「ゴジラ-1.0」、じつは「時代考証」の観点から見ても「ものすごい映画」だったといえるワケ

私はこれまで、30年近くにわたって元日本海軍を中心に、戦争体験者や遺族へのインタビューを重ね、一次資料を蒐集し、あるいは目を通して、何冊かの本を上梓してきた。このことが縁となって、テレビ番組や映画の考証、監修を依頼されることも時々ある。だが、携わった作品の細部を見て考証的な誤りや矛盾をつぶしていくことを繰り返すうち、自分が関わっていない映画やドラマを見ても、登場人物の経歴を逆算して見る困った習慣がついてしまった。

今回は、話題の旧海軍軍人が活躍する映画「ゴジラ-1.0」の登場人物を中心に、それぞれの経歴について重箱の隅をつついてみる。(一部ネタバレを含みます。未見の方はご注意ください)

映画『ゴジラ-1.0』公式サイトより

「ほんとうらしく見せる」

皆さんは「ゴジラ-1.0」をご覧になっただろうか。これはすごい映画だ。私のように1960年代のゴジラ映画を見て育った世代から、昔のゴジラを知らない世代、あるいは怪獣映画に興味のなかった人でも十分に楽しめると思う。

舞台は終戦直後の日本。敗戦で無(0)に帰してしまった東京にゴジラが上陸し、さらに破壊し尽くす。軍事力を失い、冷戦構造を背景に孤立無援の日本は、そのゴジラに、いまは民間人となった旧軍の軍人たちが、持てる力と知恵を振り絞って立ち向かう。CGのゴジラはもちろん、人間ドラマの部分もしっかりしていて、登場する旧軍人や兵器の描写にもぬかりはない。

「海神作戦」で活躍した駆逐艦欅(けやき)
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映画そのものについては多くの評論や論考がすでに発表されているから、ここでは深く触れないが、ゴジラと戦う主要登場人物について、映画から読み取れるそれぞれの経歴をひもといてみよう。

私がこれまでに考証や監修という形でお手伝いした映像作品には、NHK朝ドラ「おひさま」(2011年・軍事考証)、NHKドラマスペシャル「真珠湾からの帰還」(2011年・監修)、NHK「零戦~搭乗員たちが見つめた太平洋戦争」(2013年・監修)、NHK世界のドキュメンタリー「チャーチルを裏切った男たち」(2012年・日本語版監修)、近年では2021年のNHK「池上彰の零戦講座」(監修)、2023年のNHK-BS「特攻4000人 生と死 そして記憶」(取材協力)、中国・台湾共同制作のドキュメンタリー「天水空戰」(出演、日本側考証)などがある。映画も、山崎貴監督の作品「永遠の0」(2013年)などの作品で、戦時監修、考証をさせていただいた。

ドキュメンタリー作品の場合は番組の流れに沿って、当事者の証言や一次資料をもとに、用字用語の端々まで正確を期して考証メモを作成、気づいた点をディレクターに直接進言する。反対に、そもそもがフィクションであるドラマや映画の場合は、物語に説得力を持たせるために「ほんとうらしく見えるよう」、ドキュメンタリーとはまた違ったアプローチをする。

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