サマリー:DXやデジタル改革が思うように進まないのはなぜか。その理由や解決策について、ウルシステムズでビジネス変革(BX)に特化したコンサルティングサービスを提供する専門チーム「ULX」のメンバーに聞いた。

デジタル変革に当たって、金科玉条のように唱えられる「fit to standard」(F2S)。だが、日本企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)が思うように進まないのは、この概念が現場に馴染まないからだという声も出始めている。その理由や解決策をビジネス変革の専門家らが解説する。

世界の「スタンダード」は本当に最適なのか

 日本人は、「standard」(標準)という言葉に弱いようだ。

 1990年代のバブル崩壊以降、日本経済の凋落とともに、「終身雇用」や「年功序列」など、かつての日本企業の強さの源泉が否定され、「成果主義」「人材の流動化」といった「global standard」(グローバルスタンダード)がもてはやされるようになった。

 そしていま、デジタル変革を進めるに当たって、多くの日本企業が目指しているのが「fit to standard」(フィット・トゥ・スタンダード)、いわゆる「F2S」である。

「業務内容に合わせてシステム開発や機能の追加を行うのではなく、システムの標準機能に合わせて業務そのものを変えていくのがF2Sの考え方です。欧米ではこの考え方に沿ったデジタル変革が当たり前になっており、一定の成果が挙がっているので、標準化というアプローチ自体がDXの“世界標準”になってしまったのです」

ウルシステムズ
ULX(戦略・BXユニット)シニアマネジャー
高橋伸明
Nobuaki Takahashi

 そう語るのは、コンサルティングファーム、ウルシステムズで事業戦略策定、ビジネス変革(BX)に特化したコンサルティングサービスを提供する専門チーム、「ULX」の高橋伸明シニアマネジャーだ。

 高橋氏によると「日本企業は、世界中で数多くの成功例があるITツールさえ利用すれば、おのずと標準化が実現し、デジタル変革が一気に進むはずだと考え、『ツールの導入ありき』で変革をスタートさせる傾向が強い」と指摘する。

 極論すれば、スタンダードこそが“善”、これまでのやり方は“悪”という考え方である。