レポート

2024/08/29

<寄稿>第10回(最終回)「園や学校との連携のあり方」/「発達障害について学ぼう!」全10回シリーズ

中部学院大学非常勤講師

山内康彦

【どの保育士も先生も子どものために全力で頑張っている!仲良く付き合いましょう!】

保護者の皆様からすると、園や学校(教育委員会)、先生たちに対して様々な思いがあることと思います。しかし、先生も人間です。苦情を言われて気持ちのよい人はいません。苦情を言った結果、子どもに不利益が生じたり、問題が大きくなったりしては何にもなりません。今回は、園や学校(教育委員会)との建設的な関わり方や連携のあり方について述べたいと思います。

学校は“教頭先生”、園では“園長先生”がポイント

子どもの支援について問題が発生すると“担任の先生(担当の先生)”にまず、相談すると思います。そこで解決できれば、問題がないのですが、そうは簡単にはいきません。「話したことを聞いてもらえない」「約束した支援を十分にやってもらえない」などの問題が発生します。これは仕方のないことです。しかし、その後、再度話をする相手がポイントになるのです。今度は、管理職に話すことをオススメします。主任や特別支援教育コーディネーターは、管理職ではありません。たとえ相談しても、担任や担当の先生を指導する権限がないので、なかなか解決に結びつきません。やはり、学校の場合はまず、“教頭先生”に相談することをオススメします。そして、「担当や担任に話したが、解決に結びつかなかったので、相談したい」と話すことで理解してもらえるはずです。園の場合は“園長先生”になります。

実は、先生方も苦しんでいるのです

残念ながら、先生の中で特別支援教育の専門性のある人は10人に1人とも言われています。特別支援学級の担任だからといって「特別支援学校免許」をもっているとは限らないのです。(※特別支援学校の教員免許がなくても、特別支援学級や特別支援学校の先生ができるのです)例えば、保護者の皆様は、出産するときは、『産婦人科』へ行きますね。間違っても『皮膚科』や『整形外科』には行きませんね。同じように、しっかりと専門の先生と一緒に相談ができるようにチームを組むことをオススメします。実は、保護者の皆様と同じように、指導をしている先生や支援員の方もどのように子どもと関わって良いかわからず苦しんでいるケースが多いのです。どうして良いか分からなくて苦しんでいる先生に苦情を言っても解決にはつながりません。

医師や専門家による『診断書』や『意見書』の活用が有効です

オススメは、医師や専門家による『意見書』を活用することです。先ほど述べたように、先生方は特別支援専門性がある方は多くありません。そこで、専門家から『意見書』を書いてもらい、先生方に動いてもらうのです。例えば、「○○さんは、自閉傾向があるので、環境の変化が苦手。クラス替えでは、意図的に理解のある仲の良い友だちと一緒のクラスにするように配慮が必要である」や「△△君は、ADHDの疑いがあるので、席は一番前にして、先生からの個別の声をかけやすくするとよい」、「□□さんは、読み書き障害があるので、漢字や日記については、マスを大きくしたり、書く量を半分程度にしたりする必要がある」といった内容を書いてもらうのです。この『意見書』をもっていけば、確実に適切な支援をしてもらえるはずです。学校や園は無視できません。病院へ行くことをためらう保護者の皆様は多いと思いますが、診断名をもらうことには大きな意味があり、そのことによって『合理的な配慮』もしてもらえるようになるのです。

センター的機能の活用
(特別支援学校のコーディネーターの活用)

先ほど先生方の専門性についての問題があることを指摘しましたが、このことは学校や教育委員会も十分に把握しています。そこで、現在は地域で特別支援教育に関して中心的な役割を果たしている『特別支援学校』に対して“センター的機能の活用”ができるようになっています。具体的には、特別支援学校内で指導力のある特別支援教育コーディネーターが、園や小中学校へ来て、相談・助言・指導をしてくれるのです。この利用は非常に簡単で、担任から管理職へ話を進め、管理職から地域の特別支援学校へ申請するだけで基本良いのです。「離席が頻繁な子どもへの支援」や「緘黙でコミュニケーションがとりづらい子への指導」など、何でも相談にのってくれます。また、「今後は特別支援学級や特別支援学校への転籍した方がよいのか?」といった進路についての話も進めることができます。場合によっては、医師による『意見書』よりも効果的で有効な場合もあります。ぜひ使ってみてほしい制度です。

児童発達支援や放課後等デイなどの福祉療育施設との連携

現在は、園や学校以外に「児童発達支援事業(未就学児)」や「放課後等デイサービス事業(小1から)」といった民間の福祉療育施設が全国各地にあります。これらの施設は、『児童発達管理責任者』を中心に継続した支援が受けられる場所になっています。園や学校の課題の1つとして、“毎年のように担任・担当者が変わる”ということがありますが、この施設は同じ指導員が継続して療育にあたります。今後は、子どもの支援は学校だけでなく、『家庭』と『園や学校』、『医療機関』、『福祉機関』等が連携を取り、総合的な支援・療育を進めていくことが有効であると考えます。これらの施設は『医師からの意見書等』があれば利用できます。もちろん通常の学級に在籍していても利用可能です。ご興味のある方は、まずは市町村の担当課(子ども福祉課・障がい福祉課など)へ問い合わせてみてください。役所の受付窓口で「指導発達支援事業や放課後等デイサービス事業を利用したいが、窓口はどこですか?」とお聞きすれば案内してもらえるはずです。

山内康彦

中部学院大学非常勤講師
学校心理士SV・ガイダンスカウンセラー
(一般社団法人)障がい児成長支援協会 代表理事・元日本教育保健学会理事

山内康彦

1968年3月30日生まれ 岐阜県
 専門は特別支援教育と体育。岐阜県の教員を20年務めた後、坂祝町教育委員会で教育課長補佐となり、就学指導委員会や放課後子ども教室等を担当。その後、岐阜大学大学院教育学研究科(教職大学院)で学び、小中高・特別支援学校の専門職修士となる。その後、学校心理士やガイダンスカウンセラーの資格も取得。私立小学校の勤務を経て、現在は(一般社団法人)障がい児成長支援協会の代表理事を勤めながら、学会発表や全国での講演会活動、教職員等への研修講師を積極的に行っている。現場目線で、具体的な解決策を提案する講演会は各地で好評を得ている。2020年3月には、岐阜大学大学院地域科学研究科を修了。本年度、学校心理士スーパーバイザー(SV)資格取得。著書には「特別支援教育って何?(WAVE出版)」「体育指導用教科書(学研)」「特別支援が必要な子の進路の話?(WAVE出版)」等多数あり。

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