ナオちゃん(仮名)は東京の大学でロシア文学専攻をしている女子大生、たまたま体験入店していたキャバクラで僕(仮性)についた二十歳のセクシーガールだ。初夏。あの晩。あのキャバクラはイベント【ワイシャツナイト】であった。バイトをしないと生活していけないの…しなしなしたあとにワイシャツ姿のナオちゃんが
「課長〜車買って〜」
くねくねおねだりしてきたので、ワイセツな気持ち半分、もう会うこともないし…そんなヤリ逃げ的な気楽さ半分から
「タミヤでいいかい?」
と言ったのがこの不思議な話のはじまりだ。そんな僕のギャグに対してナオちゃんは、なんと、
「ウソ!外車?嬉しいっ!」
と予想外にも真顔で喜んだのである。ラジコンは偉大だ。
その後もナオちゃんからは時々メールをもらった。「他のお客さんにタミヤ買ってもらっちゃうから」「流行りの電気自動車なんだね、タミヤ」「本当はタミヤ買うほどお金がないんじゃないの?」キャバクラ嬢からのメールとは思えない文面だった。僕はナオちゃんの向こう側に僕と同年代の哀しい男たちの存在を感じた。グラスホッパー、マイティフロッグ、ジャベリン、ホットショット…数々の名車とナオちゃんを介して僕たちの戦争は続いた。
「課長と同じくらいの人がマジで車を買ってくれるって。オプティっていうの」戦争末期にはラジコンカーの枠を飛び越えダイハツの軽自動車の名前が登場した。「京商のオプティマでは?」と返す気力はとうになくなっていた。
秋。「えへへへタミヤ買ってもらっちゃった〜通学に使ってるの。課長からのセカンドカーもお待ちしてまーす」という人が乗れるほどの魔改造を施したと思われるラジコンレポートを最後にナオちゃんとの連絡は途絶えた。店に顔を出すとナオちゃん(源氏名)は辞めていた。なぜかナオちゃんのことを訊ねるとスタッフもキャストも皆、米大統領選の候補者の後ろに立ってアホみたいに笑う奴らのようにへらへらするばかり。ホームベース似のキャバ嬢を問い詰めて事態を知る。ナオちゃんは「富士山の麓にある総本山にいく」と言い残して店を辞めていた。常連客を何人か巻き込んで連れていったらしく、ナオちゃんがいなくなると同時に姿を見せなくなったという。なかには家族を捨てたという勇者もいたとか。店では宗教上のトラブルだと決めつけて箝口令。そうじゃない。僕は叫びたかった。そうじゃない。宗教なんかじゃない。ラジコンは悪くない。ラジコンを悪い道具にするのは人間なんだと。いやむしろラジコンが宗教じゃないのか。
僕は信じている。ナオちゃんたちは田宮模型本社のある富士の麓へ旅立っていったのだと。僕にははっきりとひとつの光景が見えた。いまでも思い出せる。中年の男たちがナオちゃんのカラダ、オッパイ(乳首は赤青の星型ニプレスでガード済)や鎖骨を活かしたオフロードコースでラジコンカーに興じている姿を。ラジコンカーにアウトインアウトで攻められて「ウラー!」とロシア語で喘ぐナオちゃんの姿を。それらを想うたびに僕の股間は遠慮がちに熱くなる。ラジコンは偉大だ。
昨日、僕宛てに勧誘の資料が届いた。
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