ライター/編集/広報、3つの視点で語るアニメ出版業界ぶっちゃけクロストーク
「アニメの本を出すのは、こんなに大変? アニメ出版業界人クロストーク」ということで、徳島の気持ちのいい空の下、アニメ雑誌の出版に関わる貴重なお話を聞いてきました。出版業界そのものが低迷期にありますが、その中で闘うアニメの本に魂を込める男たちが、パッションほとばしる業界トークを繰り広げています。
◆「アニメの本を出すのは、こんなに大変? アニメ出版業界人クロストーク」
五所(以下、五):
ゲリラ的に始めたイベントにこんなに来て頂けるとは思っていなくて、どうもありがとうございます。フライヤーにちょこっと書いてあるのを見ていただけたか、それかここにあるのを見て来て頂けたかと思うんですけれど。私、アニメスタイル編集部の五所と申します。よろしくお願い致します。ライターの廣田さんです。
廣田(以下、廣):
よろしくお願いします。
五:
あと、フライヤーの所にアンドモアって書いていたんですけど、マッドハウスの広報の武井さん。
武(以下、武):
武井と申します。
五:
武井さんからはちょっと、ココで名前出すのはいいけれどフライヤーの方に名前出すのはやめてくれっていうことになってます。
武:
すみません(笑)
客:
すみません、写真は撮ってもいいですか。
五:
武井さんは……。
武:
まあ、適当に、適当に。
五:
じゃあ大丈夫ですよ。それで、今日のテーマなんですけれど、「アニメの本を出すのはこんなに大変 アニメ出版業界クロストーク」っていうことで、取りあえず3人で集まって何か話そう、っていうところから始まったゆるい企画なんですけど。じゃあ、廣田さんから。
廣:
アニメの本を出すのが大変ていうのは、僕が今やってるのが大変なんで、何となくメールに書いたら、じゃあそれがタイトルでいいじゃないって感じになったので、まあ、特に深い意味はありません。アニメの本って、僕は難しいなって思うんで、そこの話が出来ればいいかなって。
五:
廣田さんはライターの方だからそういう話をされて、僕はアニメスタイル編集部ってところにいるので、編集の立場から。アニメスタイルって雑誌があって、今、6号まで出した所なんですけど。例えばけいおん!ならけいおん!でやりたいって言ってこれ(と、目の前にある雑誌を手に取りながら)表紙にするのも、映画をやってる期間中だからこれを表紙にしても大丈夫ですよっていう期間とかがあったりして、そういうような事情とかがあって。人気のある作品なのに、うちに限らず、表紙にならないとか、色んな事情があってできるっていう……あっありがとうございます。(ここでいろはすの差し入れが入る)そういう事情もあったりするので、そういう、編集の方からアニメの本ってこうやってできるっていう話が出来ればと。また武井さんからはスタジオの立場から……。
武:
そうですね。スタジオの立場から。書籍を出すときは、必ず、何かしら素材を提供しますので、そういうときに、裏でどう思っているのかなとか、そういうこともお話できればと思います。
五:
じゃあ、どこら辺からお話を……。
廣:
今、ちょうどけいおん!の表紙の話だったんですけど。色んな雑誌がけいおん!を表紙にしたんですけど、「オトナアニメ」は何故か、けいおん!で……。
五:
そんなとこから話し出すんですか(笑)
武:
はははは。
廣:
あれは僕もちょっと詳しく知らないんですけれど、けいおん!って表紙に出来ないらしいんですね。あと、オトナアニメ年鑑ってあるんですけど、僕もちょっと手伝ったんですけど、あれはサンライズの作品には一言も触れていない。実はそういう、僕もよく分からない、出版社ごとの事情がありまして。でも、オトナアニメ出し続ける以上はTIGER&BUNNYとか、けいおん!とか、無いところで戦わないといけないわけですよ。それがないからこの本売れないんだって言ったらそれは言い訳なんですよ。タイバニも載せられないし、けいおん!も載せられないんだけど、でも、売ると。売って、出し続けると、「あそこの編集部は根性あるなあ」と。思っております。個人的に。ハイ。
五:
オトナアニメはアニメスタイルからすれば競合誌ってわけはでないけれど、紙の雑誌で……。
廣:
僕もこれ、書いてますから。手伝いましたから。
五:
そうですね。ボンズの南社長とか、さっきあそこでトークショーやってましたけど、南社長のインタビューも廣田さんは手伝って……。
廣:
僕は、ネタ起こしって言って、しゃべったことが一字一句残さず全部起こしてあるものがあるんですけれど、それを組み立て直して記事の形にするんです。ただ小黒さんはめちゃくちゃ厳しいので、「これはだめ」って言われて、2回ぐらい書き直したのに結局別のライターが書いて、僕はほんと、最初にまとめるだけになっちゃった。だから編集部ごとに僕みたいなフリーの人間の使い方っていうのは、まったく自由に書けるものもあれば、とても制約が強かったり。アニメスタイルだと小黒さんと編集長の個性が強いんで、合わせて書かなきゃいけないっていう。いろいろありますよね。
五:
そうですね。編集部内の原稿でも、例えば僕の書いた原稿に対してでもそういうのはあります。うちはかなり特殊だと思うんですけど。そうじゃない雑誌でも、例えば日経エンターテイメントっていう雑誌に書くのと、アニメスタイルに書くのと、オトナアニメに書くのとでは、多分それぞれ読者の人がどれくらい知識を持っているのかとか、日経エンターテイメントにあんまりマニアックな原稿を書いて出しても、「いやこれは読者の人はわからないですから……すごいのはわかるけれど、もうちょっと分かりやすい形で出してください」ってなる。
廣:
そうですね。だから、Top Yell(トップエール)っていう、アイドル誌とアニメをちょこっと扱いますっていう雑誌があるんですけど、そこでもけいおん!をやりたいって話があって。けいおん!の演出がどれだけすごいかを書いて欲しい、っていうのは全く僕の好きなようにやらせてもらえたんです。東京Walker別冊で、アニメ特集があったんですけど「廣田さん、けいおん!詳しいですか」「いや、わかんない。一応全部見てますけど」って言ったら、「あ、じゃあけいおん!の記事、6ページ全部お願いします」と。ただその場合は編集部でもうデザインまで上がっちゃってて、字の部分だけあいてるんですよ。この字の部分を埋めて下さいって。ああ、わかりましたと。じゃあキャラクター紹介を……ってよく考えたらけいおん!のこんだけの分量のキャラクター紹介って大変なんですよ。だって、キャラクター性がある意味薄いって言うか。自由度があるからけいおん!は面白いのであって、こんなにいっぱい、20行くらい書いたら逆に面白くないのではない?って。でもまあアニメの本を出す編集部ではないので、そこまでわからないんですよね。だからけいおん!の魅力3つ上げて下さいって言われても、いやまあそれぞれ……それぞれエピソードごとに違うんじゃないでしょうかとか。作画とか言っても、「作画って何ですか」とかいう話になっちゃうし。まあ、フォーマットが違いますよね。
五:
ちなみに、アニメ雑誌でけいおん!のキャラクター紹介を書いたときって言うのは、メーカーチェックっていうものがあってですね。新聞記事っていうのは基本的にインタビュー記事のチェックをしないんですけど、こういう専門誌の場合は、しゃべってもらって、載るときは基本的にその人の名前で載るわけですから、原稿を見せてですね、「こういうふうにまとめたんですけど、これでよろしいですか」って出すんです。男気のある人はそのまま「いいよ」ってなるんですけど、実際僕らでもそうなんですけど、話すときにはちょっといいすぎちゃったかな、ということがある。それをそのまま文字にしてしまうと誰かのことを「馬鹿なんだよね」って言ったときに、その話の流れの中では「馬鹿」って言ってOKなんですけど、それが活字になるとちょっと強烈な印象があったりだとか。あとやっぱり活字だと残ってしまうんで、そういうところをナチュラルになるよう直される。
廣:
そうですね。
五:
けいおん!の場合はキャラクター紹介だとかは……。
廣:
けいおん!はむしろ、編集の方が一般の人に分かりやすいような書き直し方をしていて、それはそのまま、全く直しなしで出ましたね。
◆ネガティブなことをポジティブにまとめる
五:
ネットとかだったらキャラクターの紹介とかが面白お菓子く書かれていて、ああいいな~って思うんですけど、あんまり飛び抜けることを書きすぎると、雑誌に載せるものだとちょっとこれは……て場合もありますよね。多分、武井さんとかだとそれを監修する立場で……。
武:
そうなんですよ。例えばクリエイターインタビューとかだと、クリエイターは校閲に関しては専門家じゃないわけなんですね。作ることが仕事なんで、けっこう口が滑っちゃうこともあります。会ったときに「ああこれは全然だめだ」と思ってしまう人もかなり多いと思いますね。そうするとつい、全部バツ!みたいな感じでアカを入れちゃう人もいるんですよ。そこに対して宣伝としては、出版社の立場もわかるのですが、それはちょっと、戻す前にもう一度考えてもらえませんかって言うのも仕事だったりしますね。クリエイターは結構、まあ良くしゃべるクリエイターもいるんですけど、あんまりしゃべらない人は、うっぷんがたまっちゃってわ~ってしゃべっちゃうときもあるんで、そういうときこそ気をつけないといけないっていうのはありますね。
五:
そうですね。例えば今みたいな場合だと、お話を聞いて、1000字くらいに纏めたものの後半で、微妙な話も含めているものをバツ!って書かれて戻されると、1000字分のスペース空けてるものにバツが付いているから、「後半500字けずりました」っていうと、「じゃあそこは白いままか」っていう。
武:
そうですね。「REDLINE」っていう作品のムックがあったんですけど、あれはプロデュース側がちょっと気を滑らしたっていうところがあって、そのときは結構激しいアカがあったんですね。そういうときは内側とも話をして、先に「ココはバツだけど、ココはありでしょう」っていう話をした上で戻したりっていうことはありますね。なんで、割と内部での相談って言うのが大事になってくるとは思います。
五:
そういうのをまとめるときに言葉通りだと活字にならない、そのときにネガティブなことでもちょっとポジティブにまとめるといいかなって。
廣:
いいかなっていうか、その方が、メーカーも嬉しいし、プロダクションも嬉しいし、現場も荒れないし、いいことづくしなんですよ。でも僕は普段インタビューをしていて「あいつってこうなんだよね」って言ったスタッフさんの空気みたいなもの、現場ってそういうのりでやってんのか、みたいな、「あいつばかだから」「あいつさえいなければ」って言ってるその言葉を入れてあげた方が、より身近な、人間らしさが出ると思うんですよ。ただメーカーさんに会ったら機械的に「馬鹿って言葉をやめて下さい」とか「ネガティブな発言をやめて下さい」とか言われるんだけど、全体から見れば全然ネガティブじゃないんですよ。すごい愛情が伝わってくるんですよ。監督からシリーズディレクターへの気持ちが。「あいつのことだからまた遅れるんじゃない?」とか書いたんだけど、その遅れるっていうのも、メーカーからしてみれば制作が遅れてるっていうイメージもたれたら困りますってことなんだけど、遅れながらがんばって毎週間に合わせてるわけじゃないですか。それってすごいじゃないですか。ということを言いたいなあと、僕はいつもうっぷんがたまっておりまして。
五:
このトークショーをする前に3人でお話した時にも言ってたんですけど、昔のアニメの雑誌であったりアニメのムックであったりとかっていうのはそういう話を……。
廣:
けっこうずけずけ言ってますよ。
武、五:
そうですね。
五:
今の方が割と何でもかんでも見てもらう、チェックしてもらう。
廣:
そうですね。宣伝としての側面を否定できないし。宣伝だったら記事を書いてもいいですよ、インタビューしてもいいですよっていう場合が殆どなんで。アニメスタイルさんなんかは……これってBlu-rayとかって関係したの?(と、目の前の雑誌を指しつつ。)
武:
無料配布?
五:
これは無料ではないですけど、正直なんのきっかけも……。
廣:
それは小黒さんとの信頼関係みたいな……。
五:
そうですね。これは……なんでナデシコ特集を今更って反論とかはありましたけど。特にBlu-rayBOXが出たとかって話じゃなかった。うちの小黒の場合はアニメの編集だけじゃなくて、脚本書いたりですとか、絶望先生の本をうちで出してたりするんですけど、あれも大きなきっかけは、小黒が絶望先生のシリーズ構成で脚本やってるからっていう、そこでつながりが出来たのかなって。絶望先生って原作は講談社さんから出てると思うんで、普通だったら絶望先生のアニメの本出すなら講談社が出すのが普通なんですけどね。大体何でもそうなんですけど、「とらドラ!」だったら……メディアワークス?けいおん!だったら、光文社さん、ハガレンだったらスクウェア・エニックスさん。そうすると、アニメスタイルだったら「あの花」だったらこう……オリジナルアニメだったら比較的出しやすいんですけどね。マッドハウスも結構オリジナルアニメが……。
武:
ありますけど、売れてるアニメがあんまりないんで……(笑)
◆出版社のカラーに合わせて差別化を図る
五:
「REDLINE」なんかはオリジナルで劇場アニメでありますよね。
武:
それは、もちろん、もちろん。「カイバ」のムックとか出るといいですね。誰も知らない(笑)
五:
湯浅政明監督の。初期の手塚の絵みたいなのが「カイバ」なんですけど。「四畳半神話大系」なんかはご存じの方がいるんじゃないですか。
武:
あれはムックを出して頂いたんで。ありがたいです。
五:
湯浅政明監督の中でも一番、面白いけど、誰が買うんだろうってそういうアニメで……(笑)
武:
あんまり言わないで下さい(笑)でも往々にして原作付きの方がアニメの本とかでも売れやすくはありますよね。オリジナルの作品の場合は、オリジナルの作品で明らかに売れてるやつとかはムックになりますけれども。原作付きの場合は原作が売れていればアニメムックを買うって場合もありますからね。
廣:
でも今は出版社ごとにアニメの争奪戦みたいになってるじゃないですか。僕「輪廻のラグランジェ」と非常に深く噛んでるんですけど……。
武:
そうですよね、廣田さん公式のライターですもんね。
廣:
でもイベントとかボランティアでやってたんで、最近ボランティアライターとしてやってるんですけど。そういうので、僕の所まで流れがきちゃう。「ラグランジェの本出したいんですけど」って。「いや、なんで僕のところにくるの」って言ったら、「廣田さん名前クレジットされてるじゃないですか」って。でも僕そんな権限ないんで、結局プロダクションIGさんとか、バンダイビジュアルさんに話を投げるんですけど、やっぱりそれは上層部っていうか、製作委員会で、「じゃあムックはスクエニさんが出そうか」って決まってるんですよ。
五:
確かラグランジェはデザインの本みたいなのが出るんじゃなかったですっけ。
廣:
あれは、カースタイリングさんの方からやりたいって。
五:
その企画は通ったんですね。
廣:
あれはもともとデザインだけの……昔ミードガンダムってあったんだけど、ストーリーとかには触れなくて、デザインの変遷だけを追った本で、「ミードガンダムみたいな本が出したい」とプロダクションIGのプロデューサーさんが言ってて、そこにカースタイリングさんがうまいこと入ってきたというか、「あったらいいですよね」みたいな話がたぶんあったんだと思う。推測ですけど。
五:
そういう切り口を変えて雑誌を出すっていうのはありますよね。例えばですけど、「時をかける少女」っていう細田守監督の映画がありますけど、あれも立派なムックが角川書店さんから出ています。キャストとかスタッフのインタビューがあって、パンフレットよりも充実した情報が入ってるよって本なんですけど、そういうのは1冊あればいいじゃないですか。2冊3冊あっても食い合うだけなんで。最近ではTIGER&BUNNYが、割と……これは僕の勝手な推測ですけど、ウェルカムで、来たところ拒まずで。よっぽど重なる本はだめなのかもしれませんけど、角川書店からも、学研からも出てましたよね。あれは、本を出していいですよ、だめですよってジャッジする人が「いっぱい出してもらっていっぱい広まった方がいいだろうって」いう風に考えてるんですよね。
廣:
サンライズの場合はライツ営業部って言うのがあって、そこでライセンスの管理とかを全部やってるんです。そこがおもちゃとか、ガレージキットに至るまで管理してて、担当者が決まってるんですよ。TIGER&BUNNYも担当してるんですけど、割と行け行けドンドンな感じで。かと思えば慎重に、「この作品はこうなんで、そういうのは困ります」みたいな方もいるし。だからメーカーの担当者がどんな人であるかで本の運命が決まっちゃうみたいなことも無きにしもあらず。
五:
さっきの細田監督の話に戻ると、「サマーウォーズ」では、うちのアニメスタイルだと絵コンテの本を出させてもらってるんですけど、ああいう形だと差別化が図れています。絵コンテの本は角川書店から出さなくてもアニメスタイルから出してもらった方が出版社のカラーにもあってるし、絵コンテ買う人は買うだろうし、ムックとは競合しないだろうって、そういうものを出していけると本当はいいのかなあって。
武:
別の出版社から出た方が広がりがでるっていうのは委員会内でもある話なので、広がりを出そうってことで色んな出版社さんで出す場合と、いわゆる既得権益みたいなところで、そこだけでやろうっていう場合と、両極端に分かれますよね。
廣:
既得権益ありますよね。
武:
ありますよね(笑)
廣:
どことは言いませんけど。どうせあそこが出すんでしょう?って(笑)
武:
そうそうそう、よく言われます。よく出版社さんから。
廣:
そうなるとこっちとしてはあきらめざるを得ない。
五:
それで出ればいいんですけど、たまにあるのが、「そこから出る予定があるんで」って断られるんですけど、そのまま出ないっていう。
武:
権益だけ持ってるんですけどそのままホールドしちゃうっていうパターンが。
五:
そうですね。
◆編集者とクリエイターとの関わり方
廣:
最近自分からこのアニメのムック出したいなって言わないようになったんですけど、たまに編集者から「どうですかね」って相談がくるんですけど、「あそこは出版社がどこどこついてるんで出しづらいんじゃないですか」っていうことを言うんですよ。「だからコンセプト変えて、メイキング寄りの内容にしましょうよ」って。それで半年ぐらいぐるぐる「ちょっと待って下さい」ってなるんですけど、半年あったらアニメ終わっちゃうよ!って。大体今はワンクールなんで、アニメ始まる時にはもう出版社が決まってるんですよね。
武:
そういう時もありますね。
廣:
決まってないときの方が少ないんじゃないですかね。あれどうやって決めてるんですかね。
武:
出版社は、まあ委員会に入っていればそこに決まりますよね。あと違う場合は、オリジナル作品とかの場合は、最初の段階で座組を組むときに「一緒にやっていきましょう」みたいな、そういう話をするときがありますよね。
御:例えば最近の作品だったら「輪るピングドラム」だったと思うんですけど、あれは放映前に幻冬舎さんからスターターブックみたいなものを出して、終わったときもちゃんと出して。
武:
あれなんかはおそらく委員会側が仕掛けたんじゃないかと思いますね。
廣:
輪るピングドラムは池田さんというプロデューサーの方がとても作品を大事にする方で、オトナアニメでも取り上げさせてもらったんですけど。一番困るのはデザイン上がってるのに「この絵のっけるのやめて」って言われるのが(笑)そこはちょっと、いろいろ事情があるのはわかりますけど、僕らはこの絵がいいって思って載っけるんで、別にけなす意味で載っけるんじゃないんでご理解下さいって話をしたら、わかってくれましたけど。
五:
そう分かっていただけるのは、すごくいい方ですよね。
廣:
まあめったにないことで、大体「いや切れって言ったら切ってくれないと困る」みたいな。最悪の場合、僕、ある雑誌で「お前がこの絵を載せるなら雑誌つぶすぞ」って電話がかかってきまして。出版社だったかな……雑誌だったかな。まそういう方もたまにいます。
武:
廣田さんのような方とアニメ制作会社の方が本作りの時に直接話することはほとんどないんですよね。
五:
間にメーカーの方をを挟んでってことですか。
武:
そうですそうです。なので、こちらの意図とメーカーの意図がもう既に違う場合とかもあるし、そこからさらに出版社に行ったときに違う場合もあるし、出版社から大衆の方に伝わるときにも違う場合もあるっていう。けっこうぐるぐる回っちゃうことが最近は多いと思いますね。
五:
伝言ゲームみたいな。
武:
昔はクリエイターとの距離が近かったっていうのもそういうところが関係しているのかなって思います。
廣:
さっき言った「つぶすぞ」っていうのも、もう10年以上前のことなんですけど、あながち悪いことじゃない。そこまで気持ちをぶつけてくれる人ってなかなかいない。アニメーターの方が夜中の3時に電話してきて「俺こんなこと言ってないですよ」って言ってくれたことがあったんですけど、むしろそうやって直接話せて、分かり合えたりケンカ出来たりするのはいいことだなって思いますよ。それを何でもかんでも「あの作品はよかったんですよ」とか、「あそこもみんながんばってくれてよかったです」とか、薄気味の悪い美談にされるよりは、ぶっちゃけて「あそこむちゃくちゃ苦労したんだけど没にされちゃってさ」みたいな方が、僕は「作ってる」って感じがすごいする。でもそれは今ほとんど許されないですよね。
五:
大体新作の特番とかでメインスタッフの人たちがしゃべってたらみんな和気藹々とちゃんと協力していい物作りましたっていう感じなんですけど、人間が集まって作ってるんだからありますよね、まあ、いろいろと。これだけ集まって作ってるんだから……。
武:
ありますよね(笑)
五:
それこそ、こうやって雑誌作るにしてもトラブルとかありつつ、出来たって感じですもんね。むしろだからちょっとこう、トークショーで山川監督がサービス精神がある人だって言ってましたけど、確かに、ああいうこと言う方の方が、いい方が多い。
廣:
やっぱり制作スタジオからしてみれば汗水垂らしてすることなので、お前らに勝手に好き勝手書かれたくねえよみたいな。
武:
いやそれはどっちかというとネットの方に多いと思いますよ。監督とかは、ネットの反応とかで「そんなの君らに書かれる必要性ないよ」ってなることは結構多いと思うんですけどね。
廣:
さきほどおっしゃったように、武井さんと僕は何故かつきあいが長いんですけど。
武:
以前、「マイマイ新子」って作品のムックを作っていただいたんですけど。あのときは監督も結構がっつりと噛んで頂いて。
廣:
最後の最後で、もう、今日投了って時に、監督がどうしても一本の木だけを外したいって。こっちは頼んだ覚えもないんだけど、「木は外して下さい」って。その木の絵をはずしてもらったら1ヶ月伸びるって言われて、電話で説得してね。
武:
大変でしたね。本当に、あのときは。自分でやったんですけれども。
五:
最近アニメ作品の本ってなかなか出ないものって多いですよね。
竹、廣:
多いですね。
五:
「マイマイ新子」も今の流れでいったら出るはずないのに、最終的に本も出ることになって。その本を廣田さんが手がけて。
廣:
あれは武井さんが拾ったの?
武:
あれは総意ですね。みんなで。あと出版社の方も、廣田さんであればってことで。
廣:
あれはすごく嬉しかったんだけど、また疑われるかなって……「こいつ最終的に本書きたいからいろいろやってたんじゃん」って。
五:
本書きたいからやるって、すごい経済効率悪いですよね(笑)
武:
悪すぎですよ(笑)
廣:
あれは、上映する映画館を増やしたかったんで、映画館にどんどん電話していったんですよ。で、地元の映画館でやってくれることになったんで、そこで自分たちも参加しあってイベントとかもやったんですよ。そしたら「マイマイ新子」の片渕監督とか来ちゃって(笑)「あなた今ブラックラグーン作ってるんじゃないの?」って、Ustreamで中継されちゃって、お菓子をお客さんに配ってたんだけど「監督、今お菓子配ってる場合じゃないでしょう」って。でも、それも面白いじゃないですか。自分の作品が好きすぎてイベントに来てお菓子配っちゃうような人なんですよって。人間が作ってるわけだし、いろいろな人がいますよね。厳しい人もいればサービストークしてくれる人もいるんで、僕はそれぞれインタビューは飾り立てしないで、書いていきたいんですけど。
◆アニメ本をどうこだわるか
五:
究極、アニメ作ってる人たちからすると、本はあってもなくてもいいものなんです。アニメの本って出してもそんなに売れない物も多いんで。ゲームの攻略本が売れないっていう話もありますけど、ゲームを買う人はいてもゲームの攻略本を買う人っていうのはよっぽどのデータマニアだったりとか、そこにない情報が欲しいとかっていう奇特な方が多いのかなって気がしていて。それと一緒で、アニメの本って好事家の方が買うものというか……。昔はアニメが放送されたら何かしら本が出るって、それだけで価値があったんですけど、今そういう感じでもなくなってきたんで。僕みたいなアニメの編集に関わっている立場からすると、それはもう色んなものを使わせて欲しいし、話も色んな人に聞かせてもらいたいんですれど、出来ることと出来ないことがあるし、昔ほどアニメの本に対するプライオリティがメーカーやアニメの作り手の中で下がっているっていう現実はあると思うんで、あんまり無茶は言っちゃいけないなあって思いますね。
武:
ネットもあるしね。なんでもありますからね。今。これだってねんぷちついてますもんね。
五:
そうですね。
武:
そういう付加価値があってできるっていう……。
五:
僕は関わっていないんですけど、当時ナデシコって企画が生まれたのにも紆余曲折があって、割とドロドロした、大人の事情的なものもあったって言われてるんです。これだけ時間がたったタイトルなんで、そういうことも少し雑誌に書かれてるんですよ。そういうことも、これだけ時間がたって本が出せたから、そんなことも言えるっていう。ナディアとかだと、もともと宮崎駿監督が企画書を書いてたって話で、それもどこかで活字になってたんですけど、それも今だから割と活字に出来る。編集長とか、メーカーの方の協力とか、それだけ時間がたっても話してくれるクリエイターの方の協力があってこそですね。
廣:
僕、今ムック何冊か関わってるんですけど、その場合は編集プロダクションが間に入って、僕は「あなたはこのページやって」みたいに割り振りされてるんです。それで1回、「書けたんでこれ見て下さい」って言うと、「いやこれは断定過ぎです」って。いやいや本を買ってくれる人はアニメが好きで買ってくれてるのに、「かもしれない」とか、「これは果たしてなんとかであろうか」とかって曖昧な表現僕はしたくないんですよ。本買ってくれる人はアニメが好きで2000円とか払ってるんだから、確定的な情報を書いて堂々と自信を持って世に出すべきだと僕は思っています。だけど、アニメの本をいっぱい作りすぎてる人たちは「こんなこと書いたらメーカーとかプロダクションに監修の段階でけずられてしまう」って恐れすぎなんですよ。堂々と書けばいいじゃんって。これでもし監修で削られたらそこはちゃんと埋めますから大丈夫ですって説得したんですよ。何で僕が説得しなきゃいけないんだろうって思いながら。僕はあなた方に雇われてるのに、あなた方はもっと自信持ってやってってね。「いや素材が無いんです」とか言うんだけど、素材なんて言えば出てきますよと。もちろんプロダクションに作業が発生してしまうとお金が発生してしまうんですけど、そこにその絵があったらファンの空気が盛り上がるんだったら、それはそこに入れるべきなんですよ。だから没になったデザインを入れないで下さいって言われたんですけど、没になったデザインを入れることによって、色んなプロセスを経てこのデザインになったってことがわかるじゃないですか。その方が本が豊かになるじゃないですか。僕は文化って豊かだなってみんなに思って欲しいんです。そういうときに、メーカーさんと話をするんです。没になった物を入れるなって言われますけど、理解して欲しいです、と。ここに至るまでにこういうものがあったんだって言うことによって、そのアニメが好きな人はもっと好きになってくれる。いろいろ考えてる人がいるんだってことを感じて欲しいんですね。そこがいつも戦い。
五:
そこは、例えばうちで言えばアニメの本を作って、買って頂いてって感じなので、あんまりこう、お仕事でやるんだったらそういうことを言わない方がいいっていう考え方もあると思うんですよ。あんまり戦いすぎると、全部おじゃんになってしまうという。
廣:
要するに、まる一冊好きなようにやらせろっていうのとは違っていて、アニメの本を作るのが当たり前ってなってる人たちはなるべく穏便に穏便にしようとしすぎますね。特に編集プロダクションに多いんですけど、「いや廣田さん、コレやばいですよ。削っちゃいましょうよ」「いや、やばくないって」って。それより監修に出したときに何か言われたらそれは話し合えばいいじゃないですか。それを、話し合いを嫌がる。
武:
むしろ話し合いがあった方が、最終的には収まるんですよ。なんだか意図不明なのに「これ下さい」って言われたら怒っちゃう場合がありますよ、クリエイターとしては。「なんでなの?」ってところをなしにぽーんと来て、「枚数少ないからいいでしょ」っていうよりも、枚数多いんだけど、こういう意図があるからこうして下さいって言ったら、クリエイターでもあるし、プロデューサーもその一員なので「まあそれだったら」っていう風になりますよ。ただその一手間がかなり大事で、そのコミュニケーションが無いと、だんだんお互いがだめになってくるっていう、そういう本作りになってしまいますね。
廣:
僕今こういう風にしゃべってますけど、別に怒っているわけじゃなくて(笑)「すみません、こういう形で是非お願いしたいんですけど」ってちゃんと言えば聞いてくれるんで、聞く前にあきらめんなってことは、現場現場で言ってますね。ここで言っても仕方ないんだけど(笑)あなた方が萎縮したら、本自体も萎縮して、ファンに対して申し訳ない本になりますよ、と。お金出して買ってもらうんだから、できるだけ絵を載っけて、出来るだけ情報も載っけてもらいましょうよ、と。だってアニメが好きで、そのアニメのために買ってくれるんだから、ファンの人を大事にしなきゃいけないじゃん。それが仕事ですよ。〆切に間に合って、入稿日に間に合って、発売日に本が出ました、めでたし!じゃないんです。そこを目指しちゃうと絶対いい本にならない。経験して知ってますからね。やっつけで作った本って、僕は買っても次の日には近所の本屋に売りに行きますから。
五:
この中に多分アニメのムックとか買われた方がいると思うんですけど、本当に、開けてみるまでわからないっていう。中見れるのとかあんまりないと思うんですけど。基本こういう、アニメサイドのもの作ってる人間なんで、インタビューが多いのがいいなとか、見たことない資料が多いといいなあって思って作ります。さっきもお話したように、本ってアニメ1作に対して大体1冊とか2冊くらいで、貴重なクリエイターの声とかを聞けるチャンスだと思うんですけど、それをいいなって思って買ったら、各話紹介がちょこっとあって、あとはアンケートがちょこっとだと、個人的にはがっかりだなってことはありますよね。
廣:
アニメ本のテンプレみたいなものがあって、各話紹介、各キャラクター紹介で半分くらいかせいで、後ろのモノクロページはスタッフインタビューでいいでしょうみたいな、なんかそういうのって伝わってくるじゃないですか。
武:
はははは、おざなり感。
廣:
本当はアニメごとに内容が変わってなきゃいけないはず。アニメごとに本を作り上げなきゃいけないはずなんです。ただやりすぎると、「あいつうざい」って話になって(笑)僕も仕事がなくなるんですけど。
五:
多少テンプレ的なこともやりつつ、ちょっと違うことも。
廣:
そう、各話紹介はあるんだけど、多少まめ知識も入れましょうとか。ここは印象的な場面カットをばーんって入れて、見た人が「あ、あの話か」ってわかるようにしようとか。ファンの方の反応も今はネットでわかるじゃないですか。「あのシーン面白かったよね」ってなっていたら、そのシーンをばーんとでっかくフィーチャーして、実はあのシーンの裏にはこんなことがあったみたいな。そうするとより面白くなるじゃないですか。そうやって本は作っていくべきだと思うね。
五:
そうですねえ。「まなびストレート!」って作品があって、オリジナル作品で、それもコミック化はされたと思うんですけど……。
廣:
コミックが先じゃなかったですか。
五:
そうですね。コミックがあって、アニメにもなってっていう流れの作品で、それもうちからムック出させてもらったんです。うちが「こんな本出したいんですけど」って言った時に、幸いほかのところから話が来てなかった。この中で持ってる方っていらっしゃいますかね……(手を上げるお客さんを見て)ああどうも。あれ見ていただくとわかるんですけど、ぜんぜん各話解説とか載っけてないんですね。ぶっちゃけて言うと、当時あの本を作るのにあんまり予算がなかったので、カラーページがないんですけど、カラーページがない代わりに絵コンテみたいな制作資料と、あとインタビューがたくさん載っているんです。「まなびストレート!」っていう監督のいない作品で、シリーズ構成って言われてる人がストーリーディレクター、絵コンテいっぱい描いてる人がテクニカルディレクター。キーアニメーターって人が2人いて、あとレイアウトディレクターって人がいて……なんかディレクターって名前のつく人がいっぱいいて、でもそれをまとめている人は誰なんだ、っていうことがわかんなかったんですけど、インタビューを読んでいるとだんだん最後に纏めている人が誰だっていうのがわかるようになるっていう風に、インタビューを構成したりしたんです。そういう風にできたのもマチ★アソビを主催しているufotableの近藤さんっていう人が昔からアニメの本とかが好きだったから。まなびストレートの本を作るときにスタジオの社長の人がそこまで理解がある方だったら、それでもまあ、載せていいものと悪いものがありますけど、最大限の協力をしてくださったんで、そうするとこちらが作りたいなあって思ってるものをかなりの部分まで作らせていただける。毎回毎回そういうわけではないんですけど。
廣:
それは理想的なパターンですね。
五:
まなびストレートのムックは大して売れなかったんで、本当はそれで売れたら一番いいことなんですけど、往々にして、そういう編集側のこだわりも、読んだ人にとってうれしいとは限らない。
廣:
読者の方が望んでいるものって、アニメによっては薄いっていうか、テンプレに沿ったものでもいいんだよっていう方もたくさんいるのかもしれないなあ。こちらの思いが走りすぎて、なんだかよくわかんない本になっちゃうよりは、おとなしくテンプレ通りにしたほうがいいんだろうなって時は、正直ありますね。女の子がかわいいアニメだったら、版権イラストがいっぱい集まってるとか、絵がいっぱい載ってるとかの方が喜んでくれますよね。
五:
そうですね。そういう本の時でも、その作品が好きな人が作っているか、そうでない人が作っているかはわかりますよね。
武:
クリエイターが話にノッてくるときとノッてこないときとあるんですけど、本気で作ってるときはね、ノッてきますよ。アニメスタイルが好きな監督……荒木監督とかもそうだったんですけど、いらっしゃるので、そういう場合は、一緒にやっていこうとか、いい話をしようとか、そういう風になってきますよね。あと資料を出すときでも、それまで何もやってこなかったモノの資料を出すとなると、新しい発見とかがあったりするんですよね。スタジオをあさっていると、こんなものが出てきたよとかっていうのが、結構毎回あるので、そういう意味ではスタジオの資産としても、すごくありがたいことはありますね。
五:
この本に載るんだったら、これは貴重だって、そういう。
武:
そう、向こうからリクエストがあったからこそ、その貴重さがわかるっていうか。そういうのはありがたい。
◆電子書籍とこれからの雑誌
五:
たぶんそろそろいい時間になってきたと思うんですけど……せっかくなんで、質問を。答えられるか答えられないかはわからないんですけど。われわれが答えられる範囲のことは答えますんで(笑)
質問:
電子書籍とおまけ付の雑誌はどういう風に対応していかなきゃいけないと思いますか。
五:
電子書籍……そうですね。個人的な解釈になるんですけど……。確か動画工房さんだったと思うんですけど、原画と絵コンテを一話につき300円くらいでまるまるアプリとかで取れるようにしてて、それはすごくいいと思うんです。でもぶっちゃけ電子書籍ってそんなに売れてないものが大半だと思うんですよ。女性向けだったらBLとか、男性向けだったらアダルトとか、そういうものは売れてますけれど、わりと大手の出版社でそこそこ売れてる作品を電子書籍にしたけれど、びっくりするくらい売れてないっていう。アニメスタイル的なものも、電子書籍で出したら売れるんじゃない?って言われること、あるそうなんですけど、僕個人的には売れないんじゃないかなって。僕自身が電子書籍あんまり買わない人間なんで。あと、おまけつけるっていったら宝島社さんが有名ですけど、あれはある意味雑誌の敗北というか、おまけなんじゃなくてメインなんですよね。雑誌が。女性向けファッション紙でバッグついてるなら、バッグがメインで、雑誌もよかったら読んでねっていう。作ってる側からしたら寂しいところもありますけど、月間アニメスタイルだって正直、ねんどろいどぷちってすごく人気がある。僕も一緒にやらせていただくまでフィギュアとかぜんぜん詳しくなかったんですけど、ねんどろいどぷちってだけで、よっぽど変なのじゃなければほしいって方いらっしゃると思うんで、ねんどろいどぷちがメインで買ってる方も正直多いと思うんですよ。そういう方の中から「雑誌も読んでみようかな」って読んでみて、それで楽しさに目覚めてくれる人がいればそれはそれでいいですし。雑誌のほうがメインで「こんなフィギュアなんていらないよ」って人が買って、「フィギュアも結構いいな、おまけで集めてみようかな」っていう人と、両方いればいいかなっていう目的でつけさせてもらったので、たぶん雑誌のポテンシャルが落ちてるのかなっていうのが個人的な感想です。
廣:
僕の持論なんですけど、アニメーションってどんなにデジタル化されても最初は紙に書くんですよ。動画なんかも、モニターの中でトレースしたりしちゃったりするんですけど、レイアウトとか、紙に描くって工程は絶対になくならないんです。それって、紙と本って相性がいいのかなって勝手に思い込んでおります。ハイ。
武:
さっきの動画工房さんの話で言うと、うちはマッドハウスですから、制作会社ってことになるんですけど、制作会社が安易に電子書籍に手を出すのは、やめたほうがいいとまでは言わないけれど、ちゃんと検討しないといけないなって思いますね。うちはアニメーションのプロではあっても、本作りのプロではないので、たとえばアプリとかだと結構出版社は絡んでこないので、作ることはできるんですけど、そこでぽんと作ると、プロらしさっていうのが完全に抜けた素人集団の作品になってしまうっていう危惧はあります。それはちょっと気をつけないといけないなって思いますね。制作会社にしかできないことを表現するとかっていうのはありですけどね。
五:
武井さんiPad持ってますけど、iPadで絵コンテ見るのはすごく見やすいんですよね。
武:
丸山さんもよくやってました。
五:
制作現場でも結構そうやって見ている人がいるみたいで、昔は絵コンテ見せてくださいっていうとコピーでどかっときたんですけど、最近は割とPDFで来ることが多くて、PDFで、こういうのを見ると読みやすい。
廣:
最近行った、崖の上のポニョ展で使った原画がすごい量で、それ見るとおおっ!てなりますね。アニメってやっぱすげえんだなって。アニメーターさんが紙の上で鉛筆で描いてるの見るとやっぱりすごく感動しますね。やっぱり手で描く工程がなくならない限り、紙のほうが相性いいんじゃないかなあって、僕は勝手にそう思っています。
五:
そんな感じで。ほかにもう1人か2人質問のある方がいらっしゃったら。
◆地方のイベントだからっこそできること
質問:
地方のイベントだからしゃべることができることってあると思うんですけど、地方のイベントに期待することとかってありますか。
五:
まあ、この会合自体、マチ★アソビじゃなかったらありえませんよね。多分ここで話を聞いてくださった方は、やばい話だけをツイッターでつまんでつぶやいたりしないだろな~って信じてるから僕はしゃべれるんですけど(笑)都内のイベントとかだったら話す内容を詳細に上げたりしなきゃならないんですけど、マチ★アソビって今までそういうのないと思うんですよね。
武:
あんまないですね。
五:
僕らだけじゃなくて、プロデューサーの方々が際どい発言をされてても、あんまりネットで悪い意味で話題になったりとかしないんで。
客:
それは社長が始めに「いいですか、みなさん。みなさんには人を殺す力があります」って言ってるからじゃないですか?
五:
それはあくまで信頼の話なので、書く人は書いちゃうと思う。
廣:
僕は最近マチ★アソビは毎回来て、何かしら喋るようにしているんですけど、なんか気持ちが変わるんですよね。眉山の山頂でしゃべることが多かったんですけど、気持ちが開放されるんで、言ってはならないことをつい。今日もつい熱くなってしまいましたが(笑)東京の空気ってやっぱり冷たいんで、東京で同じような席を設けられても誰かに何かを言われそうだなって(笑)だから僕はこういうイベントは東京からどんどん広がっていくべきだと思っていて、アニメ会社もここにありますけど、ここだけじゃなく日本中に広まるといいなって思いますね。
武:
あんまり制作会社がここに来て喋るってないと思うんで、そのことで変わっていけばいいなって思いますね。やっぱり来るのはメーカーさんが多いので、制作会社もこういうところでお話できれば生の声も聞けるようになるし、いいんじゃなんですかね。
五:
僕は、たぶんアニメスタイルからは出ないと思いますけど、マチ★アソビの本とかどっかから出ないかな~って、ずっと思ったりしてるんで。本とか出ると、全国の人にも「マチ★アソビ」ってあるんだって知ってもらえると思うんです。最近はマチ★アソビが終わったらテレビで特集の番組とかやってますけど、何かしら一般書店に出るようなものがあればいいなと。これはマチ★アソビのガイドブックですけど、こういうのではなくて、うちでおじいちゃんとかおばあちゃんに『「マチ★アソビ」ってこういうイベントで』って伝えられるような、そんな本があればいいなって思ったりします。
廣:
今回、プロダクションIGのプロデューサーを連れてきたんだけど、説明はせず、「来ればわかる」ってだけ言って(笑)ラグランジェの講演会をやったんですけど、声優さんが森谷里美さんで、森谷さんはマチ★アソビ前回出てるんですよ。「マチ★アソビはわたしに任せておきなさい」って。でも、役としては1回、ワンシーン出てきて終わりなんですよね。そんなイベント東京じゃありえない。東京だったら主演声優ってなっちゃうんですよ。それが東京のつまんなさ。地方だからそれができたんです。
五:
こんな感じでよろしかったでしょうか。ありがとうございました。
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