忘れまいぞ、卯時までに......
内グラウンドにいる伊吹の声が、一瞬、耳たぶを引っ掻いた気がした。
......らりと思った。 階段の途中の窓から外を見る。佳代子ちゃんは運動部のグラウンドの使用状況まで把握していて、今日は内グラウンドがサッカー部、外グラウンドが野球部だ。内グラウンドにいる伊吹の声が、一瞬、耳たぶを引っ掻いた気がした。私は振り切るように階段を駆け上がり始めた。 浴衣を着付けながらお母さんが首をかしげた。「ちょっと子供っぽいかしら。やっぱり、新しいの買えばよかったわね」「いい。......
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon関連カテ音(声)を聞く、聞こえる
(叫んだ)その声は、白燃鉄を打つような響きを帯びて、鋭く次郎の耳を貫ぬいた。
......に汗馬を跳らせていたのである。 「次郎。」 近づくままに、彼はこう叫んだ。心の中に吹きすさぶ感情のあらしが、このことばを機会として、一時に外へあふれたのであろう。その声は、白燃鉄を打つような響きを帯びて、鋭く次郎の耳を貫ぬいた。 次郎は、きっと馬上の兄を見た。それは日ごろ見る兄ではない。いや、今しがた馬を飛ばせて、いっさんに走り去った兄とさえ、変わっている。険しくせまった眉に、かたく、......
声は、私の鼓膜をつんつんと突いてきた。
......っぱ有佐違うよなー倍率何倍だよって話、マジで。 からからと音を鳴らすトイレットペーパー。ミッキーと踊んだ、すげー。すげーと言いながらも、別の意味を含んでいそうな声は、私の鼓膜をつんつんと突いてきた。 てか、ジャズのクラス、知らない子いた。青いメッシュの。あれ誰? 私は思わず手を止めた。から、と、トイレットペーパーも黙る。 遥って子でしょ? あたしも気になっ......
朝井 リョウ / 破りたかったもののすべて「もういちど生まれる (幻冬舎文庫)」に収録 amazon関連カテ音(声)を聞く、聞こえる
梯子段を上って来る音がしている。
......とも笑いながら背中をむけあう。 「起きなさい。」 「私いくらでも眠りたいのよ……」 たい子さんは白い腕をニュッと出すと、カーテンをめくって、陽の光りを見上げた。――梯子段を上って来る音がしている。たい子さんは無意識に、手を引っこめると、 「寝たふりをしてましょう、うるさいから。」と云った。 私とたいさんは抱きあって寝たふりをしていた。やがて襖があくと、寝て......
林芙美子 / 新版 放浪記 青空文庫関連カテ音(声)を聞く、聞こえる
五人並んで頭を下げる。拍手と、それぞれのメンバーの名前を呼ぶ声が、頭のてっぺんから全身に入り込んでくる。
......レンタイン★パレード】を聴いていただきました! おかげさまでオリコンデイリーチャート四位をいただきました! 皆さんのおかげです、本当にありがとうございます!」 五人並んで頭を下げる。拍手と、それぞれのメンバーの名前を呼ぶ声が、頭のてっぺんから全身に入り込んでくる。「今日は、ちょっと皆さんとの〝席替え〟はできないんですけど、こうしてはじめての名古屋で、たくさんの方に集まっていただけて本当に嬉しく思っています!」 席替えした......
少しずつ彼の声が、(鼻と耳が交差する)秘密の洞窟に響きはじめる。暗闇を震わせるこだまが、彼の声と同調し、洞窟の隅々に行き渡る。
......も声は指の間からこぼれ落ちてゆき、そのたびに拾い直さなければならないが、焦りは禁物だ。小説の中には、私の一生を何度繰り返してもまだ余るほどの時間が流れている。 少しずつ彼の声が、秘密の洞窟に響きはじめる。暗闇を震わせるこだまが、彼の声と同調し、洞窟の隅々に行き渡る。 気づかない間に私はこだまを追い掛け、ぶつぶつ呟いている。もちろん彼の声を邪魔しない程度の、ほんの微かなささやきに過ぎない。「おとといから、黄色い鼻汁が出ます」......
小川 洋子 / 仮名の作家「口笛の上手な白雪姫」に収録 amazon関連カテ音(声)を聞く、聞こえる
電車が走り過ぎていった。遮断機の音が風に乗って彼らの頭上を舞っていた。
......サギは上目遣いで彼を見やり、例の「ね」の合図を送ってきた。「どんどん食べなさい」 曾祖父は言った。「そこら中、いくらでも植わっている」 畑のすぐ向こうを、何台か電車が走り過ぎていった。遮断機の音が風に乗って彼らの頭上を舞っていた。 ウサギが満足するのを見届けてから、再び二人はお稽古事に精を出す幼児と隠居老人、あるいは命からがら国を脱出する難民に戻り、帰りの電車に乗り込んだ。「ウサギはとて......
小川 洋子 / 盲腸線の秘密「口笛の上手な白雪姫」に収録 amazon関連カテ音(声)を聞く、聞こえる
サン・ジェルマン氏の声が口寄せの 巫女 の呪文のように頭の中をブンブンと流れ過ぎて行く。
......は生き続けるわけです。人間はこうして適度に世代交替をしているほうが健康な状態なのでしょうな。この国の政治家のようにいつまでも古い細胞がのさばっているより……」 サン・ジェルマン氏の声が口寄せの巫女の呪文のように頭の中をブンブンと流れ過ぎて行く。 どこかがおかしい。いや、そうではない、サン・ジェルマン氏の理窟はそれなりにわかるのだが、なにかまだ聞き忘れたことがあるのではないか。ああ、そうだ。「でも、そん......
阿刀田 高 / サン・ジェルマン伯爵考「ナポレオン狂 (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ音(声)を聞く、聞こえる