深浦康市(ふかうら こういち)とは、地球代表将棋棋士である。1972年2月14日生まれ。長崎県出身。(故)花村元司九段門下。棋士番号201。
概要
居飛車を主戦法としている。堅実で手厚い指し回しを得意とし、非常に勝率が高い。粘り強い棋風でも知られる。
将棋に対しては非常に真面目な一方、ニコニコ生放送などの将棋解説では砕けた発言も多い。また、「(タイトル戦の番勝負は)相手のことをずっと考えているので、恋愛に似ている」、「相手の人は、今何してるだろうとか思うようになる」などの迷言(?)から“深浦恋愛流”とも呼ばれる。
順位戦頭ハネ伝説
将棋の順位戦では、各リーグの棋士に前年度の結果に基づいた「順位」がつけられ、勝敗数が同一であった場合はこの順位により今年度の成績が決定される(「A級順位戦」の記事も参照)。この「勝敗数が同一だったために順位で昇級や降級の差が付く」ことを頭ハネと言うのだが、不運と片付けるには可哀想なぐらい数多くの頭ハネによる昇級失敗・降級を食らっているのが深浦である(なお、深浦の頭ハネには三浦弘行が絡むことが異様に多い。以下に三浦の名を太字で示す)。
- すべての発端 52期順位戦C級2組最終局で対局した7勝2敗どうしの深浦と三浦弘行の対局は三浦の勝ちとなり、次期の順位は三浦6位・深浦9位となった。
- 1回目 53期順位戦C級2組
両者ともに9勝1敗であったが、順位の差で次点となり昇級を逃す。前期の直接対決で深浦が勝っていれば結果は逆であった
年度成績 10勝 9勝1敗 順位(前年度結果) 久保利明(24位) 三浦弘行(6位) 中川大輔(8位) 深浦(9位) 佐藤秀司(20位) 結果 C級1組昇級 C級2組残留 - 2回目 58期順位戦B級2組
9勝1敗も順位の差(しかも20位と21位の1枚差)で次点となり昇級を逃す。9勝1敗で昇級を2回逃したのは将棋史上深浦ただ一人。
年度成績 9勝1敗 順位(前年度結果) 藤井猛(2位) 三浦弘行(20位) 深浦(21位) 結果 B級1組昇級 B級2組残留 - 3回目 63期順位戦A級
4勝5敗も順位の差で降級
年度成績 4勝5敗 1勝8敗 順位(前年度結果) 谷川浩司(3位) 丸山忠久(4位) 三浦弘行(5位) 鈴木大介(6位) 深浦(9位) 高橋道雄(10位) 結果 A級残留 B級1組降級 - 4回目 65期順位戦A級
4勝5敗も順位の差(しかも8位と9位の1枚差)で降級。4勝してA級から2度陥落したのは将棋史上深浦ただ一人
年度成績 4勝5敗 2勝7敗 順位(前年度結果) 佐藤康光(3位) 丸山忠久(5位) 藤井猛(6位) 久保利明(7位) 三浦弘行(8位) 深浦(9位) 阿部隆(10位) 結果 A級残留 B級1組降級 - 5回目 67期順位戦A級
3勝6敗も順位の差で降級。当時深浦は王位を保持しており、タイトルホルダーのA級陥落は史上初年度成績 3勝6敗 順位(前年度結果) 三浦弘行(2位) 鈴木大介(9位) 深浦(10位) 結果 A級残留 B級1組降級
頭ハネをくらいまくり、長らくA級に残留できなかった深浦をネタにして、A級残留の難しさを表現するコピペも作られたほどである。
・B1で圧倒的強さを誇った深浦なら残留確実だと思っていたらよくわかんない棋力のやつらにボコられた
・残り三局の時点で3勝3敗の5分だった深浦がその後一気に3連敗くらってB1に戻ってきた。
・足元がぐにゃりとしたのでござをめくってみると、頭ハネされた深浦だった。
・B級1組上がりの1/2が頭ハネ経験者。しかも下位順位者がガチホモという都市伝説から「深浦ほど危ない」
・「4勝すれば落ちるわけがない」といってA級に上がった深浦が1年後4勝5敗で戻ってきた。
・「同じ事が二度も続くわけない」といって再びA級に上がった深浦が1年後やっぱり4勝5敗で戻ってきた。
・「タイトルホルダーが落ちるはずない」と言ってA級に上がった深浦が1年後王位のままで戻ってきた。
・「他の棋戦で対局したけど楽勝だった」と余裕顔で出て行った深浦がマジ本気のA級棋士にボコられて戻ってきた。
・9位と10位は頭ハネにあう確率が250%。一度ハネられてまたハネられ、さらにハネられる確率が50%の意味
・A級順位戦におけるフルボッコでの戦意喪失者は1年平均2人、うち約1人が深浦
なお毎回頭ハネを食らっているわけではなく、頭ハネを回避したり逆に他の棋士に頭ハネを食らわせた例もある。代表的なものは以下の通り。
9回三段リーグ戦(四段昇段)
最終局では12勝5敗の4人(2位=真田圭一、3位=豊川孝弘、4位=深浦、および13位の奨励会員)が昇段枠2つを争うことになった。真田と13位の奨励会員が最終局で直接対決し、深浦は昇段争いに絡まない三浦弘行との対局であったため、以下のいずれかの場合には深浦は昇段できなかった。
・深浦が負けた場合
・真田、豊川両名が勝った場合
しかし深浦が勝ち真田が負けたため、順位の差で昇段した。
(もう一人の昇段者は豊川であり、13位の奨励会員が頭ハネを食らい次点)
71期順位戦(3勝6敗で初のA級残留)
深浦の順位は10位(最下位)で、最終局を迎える前の時点で3勝5敗であった。
2勝6敗が3人(順位4位=谷川浩司、8位=高橋道雄、9位=橋本崇載)いたため、深浦が負けてかつ2勝6敗の3人の内2人以上が勝つと深浦が頭ハネ降級となるところであった。
深浦は負けたものの、2勝6敗の3人も全員負けたためA級4期目にして悲願の初残留を果たした。
(頭ハネで谷川が残留、高橋と橋本が降級)
76期順位戦(5勝5敗でA級残留 6人プレーオフが実現)
当期はA級11名で行われ、最終局前に降級が決まった屋敷伸之(2勝7敗)に加え残り2名の降級枠を3勝6敗の行方尚史(5位)と4勝5敗の3名(渡辺明=3位、深浦=7位、三浦弘行=11位)で争うこととなった。
このうち渡辺と三浦は最終局が直接対決であり、「行方・三浦のいずれかが勝ち深浦が負けた場合」は頭ハネで深浦が降級するところであった。
最終局では深浦を頭ハネさせるため三浦が渡辺に勝ったが、深浦も久保利明に勝ったため頭ハネ降級を回避し、結果的に後述の6人プレーオフが実現した。
(4勝6敗の渡辺、3勝7敗の行方、2勝8敗の屋敷が降級)
ほかにも、56期順位戦(8勝2敗でC級1組に昇級し、下位の同星4名を全員頭ハネ)や、第74期順位戦(3勝6敗でA級残留し、郷田真隆王将が頭ハネされ降級)などがある。
余談だが、上記三段リーグについて当時の深浦は『近代将棋』誌上のインタビューで「実は(今期の昇段は)諦めていました。真田さんも、豊川さんも勝つと思っていました」「僕は他力というのは好きではないので考えないようにしていました」などとその後の棋士人生を象徴するような回答をしていた。
9勝1敗で昇級できなかった事についても「全勝すればいいんです」とNHKの番組で回答しており、深浦の打たれ強さ・根性強さを窺い知ることができる。
また第37期棋王戦五番勝負第3局のニコ生解説で視聴者から対三浦について質問された際には、「昔、三浦さんより順位が下で、順位に泣かされることが多かった。急所で頭ハネを一杯してる」と語り、「あまり意識してなかったんですけど(当時、対三浦戦11連勝中だったため)きっとバランスが取れてるんでしょう」と結んだ。
翌期の第71期順位戦A級では三浦に負けて危うく降級しそうになった。
もし地球に将棋星人が攻めてきたら
2008年の王位戦七番勝負。前年に羽生から王位を奪取し初タイトルを獲得した深浦は、立場を逆にして羽生(当時名人・四冠)の挑戦を受けていた。羽生が先勝した後の第2局は、後手番の羽生が2手目△3二飛、深浦がそれに▲9六歩と返し定跡を作ったとして現在でもたまに話題に上がる一局である。ねじり合いの末の終盤、一時は羽生が勝勢となるが、深浦の粘りに手を焼き疑問手を重ねついには逆転負け。全盛期の羽生では考えられないような負け方に2chは「羽生衰えたな」の大合唱となった。え?四冠持ってるだろって?まあ全盛期は七冠だし……。
そんな時に投下されたレスがこちらである。
839:名無し名人:2008/07/25(金) 09:39:28 ID:0ulRSLnj
おまえら、もし地球に将棋星人が攻めてきて、向こうの大将と
地球代表が将棋一番勝負で対決し、負けたら植民地にされる
という事態になったら、地球代表は絶対羽生でないとイヤだろ?
深浦でもいいのか?深浦に地球の命運を託せるのか?
……なお、この七番勝負はフルセットの末に深浦の防衛で終わった。にも拘わらずこのレスは、この無駄にスケールの大きい文章の面白さや、羽生がその後もトップに君臨し続けた一方で深浦はあまり実績を伸ばせなかったという残念な説得力もあって、コピペとして定着してしまうこととなった。ある種のオチとして深浦の名前が用いられる形で……。
羽生に番勝負で勝ったにも拘わらず、オチとして名前を使用されるという深浦の悲しさは推して知るべしであろう。が、その不遇さ・不条理さも含めて、深浦康市という棋士のキャラクター性を現わしているとも言える。なればこそ、この文章は愛され、定着したという側面もあるだろう。後に、なんJ板において“野球星人”バージョンに改変されるなどの派生も行なわれ、「〇〇星人vs地球代表」というフレーズなどが定番化していった。
地球代表へ
2017年、中学生棋士の藤井聡太が公式戦29連勝を達成したり、羽生善治が通算7期目の竜王を獲得して永世七冠を達成するなど、将棋界は沸きに沸いていた。あまりにこの2人ばかり注目され、また実際に将棋ソフトもかくやという力強い勝ち方が多かったせいで、当時の将棋ファンの間に「藤井と羽生の2人こそ、地球を侵略しに来た将棋星人である」という上記コピペから派生したネタが流行してしまった。
しかしその最中深浦は第3期叡王戦の予選ブロック決勝にて羽生を撃破。その後のインタビューで「羽生さんに勝った棋士には責任があると思います」と語り、本戦では持ち前の粘りで藤井聡太に大逆転勝利を収めた。藤井聡太戦は特に注目度が高く、この逆転劇は将棋ファンに強烈な印象を残した。
そのため、やがて将棋ファンの中からこんな声が上がり始める。「地球代表は深浦にすべきでは」「深浦なら、羽生や藤井の侵略から、人類を守ってくれるかも…」
そして迎えた2018年3月1日。A級順位戦リーグ最終局、いわゆる将棋界の一番長い日では未曾有の事態が起きていた。この日の星取り次第では、最大6人が6勝4敗で並ぶことになってしまったのだ。同時進行していた対局が次々に終局していく中、「久保利明対深浦康市戦」が最後に残った一局となる。この対局の結果がA級棋士(当期は11人いた)のうち久保と深浦自身を含む8人と、挑戦される佐藤天彦名人の運命を全て左右することになった。
順位(前年度結果) | 稲葉陽(1位) | 羽生善治(2位) | 渡辺明(3位) | 広瀬章人(4位) | 深浦(7位) | 佐藤康光(8位) | 久保利明(9位) | 豊島将之(10位) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
久保勝ちの場合 | A級残留 | A級残留 | A級残留 | A級残留 | B級1組降級 | A級残留 | 名人挑戦 | A級残留 |
深浦勝ちの場合 | PO進出 | PO進出 | B級1組降級 | PO進出 | A級残留 | PO進出 | PO進出 | PO進出 |
6勝4敗6名という前代未聞の多人数によるプレーオフ実現(と深浦のA級残留)を願って、将棋ファン(と深浦ファン)の応援は深浦に集中することとなる。下手をすると久保・渡辺ファンですら、「この伝説となるであろうプレーオフを見てみたい」と心の片隅で望んだ……かもしれない。そして深浦は見事にそれらの期待に応え146手で久保を降し、将棋界初の6者プレーオフが実現することとなった。
この瞬間、前述したコピペのオチを丸ごとひっくり返す、新たな共通認識が将棋ファンの間に生まれたのである。
時は下って深浦がB級2組に陥落してしまった2021年、王座戦本戦1回戦で深浦はタイトル2つを獲得し、さらに前年度から継続する歴代8位の19に連勝を伸ばして「今度は自身の29連勝を更新するのか!」の声すら囁かれるほどの藤井聡太と3度目の対局を行い、見事に藤井の連勝を止めて対藤井の対戦成績を2勝1敗と勝ち越した。49歳となってさすがに往年ほどの力は失われたものの、地球代表未だ健在というところを見せつけた。
さらに同年10月に行われた第71回NHK杯2回戦で三冠となっていた藤井と再び当たるとこれも下してみせ、地球代表としての貫禄をより強固なものとした。スポニチアネックスの記事に「「将棋星人」に対する「地球代表」の任務を存分に果たしている深浦は...」と当然のように書かれる始末であった[1]。
成績
昇段履歴
- 6級(1984年)・・・奨励会入会
- 初段(1988年)
- 四段(1991年10月1日)・・・三段リーグ2位による昇段
- 五段(1994年8月27日)・・・勝数規定
- 六段(1997年7月22日)・・・勝数規定
- 七段(2001年6月28日)・・・勝数規定
- 八段(2004年4月1日)・・・順位戦A級昇級
- 九段(2008年9月26日)・・・タイトル獲得3期相当による昇段
タイトル戦登場履歴
一般棋戦優勝履歴
- 朝日オープン将棋選手権 1回(第21回-2002年度)
- 銀河戦 1回(第23回-2015年度)
- 全日本プロトーナメント 1回(第11回-1992年度)
- 早指し選手権戦 1回(第27回-1993年度)
- 早指し新鋭戦 4回(第12回-1993年度・第18~20回)
- 勝ち抜き戦5勝以上 1回(第19回-1998~99年度)
- NHK杯テレビ将棋トーナメント 1回(第69期-2019年度)
優勝回数:10回
将棋大賞受賞履歴
- 第21回(1993年度) 新人賞・敢闘賞
- 第22回(1994年度) 敢闘賞
- 第23回(1995年度) 最多勝利賞・最多対局賞
- 第31回(2003年度) 技能賞・勝率第一位賞
- 第35回(2007年度) 敢闘賞・名局賞
- 第38回(2010年度) 名局賞
- 第44回(2016年度) 名局賞
叡王戦戦績
- 第1期:九段予選Dブロック決勝敗退
- 第2期:九段予選Bブロック優勝、本戦1回戦敗退
- 第3期:九段予選Aブロック優勝、本戦2回戦敗退
- 第4期:九段予選Aブロック優勝、本戦3回戦(ベスト8)敗退
- 第5期:九段予選Aブロック決勝敗退
関連動画
関連生放送
関連項目
関連リンク
脚注
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