川を渡り向かってきた!北海道・朱鞠内湖では釣り人が襲われ死亡「記者が遭遇した殺人ヒグマ」戦慄体験
親子だろうか。2頭のヒグマが森の中から現れ、のんびりと川岸を歩いている。東京に住む記者にとって野生のヒグマは珍しい。スマートフォンで写真を撮っていた、その時。記者の姿を認めたヒグマが、浅い川を渡りこちらに向かってきた!
5月14日、54歳の男性が殺人ヒグマに襲われ命を落とすという事件が起きた。北海道幌加内町の朱鞠内湖(しゅまりないこ)に釣りに来ていた、道内に住む西川俊宏さんが行方不明に。釣り場の近くから性別がわからないほど損傷した頭部と、駆除されたヒグマの体内からは人体の一部が見つかったのだ。
「西川さんは14日早朝5時半ごろ、ガイドに朱鞠内湖の釣り場まで船で送ってもらったそうです。午前9時ごろガイドが迎えに行くと、西川さんの姿はなく携帯電話もつながらなかったとか。ガイドは30mほど離れた場所にいた、胴長靴をくわえたヒグマを発見。110番通報します。
翌15日午後2時、地元の猟友会や消防隊員ら約15人が現場に向かい顔面が激しくキズつけられた人間の頭部を見つけました。さらに1時間後、体長約1.5mのオスのヒグマを確認し駆除したんです。ヒグマの胃からは、肉片や骨など9kgの内容物が出てきました」(全国紙社会部記者)
ヒグマが車を追いかけてきた!
警察はDNA鑑定などから、遺体は西川さんと特定。免許証など、身元を確認できるものも見つかっている。幌加内町は安全が確認できるまで、朱鞠内湖での釣り船の運行を見合わせるという。
「北海道ではヒグマの目撃情報が相次いでいます。室蘭市では住宅街の道路を堂々と歩く姿がたびたび確認されており、市は一部に『ヒグマ注意報』を発令。厚岸町では散歩中の女性が襲われ、大ケガを負いました」(同前)
記者がヒグマを見かけたのは、昨年8月に知床半島を訪れた時だ。朱鞠内湖で駆除されたのと同じくらいの大きさと、一回り小さい2頭のヒグマが道路沿いの川岸を歩いていた。
記者がスマホで撮影していると、ヒグマは悠然と川を渡り歩行方向をこちらに向ける。その距離10mほど。恐怖を感じた記者は、慌てて近くに停めてあったレンタカーへ。車を急発進させると、なんとヒグマは走って追ってきたのだ。周囲に人や車がいなかったので、猛スピードでその場から去るとヒグマの姿はどんどん遠ざかっていく。安全な場所まで移動し車を停めると、腋の下は汗でびっしょりになっていた。
その日の夜、宿泊していた地元出身のオーナーに昼間の体験を話すと、こう注意された。
「ヒグマは逃げるものを追う習性があるので、絶対に慌てて走り出してはいけません。ヒグマは巨体ながら走るのが速い(時速40kmほど)。人間では逃げきれないんです。万が一遭遇してしまったら、ゆっくりと安全な場所まで後ずさりしてください。鈴など音の出るものを身につけ、自分の存在を事前にヒグマに知らせることも有効です。
最近のヒグマは人間に慣れ、恐怖を感じずに近寄ってくることがあります。好奇心からエサを与えるのは、絶対に止めてください。ますます警戒心が薄くなり、人間を『エサを持っている存在』と認識しトラブルが増える原因になりますから」
記者は自身の誤った行動を猛省した。ヒグマに遭遇した際には、ぜひこのオーナーの忠告を思い出していただきたい。
- PHOTO:山崎友見