真実の信長の安土城は「香港九龍城」×「清水寺」だった!戦国時代像がすっかり変わる千田嘉博『信長の城』を読む
photo by Canadian Pacific
発売直後に注目の歴史本として紹介してから、なかなか書評できなかったのですが、どうしてかというと、奥が深いので、言葉にできなかったのです。
いや、言葉でリアルな姿を表現するのができなかったというか。
自分の文才に見切りをつけて、そうだ「京都に行こう」的に、写真で表現することにしました。あー、すっきり。
この新書は、信長の人生を、彼が作った城とともに歩んでいくという、ありそうでなかった切り口の本です。
著者の千田嘉博さんは、ときどきNHKの「歴史秘話ヒストリア」やらBSのお城マニアが集いテレビなどにも出てくる戦国のお城考古学者です。
とにかく、立ち読みしてでも、日本の全信長ファン、全城マニア、全ひこにゃんが読むべきなのが、第4章の「安土城」です。
これまでに、例のディアゴスティーヌさんでも「復元安土城」なんてやったり、さらにさかのぼればセビリアだからセリビアだかの万博で、安土城立体復元なんてものもあります。
- 作者: 内藤昌
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/12/08
- メディア: 文庫
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よみがえる真説安土城―徹底復元◆覇王信長の幻の城 (歴史群像シリーズ・デラックス (2))
- 作者: 三浦正幸
- 出版社/メーカー: 学研
- 発売日: 2006/01
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(千田説以前の安土城復元は『よみがえる安土城』 (歴史文化ライブラリー)が網羅してます)
ところが、
こうした既存の安土城復元はオールペケ!
文献で、1階部分の大きさが明記されているのですが、今ある天守台の大きさを超える長さなので、絶対に文献通りの復元は不可能だったのです。矛盾するので。
ところが、この本は、明快な理論と、実際に検出されている考古学調査の成果によって、この難題をクリアしたのです。
私たちが今までイメージしていた「安土城」は間違いであり、
この本によって、私たちは、信長が目にしたそれに、もっとも近づいてきたのです。
キーワードは「懸け作り」という技法です。
いってみれば、京都の清水寺。
photo by JaviC
清水寺はせり出した崖の部分は柱がむき出しですが、そこを板で覆っていたっぽいですね。つまり舞台の緞帳(どんちょう、幕)。
その高さ10メートルというので、ホールの緞帳(幕)と同じか、それ以上の高さです。
photo by na0905
そこに張られた板に長谷川等伯や若冲の絵が描かれていたとか想像したら、ワクワクさんですね。
=等伯
ほかにも
「天主は本丸にはない」
とか、常識からすると「なにーーー???」となる話も、読んでみると、すごく納得。
というか、これまでの常識がなにげに非常識だったので、お城の構成パーツを説明する「語句」が変な風になっているので、文章にすると、非常にややこしいのです。
どういうことかというと、例えば、「WOMAN」という英単語を「男」と誤訳したまま、ずっと来てしまって、
A WOMAN BORN A BABY
とか言う英文を、どうしようもないので
「男はいつだって生まれついての赤ちゃんなのさ」
とか訳しちゃうような。
もう、なに言っているんだかわかりませんが、戦国時代の城をめぐっては、こうした基本的な語句の「定義」が間違っているケースがたくさんあることがこの本は明らかにしてしまったのです。
そうした点で、戦国像を大きく変える1冊なのではありますが、なにぶん常識と180度も違うことを、いくら言葉で説明されても、理解不可能。ハトがぽっぽっぽーという感じであります。
あー、いくら文書を重ねても、伝わらないんだろうなぁ(涙)
なので、さっさと、歴史秘話ヒストリアで、真・安土城の3D復元をしてもらい、ディアゴスティーヌかバンダイが「こんどこそ本当の安土城」というプラモデルを千田案に基づいて、作ってください。
タイトルの「九龍城」は香港のごちゃごちゃのビル群の町のことですが、安土城もなんか、ごちゃごちゃといろんな建物が山頂に密集して建てられていたという意味です。これも本書で知った新説でした。
というわけで、一家に一冊どうぞ。
続けて信長からみの歴史本の(短め)紹介も書きました。
【信長関連過去エントリー集】