アメリカ合衆国大統領とは、アメリカ合衆国の国家元首であり行政府の長である。
アメリカ合衆国大統領選挙によって選出される。任期は最長で2期8年である。
大統領といっても絶対的な権力者、というわけではない。基本的に大統領令へのサインと軍事統制権といった非常時への対応だけである。予算案は議会で作られるので、大統領だけでは予算を立てられない。外交をして条約を結んでも、上院で承認されないと条約が発効しない。したがって議会対策が大統領の重要な仕事なのである。
上院と下院のどちらか1つで大統領の属する政党が少数派に転落し、そして大統領自身に拒否権を使いこなして議会と渡り合う気迫が備わっていないと、大統領は議会の突き上げに苦しめられることになる。
上院と下院の両方で大統領の属する政党が少数派に転落し、そして大統領自身に拒否権を使いこなして議会と渡り合う気迫が備わっていないと、大統領は何もできなくなる。
議会で自分の属する政党が少数派になり、なおかつ拒否権を使いこなす気迫が薄らいでいる大統領のことを
レームダック(lame duck 足の不自由なアヒル。転じて、「政治的な影響力を失った政治家」「死に体」の意味)という。
アメリカ大統領はアメリカの行政の長であり、行政機関のトップである長官を罷免する権限を持つ。
簡単に言ってしまえば「お前はクビだ!」と言う権限があることになる。人間誰しもクビになりたくないので、大統領に叱られないよう、大統領の顔色をうかがい、大統領の意思通りに動き、大統領に従うようになる。こうして、アメリカの行政府は一枚岩になる。
一方で、長官を任命する権限は持っていない。アメリカ大統領ができるのは指名することだけで、実際に任命するには議会上院の過半数の賛成が必要である。
議会上院との関係が悪化しているときは議会上院ですんなりと人事案が承認されない。そういうときは、罷免することに心理的抵抗が生じ、反抗的な長官に少し弱腰になる事もありうる。
日本の総理大臣は他の国務大臣に対して罷免することもできるし、国会の承認無しで任命することもできる。どんなときも後任人事をすぐに決めることができるので、いつでも大臣に対して強気でいられる。閣僚に対する権限の強さでいえば、総理大臣の方が少し強い。(大日本帝国憲法下の総理大臣には罷免の権限が無く、対象の大臣が自発的に辞める以外の方法は内閣総辞職のみ。)
軍隊というのは行政機関の一種なので、アメリカ大統領も軍隊の指揮権を持っていることになる。
アメリカ軍は世界最強の軍隊であり、このためアメリカ大統領が最強の存在に感じられる。
アメリカに背いて国際法に反する行動をとるならず者国家(Rogue state)に対して、挨拶代わりに巡航ミサイルをぶち込む権限を持っている。
1998年8月20日、ビル・クリントン大統領はアフガニスタンとスーダンのテロリスト支援施設に巡航ミサイルを打ち込んだ。スーダンには13発、アフガニスタンには60~75発程度(記事)。
2017年4月6日、ドナルド・トランプ大統領はシリアが化学兵器を使い市民を殺傷したことを理由に巡航ミサイルを59発打ち込んだ(記事)。
ただ、大規模な軍事行動を長期にわたって継続的に続けることは、やはり膨大な出費が必要である。このため予算を決める権限を持つ上院や下院の同意が必要である。つまり、アメリカ大統領単独の意思で戦争を引き起こすことはできない。湾岸戦争でもイラク戦争でも、議会上下両院の軍事力行使容認決議があってから、戦争が始まった。
アメリカ大統領が独断で実行できる軍事行動は、巡航ミサイル数十発を発射する程度の、古くなった兵器の在庫処分のような小規模な作戦行動に限られる。
大統領には核兵器の発射を命ずる権限がある。大統領の行く先には常に核のフットボールと呼ばれるブリーフケースを持った軍の人間が随行する。フットボールの正式名称は「大統領緊急カバン」で、中に入っているのは「核のボタン」ではなく、核攻撃の選択肢一覧を記した手帳や本人確認のための認証コードを記載したカード、避難用の掩蔽壕リストなどが入っている[1]。さすがに核兵器はそう簡単に使用するわけではないが、核兵器の発射権限を握ることで大統領以外の人々に無言の圧力を与える事が可能であり、軍隊を完全に掌握できる。
アメリカ大統領は行政機関に対して「こうしろ!」と命令を発することができる。これを大統領令という。大統領令は法律と似たような効力があり、しかも法律と違って議会の賛成が不要である。気軽にポンポンと乱発することができる。
史上最も多く大統領令を発したのはフランクリン・ルーズヴェルト大統領で、3721回発した。彼の任期の大部分が忙しい戦争中だったので、議会の承認無しで出せる大統領令は重宝した。
バラク・オバマ大統領の任期のうち最後の2年は上下両院を共和党が制していた。オバマ大統領は大統領令を連発して、行政を動かしていた。
ドナルド・トランプ大統領は就任直後の2017年1月27日、テロリストの入国阻止を理由に、シリア、イラク、イラン、スーダン、リビア、ソマリア、イエメンの計7か国からの入国を90日間阻止する大統領令に署名した(記事)。
大統領令は、予算編成権を握る議会の承認が付いていない。このため多額のお金がかかって予算をしっかり組まねばならないことを命ずる大統領令を出しても、何の意味も無く、ただの掛け声だけに終わってしまう。
例えば「月に米国人を送り込む大統領令」を出したとする。月に人間を送り込むには、高額なロケットを製造するなど多額のお金がかかり、議会の予算の後押し無しではとても達成できない。ゆえに、そういう大統領令を出したところで、何の意味も無い。
「テロリストの入国を阻止する大統領令」なら、さしたるお金がかかるわけではない。空港や港の職員の手間がちょっと増えるだけで、膨大な出費がかかるわけではない。
ゆえに、大統領令で命令される案件は、多額のお金を必要としないような小規模な案件に限られる。
大統領令は、期限付きのものもあるし、無期限に続くものもある。ただし大統領令は、それを発した大統領がいつでも取り消すことができるし、それを発した大統領の次に就任した大統領がいつでも取り消すことができる。
大統領令を発するときは、ちょっとした儀式となる。ホワイトハウスに大勢の支持者を招き入れ、その人達に囲まれつつ大統領が署名する。大統領が署名した文書を見せびらかし、それに対して支持者達がニコニコ顔で拍手する(動画1、動画2、動画3)。
アメリカ大統領は外交をする。外交もまた行政の一部分なので、外交担当の国務省を支配しつつ、世界各国との交流を深める。
外交というのは、金をさほどに必要としない仕事である。外国の首脳に電話一本入れるだけで、仕事をしたことになる。飛行機に乗って外国に行って外国首脳と話し合いをするだけで、ある程度の成果を得られることがある。このため、議会と対立して自分好みの予算が得られず困っている大統領がやることというと外交になる。議会の反対があって巨大な軍事基地を建設するなどのような金のかかる大事業に手が付けられない時は、外交をして成果を出して、次の選挙での大勝を目指すのがアメリカ大統領のいつもの姿となる。
大統領は外交をして国際条約を勝手に結ぶことができる。ところが、その国際条約を正式発効させるには、議会上院の3分の2の承認が必要である。大統領が結んだ条約を上院が否認して、大統領に大恥をかかせることがある。
1996年にクリントン大統領が包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名したが、共和党が多数を占める
上院が批准を拒否した。2021年現在も批准されていない。
アメリカ大統領は恩赦(pardon)をして罪人を釈放する権限がある。
刑務所の中で真面目な態度を続けているものを選んで恩赦を与えることで、「真面目に生きればこういう風にいい目にあうこともあるのだぞ」と囚人たちにメッセージを与える。
クリントン大統領、ブッシュ(子)大統領、オバマ大統領、トランプ大統領の4人とも恩赦を行って囚人を釈放している。
ジェラルド・R・フォード大統領は「リチャード・ニクソン前大統領が有罪判決を受けた場合、彼に対して恩赦を与える」と宣言、ウォーターゲート事件の幕引きを図った。
アメリカでは毎年11月第4木曜日が感謝祭という祝日になっていて、寒い冬が到来する前のこの日に、家族親戚が一堂に会して団らんを深める。そのとき七面鳥を食べることが習わしになっている。
アメリカ大統領が住むホワイトハウスでは、食卓に並ぶ運命だったはずの七面鳥2羽に対し、恩赦を与える行事がある。これを七面鳥恩赦という。画像検索すると楽しそうな画像がヒットする。
アメリカ合衆国は立法権と行政権と司法権を厳格に分割している三権分立の国であり、立法府の議会と行政府の大統領の意見が一致せず、たびたび衝突することが多い。
日本とイギリスは議院内閣制で、議員下院の多数派から内閣に人材が送り込まれる。立法府から行政府に人が送り込まれ、立法府が行政府を支配する。立法府と行政府が常に意思を統一させて、二人三脚で政治を進めていく。立法権と行政権が融合していると言って良く、それゆえ厳密な三権分立ではない。
日本では決して見られないような風景がアメリカの政治ではたびたび起こることになる。
アメリカ大統領が率いる行政機関は、議会に対して法案を提出することができない。アメリカ議会で法案を提出できるのは、議員だけである。
そのため、アメリカ大統領が代表して、「こういうことを実現したい」と願望を書き並べた文書を議会に郵送し、議会に対してお願いをすることになる。このときに送付される文書のことをメッセージ(message)という。
このメッセージのことを「教書」と翻訳することが通例となっている。大統領が議会に対して上から目線でお説教しているようなイメージを与えるような訳語である。実際は、議会と大統領は対等であるし、やっていることは単なる依頼である。
大統領には議会に出席する権利がないので、こうした文書は郵送によって送りつけられる。
大統領が議会にズカズカ進入して好きなように演説することはできない。大統領が議会に入るには、議会から招待を受ける必要がある。つまり、勝手に敷居をまたいではいけない。
年に数回だけ、議会が大統領を招待して、大統領が議会で演説することがある。そのうち最も有名なのが一般教書演説(年頭演説)で、基本的に毎年1月最終火曜日、つまり1月25日から1月31日のうちのどれかに行われる。上下両院の議員を全て下院議場に集め、さらには功績があった公務員や民間人を招き、大統領が立って演説する。大統領の後ろには副大統領(上院議長を兼任している)と下院議長が並んで座る。こういう風景になる。
2020年の一般教書演説を行うドナルド・トランプ大統領の後ろに座ったのは、民主党のナンシー・ペロシ下院議長だった。大統領と下院議長の仲が悪かったので、下院議長は他の人が立って拍手しているときも着席したままだった(動画)。
なぜ下院の議場かというと、下院は定員435人で人数が多く、議場が広いからである。上院は定員100人で議場が狭い。
一般教書演説(年頭演説)は英語でState of the Union Addressという。State of the Unionは「国家(the Union)の現状(State)」、addressには演説という意味がある。
選挙によって、大統領の所属する政党が上院・下院の両方で少数派に転落することがある。
そして、大統領の好みに合わない法案が可決され、大統領のところに送付されることがある。大統領はしぶしぶ署名して法律を発効させることもあるが、拒否権(veto)を行使することもある。
この拒否権こそが、大統領にとって議会に対する最大の武器であり、最後の切り札になっている。
数週間から数ヶ月かけて一所懸命審議して、法案の微修正を繰り返しつつ合意をなんとか形成して、やっとの思いで上下両院での可決を果たしたのだが、その努力が全て無に帰することになる。努力が全く報われないことほど、落胆するものはない。議員たちにとって拒否権発動はとても恐ろしい。
また、拒否権を発動されることで、議員としての経歴に大きく傷が付き、「時間を無駄にした無能」と汚名を着せられるという屈辱も味わうことになる。そして次の選挙で対立候補に「彼/彼女は拒否権を発動されるような法案に時間を使うという、愚かで間抜けな無能です」と煽られ、落選の危険が高まっていく。議員たちにとって拒否権発動はとても恐ろしい。
議員たちにとって「拒否権を行使するぞ!法案を握りつぶすぞ!」という脅しはかなりよく効くので、そのため、議員たちは大統領の意に沿うことを優先して考えることになる。
拒否権を行使された法案を発効させるには、上下両院で3分の2以上の賛成で再可決しなければならない。上下両院で3分の2以上の賛成を得るのは本当に難しく、過去の再可決の成功率は10%を下回っている。
大統領が拒否権を行使して議会と渡り合うのはアメリカ合衆国らしい光景である。また、州政治の場においても、州知事が拒否権を武器に州議会と喧嘩している。拒否権こそがアメリカ政治の特徴となっている。
戦後の日本国憲法には拒否権の条項がない。また、戦前の明治憲法では拒否権の条項があったが、一度も行使されることがなかった。日本は、拒否権というものには縁が無い国だと言える。
それにしても、「拒否権を行使する」と熟語を使って格好よく表現をしているのだが、実際にやっていることは単なる嫌がらせである。
人が努力して成し遂げたことを叩き潰して嫌がらせ、時間を浪費する無能という汚名を着せて嫌がらせ、それ以外のことは何もしていない。
米国の政治を見ていると、いい年した大人が単なる嫌がらせをしている姿を楽しく眺めることができる。
大統領の公邸で、居住空間であると同時に、職場でもある。首都ワシントンの真ん中に位置する。住所はペンシルヴェニア通り1600番地のこの場所である。
外見は真っ白である。建築様式はパッラーディオ建築で、この建築様式はギリシア・ローマの建築を受け継いだものである。それゆえホワイトハウスはギリシア・ローマの建築物を連想させる。
ホワイトハウスの北が道路に面しているので、北側こそが正式な玄関となる。
ちなみに、ホワイトハウスの北にはラファイエット広場が隣接しており、ラファイエット広場の中心にアンドリュー・ジャクソン第7代大統領をかたどった銅像がある。クラーク・ミルズが作り、1853年1月8日に除幕式が行われた。北から見るとジャクソン像がホワイトハウスの守護神のように見える(ストリートビュー)。
ホワイトハウスの北には緑色の芝生が広がっていて、北芝生という。ホワイトハウスを北からみるとこのような感じで、8つの支柱とそれらに支えられた四角い屋根と三角形の構造物が見える。支柱で屋根を支えつつ建物から突き出た部分をポルチコというが、ホワイトハウスの北にも北ポルチコがある。
ホワイトハウスの南には緑色の芝生が広がっていて、南芝生という。ホワイトハウスを南からみるとこのような感じで、6つの支柱が丸く並んで、丸い屋根を支えている。この部分を南ポルチコという。
南芝生のほうが広いので、各種の儀式を行う舞台に選ばれやすい。他国の国家元首が来たときの歓迎式典が行われるのはこちらである(画像1、画像2)。南芝生のすぐ南のこの場所にワシントン記念塔というオベリスク(尖塔)があるので、南芝生でなにかをするときの画像に写り込みやすい。
また、マリーンワンという大統領専用ヘリコプターが離着陸するのは南芝生である(検索例、動画)。マリーンワンから降りた大統領は、南芝生の上を歩き、待ち構えるテレビカメラに手を振ることが多い(画像)。
ホワイトハウスの本館は、いくつかの区画に分けられる。
イーストウィングという区画には、大統領夫人(ファースト・レディー)の執務室がある。
ウェストウィングという区画には様々な会議室がある。その中に楕円形(oval)の形をした部屋があり、そこをオーバルオフィス(oval office)と言って、大統領が執務室として使う。画像検索すると全体が楕円形の部屋の写真が出てくる。地図で見てみると楕円形の空間がすぐ見つかる。床が楕円形なので絨毯も楕円形である。
ウェストウィングの地下にはシチュエーションルームという部屋があり、軍隊との情報共有をする。画像検索すると、いかにも軍隊といった感じの、ものものしい会議室の画像がヒットする。ホワイトハウス地上部分のフレンドリーな雰囲気とは大違いである。2011年5月にはウサマ・ビンラディンを追い詰める作戦の指揮施設となり、大統領などの重要閣僚が勢揃いして作戦の行方を見守っていた(画像)。
ウェストウィングの西隣のこの場所にあるのが、アイゼンハワー行政府ビルである。副大統領の執務室や、その他官僚の使う部屋がある。なかなか大きいビルである。
大統領がホワイトハウスを離れてどこかに行くときに使うのは、専用ヘリコプターのマリーンワンである。
マリーンワンとは「大統領が乗っているヘリコプター」を示す軍隊内のコールサインである。大統領がいつも使う専用ヘリコプターに大統領が乗らず副大統領が乗ることがあるが、そのときのコールサインは「マリーンツー」になる。
大統領は分刻みの忙しいスケジュールに追われている。交通渋滞の可能性がないヘリコプター移動は、大統領にとって理想的な移動手段である。大統領がどこかに行くときはメリーランド州のこの場所にあるアンドリュース空軍基地にマリーンワンで移動して、そこで専用飛行機のエアフォースワンに乗り込む。
マリーンワンに選ばれるヘリコプターはシコルスキー・エアクラフト社が製造する。外見は上部が白色・株が濃い緑色となっており(画像)、地味な外見である。
1976年以降にヘリコプターを管理しているのは海兵隊である。それ以前は陸軍と海兵隊が共同でヘリコプターを管理していたので、大統領専用ヘリコプターは「アーミーワン」というコールサインで呼ばれていた。
ヴァージニア州のこの場所にあるクワンティコ海兵隊航空施設でヘリコプターの整備が行われる。
大統領が外国でヘリコプターに乗る予定がある場合、現地の政府が用意したヘリコプターには乗らず、アメリカからC-17グローブマスターⅢという輸送機でマリーンワンをわざわざ運び、マリーンワンに乗り込む(記事)。
大統領が外国へ出かけるときに使うのが、大統領専用機のエアフォースワンである。
エアフォースワンとは「大統領が乗っている飛行機」を示す軍隊内のコールサインである。大統領がいつも使う専用飛行機に大統領が乗らず副大統領が乗ることがあるが、そのときのコールサインは「エアフォースツー」になる。
2021年現在の機種名はVC-25で、1990年に2機配備された。耐用年数30年とされており、そろそろ切り替えねばならない。
普通の旅客機であるボーイング747を改良しただけの機種なので、世界中の空港で部品調達できる。どこかの空港に着くたび、徹底的に整備される。
いつも停留している場所は、メリーランド州アンドリュース空軍基地である。場所はここで、ワシントンからすぐ近く。ホワイトハウスから直線距離で17kmしか離れていない。
記事で「大統領はメリーランド州の空港を飛び立った」と出るが、それはつまりこの空軍基地である。日本の総理大臣が政府専用機でワシントンを訪れる際は、この空軍基地に着陸する。
パイロットを含む搭乗員のほぼ全員が、アメリカ空軍に所属している。
内部は会議室や執務室や通信室が多い。それゆえ、本来は500人ほど運べる機種だが、70人ほどしか運搬できない。
外見はこんな感じで、水色と白の爽やかな色調となっている。アメリカ人ときたら赤・青のキッツい色調の国旗カラーをゴリゴリと塗りたくってくるものだが、エアフォースワンはそうならずに済んだ。
大統領が乗り込む黒塗りの高級車をザ・ビースト(the Beast)という。
外見はこんな感じ。国内を走行するときは右側にアメリカ国旗、左側に大統領旗を掲げる。外国を走行するときは大統領旗の代わりに現地の国の国旗を付ける。作っているのはゼネラルモーターズで、高級車種のキャデラックのボディを載せている。このため、キャデラック・ワンとも呼ばれる。
厚さ127mm(普通の男性の、手首から親指の先までと同じぐらい)以上の厚い装甲板に覆われ、防弾ガラスは120mm、ドア部分は200mm以上。ロケット弾を打ち込まれても壊れない強度となっている。このため車両の重量も重く、8トンの重さ。あまりに重いので最高時速は100km程度と控えめである。
大統領が外遊して外国で大統領専用車に乗るときは、アメリカ空軍のC-17グローブマスターⅢという輸送軍用機で運搬する。先述のエアフォースワンにはこのクルマを積むスペースがない。
愛称はザ・ビースト(the Beast)で、野獣という意味である。大統領閣下の乗る車にそういう愛称を付けるアメリカ人のセンスには脱帽せざるを得ない。
アメリカ大統領専用の別荘はキャンプ・デーヴィッドと呼ばれる。メリーランド州のこの場所にある。首都ワシントンのホワイトハウスから北西に92km離れている。
アメリカ海軍が所有する土地であり、防諜の仕掛けが張り巡らされていて、盗聴は不可能である。このため外国要人を招いて会談するときは、このキャンプ・デーヴィッドに招かれることが多い。
1978年にジミー・カーター大統領がエジプト大統領とイスラエル首相をここに招待し、和平会談を取り持った。そのときの合意をキャンプ・デーヴィッド合意と呼ぶ。
ドナルド・トランプ大統領は就任直後に日本の安倍晋三総理大臣をアメリカに招いたが、そのとき、フロリダ州パームビーチの自分の別荘マールアラーゴに招いていた。これは批判の声が多く上がっていた。この別荘は防諜の工夫が為されておらず、いくらでも盗聴できた(記事1、記事2)。
アメリカ大統領は健康そのものの人が多いが、たまに病気にかかることがある。
そういう場合は、ホワイトハウスから北に10km離れたこの場所にあるウォルター・リード陸軍病院に入院することになる。ドナルド・トランプ大統領が2020年10月に新型コロナウィルスに感染したとき、この病院に入院した。
ウォルター・リード陸軍病院は、1キロメートル四方の広大な敷地に100以上の診療所があり、約7000人の医療スタッフが勤務している。患者は原則として、現役・退役軍人とその家族となっている(記事)。
歴代アメリカ大統領をランキング付けしよう、という議論がときおり交わされることがある。
様々な知識人が「○×は素晴らしい大統領」「△□は史上最低の大統領」と語り、いい暇つぶしとなる。その議論や調査をまとめた日本語版Wikipediaもある。(→歴代アメリカ合衆国大統領のランキング)
そういうとき、常に参考にされるのが、大統領在任中に米国の勢力圏が広がったか、ということである。領土を広げたり親米国を増やしたりした大統領は良い大統領として評価が高くなる傾向がある。
そこで、アメリカ合衆国領土や親米国家・反米国家の増減をまとめてみた。
就任年 | 大統領 | 任期中の出来事 | 資料 |
1801 | トーマス・ジェファーソン | ルイジアナ併合(フランスから1500万ドルで買収) | wiki |
1817 | ジェームズ・モンロー | オレゴン併合(イギリスから割譲) | wiki |
フロリダ併合(スペインから500万ドルで買収) | wiki | ||
1845 | ジェームズ・ポーク | テキサス併合 | wiki |
カリフォルニア併合(メキシコから割譲) | wiki | ||
1857 | ジェームズ・ブキャナン | 南部諸州が離脱 | wiki |
1861 | エイブラハム・リンカーン | 南部諸州を併合 | wiki |
1865 | アンドリュー・ジョンソン | アラスカ併合(ロシアから720万ドルで買収) | wiki |
1897 | ウィリアム・マッキンリー | ハワイ併合 | wiki |
フィリピン併合(スペインから割譲)、キューバ保護国化 | wiki | ||
1933 | フランクリン・ルーズヴェルト | 日本を親米勢力圏に組み入れる | wiki |
1945 | ハリー・S・トルーマン | ||
1953 | ドワイト・D・アイゼンハワー | キューバが反米国家になる | wiki |
1963 | リンドン・B・ジョンソン | ヴェトナム南部が反米勢力圏に入る | wiki |
1968 | リチャード・ニクソン | ||
1977 | ジミー・カーター | イランが反米国家になる | wiki |
1989 | ジョージ・ブッシュ(父) | クウェートを親米勢力圏に組み入れる | wiki |
2001 | ジョージ・ブッシュ(子) | イラクを親米勢力圏に組み入れる | wiki |
就任年 | 名前 | 下院議員 | 上院議員 | 州知事 | 副大統領 | その他公職 |
1789 | ジョージ・ワシントン | 軍人 | ||||
1797 | ジョン・アダムズ | ○ | 海軍 | |||
1801 | トーマス・ジェファーソン | ○ | 国務長官 | |||
1809 | ジェームズ・マディソン | ○ | 国務長官 | |||
1817 | ジェームズ・モンロー | ○ | ○ | 国務長官 | ||
1825 | ジョン・Q・アダムズ | ○ | ○ | 国務長官 | ||
1829 | アンドリュー・ジャクソン | ○ | ○ | 軍人 | ||
1837 | マーティン・ヴァン・ビューレン | ○ | ○ | ○ | ||
1841 | ウィリアム・ハリソン | ○ | ○ | 軍人 | ||
1841 | ジョン・タイラー | ○ | ○ | ○ | ○ | |
1845 | ジェームズ・ポーク | ○ | ○ | |||
1849 | ザカリー・テイラー | 軍人 | ||||
1850 | ミラード・フィルモア | ○ | ○ | |||
1853 | フランクリン・ピアース | ○ | ○ | |||
1857 | ジェームズ・ブキャナン | ○ | ○ | 国務長官 | ||
1861 | エイブラハム・リンカーン | ○ | ||||
1865 | アンドリュー・ジョンソン | ○ | ○ | |||
1869 | ユリシーズ・グラント | 軍人 | ||||
1877 | ラザフォード・ヘイズ | ○ | ○ | |||
1881 | ジェームズ・ガーフィールド | ○ | ||||
1881 | チェスター・アーサー | ○ | ||||
1885 | グロヴァー・クリーヴランド | ○ | 検事 | |||
1889 | ベンジャミン・ハリソン | ○ | ||||
1893 | グロヴァー・クリーヴランド(再) | - | - | - | - | - |
1897 | ウィリアム・マッキンリー | ○ | ○ | |||
1901 | セオドア・ルーズヴェルト | ○ | ○ | |||
1909 | ウィリアム・タフト | 裁判官、陸軍長官 | ||||
1913 | ウッドロウ・ウィルソン | ○ | ||||
1921 | ウォレン・ハーディング | ○ | ||||
1923 | カルヴィン・クーリッジ | ○ | ○ | |||
1929 | ハーバート・フーヴァー | 商務長官 | ||||
1933 | フランクリン・ルーズヴェルト | ○ | ||||
1945 | ハリー・S・トルーマン | ○ | ○ | |||
1953 | ドワイト・D・アイゼンハワー | 軍人 | ||||
1961 | ジョン・F・ケネディ | ○ | ○ | |||
1963 | リンドン・B・ジョンソン | ○ | ○ | ○ | ||
1969 | リチャード・ニクソン | ○ | ○ | ○ | ||
1974 | ジェラルド・R・フォード | ○ | ○ | |||
1977 | ジミー・カーター | ○ | ||||
1981 | ロナルド・レーガン | ○ | ||||
1989 | ジョージ・H・W・ブッシュ(父) | ○ | ○ | CIA長官 | ||
1993 | ビル・クリントン | ○ | ||||
2001 | ジョージ・W・ブッシュ(子) | ○ | ||||
2009 | バラク・オバマ | ○ | ||||
2017 | ドナルド・トランプ | |||||
2021 | ジョー・バイデン | ○ | ||||
就任年 | 名前 | 下院議員 | 上院議員 | 州知事 | 副大統領 | その他公職 |
若い頃からの軍人で、戦争で大活躍して政界経験の無いままいきなり大統領になったのは、テイラー、グラント、アイゼンハワーの3人。
タフトとフーヴァーは当時の大統領に長官として任命されて、公務を経験してから大統領になった。
ドナルド・トランプは一切の公職に就かないまま大統領選挙に当選した史上初の人物である。
弁護士がやたらと多い。博士号を取得して学者と呼ばれていたのはウッドロウ・ウィルソンのみ。ビジネスで成功して大富豪になってから政界入りしたのはフーヴァーとトランプ。ビジネスで成功してある程度の金持ちになってから政界入りしたのは、ジョンソン(紳士服仕立業)、ハーディング(新聞社)、カーター(ピーナッツ農家)、ブッシュ父(石油関連)、といったところ。
両親からの遺産がとても大きかったとされるのはセオドア・ルーズヴェルト、フランクリン・ルーズヴェルト、ケネディ、ブッシュ父、ブッシュ子、ドナルド・トランプ。
両親の資産が少なく、アルバイトに励む苦学生だったのはリチャード・ニクソン、ジェラルド・フォード。
米国大統領は超激務なので、歴代大統領には体力がある健康そのものの人物が多い。持病らしい持病を全く持っていない人物が多い。例外的に持病があったのが、フランクリン・ルーズヴェルトとケネディである。
前者は下半身が麻痺しての車椅子生活者で、後者は脊髄を痛めて薬を常用していた。
離婚歴があるのは2人だけで、ロナルド・レーガンとドナルド・トランプである。
歴代米国大統領の大半はヨーロッパに民族的ルーツを持つ、いわゆる白人である。唯一の例外はバラク・オバマであるが、彼も母親は白人である。
宗教的には、全員がキリスト教徒であった。宗派的にはプロテスタントが大半を占めており、数少ない例外はカトリックのジョン・F・ケネディとジョー・バイデンである。大統領就任式における宣誓では、大統領が聖書に手を置くことになっている。キリスト教徒以外が大統領に当選したら、この伝統が崩れることになる。
全員が男性であり、女性、あるいは男女いずれにも区別しがたい人物が大統領になったことはない。
少なくとも公表されている限りでは全員が異性愛者である。同性愛者・両性愛者その他のマイノリティとされる性的指向を持つと自ら認めた人物はいない(死後に「男性に向けたラブレターが発見された」と報じられた人物は居るが、その信憑性は不明)。
総じて、「白人」「キリスト教プロテスタント」「男性」「異性愛者」という、いわゆるアメリカ社会でのマジョリティが大統領を務めてきた。
ただし以上の内容は2021年現在時点のものである。今後白人以外、キリスト教徒以外、男性以外、異性愛者以外の大統領が誕生する可能性もある。
アメリカ大統領の奥さんをファースト・レディーという。上記のように歴代の全員が男性かつ異性愛者であったため、アメリカ大統領の夫すなわち「ファースト・ジェントルマン」が存在したことは無い。
選挙で選ばれてその座に付いたわけでもないので何らかの実権を握るわけではないが、旦那が大統領に在職しているあいだは各種式典に引っ張りだこになり、アメリカのもう1つの象徴になる。どんな服を着るのか、などファッション面でも注目される。
ファースト・レディーは何らかの政治的活動をすることがある。識字率の向上を目指したり感染症を防ぐことを目指したり、そういう活動をすることが多い。
歴代ファースト・レディーの中で最も政治に口を出したのがヒラリー・クリントンだった。ファースト・レディーはホワイトハウスのイーストウィングに執務室を持つものだが、彼女は大統領と同じウェストウィングに執務室を持っていた。そしてウェストウィングで行われる閣議に出席し、国民皆保険制度の設立に向け、主導していた。このため共和党支持者たちから「あの出しゃばり女は・・・」と蛇蝎のごとく嫌われていた。
夫就任年 | 名前 | 活動 |
1981 | ナンシー・レーガン | 反麻薬キャンペーン |
1989 | バーバラ・ブッシュ | 識字率向上、感染症撲滅、白血病患者支援 |
1993 | ヒラリー・クリントン | 国民皆保険制度の導入 |
2001 | ローラ・ブッシュ | アフガニスタンやアフリカの教育支援 |
2009 | ミシェル・オバマ | 学校給食の向上 |
2017 | メラニア・トランプ | ネットでの無礼で攻撃的な書き込みを止めさせる運動を支援 |
アメリカ人が密かに恐れるジンクスの一つにテカムセの呪いというものがある。末尾に0が付く年の大統領選挙で当選して末尾に1が付く年に就任した大統領に、不幸が訪れる・・・というものである。
実際に、その条件を満たした大統領は、暗殺されたり病死したりした例が多い。
就任年 | 名前 | 事件 |
1841年 | ウィリアム・H・ハリソン | 就任して31日後に肺炎で病死 |
1861年 | エイブラハム・リンカーン | 暗殺される |
1881年 | ジェームズ・ガーフィールド | 暗殺される |
1901年 | ウィリアム・マッキンリー | 暗殺される |
1921年 | ウォレン・ハーディング | 在職中に食中毒で倒れ心臓発作で病死 |
1941年 | フランクリン・ルーズヴェルト | 在職中に脳溢血で病死 |
1961年 | ジョン・F・ケネディ | 暗殺される |
1981年 | ロナルド・レーガン | 就任して69日後に銃撃され、弾丸が心臓をかすめる |
2001年 | ジョージ・W・ブッシュ(子) |
1961年までは暗殺されるか病死する、という法則で在職中の大統領に不幸が訪れていた。1981年3月30日のレーガン銃撃事件で暗殺が未遂に終わって、その法則が崩れた。ジョージ・W・ブッシュ大統領時代は暗殺されかかることもなく病死もしなかったことで、アメリカ大統領はテカムセの呪いからやっと解放された、と信じられるようになった。
掲示板
63 ななしのよっしん
2024/01/09(火) 10:32:57 ID: /rvmX/IlxL
ヘイトクライムの鎮圧ができていないバイデンが現在不利
かといってトランプだと保護主義で各国との関係が悪化する
ものによっては合衆国分裂の危機?
64 ななしのよっしん
2024/02/09(金) 18:09:00 ID: 0MQmAEGKWZ
バイデン「何じゃこのボタンは…まあいいや押してみよ、ポチッとな(核ボタンポチー)」
全世界「うわあああああああ!」
捜査官「大統領!何したんですか!」
バイデン「はて?わしゃ覚えとらんのう…」
捜査官「うーん認知症なので責任能力なし、無罪w」
65 ななしのよっしん
2024/11/11(月) 13:26:02 ID: RGYz1SkgPS
ハリス支持と富裕層の分布がほぼ一致してるからそりゃ環境だの多様性だのと高尚なお題目でインフラタダ乗りしてシコシコ気持ちよくなってる連中に関係ない大多数のブルーカラー国民はトランプ支持になるわな
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最終更新:2024/12/19(木) 06:00
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