鰻は大好きだが、値段のハードルが高く高嶺の花。仕事場の新宿壱番街にウナギ屋さんがあるのは知っていたが、どうせ手が出ないと思って値段も見なかった。ある日「日曜営業はじめました」の看板を見ると「うな丼」が590円。これなら手が届く。
「名代 宇奈とと」の歴史
宇奈とと(うなとと)は「安い・早い・旨い」をモットーに2000年にオープン。北は北海道から南は沖縄、タイやベトナム、シンガポールなど70店舗以上を構える。親会社は新宿にあるG-FACTORY。鰻の下ごしらえは工場でまとめてやってから出荷。だから安く近一の味を提供できる。
新宿センタービルの奥まった一角に佇む宇奈とと。外国人観光客にも愛されるその場所は、スマホの地図を片手に道を尋ねる姿が絶えない。カウンター9席、テーブル48席、個室も備えたこの店は、日中はランチの香ばしい匂いで満たされ、夕方5時を過ぎると居酒屋メニューが解禁され、仕事帰りのサラリーマンたちの賑やかな声が響き渡る。
宇奈ととメニュー
「贅沢」と呼ぶには控えめすぎる価格。うな丼640円(以前は590円)にお新香と肝吸いがセットで220円。これで合計860円。財布に優しい。丼を覆う中国産の鰻は、備長炭で焼き上げられ、タレは本醸造醤油に米酢と砂糖が絡む。甘さとコクのバランスが絶妙で、熱々のご飯と共に頬張ると、至福の瞬間が訪れる。お新香のさっぱりした塩味が舌をリセットし、肝吸いの出汁が最後に深い満足感を与える。
日曜日もやっているので、たまには贅沢もしてみたい。ひつまぶし1100円(現在は1300円)が憧れ。宇奈ととの鰻は高級店のものとは違う。だが、その「違い」が良い。手が届く価格で、働く人々にちょっとした贅沢を提供してくれる。特別な日にではなく、日常の中にふと挟む幸せ。その温かさが、新宿の雑踏の中で心を支えてくれる。
うな丼590円(現在640円)
初参戦はうな丼590円にお新香、肝吸いが220円でつくCセット。これで810円。贅沢ランチに入るが、1000円でお釣りがくる。熱々ホクホク甘いタレの鰻丼、キリッと冷えたシャシャキ淡いしょっぱさのお新香。味、食感、温度の緩急が極上の食体験。
そこに出汁の旨味たっぷりの肝吸いが抱擁。もちろん3000円以上出せば、もっと良い鰻が食べられるが、これで十分。今後、いろんなメニューを開拓していく。
うな重960円(現在1080円)
「鰻重に手を出したら、もう戻れない」と思っていた。しかし、手にした重箱を見下ろすとと、その特別感に心が弾む。四角い器に敷き詰められた鰻は、うな丼とは異なる贅沢感を演出。タレがたっぷり染み込んだご飯と、口に広がる鰻の濃厚な旨味。「これぞ満足」という気持ちが胸に広がる。次はさらに上のメニューに挑戦したくなる、その絶妙な価格設定が憎い。
うな丼ダブル1200円
鰻がダブルになった鰻丼。ご飯も大盛り無料にできる。北里柴三郎1枚だけでは足りないが、量は満足できる。余裕があれば頼みたい。
肝吸いと、うまきが付いたAセット550円をプラスすると腹も膨れる。贅沢だが、この値段でたらふく鰻が味わえるのは感謝。新宿のPIECES OF A DREAM。
ひつまぶし1300円
令和七年1月26日。依頼を受けている原稿が20回以上、書き直して提出してもOKが出ない。完登するため、お昼に「ひつまぶし」を食べる。ひらがな五文字ひ・つ・ま・ぶ・し。ドリカムの未来予想図のような推進力が宿る。まずは鰻の蒲焼。甘いタレがノイローゼになりかけの精神を抱擁してくれる。追加で頼んだ赤出汁(110円)で洗い流す。やさしさに甘えたくはない。今度は山葵をつけて気を引き締め直す。これを3往復。そしていよいよクライマックス。柚子の効いた出汁を注ぐ。甘さの包容力すら抱擁してくれる。なんという優しさ。この優しさなら甘えていたい。鰻屋に不釣り合いな大塚愛の『さくらんぼ』の甘い声が、絶望も一瞬で色を失う力がある。さあ、最後の山を登りきろう。
名代 宇奈とと新宿センタービル店
- 住所:東京都新宿区西新宿1-25-1. 新宿センタービルB1F
- 電話:03-5381-6969
- 営業:平日11:00~23:00、土日祝 11:00~21:00
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