籠池理事長が押し切った
森友学園問題が再燃している。財務省の公文書改ざんは論外だ。だが「安倍晋三首相が小学校建設に特別な便宜を図ったのではないか」という本来の疑惑は皮肉にも、改ざん前の文書が明らかになったことで、逆に潔白が証明されつつある。改ざん前文書と会計検査院報告の核心部分を読んでみよう。
森友学園問題は本質的に異なる2つの問題がごちゃまぜになって報じられている。1つは公文書改ざん問題だ。国会は3月27日に財務省理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官の証人喚問をすることを決めた。
佐川氏は刑事訴追を受ける可能性があることを理由に「だれが、なぜ、どのように改ざんしたのか」など肝心な部分で証言を拒否する可能性がある。だが、麻生太郎財務相兼副総理は会見などで「理財局の一部の職員によって書き換えられた」「佐川氏が責任者」と認めている。
細かい事実関係はどうあれ、大筋は「『森友側と価格交渉はなかった』『関係文書は廃棄した』などと語った佐川氏の国会答弁と辻褄を合わせるために、理財局と近畿財務局が組織を挙げて文書を書き換えた」という話ではないか、と私は思う。
いずれにせよ、国会質疑と検察当局の捜査によって真相は明らかになるだろう。
改ざん問題とは別に、森友学園には本来の疑惑があった。それは「安倍首相が森友学園に特別な便宜を図っていたのではないか」という問題である。公文書改ざん問題でも、改ざん前文書に首相の昭恵夫人の名前があったことを理由に安倍政権を追及している。
だが、文書にある昭恵氏の「いい土地ですから、前に進めてください」という発言は近畿財務局の担当者が本人から聞いた言葉ではない。森友学園側(おそらく籠池泰典理事長)が「そう言っていた」という伝聞にすぎない(改ざん前文書=以下同じ=の40ページ。http://www.asahicom.jp/news/esi/ichikijiatesi/moritomo-list/20180312/all.pdf)。
安倍首相は昭恵夫人の言葉自体を「そんなことは言っていない」と否定している。
改ざん前文書に昭恵氏の名前と伝聞による発言があったというだけでは、首相の関与を証明するには不十分だ。新たな証言や証拠が出てくれば別だが、公表された改ざん前文書によって「首相の便宜供与が証明された」とは、とても言えない。
それどころか、改ざん前文書を読むと、財務省近畿財務局と国土交通省大阪航空局が籠池氏に押しまくられていた事情が鮮明に浮かび上がっている。
問題の経緯を振り返ると、もともと問題の土地にはコンクリート片や古い上下水管、生活ゴミなどが地中に埋まっていた。土壌汚染もあった。森友学園はそれを国側の費用負担できれいにしたうえで、いったん土地を借り受けたが、いざ小学校を建設する段になって「新たなゴミが見つかった」と言い出した。2016年3月である。ここから話がこじれていく。
学園側は国に対して「小学校建設の工期が遅延しないよう国による即座のゴミ撤去」を要請したが、大阪航空局は「予算が確保できていない等の理由から即座の対応は困難である旨を学園に回答した」(改ざん前文書の69ページ)。
学園側は2017年4月の小学校開校を目指していた。そこで学園はどうしたか。「本来は国に対して損害賠償請求を行うべきものと考えているが、現実的な問題解決策として早期の土地買受けによる処理案」を提案した(同)。
提案を受けて近畿財務局と大阪航空局は「学園の提案に応じなかった場合、損害賠償に発展すると共に小学校建設の中止による社会問題を惹起する可能性もあるため、…売払いによる問題解決を目指すこととした」(同)。
つまり、開校まで1年という段階で「新たなゴミが出てきた。国が処理しないなら損害賠償で訴えるぞ」と言われて、答えに窮した近畿財務局と大阪航空局がやむなく売却を決断した。
そういう構図である。以上の経過は改ざん前文書に出てくる。