2018年夏以降に相次いで発覚した医学部における不正入試問題。女性や浪人生らに不利な得点操作をしていたことがわかり、こんな差別がまかり通っていたのかと世間を驚かせた。
もう過去の話かと思ったら、聖マリアンナ医科大学(川崎市)でも「性別・現浪区分という属性による一律の差別的取り扱いが行われた」ことが、第三者委員会の調査で判明した。
ところが大学側は、この調査結果の受け入れを事実上拒否。会見を開いて説明することもなく、「一律ではなかった」などとして言い逃れしようとしている。
自らが依頼した第三者委の結論を、都合が悪いからといって認めないような姿勢だ。さすがにこの“開き直り”には、文部科学省も戸惑いを隠せない。
私立大学といっても医師を養成する公的な存在で、私学助成金として税金も投入されている。このままでは、受験生だけでなく多くの国民の信頼を裏切ることになってしまう。
まずは報告書が公表された経緯だ。東京医科大学で不正入試が18年夏に発覚したことを受けて、文科省が全国の医学部を調査。文科省は聖マリアンナ医科大についても、順天堂大や昭和大などほかの9大学とともに、不適切な入試の可能性があるとして、18年12月に名指しした。
これに対し大学側は、「差別はしていない」などとして文科省の指摘を受け入れなかった。文科省は第三者委による調査を指示し、大学側は19年3月になって委員会を設置。北田幹直・元大阪高検検事長を委員長とし、複数の弁護士らが調査に当たった。当初は19年7月をめどに調査結果を公表する予定だったが、遅れていた。
大学側は20年1月17日になって、第三者委の調査報告書を公表。それによって、差別的な不正入試が行われていたことがわかった。
ここからは報告書の内容を詳しく見ていこう。聖マリアンナ医科大の一般入試における女性の入学者の割合は、15年度30.0%、16年度39.4%、17年度31.2%、18年度23.8%。このように、女性の割合は近年、減少傾向だった。
全国の医学部の入学者数(推薦入試なども含む)における女性の割合は、18年度は平均34.7%。これと比べると、聖マリアンナ医科大の一般入試における女性の入学者の割合は、約10ポイント低くなっていた。
聖マリアンナ医科大の一般入試の要項では、第1次試験は英語(100点)、数学(100点)、理科(200点)。第2次試験は面接(100点)、小論文(100点)、適性検査(参考)。第1次試験の合格者に第2次試験を実施し、1次と2次の成績に出願書類を総合して評価の上、合格者を決めることになっていた。