首、肩、腰の痛みを解決! 正しいインナーマッスルの使い方
第1回 インナーマッスルが目覚めると体はスムーズに動き出す
田中美香=医療ジャーナリスト
首がだるくて痛みがある、五十肩で腕が上がらない、腰が痛くて動作がつらい…。そんなとき、マッサージや湿布など、「外側からのケア」に頼ってしまっていないだろうか。実はこれらの症状は、体の奥深くにあるインナーマッスルを正しく使えていないことから起こっている可能性が高い。症状軽減のポイントは、インナーマッスルを正しく使い、体の動きの「質」を高めることだ。首、肩、腰に不調を感じている人はぜひご一読いただきたい。
『首、肩、腰の痛みに効く! 1分体操』 特集の内容
- 第1回首、肩、腰の痛みを解決! 正しいインナーマッスルの使い方←今回
- 第2回首の1分体操 「頸長筋」を目覚めさせて首の痛みを軽減!
- 第3回肩の1分体操 「菱形筋」を刺激して腕が上がる・回るようになる!
- 第4回腰の1分体操 「腹横筋」と「多裂筋」を自在に動かし腰痛を解消!
首、肩、腰の痛みの原因は「筋肉を正しく使えていない」こと
首が重だるくて痛みがある、五十肩で腕が上がらない、腰痛がなかなか治らない…。年齢を重ねるほど、こうした首、肩、腰のトラブルに悩む人が増えてくる。「いよいよ俺もガタがきたか」「年のせいだから仕方ないかな…」と、半ばあきらめてしまっている人もいるかもしれない。
首、肩、腰は、起き上がる、着替える、物を持つといった基本動作に欠かせない部位であり、痛みやコリなどの不快な症状があると、生活の質は大きく下がってしまう。そしてこれらの症状は、マッサージや湿布で何となくことはできても、根本的に治すのは難しい。どれも体の外側から働きかける対症療法にすぎないからだ。
それなら筋肉を鍛えて増やし、首、肩、腰にかかる負荷を減らせばいいのではないか?と思う人もいるだろう。だが、早稲田大学スポーツ科学学術院教授の金岡恒治氏は、「筋肉の量を増やすよりも、筋肉を正しく使うことで『動きの質』を変えることのほうが重要です」と話す。
4つのインナーマッスルを「正しく動かす」
金岡氏は体幹研究のスペシャリストで、競泳日本代表チームのチームドクターを務めた経験も持つ整形外科医だ。トップアスリートから高齢者まで、さまざまな患者の首、肩、腰の痛みを診てきた金岡氏は、「これらの症状の多くは、『体の正しい使い方』ができていないことに起因しています」と指摘する。
「体を正しく使う」とは一体どういうことか。キーワードは、「インナーマッスル」だ。インナーマッスルはその名の通り、体の奥深い場所で骨とつながっている筋肉のこと。このインナーマッスルを正しく使えていないと、首、肩、腰に負担がかかり、痛みやコリの原因となってしまうのだと金岡氏は言う。
体の中にはたくさんのインナーマッスルが存在するが、本特集のテーマである、首、肩、腰の症状に関連するのは、主に以下の4つの筋肉だ。首の「頸長筋(けいちょうきん)」は頸椎(首の骨)の前面にくっついている筋肉。肩の「菱形筋(りょうけいきん)」は頸椎の付け根と肩甲骨をつなぐ筋肉だ。腰には下腹部を広く覆う「腹横筋」と、背中側で背骨に沿って存在する「多裂筋」というインナーマッスルがある(図1)。
これらのインナーマッスルはいずれも、首、肩、腰をスムーズに動かすための土台の役割を担っている。では、これらの筋肉を正しく使えていないというのは一体どういうことなのか? なぜインナーマッスルが正しく使えていないと首、肩、腰の痛みが起きるのか? インナーマッスルを正しく使うには、具体的に何をどうすればよいのか?――。本特集では、これらの疑問について、金岡氏に詳しく解説していただこう。第2回以降では、1日1分行うだけで痛みが改善する「1分体操」も、併せて紹介していく。