植村隆インタビュー詳報において、産経側の主張が自壊していくまで - 法華狼の日記の周辺情報として、いくつかメモしておく。
もちろん複数のデマが流れているが、今回は主体が誤認されているらしい情報にしぼる。
#高山正之:従軍慰安婦は朝日新聞の植村隆記者が捏造した。それをまたオーストラリアのジャーナリストが増幅し、米下院議員マイク・ホンダが「日本軍はアジア女性20万人を性の奴隷にした」ことにして非難決議案まで出した。この男は創氏改名でホンダを名乗っているのではないか?
どうやら2014年の高山正之『アジアの解放、本当は日本軍のお蔭だった!』に収録された文章の一部らしく、下記エントリ等で転載されている。
http://dwellerinkashiwa.net/?p=1595
従軍慰安婦は吉田清治の慰安婦強制連行の嘘を参考にして朝日新聞の植村隆記者が捏造した。「日本軍が無辜の朝鮮人女性を強制連行して戦場で将兵相手の慰安婦にした。 女子挺身隊と呼ばれた」と書いた。実際は朝鮮人女衒が置き屋に売った。
それをまたオーストラリアのジャーナリストが増幅し、米下院議員マイク・ホンダが 「日本軍はアジア女性二十万人を性の奴隸にした」ことにして非難決議案まで出した。 この男は創氏改名でホンダを名乗っているようにも見える。
Amazonで出版社のコメントを読むと、初出は2011年以前の文章らしい*1。
本書は、『歴史通』2009年4月号〜2011年5月号に掲載された「封印された戦趾」をまとめ、2011年8月に出版された『白い人が仕掛けた黒い罠』を、改題・改訂した新版です。
もちろん「従軍慰安婦」という言葉は1973年の千田夏光氏の著作によって広まったので、1991年にはじめて被害証言をつたえただけの植村氏が捏造することはできない。
また、植村氏の記事では「戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた」*2と書いており、日本軍が連行の主体であったかは不明だった。実際に「日本軍に強制的に連行され、中国の前線で、軍人の相手をする慰安婦として働かされた」*3と書いたのが産経新聞だったことは、産経に掲載された植村インタビュー詳報で指摘されていた。
同じようにツイッターで何度か流れている、西村幸祐氏*4の下記ツイート。
吉田清治証言を植村氏が報じたというデマは多いが、副官通牒を植村氏が報じたというデマは珍しい。
なお、副官通牒の文面を実際に読めば、とりしまりを指示する文面はない。「警察当局ニ検挙取調ヲ受クルモノアル等注意ヲ要スルモノ少ナカラサル」と、とりしまられることを困っている部分はある。
日本軍の慰安所政策について
長崎県及び大阪九条署からの回答を受けた田辺警察署がどのような処置をとったのかを述べておこう。同署は、「皇軍慰安所」の話の真偽はいまなお不明であるが、容疑者の身元も判明し、九条警察署が「酌婦公募証明」を出したので、容疑者の逃走、証拠隠滅のおそれはないと認めて、1月10日に3人の身柄を釈放したのであった
上記の永井和論文で指摘されているように、営業許可がされてない業者による慰安婦渡航が目こぼしされ、いったん現場の警察に逮捕された業者も釈放される結果となった。きびしいとりしまりにはほどとおい。
やはり軍の威信を優先して業者の「選定」をきびしくしただけであり、あくまで慰安所の存在を隠すように協力させる指示と読むべきだろう。
また、産経の植村インタビュー要約に、はてなブックマークで下記のようなコメントがついていた。
はてなブックマーク - 【朝日新聞慰安婦誤報取り消しから1年】元朝日記者・植村隆氏にインタビュー 「テープ聞いたの一度だけで記事書いた」(1/6ページ) - 産経ニュース
id:frothmouth 第三者委報告書は、植村氏が金氏について書いた署名記事も取り上げた 「金さんが、吉田清治が主張していた女子挺身隊の名で強制連行された被害者であるかのような錯覚を作り出すのに、大きな役割を果たした」との見
あたかも引用か要約のようなコメントで、一見するとfrothmouth氏は肯定も否定もせず引いただけに見える。
しかし実際にインタビューとてらしあわせると、評価をくだしている主体がいれかわっていることがわかる。
【朝日新聞慰安婦誤報取り消しから1年】元朝日記者・植村隆氏にインタビュー 「テープ聞いたの一度だけで記事書いた」(1/6ページ) - 産経ニュース
朝日の第三者委報告書は同じ3年中、植村氏が金氏について書いたもう一つの署名記事も取り上げた。12月25日付朝日新聞大阪本社版の「日本政府を提訴した元従軍慰安婦・金学順さん」の記事だ。
この記事は1カ月前の11月25日、植村氏が高木健一弁護士らによる金氏へのヒアリングに同行した際に録音したテープを基に書いたものだが、金氏が12月6日に起こした賠償訴訟の訴状にも記載されたキーセン歴が書かれていなかった。
独立検証委は「金さんが、吉田清治が主張していた女子挺身隊の名で強制連行された被害者であるかのような錯覚を作り出すのに、大きな役割を果たした」との見解を示す。
そう、frothmouth氏は半角空白だけで中略を表現して、評価をおこなっているのが独立検証委ではなく第三者委であるかのような文章にしてしまったのだ。いずれインタビュー記事が削除されてコメントだけが残れば、事実誤認をまねいてしまうかもしれない。
もちろん、産経の文章にも問題はある。第三者委がとりあげたとしつつ、その報告書にどのような評価が書かれているかを引かず、まったく異なる独立検証委の評価だけ引いてくる。これ自体が誤認をまねく文章構成といえるだろう。
*1:実際、2013年の日付でよく似た文章が転載されているエントリを見つけたので、要約によって内容がねじまがったというわけではないようだ。真の日本人となるために 大事な話①
*2:http://www.asahi.com/shimbun/3rd/2014080517.pdf