リアエンジン・リアドライブとは、自動車の駆動方式の一つである。RRと略される。単純にリアエンジンとも呼ぶとwikipediaが言っているが、それだとリアエンジンの4WDと区別がつかないためきちんと呼んであげたほうがいいと思う。
その名の通り、エンジンが後軸よりも後ろにあって、後軸を駆動する方式である。
かつて小型車を中心に1940年代から1960年代ごろまで盛んに用いられたが、乗用車からはほぼ絶滅している。ただし、とある車種を除いて。
現在では、室内容積を広く取れるという大きな利点から広大な客室を必要とするバスの駆動方式としてよく使われる。
エンジンと駆動系が全部リアに集中しているため、当然ながら重量バランスは極端にリア寄りになる。そのため、駆動輪に荷重が乗りやすく、トラクションの掛かりが良い。同様の理由で、ダートや雪道でスタックしにくいという利点がある。また、リアが浮きにくいためブレーキング時の安定性がよい。
また、部品点数が少ないためコスト・重量面で有利である。
ここまでRRの利点を書いてきたが当然ながらデメリットもある。というか、現在の乗用車用の駆動形式としてははっきり言ってデメリットのほうが多い。
まず走りの面を見てみると、もっとも大きな重量物のエンジンが車体の旋回中心から一番遠い位置にある。つまりヨー慣性モーメントはどうしても大きくならざるを得ず、動きがダルである。MR以上にうまく前輪に荷重を乗せないと強烈なアンダーステアが出てまともに曲がらない。その一方一度オーバーステアが出たらなかなか収束しない。さらに高速域ではフロント荷重が抜けやすく、真っすぐ走るのすら難しい。
RRというレイアウトがいかに間違っているかというのは、モデルカーの後ろに重りを取り付けて勢いよく滑走させてみればわかる。モデルカーは180度回転して後ろ向きになって進むだろう。RRは物理的にどうしても不安定なのだ。
欠点はそれだけではない。これはミッドシップにも言えることだが、エンジンに走行風が当りにくいため冷却系が厳しい。量産車なら、排気管の取り回しがどうしても窮屈になるという欠点もある。
パッケージングの面では、室内の容積は十分広く取れるしセンタートンネルもないからFRより多少良いが、トランク(念のために言うと前にある)の容量は、ステアリング機構が邪魔で広くとれないのでFRに劣る(そもそもフロントがトランクになっていない車は多い)。FFには室内の広さもトランク容量も勝てない。エンジンの熱と振動が後席に伝わりやすいのも弱点である。
とまあ欠点だらけのRRだが、スポーツ走行を考えなくてよいバスでは、運転席とホイールベース間の低床化やプロペラシャフトが不要になるなどの理由でRRがよく適している。バス以外では実用車のスバル・サンバーでもRRのレイアウトが採られているが、同クラスの他の車両にRRは存在しない。また、スバルはトヨタグループ入り後に軽自動車の生産から撤退、2012年以降は同じくトヨタグループのダイハツで生産するハイゼット(FR)のOEMとなった。
余談だが、フォークリフトはリアエンジンでフロント駆動である。
ではなぜ小型乗用車の駆動形式として、そんな間違いだらけのRRが用いられていたかというと、単純に言ってFFを作る技術が未熟だったので、RRが最も合理的だったためである。
1959年のBMCミニ(いわゆる旧ミニ)がデビューするまでFF車のドライブシャフトのジョイントの設計は問題が多く、普及するに足るものではなかった。さらに同ミニがエンジンとミッションで2階建てにする方式を発明するまでは、FFというのは取り立ててエンジンルーム周りをコンパクトに設計できるものではなかった。
FRはトラクションが掛らなくて悪路に弱いしプロペラシャフトが必要なため適さず、ましてや4WDなどコストがかさむし当時はFF以上に一般的でなかった。
そこで室内容積が広い・トラクションが掛かる・部品点数が少なく安いし軽いという理由でRRが用いられたというわけである。小型車はエンジンの重量がそれほど重くないという事実もRR向きであった。
しかしミニのもたらした衝撃は大きく、FF車のほうが大衆車として優れるということは明確だった。1960年代各社はFFの研究に熱を入れ、1970年代半ばまでにかなりのRR車が生産を終了した。かの超名作RR車・VWビートルも78年にドイツ国内の生産を終了した(新興国受けの生産は2003年まで継続している)。
…だが、RRがそうして時代遅れになっていく中で、よりにもよってスポーツカーでリアエンジンを貫き通して現在まで生き延びている車がある。そう、ご存じポルシェ・911である。
ポルシェ・911はポルシェ356の後継モデルだが、356がデビューした1948年はRR全盛期であり、小さなスポーツカーがRRで作られるのは間々あることだった。1963年の911はより重い6気筒エンジンを搭載してデビューすることになり、当初はRR特有の不安定性に悩まされていた。そこでポルシェは苦肉の策としてフロントバンパーに22kgもの重りを搭載するという何ともスマートじゃない解決策を講じたのであった。
このままでは当然いけないので、その後ホイールベースを伸ばしたり、車幅を増やしてみたりして、RR独特の挙動と戦うこととなる。ポルシェのすごいところはここで安易にMRやFRに流れたりせずRRレイアウトにこだわり抜き、そして結局なんとかなってしまったというところである。ポルシェの執念が感じられる。
さらにポルシェがすごいのは、ただ911をものにしただけでなく、911が今現在でも第一線級のスポーツカーの地位を維持しているということである。おまけに、あらゆるレースに出場して好成績を残している。これだけ不利なレイアウトを採用していながらむしろそれをブランドにして、世界の名だたるスポーツカーとの競争にわたりあうポルシェは世界最強の変態物好きと言えよう。
また、2010年以降、FFだった車体をモデルチェンジを機に敢えてRRに変更した車としてスマート・フォーツー、スマート・フォーフォーおよび姉妹車のルノー・トゥインゴが知られる。これらの車種はエンジンが普通車としては最小クラスのためFF級の室内空間を確保しつつラゲッジルームの下に収めることが可能で、フロントに機械が無くなった分ハンドルの切れ角を大きく取ることができ、このクラスの乗用車で重要視される街中での取り回しの良さに大きく貢献している。
…のだが、トゥインゴのエンジン位置はリアアクスルのほぼ上にあるため実は911以外のスポーツカーでお馴染みのMR(リア・ミッドシップ・レイアウト)ではないのか、とMotorFanの記者から指摘が入っているが、ルノーの広報担当者は「ミッドシップというのもおごがましいかと…」と煮えきらない回答をしている。これに対し記者は「変にMRを名乗って好事家が飛びつくのを避けようとしたのでは」と推測している。
リアエンジン・リアドライブに関するニコニコミュニティを紹介してください。
掲示板
14 ななしのよっしん
2020/02/20(木) 17:56:07 ID: QR4gx+tSlj
現役車としては他にスマート(と、共通エンジンのルノートゥインゴ)もRRだよ。
2シーターでRRだと小さく作れる、というメリットがある。
15 ななしのよっしん
2020/03/02(月) 19:37:44 ID: f2MOGkddGt
元・三菱ワークスドライバーである中谷明彦氏がベストモータリング96年1月号の『リトルマガジン』で述べた言葉
『みんなが今まで乗って来たミッドシップは確かにレイアウト的に見ればミッドシップなんだけど、RRに近いレイアウトなんだよね。
MR2にせよNSXにせよ同じ。フェラーリの355とかさ、ああいう本物のミッドシップにきちんと乗れば、挙動が解りづらいとか唐突にケツが行くとかなくって逆にドリフトしてるのがものすごく楽しいし、おまけに限界は高いし……
トヨタがMR2をしっかり作ってミッドシップの良さがしっかり出ているセッティングであれば今みたいにFRという声は出てなかったと思う。そういう意味ではMR2の功罪は凄く大きいよね
16 ななしのよっしん
2024/05/09(木) 12:30:23 ID: AD0kS66e+d
現行現役の主力戦車なんかだとイスラエルのメルカバ系列(FF)を除けばみんなRRだよね
装甲や砲塔みたいな重量物が車体前方から中央にある、重装甲化が難しいメンテナンスハッチや排気部分を正面方向に晒さなくてすむとかが理由で
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最終更新:2024/12/20(金) 18:00
最終更新:2024/12/20(金) 18:00
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