先週からあるiPhoneアプリケーションが世界中で話題を呼んでいます。それが写真共有アプリケーションのInstagramです。同アプリはApp Store公開わずか1週間で10万ダウンロード(参考までにFoursquareは6万のユーザーを集めるのに7ヶ月かかっています*)を成し遂げ、この瞬間もさらに成長をしています。
今までiPhone上で写真を共有するサービスは数多くありましたが、その中でInstagramを輝かせる魅力は、美しい写真を共有することで、あなたのソーシャルグラフ(人との繋がり)が広がっていくことにあります。
本日はそんなInstagramの魅力、そして何故Instagramが生まれたのか?スポットライトの当たりづらい共同創業者の舞台裏ストーリーをメインにご紹介をしたいと思います。
写真共有を再発明するアプリケーションが登場
同サービスの原点、そしてコンセプトは「昔ながらのポラロイドカメラ」。Instagramは、美しい写真をシンプルに友達と共有すること「一点」にフォーカスを当てたアプリケーションです。そのコンセプトを土台に、同サービスを急成長させた仕掛けは主に二つあります:写真の「加工」と「共有」機能です。
無料で提供されるInstagramを使用して撮影した写真の上には(以前撮影した写真の加工も可能)、11種類のフィルターから選んだ自分好みのエフェックトを1タップで素早く重ねることが出来ます。そもそもiPhone 4で撮影した写真の解像度自体が極めて高いのですが、Instagramを使用することで単純な解像度を超えた「遊び要素」が写真に付加されるのです。
また、Instagramの写真共有の概念は、Facebookの様に既存の友達だけに縛られません。同サービスが短期間でここまでスケール出来た大きな理由は、「美しい写真をベースにソーシャルグラフ自体を拡張したこと」にあるのです。
ユーザーは自慢の写真を外部のソーシャルサービスであるTwitter, Facebook, Flickr, Tumblrを通して、一瞬で友達へ共有することが可能。またそれだけではなく、アプリ内にもフォロー機能、Like機能が提供されることで、「写真を通した人との新たな出会い」をInstgramは生み出しています。
従来、Twitterへ写真を共有するアプリケーション(Tweetphoto, YFrog etc)はたくさんありましたが、Instagramほど様々な外部サービスとスムーズな連携を計ったサービスは極めて稀です。
また、それを共有する際には写真にコメント、そして位置情報を加えることも出来ます。残したい出会いを瞬間的にキャプチャーし、自分流にカスタマイズ、そしてそれらを共有して人との繋がりも生み出すアプリケーション、それがInstagramなのです。
当初のサービスを「捨てる」ことで生まれる価値がある
予想以上の急成長から注目を集めるInstagramですが、その舞台裏には長いストーリーがあります。
同社を創業したKevin Systrom氏はスタンフォード大学卒業後、後にTwitterとなるOdeoでインターンを経験後、Googleにて2年勤務し、その後はプロダクトマネージャーとしてNextstop(位置情報サービスを開発するスタートアップ)に移動しました。
「Instagram自体は8週間の開発期間で完成したんだけど、実はこのプロダクト、一年以上の試行錯誤の産物なんだ」、そうKevin氏は語っています。
同氏はNextstop勤務中、FoursquareとMafia Wars(大手ソーシャルゲーム会社、Zyngaの人気ゲームタイトル)を融合した”Burbn”というサービスを自身で思いつき、プロトタイプを開発します。そして2010年3月時点に、Burbnはプロトタイプ段階から、Baseline VenturesとAndreessen Horowitz にそのアイデアを気に入られ、約5000万円の出資を受けます*。
そしてその後、Kevin氏は共同創業者のMike Krieger氏(Kevin氏同様スタンフォード卒)と出会い、Burbnをより洗練化、iPhoneアプリをリリースするステージまで急ピッチで準備を進めました。
しかし、リリース時点でKevin氏とMike氏はあることに気づき、従来のアイデアを捨て去ります。「僕たちは起業する際に、得意分野に関しては絶対に負けない会社を創ることを決めて、位置情報と写真共有を絡めたサービス(Burbon)を創ろうとしたんだ。
だけど、がむしゃらに開発する過程で、Burbnは余分な機能が多すぎでパッとしないことに気がついたんだよ。そこでゼロからのスタートになってしまったけど、よりシンプルに写真共有を重視したInstagramに切り替えたんだ」、そうKevin氏は振り返っています。
そして当初のアイデアが生まれてから1年後、試行錯誤を経てInstagramは世界に衝撃を与えるデビューを果たしたのです。
Instagramは私達の「習慣」さえも変革するかもしれない
もちろんInstagram同様にモバイルを活用して写真を共有するアプリケーションは市場に多数存在します(Treehouse, Photoshare, Twitpic等々)。また、この原稿を書いている際にも香港発のスタートアップ”Steply”が開発したPhototreatsというアプリケーションが4日間で10万ダウンロードされたニュースが入ってきています*。
しかし、その多くとInstagramが一線を画す点、それは同サービスがユーザーに「自由に写真を撮影する喜び」を提供したことにあります。
従来写真を撮る習慣がなかった人(綺麗な写真を撮ることにハードルを感じていた人々)も、Instagramで写真をカスタマイズすることによって、より頻繁に写真を撮る流れが生まれるのでは?そう私は考えています。
iPhoneアプリケーションの凄さは、人々の日常に密着することで人間のライフスタイルを変える可能性があること。Instagramは、私達の写真を撮影する習慣自体を変革するアプリケーションになるかもしれません。
*Face-to-Face Socializing Starts With a Mobile Post
*Burbn Funded for HTML 5 Version of Foursquare
*写真でチェックインするiPhone向け写真共有アプリPhototreatsが4日で10万ダウンロードを達成!