火星でジャガイモを育てて火星移住時の食糧問題を解決する方法をNASAが計画中

by sethoscope

映画「オデッセイ」では、マット・デイモン演じる植物学者のワトニーが火星に一人取り残されて、生き延びるためにジャガイモを育てるという場面がありますが、人類の火星移住に向けて、映画と同じように火星でジャガイモを育てる計画をNASAが始めました。第一段階として、火星の土壌によく似た地球の砂漠の土を使って、火星に適したジャガイモの品種選びが進められています。

NASA Really Is Trying to Grow Potatoes on Mars - WSJ
http://www.wsj.com/articles/nasa-really-is-trying-to-grow-potatoes-on-mars-1460560325


砂漠の土を使ってジャガイモを育てる実験は、NASAの科学者と、ペルーのリマにあるジャガイモ専門研究施設International Potato Centerの研究者が共同で行っているもの。2012年にNASAの火星探査機キュリオシティが火星着陸に成功し、火星上に水が存在することを発見していて、NASAは火星への有人飛行も計画中です。今後、人類が火星に定住するには、火星で育てられる食物が不可欠だと考えられており、そこでジャガイモに目が付けられました。

ジャガイモは地球上のあらゆる気候に適応して育ち、さらには炭水化物・タンパク質・ビタミンC・鉄・亜鉛などの栄養素を豊富に含んでいることから、世界中の広い地域で食べられています。カリフォルニアにあるNASAのエイムズ研究センターでジャガイモの研究を行っているChris McKay氏は、「ジャガイモは数多くの品種があるので、地球よりも寒くて低圧な火星でも育つ品種を見つけられると思います」と語っています。さらに、火星ではジャガイモは食用だけでなく、染料やバッテリーとしての利用も期待できるそうです。

by Hidetsugu Tonomura

ペルー南部のパンパス・デ・ホヤ地区は雨が1年に約1mmしか降らず、NASAによると火星によく似た土壌条件なので、実験場として研究を行っているのだとのこと。特にアタカマ砂漠は火星の土によく似ているそうです。左側の写真が火星の土壌、右側がパンパス・デ・ホヤ地区の砂漠。両方とも赤茶色の大地が広がっています。


火星での生育に最も適しているジャガイモの品種を探すための第一段階として、丈夫な品種のジャガイモ65種類を選び、砂漠から約600kgもの土をリマの研究所へ運んで、ジャガイモの生育状況を研究所内で観察する実験が始まっています。うまく育ったジャガイモは、さらに火星の大気条件を再現したシミュレーターの中で育てていく予定とのこと。NASAで働いている宇宙生物学者のJulio Valdivia-Silva氏は、「火星で育てるジャガイモは、おいしい品種のジャガイモでなければなりません。生物を地球外の別の場所に移すという計画は、これまで人類が経験したことのないもので、非常に大きな挑戦になります」と語ります。

International Potato Centerの科学者であるWalter Amoros氏は、「65種類のジャガイモのうち、半数は砂漠の土で育てることができるものの、ちょうどいいサイズに育つものはわずか10種類程度だろう」と推測しています。ジャガイモは水不足や高温などのストレスがかかると、味が変わってしまい、食べられないほど苦味が強くなる可能性もあるとAmoros氏は不安視しています。NASAによれば、火星の気温はセ氏マイナス64度~マイナス175度で、地球よりも放射線量が高く、重力は地球の60%ほどです。大気の成分は96%が二酸化炭素で、酸素はほんのわずかしか含まれていません。さらには、砂嵐が頻繁に起こり、地中の水は塩分を含んでいるなど、地球とは生育条件がかなり異なるため、Amoros氏は「火星上の開けた空間ではジャガイモは育たないと思います。火星でジャガイモを育てるには、ドームを建てて、生育条件を管理しなければならないでしょう」と語っています。


ただし、植物を育てるために必要な酸素・炭素・水素・鉄・マグネシウム・亜鉛などの成分は微量ながら火星の土から発見されており、肥料を加えることで植物が育つ可能性は大いにあるとのこと。

Can Plants Grow with Mars Soil? | NASA
http://www.nasa.gov/feature/can-plants-grow-with-mars-soil


現在、国際宇宙ステーションでは、レタスをはじめとした葉物野菜の生育が行われており、白菜やトマトも育てられているとのこと。人類が火星に移住した際に、火星の土や宇宙空間で食物を育てることができれば、食べ物を地球からシャトルで運ぶためのコスト削減やリスクの緩和につながると考えられています。

Crew Members Sample Leafy Greens Grown on Space Station | NASA
https://www.nasa.gov/mission_pages/station/research/news/meals_ready_to_eat

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in サイエンス,   , Posted by darkhorse_log

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