RemNoteで実践する知的な情報整理術

簡単で強力!誰でも始められる情報整理ツール「RemNote」始めよう

学習している内容や日々の考え事など、さまざまな情報を入力しながら自然に整理していくパーソナル・ナレッジ・マネージメント(PKM)ツールが注目されています。

しかし便利ではあるものの使い方が難しかったり、マニアックな設定が要求されたりするPKMツールが多い中、高機能なのに簡単に利用できるRemNoteが、最近モバイルアプリも登場して頭一つ抜けた存在になってきたように思います。そこで本稿では初心者向けにRemNoteの使い方の紹介を通して、PKMの基本的な考え方について深めてみます。

情報が複雑になってきたら、ツールも進化しなければいけない

忘れてしまっては困ることがあると、私たちはメモをとります。買い物でそろえるもの、テレビで耳にしたお得な情報、来週の予定、ちょっとした考え事。どんなことであっても私たちはメモをとります。

手段は紙でもスマートフォンでも変わりません。ふだんは意識しないほど当たり前の行動ですが、メモを残すおかげで、私たちは記憶にたよらずに情報を未来の自分に渡せるのです。

それでは情報がもっと複雑になり、量が多くなってきたらどうでしょうか? 難しい専門書を読んでいる場合、資格試験の勉強をしている場合、あるいは自分でもまだ結論に達していない考え事を巡らせているといった場合。

このようなときも、わたしたちはメモを使います。しかし先ほどまで使っていた簡単な書き付けではもう足りないかもしれません。大学ノートやレポート用紙、あるいはパソコンの上でツールを使った情報整理が必要になってきますし、過去に書いたメモを上手に活用できる仕組みが大切になってきます。

こうしたときに強い味方になってくれるのが、近年盛り上がりを見せているPKMツールです。⁠本を読んでもなかなか内容が記憶に残らない」⁠複雑な思考をまとめるのが困難」⁠過去に考えたことを思い出せない⁠⁠。そんな悩みをもっているひとにとって、PKMツールは大きな力になるでしょう。

PKMツールの力の源「バックリンク」

PKMツールに求められるのは「情報の入力が簡単である」ことと「入力した情報を簡単に探し出せる」ことの2点に尽きます。そういう意味では、日本でも愛用している人が多いEvernoteやNotionといったウェブサービスも、広い意味でPKMツールに加えてもいいでしょう。

そして近年人気が集まっているRoam ResearchObsidianLogSeqなどといったツールはもう一歩進んだ考え方で思考をアシストしてくれます。その代表例が「バックリンク」による情報間のリンクを作っていく使い方です。

図1

たとえばウンベルト・エーコの「プラハの墓地」という本を読んでいたとして、その読書メモをとあるPKMツールに上図の左側のように日記として書いたとします。このメモはどこかに整理しているわけではなく、日付順である以外は雑然と入力しているものです。

ある日、随分とエーコの本を読んだので彼について考えをまとめることにとしたとしましょう。そこで上図の真ん中のような「ウンベルト・エーコ」という表題のメモを作ってみると、なんと、勝手に「このページに言及しているページ」と書かれた項目の部分に過去に言及した「2023年2月28日」のメモへのリンクが出現します。

本の名前「プラハの墓地」というメモも作ってみましょう。それが「ウンベルト・エーコ」によるものだという情報も追記してみます。すると、さきほどと同様に2月28日のメモがリンクとして表示されますし、新しく作った「プラハの墓地」のメモが「ウンベルト・エーコ」のメモでも言及されていると表示されるようになります。

このように過去の言及が自然にリンクされていくので使えば使うほど情報の網目が緊密になっていくところが、バックリンク機能の魅力です。こうしたリンクがあると、過去にわたしが「ウンベルト・エーコ」について考えたすべての書き込みを一瞬でまとめることができますし、想定していない、あるいは記憶していなかった情報のつながりも次々に見つけられるようになります。

入力している情報を苦労して整理したり、手間をかけてリンクを記述したりしなくても、過去の蓄積が勝手に検索されて情報と情報の関連付けが自然に生まれる。これがバックリンクの力なのです。

人気のPKMツールと難点

このバックリンクの機能はRoam Research、LogSeq、Obsidianなどといった人気のPKMツールでどれも利用できますし、多少ぎごちない形ではあるものの、NotionやEvernoteでも利用可能になりました。

あとは、Markdown形式で文章を書き留めるタイプのツールかアウトライン形式なのか、タグ機能や情報の検索機能の使い方など、細かい部分でそれぞれの特徴や利点がありますので、好みのツールを使うと良いでしょう。

ただし、いくつかの難点もあります。ObsidianやLogSeqといったツールはMarkdownファイルの上に構成されていますので画像などの添付ファイルの扱いが少し面倒ですし、ツールに対する深い理解が求められる傾向があります。Evernoteのように、よくわからなくても触っているだけでなんとなく利用できる手軽さはありませんし、ツール自体を学ぶためのハードルは高めです。

また、オープンソースで開発されているので将来にわたって安心である反面、クラウド上でデータを同期させたりするのが手間であったり、モバイルアプリがまだ洗練されていないケースもあります。

そこでPKMツールの初心者には、相対的にマニアックなこれらのツールよりも、さまざまなPKMツールのいいとこ取りで機能も安定しており、モバイルアプリの品質も高くておすすめなものが求められます。それがRemNoteなのです。

RemNoteを始めてみよう

さっそくRemNoteを始めてみましょう。RemNoteのウェブサイトにアクセスすると、GoogleアカウントあるいはAppleアカウントですぐに利用を開始できますし、メールアドレスでアカウントを作成するのも可能です。

図2

ログインすると、操作を教えてくれるいくつかのチュートリアルが表示されるはずです。英語で書かれていて少し面倒ですが、真似をしてみるとおおよその操作方法が理解できるようになります。ここではチュートリアルが終わったものとして、空になったRemNoteを使ってみましょう。

図3

最初はこのように、一つも文書がない状態ですが、左下の⁠Create⁠のボタンから文書やフォルダを作れます。

図4

たとえば⁠Blank Document⁠を選んで白紙の文書を作ってみましょう。

図5

すると、このように表題を設定し、文章をインデント付きのアウトライン形式で書き留められます。RemNoteはRoam ResearchやLogSeqと同様、箇条書きで考えをかきとめていくツールです。

ひとまずは、Enterキーで新しい項目を作ること、TABキーでインデントを増やしたり、Shift+TABでインデントを戻したりできることを確認してみましょう。

箇条書きで考えをとらえるコツ

いきなり考え事をアウトライン形式で記述しようとしても最初は戸惑いのほうが多いはずです。使い始めの頃はあまり複雑なメモは目指さずに、単純な箇条書きを作るのに集中してください。

図6

するとやっているうちに、⁠買い物リスト」⁠やることリスト」のように、似たような情報を一箇所にまとめておいたほうが便利なのに気づくでしょう。

あるいは最初に「やること」⁠読む本」⁠計画すること」といったように表題だけを項目として出しておいて、あとからインデントさせた部分に箇条書きで詳細を書き込むといった具合に順不同の書き方をするようになってきます。

これが、アウトライン形式で記述する際の「考えを形にする」書き方です。これは使っているうちに次第に身につきますので、自由に項目を付け足したり、場所を移動してみていろいろ試してみてください。

見た目を変えるのももちろん可能です。/キーを打つとメニューが表示されますので、⁠Header→H3」といったように選択して見出しをつくれますし、任意の場所をハイライト表示できます。

また、それぞれの箇条書きのバレットと呼ばれる黒丸をクリックすると、その項目が表題になったページに飛べます。例えるなら、ある時は「都道府県レベル」で項目を編集して、必要に応じて「市区レベル」にズームインして書き足すといったように、あいまいに形をとらえてから詳細を継ぎ足せます。

図7

たとえば私がとある作家の短編の読書メモをとった時は次のような形になりました。関連リンクや、メモ、思いつきといったものが見出しのもとに集約されています。

図8

これで私があとでこのメモをもう一度見る時は、⁠この作品の……この部分」といったように、見た目の構造をなぞることで情報を見つけられるのです。

考えがもっている構造を文章でとらえるよりも、リストを使って見た目で分かる形に整えていくのが、アウトライン形式のメモのとり方です。

コマンド入力とリッチテキスト

RemNoteでは文字を入力するだけではなく任意の場所に画像ファイルを埋め込んだり、機能をもった文章を作ったりできます。

たとえばCommand+Enterキーを入力すると、任意の項目がTODOリストになります。

図9

また、Notionなどでもおなじみの/コマンドでメニューを表示できます。ここから画像、動画、数式、コードブロックなど、任意のリッチテキストの挿入も可能です。

図10

フォルダで似たような文書を整理する

文書を作ってみたら、次はフォルダを作ってみましょう。RemNoteではフォルダも文書のように扱えますが、⁠文書を埋め込める」という点が違います。

図11

たとえばここでは「読んだ本」というフォルダを作りましたが、フォルダの名前のすぐ下にある「Add a Document」と書かれた部分をクリックすると、このフォルダ内にどんどんと文書を追加できます。

また、RemNoteの特殊なフォルダに日付フォルダがあります。任意の場所でOption+Dを押すとその日の文書が作成され、⁠Daily Document」という名前のフォルダが作成されます。

図12

これは一日に一つの文書が格納され、カレンダーで前後関係を追えるフォルダで、ふだんのメモを残すのに最適な場所です。ふだんはDaily Noteに雑多なメモを残し、体系立った情報は個別のフォルダ内に文書でまとめていくといった使い方ができます。

リンクを張ってみよう

さあ、これで複数の文書が作れるようになりましたので、RemNoteの文書の間にリンクを張ってみましょう。たとえば日記として使っているページから、先ほど「読んだ本」として作成した文書にリンクを作ってみます。

図13

リンクを作るには、/でコマンドを呼び出してからrでレファレンス入力窓を呼び出します。あるいはRoam Research、LogSeq、Obsidianで慣れた二重括弧を入力してもリンクが作成できます。

図14

リンクを作ってから、先程つくった本のページにいってみると、たしかにレファレンスの部分に日記からのリンクが見えています。これで、RemNoteを使ってバックリンクが作れるようになりました。

RemNoteはバランスの取れたPKMツール

RemNoteを一通り使ってみると、まるでEvernoteやNotionと同じような、洗練された動作をしているのがわかると思います。

情報はすべてクラウドで保存されていますし、必要に応じてオフラインで作業も可能です。また今回はブラウザ上ですべての作業をおこないましたが、Windows版、macOS版、iOS版、Android版のアプリも用意されていますのでどこでもRemNoteの情報にアクセスできるのは魅力です。

RemNoteは基本的には無料で利用できますが、ファイルのアップロードや一部の機能は制限されています。まずは無料で利用を開始してみて、慣れてみるとよいでしょう。

今回ご紹介した内容は、まだRemNoteの機能の一部を触ったに過ぎません。RemNoteには記憶を定着させるフラッシュカード機能や、PDFに対する注釈機能など、ブラウザ拡張機能をつかったウェブページへの注釈など、学習や研究で利用できる奥深い利用の仕方もあります。

次回以降ではこうしたRemNoteのさらに高度な使い方と、PKMツールとして使いこなすための考え方についてご紹介していきたいと思います。

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