本研究は病院歯科のない総合病院内科に通院中の 2 型糖尿病患者を対象に,近隣の歯科治療担当歯科医師から歯周組織検査結果を含む歯科検査結果を収集し,それらと全身疾患および全身検査結果との関連性を分析することを目的とした。本研究への参加に同意を得られた糖尿病患者の残存歯数,処置歯数,齲蝕歯数,歯周病診断結果(健康,歯肉炎,軽度歯周炎,中等度歯周炎,重度歯周炎)などの歯科関連データを回収した。それらと年齢,BMI,各種血液指標,動脈硬化性疾患の有無,細小血管合併症(網膜症,腎症,神経障害)の有無などの内科関連データとを比較・検討し,歯周病と全身の健康状態との関連性について解析を行った。重度歯周炎有病者とそうではない患者の各種血液指標に有意差はみとめなかった。ロジスティック回帰解析の結果,重度歯周炎患者の動脈硬化性疾患と細小血管合併症へのオッズ比はそれぞれ 18.7 と 6.38 であった。この結果から本研究の手法によって病院歯科のない総合病院に受診する糖尿病患者の歯科疾患に関する調査や研究が可能となり,各地域における医科歯科連携調査研究を今回と同様の方法で実施することにより,多くの地域における歯周病と全身の健康状態との相関を詳細に分析できる可能性が示唆された。加えて,2 型糖尿病患者における重度歯周炎は動脈硬化性疾患と細小血管合併症の独立したリスクファクターであることが示唆された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(3):314-322,2014