戸田奈津子をご存知で?
知らない? こいつはコトだ! 紹介せにゃ。
戸田奈津子とは、日本の字幕翻訳者。翻案家。愛称はなっち。
トム・クルーズなどの有名俳優が来日した際、隣に居る眼鏡天パのおばちゃんと言えば知っている方も多いかもだ。
概要かもだ
1970年代から現在に至るまでさまざまな映画の字幕を手がけており、一説では年間50本(週に1本のペース)も担当しているという。字幕の人という印象が強いが、吹き替え用の翻訳や通訳を担当することもある。
しかし、同時に誤訳・意訳が非常に多いことでも有名。単なる誤訳だけでなく、細かなニュアンスや原作の意図を無視した意訳、さらに口語と文語の違いや尊敬語・謙譲語・時制の欠如など細かいミスを上げればきりがない。
特に、日本でも翻訳小説などで有名だったファンタジー作品やSFが映画化された際、なっちが字幕を担当すると、その実力に沿った海外三流ドラマ並の訳を連発してしまい、特に原作を知っているファンはなっちが訳を当てるというだけで悲観的になることが多い。
近年の誤訳作の代表としては『オペラ座の怪人』『ロード・オブ・ザ・リング』『パイレーツ・オブ・カリビアン』などが有名。特に『オペラ座の怪人』では、わざと含みを持たせた作りである原作と、それを尊重した上で製作された映画版を、徹頭徹尾誤訳の連打でブチ壊しにしてしまい、原作ファンの激怒を買ったことで有名。
世界的に有名な指輪物語の映画版『ロード・オブ・ザ・リング』においても、せっかく原作者が「翻訳の手引き」を残すほど細やかな配慮がなされているのに、なっちは全くそれを読まずに翻訳したため、正確な訳がなされている瀬田氏翻訳版の小説文、まともな訳者がついた日本語吹替版とも違う訳が展開され、原作既読者のみならず初見の観客でさえも理解に苦しむ珍文章を頻発してしまっている。
もろちんネット上でも有名であり、誤訳を集めた専用wikiも存在するという異例の事態も発生している。
そろそろ引退を?いや、まだまだ続けるかもだ!
86歳で通訳を引退すると明かした。
例を?
上に極端な例を3つ、その下に大小様々な例を挙げるが、他にもまだある。下記関連リンクを参照。
- 情熱のプレイ:オペラ座の怪人
もちろん、性的な意味で。17歳のフランス人ヒロインにこんなイタリア人みたいなことを言わせる辺りがなんというか。原語はpassion-play。これは成句で、ハイフンを含めて「(キリストの)受難劇」を意味する単語であるが、ハイフンを見ずに、またはハイフンの意味が分からずに訳してしまったようだ。 - 大尉から准将、及び身分全般の誤訳:パイレーツ・オブ・カリビアン
原語はそれぞれ「Captain」と「Commodore」。直訳すると海軍大佐と准将である。一般的な軍の階級は大尉-少佐-中佐-大佐-准将なので、4階級特進という訳の分からないことになった。大尉と訳すると陸軍の階級になってしまう。なお、「Captain」は船長または艦長を意味する場合もある。同じく「Commodore」は提督を意味する場合もある。『パイレーツ・オブ・カリビアン』の時代設定ならば「船長」と「提督」が相応しいかもしれない。『プライベート・ライアン』のジョン・ミラー大尉がひょっとしたら海軍大佐に昇格してる可能性も・・・。
なっちはこういった身分社会特有の表現や皮肉について誤訳することが多々あり、他にも「王妃」を「女王」(どちらもqueen)にしたり、「女主人」を「男妾」(どちらもmistress)にするといった誤訳をしている。 - わしは生命の創造主、秘密の炎に仕える者だ!:ロード・オブ・ザ・リング
誤訳の最右翼としてつとに有名。原文は「a servant of the Secret Fire, wielder of the flame of Anor!」
原文にはない「生命の創造主」なるものをつけたし、さらにSecret Fireとflame of Anorを混同している。単なる意訳のみならず、もっともらしい単語を挿入して理解を狭めてしまうところになっち訳の真髄が伺える。
正訳とされる瀬田貞二氏版訳はここを「わしは神秘の炎に仕える者、アノールの焔の使い手じゃ!」と訳し、吹替版も瀬田訳に準じている。
- 韋駄天:ロード・オブ・ザ・リング
アラゴルンの通称、またはそれに因むフロドのポニーの名で、原語は「the Strider」。Strider にはアメンボの意味もあるが、この場合「(ホビットに比して)大股で歩く者」を意味し、アラゴルンを得体のしれないよそ者とみなす田舎の村民からの蔑称であり、瀬田訳では「馳夫(はせお)」としている。
なっちの訳は小説版の「馳夫」からの重訳と思われるが、和製中世風ファンタジーの原風景である指輪物語やに全くそぐわず、しかも「Strider」と何ら関係のない仏教の神様の名前を使ったこと、「韋駄天」という速さを褒め称えるような原作と真反対の意味の言葉を使ったことで同作のファンを少なからず落胆せしめた。尤も、これについては配給会社の制作担当者の提案によるものである、との担当者当人の発言がある(掲示板 >>1057-1058 参照)。
また、吹替版音声とソフト版字幕ではそのまま「ストライダー」とされたが、実はこれも原作者が決めたルールの一つ「現代英語訳の固有名詞は、翻訳版では各言語に重訳する」旨に反しているため厳密に言えば誤りであるが、これについても先の制作担当者が関わっているとの由である。ともあれ、いずれの問題も、英語と日本語では単語の応用方法に違いがある、等の両言語間の習慣の差を考慮すべき案件でもある。 - 嘘をつくな!:ロード・オブ・ザ・リング
フロドからボロミアへの台詞。原語は「You are not yourself!」で、「自分を見失っている」といった意味で吹き替えでは「ボロミアじゃなくなってる!」となっている。
祖国を守ろうとする思いの強さゆえに「指輪」の魔力に取り憑かれたボロミアへの呼びかけであり、決してボロミアを嘘つき呼ばわりしているわけではない。
なおボロミア関連のなっちの訳はことごとく間違っており、本来高潔な武人であるボロミアをも堕落させる指輪の恐ろしさも、最期にアラゴルンを王と認める重みも一切が否定され、ただの悪人に見えてしまうことが問題となった。 - 66回の流産:リング
正しくは66年の流産。66回も流産すりゃ悪霊(貞子)になるのもむべなるかもだぜ。
原作が日本で、海外で放映された映画の再翻訳だというのにこの誤訳があることから有名になった。 - 航空機運搬船:トップガン
原語は「aircraft carrier」。ニコニコ大百科どころか、まともな英和辞典を紐解けば「航空母艦(空母)」という訳を導き出せるはずだが。
辞典以下の翻訳クオリティと辞典以上に無駄な字数、これがなっちである。ただ、ソフト版では「空母」となっている模様。手直しだろうか。 - バトルシップ艦隊:スター・ウォーズ エピソードⅠ
「Battleship」の翻訳に手こずったなっちは翻訳を諦めたのか、そのまま「バトルシップ」と表記した。文字通り翻訳すらしていない。トップガンの「航空機運搬船」のように無理矢理な直訳でも最悪「戦闘船艦隊」となるはずだが。(本来は「Battleship」は「戦艦」と訳すべきである)
さらに冒頭のシーンなので、多くの観客が映画よりもこの字幕に圧倒されたという皮肉な結果に。 - ボランティア軍:スター・ウォーズ エピソードI
原語は「A Volunteer」。volunteerは動詞で「志願する」という意味があり、「義勇軍」とするのが定訳である。 - ローカルの星人:スター・ウォーズ エピソードI
原語は「A local」。クワイ=ガン・ジンがジャー・ジャー・ビンクスのことを指して言ったセリフだが、これだとまるでジャー・ジャーが「ローカル」という惑星の種族であると解釈できてしまう。この場合は「原住民」と訳すべきだろう。 - ジャバ・ザ・ハット族:スター・ウォーズ エピソードI
「ジャバ・ザ・ハット」には個人名と種族名が含まれており、これを訳せば「ハット族のジャバ」である。
『スターウォーズ』シリーズは物語自体が壮大な作品であるため、 以上のようにEP1ではなっちの誤訳が遺憾なく作品の幅や奥行きを狭めている。
一応、スター・ウォーズのこれら珍訳あるいは翻訳放棄はソフト版ではある程度手直しされている。 - ネビュラ星雲:ギャラクシー・クエスト
原語は「Klaatu nebula」。nebulaは星雲の意であり、「Klaatu(クラートゥ)」が固有名詞である。
この訳だと「星雲星雲」となってしまう。 - キリル語:ハンティング・パーティ
架空の言語をでっち上げる快挙を成し遂げた。もちろん正確な訳は「キリル文字」である。 - 2ヶ月:13デイズ
タイトルは『13デイズ』、その元ネタであるキューバ危機もほぼ2週間。それをテーマにしているのに2週間を2ヶ月と勘違いしてしまう。 - 腐ったタマゴ:パイレーツ・オブ・カリビアン
原語は「bad egg」。本来こういった場面では「悪人、クズ、ろくでなし」等を意味するスラングとして使われる。
後述のなっち語に通じる、英語のスラングに対しての理解の無さの端的な例。 - SOS:タイタニックほか多数
リアルさに拘ることで有名なジェームズ・キャメロン監督の作品である『タイタニック』。「SOS」が出てくるのはスミス船長が部下のフィリップスに遭難信号の打電を指示する場面だが、実際の同船では最初は新式のSOSではなく旧式のCQD遭難信号の使用を指示していた(途中からSOSと交互に打電)。キャメロン監督はリアリティを考慮し、観客に理解されない覚悟でわざとCQDという語を使っているのだが、なっちは判り易さばかりを優先してそれをSOSのみに改変してしまった。 - 左舵:タイタニック
もしかして:取舵。船の進行方向を左方向にする場合、左に舵を切る。これを取舵(とりかじ)という。が、『タイタニック』では「左舵」となっている。原語では「Port side」。シーン的に左に転舵して氷山を避けようとするシーンなので、判り易いといえば判り易い。直訳すると「港側」になるので、取り敢えず左に進むなら「左舵」と妥協したのか・・・。上記のSOS同様、判り易さ優先でリアリティが損なわれてしまった。 - 我らは銃士、結束は固い:ヤング・ブラッド
『三銃士』の有名なセリフ「“One for all, all for one”」の意訳、というか翻案。普通は「一人は皆のために、皆は一人のために」と訳されるが、こうした正訳のニュアンスがほとんど感じられない。本来英語が読めない人々を相手にする翻訳業で、既に発刊されている書籍での表現を使わず、広く膾炙している表現や決まり文句をあえて避ける姿勢もなっちが非難される理由の1つである。 - 入れろ(open)⇔切れ(close):アポロ13
電気回路の勘違い。電気回路は回路の一部をスイッチとしてわざと「開放」してあり、これを「閉じる(close)」と回路が完成して電気が流れ、機器が作動する。よってこの場合の「Open/Close」の正訳は「切れ/入れろ」である。
ほぼ全ての電源を切って電力の節約に努めた後、満を持しての再起動のシーンでこれ以上何を切れというのか。 - LEM、司令船:アポロ13
アポロ月着陸船の略称はLM(Lunar Module)である。これは元々Lunar Excursion Module、略称LEM(レム)と呼ばれていたが、開発のグラマン社は名称を変更。しかしその後もNASAでは語呂がいい「レム」と言う略称を使い続けていた。脚本には俳優への発音ガイドとしてLEMと書かれていたものをなっちは勘違いしてそのまま使ってしまった。司令船はサターンVロケットの先端、与圧された乗員の居住スペースである。アポロ宇宙船はこの司令船(Command Module)と燃料やロケットエンジンを搭載した支援船(Service Module 機械船とも呼ばれる)がつながっている。なっちは言語では「CSM(司令・支援船)」と呼ばれているシーンでも司令船と一貫して訳している。 - 焼き殺せ、探し出して殺せ、他多数:ザ・ロック
『ザ・ロック』もなっちが担当しており、その手腕をいかんなく発揮している。特に海兵隊ハメル准将の誤訳はストーリーを捻じ曲げるほど。作中のハメルは “作戦中に政府に見殺しにされた部下の家族に対する慰謝料” を要求してこの蜂起を起こしたため、誰も殺すことなくこの蜂起を終了させるつもりであった。蜂起前には見学に来ていた小学生を巻き込まないように配慮するといった面も見せた。Navy SEALsが潜入した後も同士であるSEALsを殺す気は毛頭なかった。死亡したSEALs(このときハメルは武器を捨てて投降するようにSEALsに命じていたものの、些細な事故から全滅させてしまう)の他に2人のSEALs隊員(実際は英国陸軍のメイスンとFBIのグッドスピード)がいることが分かると2回「殺せ」と命令させている。最初の「焼き殺せ」は言語では「Burn 'em out.」と言っており、burn outには「焼き尽くす」の意であるが、「火で追い出す」などの意味もあり、ここでは「燻り出せ」が適訳であろう。
もう1つの「探し出して殺せ」は言語では「There're two dead men here who strongly suggest you go finish the job.」と言っており、意味は「2人死んだ、その彼らが任務を全うしろと言っている」となる。この時点ではハメルがどのような人間かは完全には明かされておらず、彼の言う「任務」が何なのかは伏せられている。後にメイスンが投降した際とグッドスピード捕縛の際に「ハメルは誰も殺す気はない」ということが完全に明かされる。グッドスピードには「You're lucky that old man Hummel wants you alive.(ツイてるな、ハメルの大将は生かしておけだとさ)」と海兵から語られる。ここでなっちは「殺すなって命令だ」と当てている。であれば前述の「殺せ」は明らかな誤りで忠実に訳すことが必要であろう。
推敲し手直しすればいいものを、自称「物を書く仕事」のくせに推敲すらしていないようだ。 - 閣下 サー と呼べ:ザ・ロック
ハメルが投降したメイスンに「Name and rank, sailor.(名と階級を名乗れ、水兵)」と尋ねる。これに対しメイスンは「It's Army, actually.(<水兵ではなく>陸軍だよ)」と突っかかる。これに対し部下が「Answer the question. And adress him as "General, sir."(質問に答えろ。准将、サーを付けろ)」と言う。ここでの「准将」は呼びかけの表現である。「サー」は軍隊の敬語表現であり、特別な場合を除いて訳す必要がない。当てはめるとすれば「准将閣下」とするところか。 - 神の助けを 007:消されたライセンス
短いセリフに込められた人間関係の機微をぶち壊す誤訳。ジェームズ・ボンドは友人の敵討ちのために自ら情報部を辞し、殺しのライセンスを剥奪される。銃を奪われ身柄を拘束されそうになるものの辛くも逃走するボンドに向けて、情報部局長 M はそっと「何とも気の毒だがな、中佐」("God help you Commander." なおボンドは海軍中佐)とつぶやく。もはや完全に 007 ではなくなったことを示す重要なシーンだったのだが、何故かなっちはわざわざ「007」を当ててしまったので、まだ辞めてから1分も経っていないのに M がボンドをまた 007 と呼ぶ変なシーンになってしまった。
また「God help ~.」は「~は(神よ救い賜え、と祈るほどに)可哀想だ、憐れな奴だ、情けない」(≒ ~ be miserable)といった意味である(ここの help は "God save the queen." の save と同様の命令法であり、直説法三単現の -s は付かない)。以上のことから「神の助けを」ではボンドの幸先を祈るただの神頼みにしか見えず、私情により無茶な行動をとることになった元部下に抱く M の複雑な心境にはやや届かない。なおビデオ版の吹替でも、呼称の部分を除いてはなっちとほぼ同様の訳になっている。 - 50mm機関銃:地獄の黙示録
それはもう機関銃とは言いません。50口径機関銃(ブローニングM2重機関銃)を誤訳。口径は銃身内径のヤード・ポンド法による表記(単位は 100分の1インチ)でありメートル法換算で 12.7mm なのだが、よく「.50 cal」と書いて fifty caliber と読むので、それをメートル法表記と混同した結果こうなったものと思われる。
なお、第二次世界大戦中にドイツのラインメタル社が開発・製造した内径 50mm の BK5 がドイツ空軍により制式採用されており、これを以て「50mm機関銃は存在する!」と強弁する人もいるが、さすがに戦闘機据え付け用の内径 50mm のデカブツはいつの時代のどこの国の軍隊でも機関銃(英: machine gun / 独: Maschinengewehr)ではなく機関砲(autocannon / Maschinenkanone)として扱われる(BK5 の K は Kanone = 砲)。 - 火の準備を! :キングダム・オブ・ヘブン
「Hold your fire!」を誤訳。本来は「撃つな!」という意味なのだが、劇中ではエルサレムを攻撃するサラディン軍に対して火炎瓶を投げつけ防備するシーンなので、「火をホールドしろ → 火を準備しろ」と勘違いした模様。直訳すれば、それっぽいし、シーン的にもあってると言えそうだが、英語のテストでも駄目だしされるのではないだろうか。 - 我が殿 :キングダム・オブ・ヘブン
「My lord」の翻訳。エルサレム王国の君主ギー(のちの国王)に対する呼びかけを「我が殿」と訳した。間違ってはいないが、中東の十字軍国家であるエルサレム王国の次期国王を殿と呼ぶのは21世紀に制作の歴史もの映画としてはいかがなものかと。なお、辞書では「君主、閣下、陛下」となっている。 - 理学的(世界) :ビューティフルマインド
物語のクライマックスで、主人公のジョン・ナッシュがノーベル経済学賞を受賞した時の場面。
この場面ではジョン・ナッシュが「研究の中で物質の世界と形而上の世界を行き来し、やがて精神病を発症し、それから回復した」という自らの半生を端的に話している。
ここで「理学」と訳された語は「the physical」であり、これは「物理的」、「物質的」等の意味である。一方「理学」は古代中国での生理学や陰陽師の吉兆占い等を表す。また「理学」は「自然科学」の基礎研究を示す事もあり、この意味での「理学」であれば「the physical」意訳の範疇には一応収まっている。
また同場面では「the metaphysical」(形而上)を大胆にも「哲学的」と訳しているのも注目のポイントである。
「理学的」と「哲学」で一応は対の言葉にはなっているものの、「the physical」と「the metaphysical」を「~学的」と翻訳すると原文では先の二語と並べられた「the delusional」(妄想の世界:精神病を発症した事を指す)との繋がりが薄くなる。「the delusional」と繋がりを持たすなら「the physical」は「物質の世界」、「the metaphysical」は「形而上の世界」と訳した方が適切であろう。
また、あえて「~学的」とつけて分かりやすさを追求するのならば「physical」は「物理学的」とでも訳した方が簡単である。それどころか「理学」という言葉が出る前の台詞では「What decides reason?」(理性を決めるのは何か?)を「理(り)とは何か?」と訳している為、「理学」がこの「理」を研究する学問だと解釈されやすく意味が伝わり辛くなっている。
誤訳というより悪訳の一例である。
なっち語と?
また、誤訳の他にもう一つの悪癖が存在する。それが「なっち語」だ。彼女は述語が分からないときや正確な訳がしづらい時に、自分のセンスで以って語尾を変な風に変えたり、単語を入れ替えてしまう。
- 「~を?」「~なので?」「~と?」「~で?」などの、原語では疑問文でない文章への疑問符の付加。あまりにも頻出するため、わからない文章をぼかすためとか、疑問文+応答文で訳の尺を調整しているという考察が為されている。
- 音声では小声で呟いているような言葉に「!」をつける。字幕では句読点が使えず、うまく文章を切れない時に適当に付けられている例が非常に多い。
- 「~せにゃ」「~かもだ」「~かもけど」「コトだ」などの独特の古臭い、または不自然な語尾の付与。
- 「おっ死(ち)ね」などの古臭い言い回し。また上述の「韋駄天」のように仏教用語の混入した慣用表現も古い日本語表現であり、ジェネレーションギャップを感じさせる。例えば「知らぬが仏の亭主」(『オペラ座の怪人』)など。
- 俗語(特に卑語や罵倒語)を訳す際は特別な配慮や知識が必要とされるが、なっちは"特別な配慮"を独自のセンスでやってしまうため、そうした俗語は特になっち語になる。その結果「cherry boy」→「プッシー知らず」、「Hasta la vista, baby.」→「地獄で会おうぜ、ベイビー」という珍訳が飛び出す。特に罵声が飛び交う『フルメタル・ジャケット』の初訳ではこのなっち語が多すぎて、訳文をチェックしたキューブリック監督直々の指示によってなっちを降板させ、スターウォーズで実績のある原田眞人氏に交代させたという。
- 「バカこくな!」「こいてねえ!」・・・『チェンジング・ライン』より。21世紀のニューヨーカーの掛け合いね、これ。
- また、身分の高低が会話に影響を及ぼすような場面で、敬語とタメ口をごちゃ混ぜにするという悪癖も「なっち語」の1つ。特に前述の『ロード・オブ・ザ・リング』では、主要人物のアラゴルンとボロミアに関して派手にこのミスをやってしまったため、痛烈に批判された。
批判にもめげない迷惑人間かもだぜ
あまりの誤訳・珍意訳の多さに、もちろん映画業界からはかなり批判を浴びており、町山智浩などは早くからそのトンデモっぷりに気がついていた。しかしながら、昔からそれだけ批判を浴びているにもかかわらず、現在も彼女の暴走(例:『アバター』 09年)と批判は止んでいない。
理由として本人が全くそれらを相手にしていないことが挙げられる。批判に対して耳を塞いでいると考えられているが、これほどの誤訳を連発するからには、何故批判されるのかが本気で理解できていない可能性も十分にある。
また、戸田自身が所属する「映画翻訳家協会」には約20名の翻訳家が所属しているが、著名な映画などにおいて映画配給会社側が「(長年勤めているということで)ベテランだから」という理由で戸田を起用することが多く、また「戸田が翻訳を希望した作品で戸田を拒否すれば(戸田の圧力により)協会の心証が悪くなる」という噂もあるため、混乱と非難を加速させている。
そしてついに『ロード・オブ・ザ・リング』では、第一作の字幕を見て落胆・憤慨した一部有志が、第二作以降での戸田の降板と誤訳の修正を求める署名活動をネット上で行い、配給の日本ヘラルドとピーター・ジャクソン監督に送付する事態にまで発展した。監督側からのリアクションやヘラルド側の不可解な対応など紆余曲折があったものの、結局戸田は全三作の劇場版およびDVD版の字幕翻訳家として居座り続けたのである(もっともDVD版ではかなりの誤訳・珍訳が手直しされている)。この辺りの経緯や経過については中つ国Wiki管理人のブログ記事(『ロード・オブ・ザ・リング』字幕問題について - 中つ国放浪記)が詳しい。
その後も『オペラ座の怪人』等のソフト化の際に同様の活動が行われたが、成果は半々といったところである。
ちなみに、ある週刊雑誌でその誤訳連発っぷりに特集が組まれたときのインタビューでの発言がこれである。
「あら、そう、知らなかったわ。初めて聞きました。でも、そもそも映画の翻訳というのは字数やいろんな制約があって、そのまま直訳しても文章にならないし、意味が通じないの。だから、やっぱりある程度の意訳は必要なのよ。それぞれの意見はあるでしょうけど、私たちのような、ものを書く仕事はあっち立てればこっち立たずで、意見が合うことはなかなかないですから」
この文から真相をどう推理するかは自由だが、どちらにせよ映画界にとってかなり迷惑な存在であることはまちがいない。彼女が批判に対して屈する・映画界から引退するのも、彼女よりも作品に対して真摯な翻訳業者が報われるのも、当分起こりそうにないと言える。
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