桜の花びらがいちめんに散りしいていて、踏むのも惜しいような気持ちでそっと歩く
阿川 弘之 / 雲の墓標 amazon関連カテ忍び足・静かに歩く
足音が聞こえないように器用に歩く
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餌食を狙う蜘蛛のように、音もなく小屋の外へ忍び寄る
芥川 龍之介 / 邪宗門 (1977年) amazon関連カテ忍び足・静かに歩く
ナメクジのようにひそやかな足取り
飯田 栄彦 / 昔、そこに森があった amazon関連カテ忍び足・静かに歩く
影のごとく音もなく動く
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神主が歩くような風にしずしずと座敷を出て行く
内田 百けん / 冥途 amazon関連カテ忍び足・静かに歩く
獣のように足音を忍ばせる
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雀が眠ってでもいるかのように背中を丸くして、そうっと近づいて行く
ジュール・ルナール / にんじん amazon関連カテ忍び足・静かに歩く
見逃しを食った罪人のように、足音を殺して。
林 芙美子 / うず潮 (1964年) amazon関連カテ忍び足・静かに歩く
亀のように足音を忍ばせて歩く
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「アダチ・クミ」と天吾は声に出してみた。「悪くないよ。コンパクトで余計な飾りがない」「ありがとう」と安達クミは言った。「そんな風に言われると、なんかホンダ・シビックになったような気がするね」
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon関連カテ忍び足・静かに歩く
忍び入る猫のような足どり
岡本 かの子 / やがて五月に (1956年) amazon関連カテ忍び足・静かに歩く
守宮のように足音をぬすんで、やっと急な梯子を、一番上の段まで這うようにして上りつめた。
......巣をかけた天井裏に、揺れながら映ったので、すぐにそれと知れたのである。この雨の夜に、この羅生門の上で、火をともしているからは、どうせただの者ではない。 下人は、守宮のように足音をぬすんで、やっと急な梯子を、一番上の段まで這うようにして上りつめた。そうして体を出来るだけ、平にしながら、頸を出来るだけ、前へ出して、恐る恐る、楼の内を覗いて見た。 見ると、楼の内には、噂に聞いた通り、幾つかの死骸が、無造作に......
からだをかがめて、そろりそろりと、そっちに近よって行きました。
......ちの方へ行きました。 たしかに鹿はさっきの栃の団子にやってきたのでした。 「はあ、鹿等あ、すぐに来たもな。」と嘉十は咽喉の中で、笑いながらつぶやきました。そしてからだをかがめて、そろりそろりと、そっちに近よって行きました。 一むらのすすきの陰から、嘉十はちょっと顔をだして、びっくりしてまたひっ込めました。六疋ばかりの鹿が、さっきの芝原を、ぐるぐるぐるぐる環になって廻っているので......
宮沢賢治 / 鹿踊りのはじまり 青空文庫関連カテ忍び足・静かに歩く
ぬすみ足で近寄って行く。
......をしてそれを見やっている。人間は奪い取って来た生をたしなみながらしゃぶるけれども、ほどなくその生はまた尽きて行く。そうするとまた死の目の色を見すまして、死のほうにぬすみ足で近寄って行く。ある者は死があまり無頓着そうに見えるので、つい気を許して少し大胆に高慢にふるまおうとする。と鬼一口だ。もうその人は地の上にはいない。ある者は年とともにいくじがな......
有島武郎 / 生まれいずる悩み 青空文庫関連カテ忍び足・静かに歩く
影が歩むように音もなく静かに歩みながら
......消されているので、ガラス窓からおぼろにさし込む月の光がたよりになった。廊下の半分がた燐の燃えたようなその光の中を、やせ細っていっそう背たけの伸びて見える葉子は、影が歩むように音もなく静かに歩みながら、そっと倉地の部屋の襖を開いて中にはいった。薄暗くともった有明けの下に倉地は何事も知らぬげに快く眠っていた。葉子はそっとその枕もとに座を占めた。そして倉地の寝顔......
有島武郎 / 或る女(後編) 青空文庫関連カテ忍び足・静かに歩く
飛びかかる虎のように小腰を蹲めて忍び寄った。
......乱された鳥のように跳ね起きた。 「去れ。」と叫ぶと、大兄は斎杭に懸った鹿の角を長羅に向って投げつけた。 長羅は剣の尖で鹿の角を跳ねのけると、卑弥呼を見詰めたまま、飛びかかる虎のように小腰を蹲めて忍び寄った。 「去れ、去れ。」 長羅に向って鏡が飛んだ。玉が飛んだ。しかし、彼は無言のまま卑弥呼の方へ近か寄った。大兄は卑弥呼を後に守って彼の前に立ち塞がった。 「爾は何故にこ......
横光利一 / 日輪 青空文庫関連カテ忍び足・静かに歩く
(履きものの)ゴム裏は、まるで音のないような滑らかな音をひいて、乙女の肌のような若芽の原を渡る
......めた原へ、規矩男は先にたって踏み入った。長い外国生活をして来てまだ下駄に馴れないかの女は、靴を木履のように造らせて日本服の時用いるための履きものにしていた。そのゴム裏は、まるで音のないような滑らかな音をひいて、乙女の肌のような若芽の原を渡るのだった。 規矩男が進んで話さない恋愛事件を、あまり追及するのも悪どいと思って、かの女は規矩男が靴木履と云った自分の履きものを、右の足を前に出して、ちょっと眺め......
ヒタ、ヒタと何処からか近づいてくる忍び足にも、夜露のねばるのが感じられる。
......られて、一寸の身うごきもできない。がくりと、首を垂れながら――百は心で、母とお稲の名をよんだ。 仕事場と、母屋と、雨戸はみんなしまっていた。もう深夜だった。――ヒタ、ヒタと何処からか近づいてくる忍び足にも、夜露のねばるのが感じられる。 「百や……」 と誰かよんだ。――間をおいて、ひくい声で、 「百や……」と。 じっと、白い眼をあげて、闇をすかしていた百は、ふいに、泣き出しそうに、顔を引ッつらせて......
足音を立てないように、爪先に気持ちを集中させて歩いた。
......先にあるナースステーションの明かりだけが、わずかにここまで届いていた。病室の扉はどれもきちんと閉まっていて、人の気配がしなかった。わたしは彼の腕をつかんだまま、足音を立てないように、爪先に気持ちを集中させて歩いた。 非常口から数えて四つめの病室に、彼はわたしを案内した。 廊下と同じように暗いのに、中の様子はすぐにつかめた。全部、弟の病室と同じだったし、窓から見える雪の白さ......
小川洋子 / 完璧な病室「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon関連カテ忍び足・静かに歩く
廊下を、静かに猫のように歩いた。時間の波を壊さないように、満月の力を消さないように。
......えた。「じゃあ、寄らせてもらいます。」 広田さんは言った。 私たちは部屋までゆっくりと歩いた。エレベーターまで、そして私の部屋がある階のだれもいない回廊のような廊下を、静かに猫のように歩いた。時間の波を壊さないように、満月の力を消さないように。たくさんのドアが並んでいる魔法のような景色の間をすり抜けて行った。 どうしてだかわからないが、私たちは思っていた。きっと同じように思っていた。「ああ、きっとこれ......
よしもとばなな / 銀の月の下で「まぼろしハワイ」に収録 amazon関連カテ忍び足・静かに歩く
サユリの靴の踵は肝心な時には聞きわけのよい子のようになり、沈黙していた。
......階段を上がる時、スタンとサユリは用心深く忍び足になった。しかし、鍵を外す音は予想外に響き渡り、スタンはドアノブに向かって人差し指を立てて、「静かに!」と囁いた。サユリの靴の踵は肝心な時には聞きわけのよい子のようになり、沈黙していた。 二人はそっと靴を脱ぎ、猫のように静かに部屋に入ることに成功した。見慣れた寝椅子やクロゼットは、彼らを、長旅から帰って来て疲れきった者たちのように感じさせた。そ......
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon関連カテ忍び足・静かに歩く
獣のように跫音を忍ばせながら
......した。もし彼がそっとここから抜け出していったならば、それは役人たちを連れてくるために違いない。 私の寝息を窺いながらキチジローは少しずつ体を動かしはじめました。獣のように跫音を忍ばせながら、彼が離れていくのを、こちらはじっと見つめていると、やがて立木と叢の中でこの男が放尿する音がきこえてきました。このまま立ち去るのかと思っていたのに、ふしぎにも彼......
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon関連カテ忍び足・静かに歩く
泥棒みたいな忍び足
......く様子もなく、馬締は虫眼鏡を覗きこんだまま、「ふぁい、おつかれさまだす」と上の空で言った。「だす」ってなんだ、「だす」って。 西岡は心情的には憤然と、実質的には泥棒みたいな忍び足で編集部を出た。腰に響くから、急な動きは禁物だ。 冬の午後の光が、モザイクのはめこまれた踊り場を淡く照らしている。 古く重厚な校舎の階段を、木製の手すりを頼りに......
三浦 しをん「舟を編む (光文社文庫)」に収録 amazon関連カテ忍び足・静かに歩く