消費税率引き上げがもたらす影響
ところで、現在(5月、もしくは6月時点)の消費の状況だが、全体的には緩やかな回復基調で推移しており、ようやく前回の消費税率引き上げ前(ただし、駆け込み需要増で消費が激増する前)の水準に戻りつつある。
その一方で、昨年以降、可処分所得の拡大基調は顕著であり、前回の消費税率引き上げ前の水準を上回っている(図表1)。
これは、前回の消費税率引き上げ以降、消費性向の低下(もしくは貯蓄率の上昇)がトレンドとして続いていることを意味している(図表2)。
なお、日本の場合も株価の上昇局面では消費性向が低下、ないしは低下ペースが減速しているので、ある程度の「資産効果」が働いていると考えられる。また、消費の中身だが、昨年終盤より、娯楽(旅行や遊興)や外食といった「嗜好型個人サービス」の消費が大きく回復しつつある(図表3)。
今回の参院選の最大の争点が「社会保障・年金問題」になっていることから、10月の消費税率引き上げ後は消費性向の低下(貯蓄率の上昇)が加速度的に進行する可能性が高いと考える。せっかく前回の消費税率引き上げ前の水準まで消費が戻ってきた状況の中、再び、消費拡大の頭は抑えられることになるだろう。
一方、識者の中には、「消費税率引き上げ自体が日本経済にリーマンショック級の経済危機をもたらす」と警告する向きもあるが、これまでの消費税率引き上げ後の状況を振り返ると、消費税率引き上げ自体が日本経済をクラッシュさせることはないと考える。
むしろ、消費税率引き上げがもたらす影響は、やや大げさにいえば、「社会階層の分断が加速する」ということではなかろうか。