AIIB(アジア・インフラ投資銀行)参加をめぐる日本の損得勘定

日本とアメリカが仕切ったアジア開発銀行(ADB)はどうなる? photo Getty Images

中国台頭、米国後退、日本混迷

通称「AIIB」、アジア・インフラ投資銀行は3月31日で創立メンバー参加国の申し込みが締め切られた。

AIIB設立は、中国が発案した構想であり、詳細は未定であるものの、議決権は中国が突出して最大(半分前後と予想される)、本部所在地は中国、トップ(総裁?)も中国人となることが予想されている。

ちなみに、同じくアジア地域を対象とする既存の国際金融機関であるアジア開発銀行(通称「ADB」)は、総裁ポストは歴代主に財務省系の日本人であるが、本部所在地はフィリピンのマニラ、出資比率はアメリカと日本が並んで15.7%ずつでトップだ。

AIIB構想に対しては、ADBと役割が重複することと、中国が主導権を持ちそうな「ガバナンス体制が不透明であること」を理由に、アメリカと日本が反対し、不参加の立場を採ってきた。

ところが、主要先進国では、イギリスが参加を表明し、その後、フランス、ドイツなど欧州の先進国も参加に手を上げて、ついにはオーストラリアも参加表明するに至った。

日本政府(主として財務省?)としては、これら先進国の参加は想定外であったかも知れない。

アジア地域のインフラ投資は、今後しばらくの間、大きなビジネスの機会につながることが確実だ。また、中国の経済的影響力が増していくことも、たぶん間違いない。中国の「経済成長率7%(年率)」を額面通りに信じるなら、10年後には中国のGDPは2倍になる訳で、現在の日本のGDP以上の経済活動が新たに発生するのだ。

インフラ関連のビジネスは、主にプロジェクトへの入札の形で受注競争が行われるが、こうした入札にあって、ファイナンス・オファー(金融の提供条件)の優劣はしばしば決定的な影響力を持つ。AIIBが資金提供し、主に中国企業が応札するプロジェクトであっても、欧州などの企業が参加する余地は多々ある訳で、彼らが自国企業のビジネス上の競争条件のために、AIIBに少しでも影響力を持っておきたいと判断してもおかしくない。

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