集合知が衆愚になるのはバイアスが原因、そして衆愚化するのを防ぐ方法
by Sreejith K
集団から得た意見は専門家1人で出した答えよりも正解に近づくという「集合知」の存在が知られていますが、一方で、集団心理によって人は「衆愚」となり愚かな行動を起こすこともあります。集合知ではなく衆愚になってしまう時には何が起こっているのか、そして衆愚にならないようにするためにはどうすればいいのかが、研究によって明らかになっています。
Forget the Wisdom of Crowds; Neurobiologists Reveal the Wisdom of the Confident | MIT Technology Review
https://www.technologyreview.com/2014/07/14/172082/forget-the-wisdom-of-crowds-neurobiologists-reveal-the-wisdom-of-the-confident/
[1406.7578] Wisdom of the Confident: Using Social Interactions to Eliminate the Bias in Wisdom of the Crowds
http://arxiv.org/abs/1406.7578
1906年にイギリスの大学者Francis Galton氏は、ある村で行われた800人が参加する「牛の重さ当てコンテスト」を訪れました。コンテストの終了後Galton氏が参加者の予想を集めて平均を求めたところ、その重さは1208ポンド(約548kg)。驚くことに、これは実際の牛の重さである1198ポンド(543kg)と約1%の誤差だったのです。
by Martin Gommel
これが集合知と呼ばれるものの1つの例。1人の専門家の意見よりも個人の意見を多数集めたグループの意見の方が正解に近いという考え方です。しかし、オンライン掲示板などインターネットのユーザーであれば「みんなの意見は正しい」という考えが必ずしも賢明でないことは分かっているはず。
では「どんな時に集合知が愚かなものとならないのか?」というと、近年の研究によると「集団のメンバーが相互に影響しないこと」が重要な要素とのこと。集団が各個人の持つ幅広い予想から意見を出せば賢明な答えになるのですが、何かのバイアスがかかった時、つまり互いが影響を与えたり外部の要因に影響されたりした時に、集合知は愚かなものとなってしまうのです。
この点についてスペイン・マドリードのCajal Instituteで神経科学を研究するGabriel Madirolas氏とGonzalo De Polavieja氏は、集合知が衆愚にならないためにはどうすればいいのかを明らかにしました。
彼らの理論の背景にあるのは非常にシンプルな考え。つまり、「自分の意見に自信を持っている人に影響されやすいタイプの人がいる」ということ。個人の考えを強く持つグループの人たちは賢明な考えを出しやすく、自分の賢さに自信があるので集合知を無視する傾向にあるので影響を気にする必要はないのですが、影響されやすいタイプの人は個人の考えを強く持つグループから隔離する必要があります。
by A. Golden
では「個人の考えを強く持つ人」はどうやって見分けるのでしょうか。Madirolas氏とPolavieja氏はいくつかのタスクを連続して行うという過去の研究データからその方法を確立しました。研究ではまず1つ目のタスクとして「スイスとイタリアの国境の長さを求めよ」という質問を複数のグループに対して行い、タスクが完了したところで他のグループが出した予想を見せます。そして次のタスクが他のグループの予想にどれだけ影響されるのかを測るというわけです。
Madirolas氏とPolavieja氏は研究のデータをもとに個人が外からの情報をどれだけ受け入れるかという数学モデルを作成。最終的に人が出す結論は「自分自身の予想」と「初期に出された総合推定値」という2つの情報をもとに作られており、この2つのいずれに重きが置かれるかで結論が変化すると2人は考えています。例えばバイアスを受けやすいグループの人々は総合推定値に重きを置きやすく、自分の予想に自信を持っている人々は総合推定値に対して全く重きを置かないか、少ししか加味しません。
その後Madirolas氏とPolavieja氏は人々の行動を数学モデルと適合させ、彼らの思考がどれだけ独立しているかを明らかにしました。
by Ben Raynal
この方法を使えばグループを「個人の意見を強く持つ人」と「バイアスを受けやすい人」に分けることが可能。賢明な答えを出すためには個人の意見を強く持つ人たちによる結論を出した後に、より精度を高めるための追加情報を加えればいいというわけです。
「賢明な予測をするには単純に中頃がいいというわけではなく、社会動学を考慮した複雑なオペレーションが必要です」とMadirolas氏らは語りました。2人の研究結果は今後、バイアスを受けない真の「集合知」を導き出す新たなソーシャル・ニュースサイト作成に役立てられる可能性もあるとして注目されています。
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