奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第11回】 「自分は嫌われている」と初めて知った日の衝撃

【第10回】はこちらをご覧ください。

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「ガン無視」を続ける息子の異様な行動

 この正月、年明けも早々に、僕は息子が取ったある行動に驚かされることになった。

 1月2日、僕の実家を訪ねるため、息子と電車に乗っていたときのことだ。車内は、混雑しているというほどではなかったが、晴れ着を着た若い女性たちや、有名なお寺や神社に初詣に行くらしい家族連れなどで席が埋まっていた。やむなく僕たちは並んで立ち、僕は左手で吊革に掴まって、右手で息子の手を握っていた。

 すると突然、斜め前の座席に座っていた、息子と同年代くらいの可愛い男の子がハッとしたように視線を上げ、こちらを見た。そして、息子に声をかけてきた。

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 「よう、奥村!」

 男の子はニコニコして息子を見つめている。僕は隣に立つ息子に「学校の友達?」と聞いてみた。しかし、次の瞬間、息子は思わぬ行動を取った。

 男の子に横目でチラッと一瞥(いちべつ)をくれただけで、後は視線を正面に戻してしまったのである。顔は完全に無表情。男の子に返事もしない。その後も、男の子は何度か、「奥村、どこに行くの?」などと声をかけてきたが、息子は一言も発しなかった。しまいには、プイッと横を向いてしまったのである。

 いわゆる「ガン無視」である。気の良さそうな男の子は、かわいそうに、はっきり動揺していた。それでも、「あれ、お、奥村だよね・・・」などと口ごもりながら、しきりに息子に声をかけてきた。息子はそれでも男の子の存在を黙殺し続けた。明らかに異様だった。

 そんな空気に耐えられなくなったのは僕の方だった。息子の代わりに、男の子に「うちの子と学校で同じクラスなのかな?」と話しかけてみた。すると男の子は「いいえ、水泳クラブで一緒なんです」と答え、自分の名前をハキハキとした口調で教えてくれた。小学生なのにきちんと自己紹介ができることに、ちょっと感心した。

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