日曜日の夜、人々はどんな気持ちでテレビを観るのか? 逆に、観たくないものは何なのか? それを突き詰めるところから、番組作りが始まる。簡単なようで難しい。だから他局には真似できない。
明確なターゲット
日曜夜の視聴率戦争は、今年も日本テレビが独走している。
2月12日、19時から放送された『世界の果てまでイッテQ!』の2時間特番が視聴率22.2%という驚異的な数字を叩き出した。
同時間帯のNHKの大河ドラマ『おんな城主 直虎』でさえ14.5%。『報道ステーション』降板後、古舘伊知郎が初MCを務めるバラエティ『フルタチさん』(フジテレビ)は6.3%にとどまった。
『イッテQ』は内村光良がスタジオMCを務め、出演者が世界中でロケを行い、体を張って様々なミッションに挑んでいくというシンプルな番組だ。
なかでもお笑い芸人・宮川大輔が世界各地の過激な祭りを体験する「世界で一番盛り上がるのは何祭り?」や、セーラー服に太眉毛がトレードマークのタレント、イモトアヤコによる「珍獣ハンターイモトワールドツアー」が人気企画である。
テレビ離れが叫ばれる昨今で、視聴率20%を超える『イッテQ』の強さの理由はいったい何か。
『日本テレビの「1秒戦略」』の著者で、日テレで宣伝部長や編成局エグゼクティブディレクターを歴任した九州産業大学教授の岩崎達也氏が語る。
「まずはターゲットが明確であるということです。F3層(50歳以上の女性)とM3層(50歳以上の男性)の多くは大河ドラマを見ます。『イッテQ』はT層(10代男女)やF1層(20~34歳)の一部、F2層(35~49歳女性)といったファミリー層をメインターゲットにしています。
『イッテQ』と大河ドラマだけで、ほとんどの視聴者をカバーしている、そういう視聴習慣が日曜夜にきっちり出来上がっています」
広告代理店関係者もこう指摘する。
「視聴者層を13歳から59歳に限れば、『直虎』(2月12日)の視聴率は3.2%。一方の『イッテQ』は18.2%です。視聴者の男女比もだいたい半々で、年代の構成比も20代男性がやや少ないのですが、どの年代にも偏りがありません」
日曜の夜は家族で日テレを見る、それがお茶の間の定番になっているのだ。今回の『イッテQ』の高視聴率はその表れなのである。
同番組の立ち上げにも関わった日テレの加藤幸二郎制作局長が言う。
「地デジの普及でテレビが大画面になったことと、日本テレビが作る番組がマッチしたという幸運があると思います。大画面のテレビは、各家庭の各部屋に1台ずつあるわけじゃありません。リビングで家族一緒にテレビを観る営みが、日本の家庭で復活しつつあるのだと思います。
また、不幸にも発生した東日本大震災が家族のことを考える契機になりました。それゆえに家族で笑いながら観られる番組が、時代と嚙み合ったのでしょう」
日曜の夜だからこそ
日曜の夜は1週間のうち、もっともテレビを見る人が多いと言われている時間帯である。
ここを制すために日テレは「縦の流れ」を作り上げた。
夕方5時半に国民的番組である『笑点』が始まり、『真相報道バンキシャ!』、『ザ!鉄腕!DASH!!』、『イッテQ』、『行列のできる法律相談所』、『おしゃれイズム』と続く。
いずれも幅広い世代を対象にした番組であり、すべて10年以上続く長寿番組で、しかも視聴率10%台をキープしている。チャンネルを変えるスキマがないのだ。
「視聴の流れを意識した編成戦略を日テレは行っています。日曜夜の現在の形ができるまで改善に次ぐ改善を加えて、黄金のラインナップができあがりました」(岩崎氏)
では、『家族』を惹きつけるために、どんな工夫がなされているのか。