2015.08.18

これは戦争の引き金になる「禁じ手」だ!
人民元切り下げが世界経済にもたらすリスク

【PHOTO】gettyimages

恐るべき苦境

栄枯盛衰――。第2次世界大戦の終結から70年の節目を迎えた先週のこと。5年前に、名目GDP(国内総生産)で日本を抜いて世界第2位に躍り出て、経済大国の名をほしいままにしてきた中国の退潮を象徴する出来事が起きた。

先週木曜日(13日)までの3日間の累計で約4.5%に達した人民元の切り下げだ。中国は懸命に否定しているが、人民元を低めに誘導し、輸出を伸ばそうと目論んでいることは明らかである。

だが、周知の通り、通貨安誘導は「近隣窮乏化策」とも呼ばれ、かつてブロック経済を招いて世界大戦の引き金を引いた。経済政策の禁じ手だ。

その禁じ手をあえて選択せざるを得なかったところに、中国指導部の苦境が象徴されている。成長鈍化を「新常態」と言いくるめて、実質GDPで7%の成長を維持するとしてきたものの、その達成は困難で、力で抑え込んできた不満が爆発して社会不安に発展しかねない状況にあるのだ。

リーマンショックや中国バブルの崩壊に直面しながら、中国は強引な空ぶかしを繰り返して問題の先送りを続けてきた。その経済の実態は、一体どうなっているのだろうか。歴史的な節目を迎えた中国の実情を探ってみよう。

各地の株式市場は先週水曜日(8月12日)、時ならぬ世界同時株安の様相を呈した。中国の中央銀行にあたる中国人民銀行が、2日連続で為替レートの目安となる基準値を引き下げたことを受けて、人民元相場がほぼ4年ぶりの安値をつけたことが引き金だった。

日経平均株価は一時400円を超す下げを記録。上海、韓国、インドネシア、ベトナム、シンガポールなどのアジア株指数は全面安となった。さらに株安の連鎖は、欧州に波及。独DAX指数が約3%の下落を記録した。米国でも、ダウ工業株30種平均が一時300ドル近く下げて、年初来安値を更新する場面があった。

突然の相場急落に、世界各地で中国を非難する声が沸き上がった。批判に共通していたのは、中国が鈍化した成長力を元安誘導による輸出拡大で補おうとしているというものだ。日本の証券アナリストからは「市場に驚きを与えてまで景気刺激に注力しなければならないほど、中国経済は悪化している」と指摘する声があがった。

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