この時期に内定がなければ、就職はかなり厳しい。就職浪人をするか、卒業してフリーターになるか、決断しなければならない。人生のスタートでつまずけば、その先はとても厳しいものになる。
両親の方がノイローゼに
「東大生の場合、それなりに名の通った大手企業以外は、親や周囲の手前、またプライドのせいで受けにくいという暗黙の縛りがある。『大手病』というヤツです。僕も昨年はそれで失敗した。留年した今年は初めて名前を聞いたような企業も受けましたが、全部ダメでした。今は大学院への進学を考えています」(東大文学部4年男子)
もう秋がそこまできているというのに、就職が決まらず頭を抱えている学生がちまたに溢れている。読売新聞社が国の調査と独自調査を合わせて推算した'09年度新卒の就職浪人数は約11万人。内訳は、就職が決まらないまま卒業する学生が3万1000人、就職が決まらないため留年を選ぶ学生が7万9000人だ。
卒業予定者56万8000人のうちの11万人だから、ほぼ5人に1人が就職浪人ということになる。これに前年度以前の就職浪人を加えたら、浪人の数は数十万人単位になる。いつ暴動が起きてもおかしくないほどの数字なのだ。
「今年は昨年に比べて、より厳しい。ウチで取っているデータでも、去年の同時期よりひどい数字が出ています」(就職情報サイト担当者)
こうした状況だけに、学生から聞こえてくるのは悲鳴ばかりだ。慶応大学経済学部の4年男子が言う。
「不動産デベロッパーを中心に20社強受けましたが、内定はゼロです。最終面接まではいったんですが、落とされました。コミュニケーション能力をうまくアピールできなかったのが敗因だと思っています。知り合いの中には80社受けても内定がもらえず、大学院進学を選んだ人もいます。
慶応経済の場合、ゼミに入れた人はほぼ内定をもらえるんです。ただ、ゼミの数が圧倒的に足りなくて、学生の4割はゼミに入れずあぶれている。そうした学生のうちのさらに3~4割が今も未内定で、僕もその一人です」
一橋大学社会学部の4年男子は、30社前後を落ちたあと、就活そのものをやめたという。
「就活ではどうも『世の中をナメている』と思われたようで、ことごとく面接で蹴られました。受けているうちに自分はサラリーマンには向いていない気がしてきたので、大学院に進むことにしました。その後はライターを目指すか、最悪、教員免許をとって教師になるつもりです。
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危機感は両親のほうが抱いていて、今、ノイローゼ気味なんです。僕は兄弟では一番できがよかったのに就職が決まらないものだから、自分たちの育て方が悪かったのかと悩んで、僕に内緒でカウンセリングに通っているみたいです」
立教大学でも、校舎の前には、「4年次生」向けの面接対策講座の立て看板があった。キャリアセンターには学生が途絶えることがない。
センターの張り紙には、「就職が決まらないまま卒業された方へ」とある。未内定者のための職業訓練とその間の生活費補助の案内だ。センターの担当者は語る。