パラパラとは、ユーロビートを中心としたダンスミュージックにつけられる、左右ステップと上半身の動作を中心とした振り付けのことである。ダンスの種類であって音楽ジャンルではない。
定義
パラパラの定義は以下の2つである。なお、これら2つの概念は文脈上区別されるものではあるが、日常的には両者は混同して使用されている。
- ユーロビートやテクノ (特にハイパーテクノ)、トランスなどにつけられる左右ステップと上半身の動作を基本とした振り付けをパラパラという。
- 1で定義されるパラパラのうち、特にユーロビートの曲につけられた振り付けをパラパラという。
なお、後述するが2に並列する概念として、テクノにつけられた振り付けをテクパラ、トランスにつけられた振り付けをトラパラと呼ぶことがある。つまり、状況や文脈に応じてパラパラという言葉は振り付けそのものを指す場合 (広義のパラパラ) と、ユーロビートに付けられた振り付け (狭義のパラパラ) を指す場合の2通りがある。
概要
パラパラの振り付けは、上半身は2拍あるいは4拍からなるいくつかの基本動作を組み合わせたものから、下半身は原則として1拍目が右足から始まる4拍単位の左右ステップから構成される。一曲の振り付けは、ユーロビートの基本パターンであるイントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、(稀にCメロ)毎に、2拍から32拍を一単位とする一定の規則を持つように見える基本動作の組み合わせを中心に構成されている。
基本動作は意味を持つ簡単な動きのことである。基本動作には「流す」「置く」「回す」「開く」「アオキン」「YOU」「ME」「DO」「NIGHT」「BABY」などの通称がつけられており、パラパラを踊る人たちの間ではこの通称を使うことで、言葉で振り付けの動作に関する意思疎通を行うことができる。(例: イントロがアオキン、Aメロは手拍子、Bメロは右手4拍流す、左手4拍流すを繰り返し、最後回してYOU) すなわち、映像がなくてもある程度の振り付けを言葉だけで説明することができることもパラパラの特徴である。なお、通称は統一されたものではなく、慣習的に現場から生まれたものであるため、地域等による差異は存在する。
振り付けは基本動作の組み合わせを、右から順に (ごく一部の曲に対しては例外がある) 左右対照になるよう交互に繰り返したものが基本であり、簡単な振り付けの曲であれば、初めての曲であってもその場で一部を習得することで次の動作を予測することが出来る。また、熟練者であれば、基本動作の組み合わせの一部分から、それに続くある程度の動作を推測することも可能である。(例: Aメロで「右手開く→両手開く (4拍)」から続く振り付け「左手開く→両手開く→右手開いて止める→左手開いて止める→右手戻す→左手戻す→両手開く→両手開く (12拍)」は予想可能)
その他のパラパラの振付の特徴としては、拍の取り方をリズムだけではなくボーカルやメロディーラインに合わせることや、歌詞の内容や、歌詞が聞こえた言葉 (空耳) に合った振り付けをすること (例えば、「YOU: 人を指さすポーズ」「ME: 親指を (と小指) を立てた小指を耳の近くに置く」「CRAZY: 両手で頭の横で指をクルクル回す」「蕎麦: 蕎麦を食べるポーズをする (~'s overの空耳)」など) があげられる。パラパラでは原則として1番と2番以降の振付は同一であるが、先述の歌詞に合わせた振付という理由から、1番と2番で一部振り付けが異なる場合もある。ただしこの理由のためか、2番以降がディスコやクラブで流れることは少ない。さらに、ユーロビートの歌詞はBメロ以降1番と2番以降が共通であることが多いため、振付の異なる部分の多くはAメロの部分である。
なお、振り付けは曲ごとに異なるが、一対一対応ではなく、一対多対応であり、1曲に対しては複数の振付がつけられているものもある。多くは振りの作成者が一曲に対して複数人いることによるものであるが、幾つかの曲に対しては同一の作成元が複数のバージョンを用意している場合がある。また、同じ曲でも異なるバージョンに対しては、アレンジの違いからメロディーラインが異なること、原曲と日本語バージョンのように、歌詞が異なることから、振り付け自体異なることがある。
パラパラの発祥から現在まで、延べ数千の振付が作られていると推定できる。一般的にパラパラが踊れるかどうかは、覚えた振りの曲数で判断することが多い。それぞれのレベルと曲数の関連として、50曲以下を初心者、~100曲を初級者、~500曲を中級者、それ以上を上級者、というのを一つの基準として挙げることができる。踊れるパラパラの数は、一曲に対して覚えた複数の振付はカウントせず、曲数で数えるのが一般的である。ただし、先述した原曲が同じ異なるバージョンの曲は、振付が異なる場合、それぞれに対して1曲と数える。
パラパラの派生系
先述の通り、狭義のパラパラはユーロビートの楽曲に対する振り付けであるが、他ジャンル (テクノやトランス) につけられた振り付けもある。
テクパラ
厳密には、テクノ (ハイパーテクノ) につけられた振り付けのことを指す。実際には、イベントにおいてテクノパート中に踊られる振り付けのことを示すため、テクノ以外のダンスポップやハウス系の楽曲に付けられる振り付けもテクパラと呼ぶ。
(狭義の)パラパラに比べ、アオキンを中心とする、シンプルかつダイナミックな振り付けが特徴であったが、「We Love Tech Para」以後振り付けの難易度は急激に上昇し、現在は細かな振りが多い。ただし、手首をひねりながら回すなどの、ユーロビートでは使われない基本動作が一部組み込まれていることから、振り付けがテクパラなのかパラパラなのかは、曲を聞かずとも振り付けを見ればある程度判断することができる。
トラパラ
トランスにつけられた振り付けのことを指す。テクパラを踊る客層とパラパラを踊る客層が重複しているのに対し、トラパラを踊る客層とテクパラ、パラパラを踊る客層はあまり重複しないのが特徴である。
イベント
パラパラはディスコやクラブで定期的あるいは臨時的に開催されているイベントで踊ることができる。一般的なクラブイベントと比べ、パラパラを踊ることのできるイベントは以下の様な特徴をもっている。(一部はパラパラ固有のものではなく、クラブとディスコの違いも含む。)
- DJは参加者が知っている (踊れる) 曲をかけることが原則であり、多くの場合1番のみが流れる。2番まで流れることもあるが、フルコーラスでかかることはめったにない。
- 曲は年代別にまとめられて流されることが一般的である。
- 新しい振り付けを修得するための時間 (講習会とよぶ) が設けられているイベントがある。
- DJブースはフロアから目立たない場所にあることが多い。
- フロアは輪や列をつくり、参加者が向かい合って踊る。関東方面では輪が主流であり、関西方面では列が主流と言われている。
- 自分の踊れない曲 (振り付けを覚えていない曲) が流れた場合、前の人の振り付けを見ながら踊る。前の人はお手本ではなく参加者なので、スポーツジムやダンス教室と異なり、左右が鏡のように対称ではない。(講習会や、後述するお立ち台に上がる場合も、左右逆に踊ることはしないのが一般的である。)
- 会場の多くにはお立ち台 (ステージ) が設けられており、振りつけを覚えている参加者がフロアの方を向いて踊る。得意な曲や披露したい一曲について踊るのではなく、数曲から数十曲お立ち台で踊り続けることが通例である。
- イベントの多くはユーロビート・テクノ (およびトランスやダンスポップ) の組み合わせパートで構成されており、それらが客層の比率に応じて交互に流れる。
歴史
パラパラの歴史において、第n次パラパラブームという言葉が用いられることがある。これは時間軸のなかでパラパラが流行した時期を表すとともに、時間の経過にともないパラパラの動作自体が少しずつ変化する中で、いつ頃のパラパラを表すのかを示す指標でもある。実際振付や踊り方は各世代によって若干の相違があることをいくつかの動画から確認できる。
第1次パラパラブーム
1980年代のユーロビート、ディスコブームと連動している。当時のパラパラの発祥や流行を明確に決定づける資料は少ないが、パラパラ発祥の一説として、「TAKE ON ME / A-ha」の曲との関連があげられる。当時は現在のようなイントロからサビまで完全に振付られた複雑な振付というものはなく、単純な動作であったと言われている。
湾岸系
1990年代序盤、浦安方面などの湾岸沿いで主に流行していたSEB (Super Eurobeat) 1桁~2桁前半の曲が湾岸系ユーロビートと呼ばれることがあり、それらにもパラパラがつけられていた。当時のパラパラについては、現在のDVDのような動画による教材もなく埋もれてしまっているものも多い。
第2次パラパラブーム
1990年代前半~中盤、バブル期のディスコブームに連動している。当時を知る代表的なビデオとしてパラパラ教典を挙げることができる。TWINSTAR, XENON, AREA や各地の MAHARAJA などが配布していたビデオが現在でも残っているため、この時期の振付を覚えるのは困難ではない。代表的な曲としては SEVENTIES や TRY ME などがあげられ、これらは J-POP でもカバーされている。後述する第3次ブームに比べ、一般社会への露出は少なかったが、当時の影響が「TRY ME / 安室奈美恵」や「MUSIC FOR THE PEOPLE / V6」などのJ-POPに使われたユーロビートの存在から垣間見える。
2.5次世代
2次ブームと3次ブームの間は便宜上2.5次と呼ばれる。全国のディスコが閉店した時期し、パラパラが下火になった時代ではあるが、根強いファンは活動を続けていた。コスプレダンスパーティでのユーロビートタイム、各地方のイベントなどでパラパラは踊られ続け、この時期には北関東や九州を中心とする各地域でオリジナルの振り付けが作られていた。
第3次パラパラブーム
1990年代終盤~2000年代前半、今までディスコを中心に流行していたパラパラはクラブに場所を移した。バッキー木村の NIGHT OF FIRE、クラブディズニーでの MICKEY MOUSE MARCH ~EUROBEAT VERSION~ の流行、ディスコの壁を超えてまたより若い年齢層までパラパラが浸透したのがこの時期である。当時のパラパラブームがギャルや学生イベントのサークルを中心に起こったものであることも関係して、パラパラは女性が踊るものというイメージが広がったのもひとつの特徴である。また、パラパラの振付も歌詞や曲にあわせたシンプルなものから、可愛い動作や、他のジャンルのダンスを取り入れたものなど、幅広いものになった。SUPER EUROBEAT をプロデュースしている avex は、第3次パラパラブームのリーダー役として、パラパラオールスターズを結成させ、積極的なメディアミックス戦略を行った。
さらに、クラブやディスコなどのイベントの枠を超え、一般社会に広く知られるようになったのも第3次パラパラブームの特徴である。2001年にはコナミから音楽ゲーム「パラパラパラダイス」が発表され、ゲームセンターにもその波は及んだ。第3次パラパラブーム後半では、
- 名探偵コナンの主題歌である「恋はスリル・ショック・サスペンス」とともにアニメのオープニングでコナンがパラパラを踊るシーンが放映される
- 同じくアニメの「トラブルチョコレート」のエンディングでキャラクターがパラパラを踊る
- ポンキッキーズのキャラクターであるガチャピンが「およげたいやきくん」のパラパラバージョンを番組内で踊る
- NHKみんなのうたで「アキストゼネコ」がパラパラの振付アニメ付きで放映される
- さらには天童よしみ「夜明け」といった演歌にもユーロビートバージョンが作られパラパラがつけられる
など、10代から30代が中心であるディスコ・クラブカルチャーの枠を超えて、パラパラというものの存在が広く知れ渡った。
第4次世代
執筆予定
現在
執筆予定
用語
- 真似パラ
- まだ覚えていない振付の曲に対して、他の踊れる人の振付を見ながら真似して踊ること。見パラともいう。普通輪や円で向かい側の人のパラパラを見ながら踊るが、左右が鏡になっていないので、自分の腕は、お手本とする人の右左を逆にして動かす必要がある。
- ミーハー
- 定番でだれでも踊れる曲のこと。イベント参加者のレベル (覚えている曲数) によっては、踊り飽きているためにイベントが盛り下がることがあるのが、一般的なクラブイベントと異なる点である。
- 裏パラ
- 本来は振付元が同じである振付に対し、一般的に踊られなくなった振付 (例: 講習会で発表された振りと全く違う振り付けがビデオに収録され、そちらが一般的に踊られるようになった場合、講習会は裏バージョンとなる)、講習会後にビデオやDVDなどの教材に収録されることなく、踊れる人が少ない振付のことをいう。しかし第3次パラパラブーム頃には、同じ曲に複数の振付がある場合、それらの振付のうち踊る人が少ない方を裏パラということが一般的になった。単に裏と省略することもあり、公式のパラパラを裏に対して、表パラ、表ということもある。なお、経緯としては第2次パラパラブームまでは各ディスコごとに振りが異なることが一般的であったが、第3次パラパラブームでは TwinStar, VELFARRE や 9LOVEJ などのAvexとつながりをもつ大手ディスコやイベントが作る振付が公式のものであり、各地の有志のイベントが作る振付が非公式のものであるというという価値観が定着したからことがあげられる。
- 地方パラ
- 公式のイベントでは発表されていない、非公式のイベントだけで作られたパラパラのことを指す。省略して地方または地方系と呼ばれる。なお地方という言葉は、そのようなマニアックなパラパラの発祥地が九州や北関東に集中していたことに由来しているが、東京都内の個人イベントで作成された振付も地方パラと呼ばれる。全般的にダイナミックな動作を特徴とする公式の振付とは対照的に、基本動作を複雑に組み合わせた細かな振付が特徴であり、それゆえ難易度が高い。また、教材の入手が比較的困難であることもあり、全パラパラ人口のうち地方パラを踊れる人数はあまり多くはない。地方パラに特化したイベントを除き、イベントでは多くの人が踊れる公式の振付をもつ曲が流れる時間とは独立して1つのパートとして設けられる。そのパートは地方パートまたは地方タイムと呼ばれる。
- ギャグパラ
- コミカルで面白い動作を取り入れたパラパラのことを指す。一般的には通常踊られる振付がコミカルな場合には使われず、一般的な振付とは別のものとして作られた振付に対して使われる言葉である。
- パラビ
- パラパラの教則ビデオのことを省略してパラビという。第3次ブームまではパラパラを覚えるための教材として欠かせないものであったが、その後DVDの普及に伴い、VHS形式の教材は廃れていった。現在は動画サイトでも見ることが可能である。
- パラ練
- 家など、ディスコやクラブ以外の場所でパラパラを覚えるために練習すること。第3次パラパラブームの時は家のみではなく、学校や公園などで練習する姿も見ることができた。
- アニパラ
- 一般名詞としては、アニソンのユーロビートバージョンに付けられたパラパラのことを言う。なお第3次パラパラブームにおいては、CDや教則ビデオのタイトルとして、すなわち固有名詞としての「アニパラ」が多数発売された。なお、厳密ではアニパラではないが、コスプレダンスパーティにおけるアニソン原曲につけられたパラパラの動作を基本とした振付がある。広い意味では、これもアニパラと呼ばれることがある。
ニコニコ動画とパラパラ
ニコニコ動画サービス開始直後から、踊ってみた動画の1ジャンルとしてパラパラが投稿されている。踊ってみた全体の投稿から見た場合、数としては多くはないが、定期的にアップロードされている。現在確認できる最初のパラパラに関する動画は、デジタル所さんの収録であり、踊り手の踊ってみた投稿ではない。
踊ってみたとしてよく投稿される作品としては、以下の3つを挙げることができる。
- 「名探偵コナン」などのアニメソングとタイアップしたパラパラ
- 「ルカルカ★ナイトフィーバー」などのボーカロイドや東方ユーロビートなどの同人系ユーロビートに付けられたパラパラ。
- 第3次~4次世代の定番曲を踊ってみた
また、「踊ったみた」初期の定番曲であった「LOVE & JOY」 にも、一般的に踊られているドアラバージョンのダンスとは異なるパラパラの振り付けは存在する。なお、こちらは2000年に発表された振り付けであり、現在踊ってみたで踊られている振り付けよりも7~8年程度先に作られたものである。
関連項目
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- 0pt