8月8日、『週刊少年ジャンプ』で連載中だった漫画『アクタージュ act-age』の原作者、マツキタツヤ氏が強制わいせつの容疑で逮捕されました。女子中学生に背後から自転車で近づき、追い抜く際に胸を触ったとされています。
『アクタージュ act-age』(以下、アクタージュ)は、原作者と作画担当が別で、作画は宇佐崎しろさんが担当しており、人気作品として知られています。
この事件は私にとって大きくショックを受ける出来事でした。なぜなら、私は性暴力の被害を複数経験している当事者で支援や啓発の活動を続けてきた立場であるとともに、アクタージュのファンだったからです。
アクタージュの新しさ
私は、事件報道以前、アクタージュを次世代の少年漫画だと期待していました。同作は演劇の世界を舞台に、天才的な演技の才能を持つ主人公・夜凪景(よなぎ・けい)が、仲間たちとの出会いで成長していく物語です。演劇に対する向き合い方や、個々人のアイデンティティの描き方は新しい時代の価値観を感じました。
少年漫画はジェンダーバイアス(男はかくあるべし、女はかくあるべしという偏見)の強さを感じることも多いのですが、この作品は「バトル展開」「友情・努力・勝利」などの少年漫画の王道を保ちつつも、「多様性」や「個人の尊重」が意識されていると感じていました。
「男」「女」という表現や、容姿の美しさへの言及は多いですが、「演劇」という題材や役者を取り巻く世界であることから違和感はなく、女性キャラクターは特別性的に扱われるわけでもなく、目立った恋愛描写もなく、作品上のキャラクターの役割でもジェンダーバイアスを強く感じることはありませんでした。
また、演技をするにあたって、キャラクターの強みや生きてきた背景を大切にした展開になっています。「フツーっていっぱいあるんでしょう?」「どんな普通だって選んでいい」など、作中のセリフから自分の中にも多様な自分が存在し、様々な生き方があることを肯定していると感じました。
私はこういう漫画がジャンプにあるのは嬉しいと思って続きを楽しみにしていました。そんな中、今回の事件には、まるで冷水をかけられたような気分になりました。