世界に強烈な衝撃を与えた「This Is America」とは何だったのか

2億回再生、社会問題を痛烈に描いた

「This Is America」の衝撃

「これがアメリカだ」

そう名付けられた一曲のミュージックビデオが、世界中に大きな衝撃をもたらした。

チャイルディッシュ・ガンビーノが公開したその曲「This Is America」は、彼のツイッターで告知されると瞬く間に拡散された。

銃規制や人種差別など、アメリカ社会が抱える問題を痛烈に描き出したミュージックビデオは、公開後1週間で8500万回、1ヵ月で2億回以上の再生回数を叩き出している。

同曲は全米シングルヒットチャートの「Billboard Hot 100」で初登場1位となり、その後も2週連続1位を記録した。

この「This Is America」の衝撃とは何だったのか。

 

トップレベルの評価と人気を集める人物

それを紐解くためには、まず、チャイルディッシュ・ガンビーノの足跡を辿る必要がある。

「チャイルディッシュ・ガンビーノ」は、俳優ドナルド・グローヴァーがミュージシャンとして活動する際のステージネームだ。これまでに3枚のアルバムをリリースし、2016年に発表した『アウェイクン、マイ・ラヴ!』ではグラミー賞を受賞している。

一方、俳優としてのドナルド・グローヴァーは『オデッセイ』や『スパイダーマン:ホームカミング』、先日公開されたばかりの『ハン・ソロ/スターウォーズ・ストーリー』など、人気映画の数々に出演。

コメディアンや脚本家や監督としても活躍し、主演と脚本とプロデュースを手掛けた連続ドラマ『アトランタ』もヒット。同作はゴールデングローブ賞とエミー賞の双方で主要部門を受賞している。

すなわち、現在34歳のドナルド・グローヴァーは、ミュージシャンとしても、俳優、脚本家、監督としても、現在トップレベルの評価と人気を集めている黒人エンターテイナー/クリエイターなのである。

ドナルド・グローヴァー〔PHOTO〕gettyimages

そして彼は今年1月のグラミー賞授賞式にて「チャイルディッシュ・ガンビーノ」としての活動を休止することを宣言。次のアルバムが最後の作品となると予告した。

また、3月からは約2年半ぶりとなる『アトランタ』のシーズン2が開始。5月5日に彼は自らがホストをつとめたアメリカの人気番組『サタデー・ナイト・ライブ』に出演してこの曲を初披露、ほぼ同時にこの曲のミュージックビデオを公開した。

つまり、多忙を極める彼が「チャイルディッシュ・ガンビーノ」名義の集大成的なプロジェクトとなる次作アルバムへの最初のアクションとして起こしたのが、この「This Is America」の発表だった。

そういった意味でも、大きな注目を集める下地はすでにあったわけだ。

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