【舛添都知事日記】無風の総選挙で気になったポピュリズムの行方

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安倍長期政権への展望が開かれた

衆議院選挙は、予想通り自公の圧勝に終わった。自民291、公明35、与党合計326議席で、3分の2の多数を維持した。一方、野党は、民主73、維新41、共産21、次世代2、生活2、社民2で、さらに諸派・無所属9という結果であった。

まずは、突然の解散・総選挙で、何のための解散か分からないという意見が多数ある中での風の吹かない選挙であった。師走の忙しいときということもあって、有権者の関心を引かず、それが戦後最低の52%程度の投票率となって表れた。

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そして、選挙の後も、与野党の力関係がほとんど変わらないという現状維持である。民主党は微増したものの、海江田代表が落選した。また、第三極は大きく後退したが、維新は現状より1議席減らすのみで、予想以上の健闘であった。また、反自民の受け皿として、共産党が倍増以上に躍進した。

選挙の争点も、目立ったものはなく、アベノミクス、そして安倍政権2年間の評価ということが最大のテーマとなった。有権者は、安倍政権を是としたのであり、安倍長期政権への展望も開かれたと言えよう。

小選挙区制度の問題は首相候補の人材不足

東京のいくつかの選挙区で、自公候補の応援演説をおこなったが、選挙の盛り上がりは欠け、有権者の関心は薄く、私の経験からしても、このような選挙はあまり例がない。各種の世論調査を見ても、今回の解散総選挙の断行については疑問視する声が強く、また選挙後の国会については与野党拮抗を望む者が多かった。

しかし、そのような声とはあまり関係のない結果が出てしまった。その意味では、安倍首相の戦略が功を奏したとも言える。野党は、十分な準備ができないまま選挙戦に突入してしまい、野党第一党の民主党は、全選挙区に候補者を立てることができず、また野党間の選挙協力もあまりうまくいかなかった。

小選挙区・比例代表並立制度という今の選挙制度が定着してきているが、この制度は日本の政治を大きく変えている。いずれの制度にしても完璧なものはなく、それぞれの制度に一長一短がある。

かつての中選挙区制度においては、一つの選挙区で5議席を争えば、政権党の自民党の中で5大派閥ができていた。野党が弱いときには、自民党政権は、あたかも5政党の連立政権のような様相を呈した。かつて三角大福中と呼ばれた5大派閥時代には、ハト派の三木、タカ派の中曽根と、政策的にも多様な価値観が反映されていた。

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しかし、小選挙区制度下では、政党助成金も導入され、党執行部がカネと人事を握ることによって、一枚岩的な党運営となっている。主流派・反主流派という区別すらできかねるような状況である。

かつて派閥は、カネ集めをめぐって腐敗の温床として厳しく批判されたが、党内で切磋琢磨するという利点もあったことを忘れてはならない。派閥は、新人議員の教育訓練の場であり、カネとポストの配分単位であった。派閥の領袖は総裁、つまり総理候補として政策を磨き、最終ゴールに向けて日々研鑽を重ねた。三木、田中、大平、福田、中曽根、いずれも首相になっている。

ところが、現在の自民党はどうであろうか。たとえば、町村、額賀、二階の3人を見ても、派閥の領袖が首相候補と言えるかは疑問である。端的に言えば、ポスト安倍を狙う有力候補が林立するという状況にはほど遠いのである。

つまり、田中にダーティイメージがつけば、クリーン三木がいるというかつてとは違う。極論すれば、最高指導者候補となる人材の不足という問題があるのである。派閥で競争する中選挙区制度ではなく、執行部が牛耳る小選挙区制度では、実はこのような問題が生じているのである。

東京が日本全体を牽引して、日本の再生の先頭に立つ

今回の無風選挙で気になったのは、テレポリティクス、そしてポピュリズムの行方である。急な選挙ということもあって、テレビの政治討論番組も振るわず、ネット選挙も十分には展開されなかった。そのような冷めた政治が、今後とも続くのか、あるいはやはりポピュリズムは健在なのか。幸い、各党とも若い優秀な人材を発掘してきており、それは、ただテレビ受けすればよいといったタレント候補探しとは異なる。

テレポリティクスの延長が民主党政権の誕生である。政権交代が可能な制度として小選挙区制を導入し、その成果として政権交代を実現したのに、能力不足でわずか3年3ヵ月で潰えてしまった。せめて2期8年間続けていれば、政権交代の定着化という成果も生まれたかもしれない。今回の自公の大勝には、民主党政権の失敗がある。民主党は、一度解党して、ほかの野党と協力して、自民党に代わる政党づくりをはじめるべきかもしれない。

また、自民党は、複数のリーダーがポスト安倍を競うような状況をつくり出すべきである。さもないと、安倍政権の突然の変調に対応できなくなる。2017年4月には消費税が10%に上がる。そのときに、経済状況が今以上に悪ければどうするのか。国際情勢も、かならずしも我が国に有利なことばかりではない。勝って兜の緒を締めよ、自民党はその気持ちを持たなければならない。

この選挙の結果を受けて、東京都知事として、「東京世界一」という大きな目標に向かって、都議会と協力しながら都政を前へ進めていく。年内に、今後10年間の政策を網羅した長期ビジョンを発表する。東京が日本全体を牽引して、日本の再生の先頭に立つ覚悟である。

 

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