日産・マーチとは、日産自動車が1982年から製造している小型ハッチバック型乗用車のことである。
概要
マーチの車名の意味は、英語の「3月」や「行進曲」という意味。一般公募で決定された。
なお、ヨーロッパ仕様だと名称は「マイクラ」となり、意味は英語の小さいの「ミクロン」の複数形である。
大人4人が快適に移動できるパッケージングと優れたコストパフォーマンスを特徴としている。
また、モデルスパン(世代交代)が他の日本車と比べると長く、10年間製造された型式もある。
一般公募から決定された『マーチ』の発表はTBS系列で放送していた『8時だョ!全員集合』の生放送中であった。
これは当時日産自動車が同番組のスポンサーであったため。
軽自動車を扱うまでは日産車の中でも最小サイズの車種でありエントリーカー(初心者向けの入門車)として、また初代モデルからワンメイクレースが行われるなど、手軽なモータースポーツへの登竜門の車という一面も持つ。
初代・K10型(1982~1991年)
1981年に第24回東京モーターショーに「NX・018」として参考出品される。
同時に翌年の1月まで、車名の一般公募キャンペーンを開始。全国からの応募数は、565万通に及ぶ。
エッジの利いたボディデザインは数々の車を手がけたジョルジェット・ジウジアーロ氏の作。
1982年10月に発売。当初は3ドアハッチバックのみで、4グレードで展開。エンジンは1000cc4気筒のキャブレター仕様のみであった。
1983年9月に5ドアハッチバックを追加。1984年からは現在でも続くワンメイクレース「マーチカップ」が開始される。
1985年にマイナーチェンジと同時にターボエンジンを載せた「マーチターボ」が登場。同時にパワーステアリングがOP設定がされるようになる。
1987年には屋根の一部を開放できる「キャンバストップ」が登場。同時にパワーステアリングを全グレードにオプション設定。
1988年にマーチターボにスーパーチャージャーを追加した競技向けの「マーチR」が登場。国内ラリーで大活躍をする。
当初のイメージキャラクターには、タレント・近藤真彦(マッチ)を起用。キャッチコピーも「マッチのマーチ」であった。
この頃にマーチカップに参加したことが、彼がレーサーとしての道を歩むようになったきっかけと言われている。
また、バブル期には「パイクカー」と言う派生車種が登場する。1987年には「Be-1」、1988年には「パオ」、1991年には「フィガロ」が登場するが、ベースはすべてK10型マーチがベースとなった。
二代目・K11型(1992年~2002年)
1992年1月に初のフルモデルチェンジ。すべてが新開発となった。
エンジンは1000ccと上級版として1300ccも登場、すべて電子制御化がされる。
ミッションも先代にあった4速MTと3速ATは廃止。MTは全て5速、オートマは4速ATと日産初のCVTが設定された。
なお、先代で過激な性能を誇っていたターボモデルは廃止となっている。
このモデルは欧州市場を意識して開発され、当時のヨーロッパ製小型車に並ぶ商品性を持つことに成功。
値段第1で「安かろう悪かろう」な商品となっていた国産コンパクトカーに革命をもたらした。
国内外での評価も高く、1992年に第13回日本カーオブザイヤーと通産省グッドデザイン賞を受賞。
さらには、1993年のヨーロッパカーオブザイヤーを日本車で初めて受賞する。
1996年度には142,000台を販売、不況と莫大な借金に喘いでいた日産を支えた車の一つでもあった。
発売開始から10年近く経った2001年時点でも月販5000台をキープしていたほどである。
1994年に一部改良により、運転席エアバックが標準装備となる。
1997年には大幅なマイナーチェンジを行い、インパネとフロント部分を大幅に変更。
1999年にはオープン仕様の「マーチカブリオレ」やステーションワゴン仕様の「マーチBOX」が登場する。
素直な走りと改造パーツが豊富な事から、K11型はレースの世界でも愛されている。
三代目・K12型(2002年~2010年)
2002年2月モデルチェンジ。このモデルもすべて新開発となった。
排気量は1000cc(2004年に廃止)から1200cc、1400ccがラインナップ。
ミッションはルノー製の5速MTと日本製の4速AT(後にCVTが追加)を設定。
まず、K12型の大きな特徴はそのスタイリングだろう。
カエルのようなクリクリとしたヘッドランプと丸っこいデザインは特徴的である。
ボディカラーにも豊富なカラーバリエーションを設定、内装にも個性的なカラーが用意されていた。
この頃になると他社の競合車種が増えたものの、発売当初は目標の倍に迫る大ヒット。
発売から4年目の2006年でもK12型は月に4000台を売り上げる程の人気を誇った。
この裏には、他社製コンパクトカーが新型になるにつれてサイズを拡大していた事が大きい。
小型車ならではの取り回しの良さを重視したユーザーにはK12型の『コンパクト』さは大きな利点だったのだ。
2003年に高出力化されたエンジンをはじめ、専用部品でチューニングされたスポーツモデル「12SR」が追加された。
2005年にマイナーチェンジ。3ドアハッチバック(ヨーロッパ市場では健在)仕様の廃止と最高峰グレードに1500ccエンジンとCVTを採用する。
2007年にマイナーチェンジと、オープン仕様の「マイクラC+C」を追加。これは英国日産で生産された輸入モデルである。
このモデルでもワンメイクレース仕様車が発売、NISMOのチューニングを受けたコンプリートカーも発売されている。
四代目・K13型(2010年~)
2010年7月にモデルチェンジ。生産を神奈川県の追浜工場から、タイ日産の工場製となった。
K13型はこれまでのアジア、欧州市場から南米を初めとした新興国での需要をも狙った国際戦略車として開発された。
エンジンは新規に開発された3気筒1200cc。ミッションはCVTのみの設定となった。海外仕様では4気筒1500ccと4AT、5MTも設定されている。
一部グレードに日産初のアイドリングストップ機能を装備。これにより、1200cc車の場合燃費がリッター辺り26kmと優れた経済性を持つ。
現在このクラスの競合車種は軒並み車幅が5ナンバーサイズの上限に近い1695mm前後となっている。
しかし、マーチは日産におけるエントリークラスの役割を果たしていること、狭い道のすれ違いを気にするユーザーにも対応する目的から、全幅は1665mmとやや狭めに設計されており、先代と比べても車幅の拡大は5mmに抑えられている。
先代のK12 型と比較すると経済性の向上、新興国の荒れた路面も視野に入れた車体剛性の強化が行われている。
2013年にマイナーチェンジが行われ、フロントマスクなど大幅に変更された。そして、スポーツモデル「nismo」と「nismo S」が追加。12SRと同じくオーテックが開発した。
「nismo S」は海外仕様マーチをチューニングしたものとなっており、4気筒1500ccエンジンの5MTが設定された。
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