裁判長が質問した「馬鹿みたいじゃ…」 東電旧経営陣、法廷での主張

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編集委員・佐々木英輔
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 東京電力福島第一原発事故をめぐる株主代表訴訟では、旧経営陣が役職に応じた役割、注意義務を果たしていたかどうかが問われた。事故前、5人の被告はいずれも、高さ10メートルの敷地を超える大津波の情報に触れていた。

 東京地裁判決は、4人について賠償責任を認め、当時の東電や取締役について「原子力事業者、取締役として求められている安全意識や責任感が、根本的に欠如していたものといわざるを得ない」と厳しく批判した。2010年に取締役になった1人は対象から外れた。

 争点は、旧経営陣が強制起訴された刑事訴訟や、今年6月に最高裁の判決が出た避難者らによる集団訴訟と共通する。事故前に大津波を予見できたか、対策により事故を回避できたかだ。4人のなかでも、武藤栄・元副社長と武黒一郎元副社長は原子力部門のトップを務めた技術系の役員で、原発の安全の仕組みを熟知する立場だった。

 08年に東電が計算した15・7メートルの津波予測について、武藤氏は08年6月に、担当者から説明を受けていた。武黒氏は08年8月に武藤氏から報告を受け(武黒氏の記憶なし)、09年4~5月にも担当者から説明を受けた。しかし、対策には動かなかった。

株主代表訴訟の法廷で、どんなやり取りがあったのか。原発事故前の経緯とともに振り返ります。

裁判長が疑問視した「判断の過程」

 昨年7月にあった株主代表訴訟の尋問では、3人の裁判官が数十分にわたって武藤氏を質問攻めにする場面があった。

 「あなたの話によると、『推…

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この記事を書いた人
佐々木英輔
編集委員
専門・関心分野
災害、環境、リスク、自然と社会