「論語を現代に活かす」 時代を超えて読まれた名著

未来はすべて次なる世代のためにある

静かに進むパラダイムシフト、国家資本主義とサプライチェーンの強靭化

 経済安全保障、サプライチェーンの再構築などが口やかましく言われるようになりました。米中対立が長期化し、ハイテク製品の輸出管理が強化されるなどして激しさを増していることが背景にあるようです。

「カリフォルニアで製造業復活」米テック富豪ら都市計画、住民当惑 - 日本経済新聞

 米国シリコンバレーでは、「ハイテク製造業を復活させる」計画があるそうです。トランプさんが推進するアメリカファーストからして、こうなるのも自然な流れなのでしょうか。どんな結論が待っているのか、たいへん気になります。

 

 

 日本では国策半導体製造会社のラピダスが立ち上がり、半導体生産が強化されようとしています。日米協議で、衰退した造船業の復活に日米が協力することが決まりました。

国内造船業、復活なるか 人手不足や脱炭素課題―日米協力合意、秋めど工程表:時事ドットコム

 経済安全保障を考えてのことというところでしょうか。一度衰退した産業をそう容易く復活させることができるのか、国の実力が問われそうです。

 よくよく思い出してみれば、コロナパンデミックではマスクなど様々な物品の入手が困難になりました。経済安全保障云々の前に、今あるサプライチェーンが最適なのか、よくよく考えてみるべきなのでしょう。地政学リスクを考慮することは当然として。結局、必要なものが、必要な時に、リーズナブルな価格で手に入れることができなければ、サプライチェーンとしては適切とは言えないのですから。グローバル化の時代であろうがなかろうがです。

 

 

 しかし、現実はやはり厳しいのでしょうか。経営再建中の日産自動車が、業績改善に向けた重要車種の一つである新型リーフの生産計画を大幅に下方修正したそうです。理由は、基幹部品の電池の供給が遅れているといいます。

日産の新型EV「リーフ」、電池不足で生産数半減 経営再建に足かせ - 日本経済新聞

 電池メーカにおける生産設備が安定稼働せず、生産歩留まりが低迷していることによるそうです。

 蓄電池は、国の経済安全保障における「特定重要物資」と位置づけられています。EVの普及や再生可能エネルギーの導入拡大に欠かせないものであるからといいます。しかし、のっけからつまづいています。これでは強靭なサプライチェーンどころではありません。技術力の低下を感じずにはいられません。それに加え、サプライチェーンマネジメントがきちんと実行されていないともいえます。先駆的企業の組織、体制をきちんとベンチマークし、技術の底上げから始める必要がありそうです。

論語でまとめ

人の過つや、各々其の党に於いてす。過つを観れば、斯ち仁を知る。(「里仁第四」7)

 人が犯す過ちには、仲間や環境、あるいは人間性が色濃く反映される。その人の性格や仲間との関係性によって、同じような過ちを犯す傾向があるといいます。その人の過ちがどのようなものであるかをよく観察すると、その人の仁(人間性)がどのようなものであるかがわかる。成功した時の態度よりも、失敗したとき、過ちを犯したときの態度や行動こそが、その人の本質をよりよく表していると孔子は言いました。

 その過ちをどう捉え、どう対応するかが、その人の人間性を測る重要な手がかりになるということです。近年の日本が低迷を続けるのはこういうところに理由があるのかもしれません。企業も政治も人事の刷新が求められていそうです。孔子に従えば、優れた人格、人間性を持つ者を択べということなるのでしょうが。リーダーの選定基準を明確にすべきなのかもしれません。

 

 

国家資本主義の時代

 これからは、政府とビジネスの関係性が一層重要になっていくといわれています。特定の国への過度な依存によるリスクの顕在化が指摘され、特に中国への依存度が高まっていることが背景にあるといわれます。多くの産業において、中国がすでにグローバル市場で大きなポジションを占有するようになっています。サプライチェーンの原則からしても、あまり好ましい現実ではありません。国の支援が求められるようになったのは、こうした中国と競争しなければならなくなったこともあるようです。もはや企業単独では厳しいといわれています。

 この他にも「自由経済至上の限界」「経済活性化と新産業創出」「社会課題解決のための官民連携」「グローバルなルール形成」など、政府がビジネスに関与すべき理由がいくつもあげられています。こうした要請に、政治、官僚は応えることができるのでしょうか。現状をみえれば危うそうに見えます。政府の役割を再定義し、そのための人材を準備する必要がありそうです。企業も政治に依存、解決を求めるのでなく、上手に利用する術を学ぶべきなのでしょう。

 

 

 世界ではダイナミックにサプライチェーンの強靭化が進められ、大きなパラダイムシフトが起きているようようです。日本では、たんにトランプ対策との面からの思考になりがちですが、それではますます世界との距離が開くことになりかねません。

 サプライチェーンの再構築とは、たんなるDXの推進ではありません。それだけでは、サプライチェーンの究極の目的が達成されません。より強靭で、競争力あるものに変容させるためには、Q(品質・性能)、C(コスト・利益)、D(デリバリー、納期・リードタイム)を徹底的に追求し、突発事故に対するレジリエンスを高めておくことが求められます。

 日本再生へのヒントはこういうところにありそうです。そのための学びを続け、それをもとに継続的に評価し、改善も欠かせないのでしょう。「王国復活」はその先にあるのかもしれません。

 

「参考文書」

日産、新型車リーフの生産半減に EV向け電池不足が影響し英国工場でも遅れ - 産経ニュース

日本の蓄電池産業の"勝ち筋"とサプライチェーン強靱化に向けた取り組み~蓄電池産業の課題と競争力強化のシナリオ~|ネクスト・ジャパン最前線

トランプ政権は関税で失墜する 歴史家ニーアル・ファーガソン氏 - 日本経済新聞

米国で変化する政府とビジネスの力学 — シリコンバレー台頭と日本が学ぶべき新秩序 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

 

熱気を帯びる市場、日経平均株価は連日の史上最高値、それでも改善進まない実体経済

 日経平均株価終値で史上初めて4万5千円を突破し、史上最高値を更新しました。しかし、この株高が必ずしも実体経済を表しているということはないようです。

日経平均株価、初の4万5000円台 消える「日本株ディスカウント」 - 日本経済新聞

 FRB 米連邦準備制度理事会が9か月ぶりの利下げを決定し、米国経済への安心感が広がり、米国株式市場の上昇を受けて、日本の半導体関連株やハイテク株が上昇しました。円安も進行し、輸出関連企業の業績拡大への期待も高まりもあるといわれます。

 

 

 市場は熱気に包まれているそうです。しかし、まだすべての投資家が強気になれていないといいます。

日経平均最高値、今なお残る「懐疑派」米国勢 株高持続のサインか - 日本経済新聞

 米国の有力ファンドをみると、日本株の組み入れはお抑え気味で基準値より2割程度少ないといいます。

こうした懐疑派の存在が、株高の持続力を示唆しているのか.....(出所:日本経済新聞

「賃上げなどを起点としたインフレ定着」、「企業統治改革の進展」、「国内政治の停滞脱却への期待」、これら日本株をディスカウント(割引)する要素が解消され続けるのであれば、日本株の長期的な上昇トレンドを支えるといいます。いつものような期待先行での株高。しかし、関税政策を推し進める米国経済の行方や地政学リスクなど外部環境の不透明感があって、引き続き注視が必要といいます。

 市場の期待通りになれば、実体経済の改善が進みそうです。それがその先の株価上昇につながっていきそうです。今のような一部企業の株高だけではなく、すそ野が広がっていくのかもしれません。しかし、それは政治と企業次第。それはそれでリスクでもあるということなのでしょう。進まないDXにAI活用、原発を含めたエネルギー問題、コメ問題、政府の物価高対策、マイナ保険証問題など、実際の社会はまだまだ市場の期待とは乖離し、それに近づくスピードも遅々たるもののように見えます。これら問題に携わる人の問題、質の問題もありそうです。

 

 

論語でまとめ

子 罕(まれ)に利を言うとき、命(めい)と与(とも)に、仁と与にす。(「子罕第九」1)

 孔子は、「利」と「天命」や「人道」を結びつけ、「利」がただ私欲を満たすためのものではなく、天の理にかなったものであるべきだといいました。

 企業経営者や政治家が真にこの言葉の意味を理解し行動するのなら、今ある社会課題や問題も速やかに解決されていくのではないでしょうか。公利、公益を優先し、その解決の大きさによって私欲が満たされることを知ればいいのでしょうが、難しいのでしょうか。私欲、貪欲さが強いモチベーションになっているということなのかもしれません。そのコントロール方法を知って欲しいのですが。

 

 

 日銀が金融政策決定会合で、政策金利の据え置きを決めました。市場は株安・円高・債券安の反応のようです。

利上げ観測、強まる可能性 第一生命経済研究所 首席エコノミスト 熊野英生さん - 日本経済新聞

 今回の金融政策決定会合では、政策委員2人が政策金利を0.5%程度から0.75%程度に利上げする議案を提出したそうですが、反対多数で否決されたといいます。いよいよ利上げが近づいてきたということなのでしょうか。

 しかし、実際に利上げとなれば、それはそれで波乱要因もあります。まだまだ日本経済が不安定な状態にあるともいえそうです。実体経済の改善にはまだまだ時間がかかりそうです。

 

 

「参考文書」

米金融緩和に支えられる株価上昇 ~一時は日経平均株価4万5千円~ | 熊野 英生 | 第一生命経済研究所

日銀、政策金利0.5%で据え置き 5会合連続 - 日本経済新聞

日銀、2人が利上げ提案し否決 | NEWSjp

「昼の円安・夜の円高」復活 ドル円相場、レンジ突破へたまるマグマ - 日本経済新聞

 

【進化するスマホ】超薄型 iPhone Airとパナソニックの苦境

 アップルが新しいiPhoneを発表しました。批判もあるようですが、その人気はまだ絶大というところでしょうか。

【3分でわかる】「Air」から「17 Pro」まで、3つの新型iPhoneについて知っておくべきこと | WIRED.jp

軽薄短小」が追求されたモデル厚さ5.6mmの薄型スマホAir」が新登場しました。飽くなき要素技術の探求があるからこそ、この薄さが実現できるのでしょうか。その姿勢に脱帽です。

(写真:Apple

 これまでの課題であったバッテリー問題や熱問題の改善も進んでいるようです。AIも搭載されています。かつての日本製品のような開発ストーリーです。値段の高さが少々気になりますが、それでもスマホのポジションはまだまだ安泰でというとこでしょうか。

 

 

 すっかり生活の一部になったスマホ。アップル、グーグルにサムスン、小米にファーウェイなどの中国勢も伸長しています。気づけば海外勢ばかり、シャープにFCNT、SONYなど日本勢も善戦しているようですが、なかなか話題になりません。大きな市場に成長し、AI搭載などで進化を続ける携帯端末「スマホ」から早々に多くの日本メーカが撤退したことが残念です。

終わらないリストラ、日本の家電メーカ

 日本を代表する家電メーカのパナソニックの経営が揺れています。国内外で1万人のリストラを断行し、構造改革を進めるそうですが、なかなか思うように進んでいないようです。

[新連載]1万人削減のパナソニック 社長決断の裏に「言い訳だらけ」事業計画:日経ビジネス電子版

「針路が見えずに漂流するパナソニック」、やみくもに成長を求めたがゆえの混迷のようにも思えます。コングロマリッド・ディスカウントを意識するがために、事業の成長性を見誤り、過剰に選択と集中を進めた結果の漂流のようにも見えます。

現在は新しい事業を創出する力が弱っていると感じています。以前は本社のR&D部門が中心となり、例えばデジタルテレビ、DVD、携帯電話などの事業領域でグループの柱となるような開発を積極的に行っていました。現在は車載電池にフォーカスしていますが、電池は個別技術の要素が強いので、技術の面ではシナジーは創出しにくいです。(出所:パナソニック

 家電量販店やニトリのような生活用品の小売業が家電メーカに近づき、自社製家電を製造販売するようになっています。日本の家電メーカから切り離された事業が中国メーカ傘下で躍進しています。

アクア、業務用洗濯機シェア6割超 中国ハイアール譲りのIoT戦略で市場席巻:日経ビジネス電子版

 撤退した事業がポテンシャルが低いということではなそうです。単に経営の判断ミスなのでしょうか。

 

 

アップルは半導体を自社開発するようになり、iPhoneが抱える様々な性能や品質面での改善が進むようになりました。リマニファクチャリングにも取り組み、要素開発にも熱心のようです。製品の魅力を磨き続けています。

[新連載]アップルもあらがえぬ新潮流「リマニ」 iPhone分解で分かった転換:日経ビジネス電子版

 パナソニックの改革の歴史とこうした動きを照らし合わせてみると、大きな違いがありそうです。見す見すチャンスを逃したといっても過言ではないような気もします。もし経営が適正であったのなら、もっと早い時期に苦境から脱していたのかもしれません。

論語でまとめ

黙して之を識(しる)し、学びて厭わず、人に誨(おし)えて倦(う)まず。何か我に有らんや。(「述而第七」2)

  黙って心に留め、深く理解し、飽きることなく学び、人に教えることを面倒がらない。これらが私にとって何か特別なことだというのだろうか、いや、当たり前のことなのだと孔子は言いました。

 

 

 何においても色々流行り廃りはあるものです。経営理論もそのひとつなのでしょう。しかし、変えてはならないものもあるのでしょう。あてにならない、いい加減な流行りの言説に惑わされずに、熱心にR&Dを取り組み、日常業務においても要素開発を怠らない、そんな姿勢が案外大事なのかもしれません。技術、テクノロジーに立脚したメーカなのですから。

 パナソニックも再度スマホにチャレンジしてもいいのかもしれません。もうそろそろ次の新しい形態端末が生まれてもよそうな時なので、そこから始めてもいいのではないでしょうか。経済安全保障やデジタル赤字が口やかましく言われるご時世でもあるのですから。

 

 

「参考文書」

薄さ5.6mmは存在を消すため、iPhone Airで「革新を求めた」アップルの狙い | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

アップル新型iPhone Air、史上最薄の実現には「代償」がつきものだ | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

アップル、アナリスト投資評価が5年ぶり低水準-AI分野での期待後退 - Bloomberg

取締役会の現状認識とグループのあるべき姿の実現に向けた監督・執行 | 経営・財務 | 企業・経営 | Panasonic Stories | Panasonic Newsroom Japan : パナソニック ニュースルーム ジャパン

 

戦後80年の見解とポスト石破

 首相職を辞する石破さんが締めくくりの外国訪問として国連総会に出席する意向を固めたそうです。一般討論演説で、自由で開かれた国際秩序の維持・強化の重要性を訴えるといいます。

首相、国連総会出席へ 「石破外交」締めくくり:時事ドットコム

 また、これとは別に、戦後80年の「見解」を在任中に発表するとの話も上がっているようです。「未来志向のメッセージ」としたい考えで、発表方法などの詳細を早急に詰めるそうです。

 

 

 先の大戦に至った経緯の検証に、石破さんは強いこだわりを持っているそうです。悲惨な戦争を繰り返さないために必要との思いがあるからだといいます。

石破首相、戦後80年見解を在任中に発表へ 発信に強いこだわり | 毎日新聞

 一方、自民党保守派は安倍元首相の70年談話を重視し、石破さんの見解公表に反発しているといいます。

 これに対して、70年談話を神格化する勢力を『戦前の陸軍将校のようだ』と言っていたそうです。

「国を右に席巻されたくない」の石破氏去り…自民、再び保守色強化か [石破政権][自由民主党(自民党)]:朝日新聞

「この国が『右』に席巻されるのが嫌だ。この国は左に行って潰れたことはないが、右に行って潰れた歴史がある。何があっても繰り返してはいけない」とも周囲に漏らしていたといいます。

論語に学ぶ

其の鬼に非(あら)ずして之を祭るは、諂(へつら)うなり。義を見て為さざるは、勇無きなり。(「為政第二」24)

  なすべきことと、なすべからざることを、はっきり見定めたうえ、なすべきことをせずにすますのは、勇気がない、つまり卑怯であると孔子はいいました。

 石破さんも勇気を振り絞って、最後は正しいことを実践してもらいたいものです。

 

 

ポスト石破

 早くも自民党の総裁選が盛り上がりを見せ始めています。メディアの伝え方も千差万別です。

【解説】 5年で4人目の首相、日本で選出へ 自民党の総裁選の行方は - BBCニュース

自民党総裁選、高市早苗氏トップ28%・小泉進次郎氏22% 共同通信世論調査 - 日本経済新聞

総裁選「野党と連携」争点に 茂木・小泉氏ら関係アピール―自民:時事ドットコム

 各候補とも保守系野党との連携を模索し、最も右寄りな高市、小林の両氏は参政党との連携を期待する向きもあるといいます。

 お隣の国々も総裁選を気にかけ、早くも警戒してはじめているようです。保守色、右寄りによればよるほど、改善方向にあった両国との関係がこじれることになりかねないようです。不確実性が高まるこの世界にあって、それで世界平和に貢献できるのかと心配になります。

 ロシアがポーランドの領空に多数のドローンを侵入させ、イスラエルは相変わらず停戦に応じる姿勢を見せません。中国は新たな空母を東シナ海で航行させました。米国ではトランプさんの盟友でもあった保守系活動家が暗殺される事件が起きています。

ポーランド領空侵犯のロシア・プーチン大統領、米欧にチキンレース 制裁封じ狙う - 日本経済新聞

 世界がますます物騒になっていくようです。このままその潮流に乗れば、国は混迷を深め、紛争に巻き込まれるのではないかと心配になります。

 

 

 石破さんが首相として、どんな「戦後80年の見解」の発表を試みようとしているのかは定かではありません。が、この世界の状況に一石を投じるものになればと思います。それが次の政権が担うべきのようなものになればいいのかもしれません。レガシー作りにはもってこいではないでしょうか。

 

 

「参考文書」

石破首相、80年見解、国連総会で公表案 退陣表明後、困難の声も:時事ドットコム

米保守系活動家暗殺、一因は「極左勢力」の言説 トランプ氏:時事ドットコム

日本・欧州で広がる政治の混迷、トップの清新さが安定左右 - 日本経済新聞

権力は魔物だ。だからこそ真摯さを磨き続ける努力を怠ってはいけないのだ(出所:日経ビジネス

 かつて経営学者のピーター・F・ドラッカーは、リーダーが持つべき唯一にして最も重要な資質に「真摯さ」(インテグリティ)をあげました。これは「仕事上の真摯さ」と「人間としての真摯さ」の2つの側面を持ち、これがなければ組織を危険にさらすと警告していました。

真摯さに欠ける者が高い地位につくと、組織全体の倫理を破壊し、業績を低下させる可能性がある」。

 ドラッカーが考える真摯さとは、「何が正しいかを常に考え、高い目標を掲げて実現を追求する姿勢」。「安易な妥協をせず、品位に欠ける機会は拒絶する」。「部下や組織に対して責任を持ち、自分が去った後も組織が健全に機能することを追求する」。「人間的に誠実で信頼できること」。「頭の良さよりも、人間としての誠実さを重視する姿勢」。「部下の弱みではなく、強みに焦点を当てる」.... 

 経営と政治とでは異なるのかもしれません。政治のリーダーは、ドラッカーが示したリーダー像からずいぶん違うものになっていないでしょうか。

 

解散か辞任か、揺れた石破首相◆続投断念の舞台裏を探る【解説委員室から】:時事ドットコム

石破茂首相、示せなかった「安倍時代の次」 1年で政権に幕 - 日本経済新聞

 

 

【ふるさと納税】派手なポイント還元キャンペーン、ポイント付与禁止を前に駆け込み需要

「ポイント還元ラストチャンス」。ふるさと納税のポイント還元が9月末で廃止されるのを受け、仲介サイトは寄付者を囲い込もうと、様々なポイント還元キャンペーンなどを打ち出し、駆け込み需要が増加しているようです。

ふるさと納税、お得な仲介サイトは ポイント付与は9月末まで - 日本経済新聞

 総務省は、ポイント付与競争が激しくなり、自治体が支払う手数料が高くなったのを理由に、ポイント付与を禁止としたそうです。仲介サイトは各自治体が支払う掲載手数料を原資にポイント還元で顧客を集めているといわれています。

 

 

 過熱する広告にCM。多額の費用を支払っても寄付額が増加すれば地方活性化の一助となる、それなりの論理はありそうですが、仲介サイト各社の囲い込みを強化したいとの思惑もはっきりと見えます。行き過ぎとの感も否めません。

ふるさと納税10月から“ポイント還元”廃止 駆け込み寄付増加 お得キャンペーン続々

 ポイント付与もコスト、広告活動もコスト。「ふるさと納税」、その税金の一部が自治体から手数料となって仲介サイトに渡され、広告料、CM制作料となって過大に消費されることに疑問を感じます。税金の本分からも外れてはいないでしょうか。国も地方も税収不足で借金体質、機会があれば増税をたくらむくらいなのですから。

  1兆円規模までに拡大した「ふるさと納税」。返礼品競争は過熱し、産地偽装など様々な不正や不祥事もたびたび発生します。競争に歯止めをかけ、制度本来の趣旨に戻すため、総務省はたびたびルール変更してきました。

ふるさと納税ってほんとに「お得」なの? ヒートアップする返礼品競争…その陰で指摘される「抜け穴」とは:東京新聞デジタル

「お得な返礼品」、そのために寄付額の半分は経費に消え、税金として公共サービスには使われていない実情があるといいます。一方の仲介サイト、返礼品競争が過熱し寄付額が増えれば手数料収入が増えるという一番美味しい立場なのかもしれません。

 

 

 楽天グループは規制は過剰だとして行政訴訟を起こしました。三木谷社長新経済連盟代表理事として、石破首相とも面会し、ポイント禁止に反対する考えを伝えていました。

石破首相に295万人署名提出 ふるさと納税、ポイント禁止反対―楽天:時事ドットコム

 ポイント施策が禁止されれば「ふるさと納税は減速どころか減少する」と三木谷社長は述べたそうです。また、ポイント禁止に反対する約295万人分の署名も提出したそうです。ふるさと納税が活気づき、地方が活性化することは喜ばしいことなのでしょうが、「ふるさと納税」に成長を求めることには違和感を覚えます。

ふるさと納税のリアル 全市区町村の実質収支マップ:日本経済新聞

 扱っているものが税金であることを自覚すべきです。それが理解できれば、行動が変わるのかもしれません。「ふるさと納税」を商材として囲い込み競争のネタにするのではなく、自治体の税金収入の最大化に貢献しようとか、地域活性のための返礼品開拓を自治体と協働で行うとか、もう少し公益とか公共を意識した行動になっていくのではないでしょうか。それが、価値あることなのでしょうし、付加価値のはずです。税金を民間企業が搾取するような形になってしまえば、それは最終的には顧客に損を与えるようなものになってしまうのですから。

論語でまとめ

君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る。(「里仁第四」16)

 君子は道理を理解し、小人は損得を理解すると孔子はいいました。

 君子は長期的な視野で世の中のためになる行動を心がけるのに対し、小人はその行動が自分にとってどれだけ得になるか、利益があるかどうかという「損得」を基準に行動するといいます。

 

 

 アマゾンが六本木で、「Amazonふるさとまつり」を開催していました。「ふるさと納税」に参加する全国14の自治体がブースを出展し、地域の魅力を発信していたといいます。

アマゾン、ふるさと納税PR ポイント禁止控え、都内でイベント:時事ドットコム

 10月からポイント付与が禁止され、利用者の減少も予想される中、最短で寄付翌日に返礼品を配送できるといった強みを活かす考えといいます。

 

www.youtube.com

(アマゾンのCM(ふるさと納税は関係なし)はイケていますよね。このCMで流れている楽曲は、ローリング・ストーンズの「Jumpin Jack Flash」、カッコよかです)

 また、「Amazonふるさとツナグ」プログラムを立ち上げ、自社商品を返礼品として出品したい販売事業者と、返礼品を増やしたい自治体をつなぐそうです。「ふるさと納税」をより身近にし、地域経済と自治体、そして販売事業者の継続的な成長を後押しするためだといいます。

ふるさと納税の可能性を広げるAmazonの一手 自治体と販売事業者をつなぐ新たな仕組み | アマゾン ジャパン | 東洋経済オンライン

 他の仲介サイトは異なるアクションなのでしょうか(アマゾンもポイント還元キャンペーンを実施していますが)。

 もうそろそろ「ふるさと納税」の抜本的な見直しがあってもいいのかもしれないと思うばかりです。

 

「参考文書」

ふるさと納税、止まらぬルール複雑化 次は熟成ワイン・家電にメスか - 日本経済新聞

10月からポイント付与禁止に…変わるふるさと納税 反対の利用者は5割超 ポイント駆け込みも【News αプラス】|FNNプライムオンライン

 

 

ふるさと納税ポイント還元禁止 弥縫策は限界、抜本見直しを - 日本経済新聞

 

「ポスト石破」の候補者たち、忘れられそうな解体的出直し

「本物のリーダーと偽物のリーダーはどこに違いがあるのでしょうか?」、独立研究家の山口周氏がそう問います。

 その差は「価値観の混乱する状況の中で、自身の哲学に基づいた確固とした方針を示し、それを保ち続けられるかどうか」という点にあるといいます。

「石破らしさ」引き際でも見せず◆国民より党を優先【解説委員室から】:時事ドットコム

「石破らしさ」自分らしさを見せることなく、 石破さんが首相職を辞しました。「党内に決定的な分断を生みかねない」、周囲の説得を受けてのことのようです。本物のリーダーになることができなかったようです。

 

 

論語でまとめ

君子の道に三あり。我は能(よ)くする無し。仁者は憂えず、知者は惑わず、勇者は懼(おそ)れず、と。(「憲問第十四」28)

 君子に至るには三つの条件があると孔子はいいました。「仁者は私心がないので心配せず、知者は迷わず、勇者は恐れを知らない」。しかし、私にはまだできなていないといいました。

 自民党内での権力抗争、ゴタゴタ劇が続いています。「石破おろし」が過ぎれば、早くも話題は総裁選に移っていきます。

自民総裁選「フルスペック」で22日告示、10月4日投開票 茂木氏は10日に出馬会見 - 産経ニュース

 変わり映えのしない顔ぶれ。また逆戻りしそうです。石破さんのやり残したことを誰も引き継ぐことはあるのでしょうか。国民感情に向き合わない自民党の論理が復活しそうです。解体的出直しもいつしか忘れられることになりそうです。

 

 

 イスラエルがガザへの攻勢を強め、カタールドーハも攻撃しました。ロシアも相変わらずです。ウクライナへの大規模攻撃が続き、止むことはなさそうです。戦争の時代に戻ったかのような日々です。

100年前からの警鐘 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)

こんな時代なのですから、不測の事態への備えが必要なことは理解できます。しかし、昭和版日本ファーストが復活するようなことは絶対に避けなければならないはずです。 次のリーダーに誰が選ばれることになるのでしょうか。

 

 

「参考文書」

ガザ市民に即時退避要求 高層建物50棟破壊、「地上侵攻の序章」―イスラエル首相:時事ドットコム

戦後80年「語り継ぐ」「反省」の〝思い〟【点描・永田町】:時事ドットコム

石破首相は何に追い詰められた? 見限らなかった世論、切り捨て急いだ自民党 政治空白招いた「仲間割れ」:東京新聞デジタル

石破首相がアピールした「成果」の数々…自民党は世間とズレ続け どう思う?街の人や専門家に聞いてみた:東京新聞デジタル

平将明デジタル相「派閥主導の総裁選なら自民党は終わる」 - 日本経済新聞

石破首相辞任、「後継者も政策転換期待できず」 米市場関係者に聞く - 日本経済新聞

激変の時代に明らかになる「本物のリーダー」と「偽物のリーダー」の違い | クーリエ・ジャポン

 

石破さんと逆回転する自民党

「社会は多数派ではなく、むしろ少数派の主張によってこそ変革されていきます」。独立研究家の山口周氏はそう言います。

「逸脱する人」を許容する開かれた社会|山口周

社会の支配的価値観や規範に対して逸脱者、少数派が反旗を翻すことで、安定した環境に揺さぶりがかけられ、システムは不安定な状態に置かれます。少数派と多数派とのあいだに生まれる対立から次の安定状態が生まれ、社会は変遷していく。私がここで言っている「開かれた社会」とはそういう意味です。(引用:「逸脱する人」を許容する開かれた社会|山口周)

 世界秩序は乱れに乱れ、国内においては幾多の社会課題の解決が進むない状態になっています。山口氏が指摘するとおり、今、少数派、逸脱者によって多数派の規範をアップデートし、「開かれた社会」を築くときなのかもしれません。

 

 

 その意味において、石破さんには逸脱者であって欲しかった.... 古い自民党が日本の政治の中心であっては何も変わらないのだから。

 社会保障の問題、氷河期世代の問題、コメ騒動に物価高、賃上げ、エネルギー問題に気候変動の問題、どれもこれも解決できずにずるずると長引いています。一方で、インバウンドは相変わらず好調で、トランプ関税の問題を抱えるものの輸出企業も好調のようです。円安を背景とし、また関税については政府が手厚く手当をしてくれているのですから。政治における利害調整に偏りがありそうです。この状況に変化を起こすことができるのは、自民党の多数派ではなく、むしろ少数派の人たちだったのではないでしょうか。

 

 

 石破首相が辞任を表明しました。醜い自民党の権力抗争「石破おろし」騒動が幕を下ろすようです。力関係で簡単に他人の意見に同調する付和雷同タイプの凡人議員さんがまた復権しそうです。逆転する価値観、古い規範に重んじられ、また昔の自民党に逆戻りになるのでしょうか。

論語でまとめ

君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず。(「子路第十三」23)

 君子は協調するが、付和雷同しない。小人はむやみに付和雷同するが、真の協調はできないと孔子はいいました。

「臨時総裁選要求の意思確認に進んでは、党内に決定的な分断を生みかねない」と石破さんは辞任の理由を説明していました。

続投は無理筋だった 石破茂首相の背中押した「静かな多数派」 - 日本経済新聞

「政治とカネ」の問題について「国民の政治に対する不信を払拭することはいまだにできていない。最大の心残りだ」と話し、「多くの方に配慮しながら融和に努めながら、誠心誠意努めてきたことが結果として『らしさ』を失うことになった」と語り、「どうしたらよかったのかな、という思いはある」と記者会見で述べていました。

 権力をめぐる闘争である政治の世界には落ち着きどころがあるというそうです。どうなんですかね。それをアップデートできないのが自民党政治の問題なのでしょう。「自民党が信頼を失うことになれば日本の政治は安易なポピュリズムに堕するのではないかとの危惧を強めた」と石破さんは述べています。日本が漂流することになりそうです。

 

 

 広島、長崎でこれまでにない切り口で原爆について語った石破さん。その「戦後80年談話」を聞きたかったなと思います。正式に職を辞する前に発することはできないのでしょうか。

河野洋平氏が考える「戦後80年談話」 守られていない戦後の約束事 いまもう一度、再確認する必要がある:東京新聞デジタル

戦後、最初にやったことは日本国憲法の制定でした。憲法は権力者をしばり、権力者にこういう方向に国をリードしていけと求めています。これは国民、政治家、そして国際社会への約束事です。憲法は平和を基本とし、自分たちだけがよければいいのではなく「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」としています。(出所:東京新聞

「この80年、その約束事がきちんと守られてきたのか、いま、違った方向に行ってはいないか、考えるべきです」と河野洋平自民党総裁は語ります。「戦後の約束事が守られていないことがたくさんあります。それをもう一度、再確認することが戦後80年の年に必要です。過去は変えられず、変えてはいけないのです。そして、未来は努力によって望む姿にすることは可能です」ともいいます。

「米国への偏りが大きく、中国をはじめ、アジアがおざなりにされてこなかったのか」、中国を敵視する米国の政策を無批判に受け入れてきたことで、中国が危機の対象になっていると河野氏は指摘し、日中が胸襟をひらいて真意を語り合う努力をするのが、安全保障だといいます。軍事が不要とはいいませんが、そういう安全保障があってもよいのでしょうし、それに近づく努力が今求めらていそうです。

「今、国際社会が不安な状況の中、平和を目指す国のかたちを再構築していくことが「徳の政治」の復活にもつながります」ともいいます。

 石破さんにも語って欲しいものです。もしかしてそれが日本の漂流を止めることにつながるかもしれませんし、日本の衰退に歯止めをかけるきっかけになるかもしれません。

 

「参考文書」

石破茂首相、記者会見で辞任を表明 次期総裁選「出馬せず」 - 日本経済新聞

石破茂首相「責任」掲げ延命1カ月半 招いた政策遅滞 - 日本経済新聞

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