さてこの方針転換は英断といえるが、いくつかの疑問点、また今後検討すべき余地も残されている。
一つは従来の「技能実習制度」との関係である。
労働を目的とする受入れ制度ができるのであれば、技能実習制度は廃止してもよさそうではあるが、二つの制度が並行して存続することになるようだ。
今後は技能実習制度は本来の目的である技術移転を目的とした人々のみを受け入れ、就労目的の外国人は新制度へ移行すべきであるがその道筋は現在では不透明である。
現状で30万人近い技能実習生の処遇を含め、しっかりした移行を考える必要があり、また新たな制度の中身も他国に引けを取らないものにしていく必要がある。
韓国では労働者として単純労働の分野で外国人労働者を受け入れる「雇用許可制」をとっている。この制度では16ヵ国から30万人近い労働者を受け入れており、個別的な課題はあるが全体的には極めて評価が高い。
筆者は5月に外国人受け入れ政策について学ぶため韓国を訪問し、雇用許可制に関する多数の関係者から意見を聞く機会を得た。
雇用許可制は日本の技能実習制度をまねて、研修生として受け入れた産業研修制度が労働法違反などの深刻な問題が多発したことを受けて創設された政府が直接管理する制度である。
韓国政府は雇用許可制の下で働く外国人労働者が抱えるさまざまな課題に対応するため、全国43ヵ所に相談窓口を設けている。
筆者はソウル市北部のウィジョンブ市の施設を訪れたが、6階建ての建物すべてが相談施設で、12ヵ国の言語による雇用許可制による労働者の相談対応に当たるほか、多言語の図書館、集会所、さらには彼らの趣味を支援するための活動まで政府によって行われていることに驚いた。
雇用許可制度によって韓国で働きたいとする海外の希望者は極めて多い。韓国で働くベトナム人やネパール人の話では、両国では希望者が殺到し、その倍率は10倍超えており、その結果、極めて質の高い人材が韓国で働いている。
一方、日本の技能実習制度は人気がなく、高校中退者などの若者も技能時実習生で日本に来日しているという。「良い制度には良い人材が集まる」という事実を認識する必要がある。