友人に誘われてコスプレしゃぶしゃぶに行ってきた。日曜夜のことだ。なぜコスプレしゃぶしゃぶなのか、友人を詰問すると離婚してちょうど一年だからさ、と寂しそうにいい、涙腺に訴えてきやがる。友人は、元奥さんにメイド服ナース服を着させていた過去を、一年を機に清算したいと告白した。事情を理解した僕は、細君に冥土級茄子プレイなら忘れられないのも無理ないよ、承知した、同行しよう、と快諾したのだ。
(コスプレしゃぶしゃぶ直後。いつもと変わらず平静なブロッガー)
友情に加えて、大義もあった。コスプレしゃぶしゃぶ。それはコスプレなのか、しゃぶしゃぶなのか後進の為にも明確にしておきたいという大義が。一文字であらわすなら、義。横文字であらわすならJARO。そういったものに衝き動かされて。普段はいやらしい穴のことしか考えていないダメな俺だけど。僕ですけど。
友人の名前についてはこの文章の信憑性および友人そのものの実在を疑われるかもしれないが、明かさない。離婚、とひとことでいうにはたやすいが、その二文字の裏には友人と細君、二人の血族の人生が高尾山のごとく人を寄せつけぬ圧力と神聖をもって、そびえ立っているのである。僕はそれを侵略するほど傲慢ではない。
待ち合わせ場所である池袋駅東口風俗街にあらわれた友人アライ(id:tell-a-lie)(あっ不覚にも名前を出してしまった(@_@))はなぜか黒のシャツに蛇柄のスラックスという出で立ちでCR「X JAPAN」のようであった。YOSHIKI。ではなく、PATA。友人一同総勢6名、秋葉原からやってきたようないでたちで風俗街をずんずん進み店の前に到着。コスプレしゃぶしゃぶ「庶務二」。店先にいた従業員と思しき女性から「あ、予約してしまったお客様ですね」と言われて面食らう。「予約してしまったって何よ」「不安だ…」「結構かわいい」、一同恐慌に陥ったが、いちばん動揺したのは、「俺、本名で必死に予約しちゃったよ」といったアライにちがいない。昨年以来つくづく不憫すぎる。
コスプレしゃぶしゃぶ「庶務二」店内。壁には生着替えサービスや楽しいゲームのポスター、掲載された雑誌の切り抜き、オサワり禁止のビラビラ、セーラー服、ナース服、チャイナ服、ミニスカポリス服、バドワイザー服などの着替え。1時間飲み放題食べ放題というリーズナブルかつ明朗会計なシステムで、我々のテーブルには昭和六十年代から平成元年にかけて生誕したコスプレギャルが三人ついた。場をなごまそうと「君たちが生まれたときには投稿写真とオレンジ通信を購読していたよ」などと冗談を飛ばしたが反応はありませんでした。
全員が下着テイストのバニー姿。OLコスプレギャルに、「課長、しゃぶしゃぶですよ、あ〜ん」といわせることで、会社で女性社員に相手にされない鬱屈を晴らそうとしていた僕のテンションは下がりに下がった。ギャルの一人が、「女の子たちにドリンクいいですか〜」、しなしなと言ってきてますますテンションが落ちた。君たち、仕事を忘れるんだ!
「お客様たちはどんな繋がりですか?」「アメーバなう!」「twitterなんて知りません!」「マイミクどう?」なんてやりとりするうちに半乳や太ももを露出したコスプレギャルはきわめてプロフェッショナルな手つきで肉をぐつぐつやって、さあ食べよ、っつーときに、ギャルのひとりが、「ふ〜ふ〜しましょうか?」と言う。凍りつく僕ら。解説させていただきますと、仕上がった肉にタレをつけても熱いよね、そんな熱い肉塊をそのまま食べたら舌や口の内側が焼けただれて傷になり、悪性のウイルスが入りこんだら滅亡してしまう。そこで「ふ〜ふ〜」の必要性必然性。必然性があったら女優が脱ぐのと同様に、人類を滅亡から救うため、踏ん切りがつかない意気地無しの友人一同のため、年長かつ課長である僕が一肌脱ぐことになった。やれやれ。
「課長、ふ〜ふ〜!」と粋なかんじで肉に息をふきかけ滅亡から人類を救うギャル。これでは道化だな、と苦々しく思いつつ「もっともっと唾液がかかるくらいに、激しく、息を、ふ〜ふ〜してくれないと火傷したうお〜。鼻息もかけてもいいよー。あーーーーん」と絶叫し、舌を激しく上下にレロレロ動かした。肉を口内に投入され、もぐもぐ、やっていると、コスプレギャルが「課長、美味しいニャンは?」というので嫌々苦々「美味しいニャンニャンニャン」と吐き捨てるように言ってやった。
「課長さすが」。「課長素敵」。賞賛の嵐に揉みくちゃにされながら、くだらん。くだらん。こんな恥辱は一生勘弁だ、一回きりだ、と思った。恥辱でうんうん呻いていると、友人一同も現代のジャンヌダルク(男性器付き)たる僕につづけといわんばかりにふ〜ふ〜されていた。ふ〜ふ〜!あ〜ん!ふ〜ふ〜!あ〜ん!。アライ君の双眸から刻の涙が流れてました。
生着替えサービスいかあっすか(別料金)?楽しいゲームいかあっすか(別料金)?ギャルたちの誘いに我々は乗らなかった。とくに生着替え。下着姿から服を着させるのに、なぜに、金を払わねばならんのだ、という強い憤りと固い結束があった。だって半裸だよ。カチョウ、オッパイ、好きー!だよ。それに、AKBの新曲のジャケットが下着姿であったのにTVショウに出演するときは下着姿ではなかった事件に対する怒りが、胃の底で、マグマのように、ぐつぐつとくすぶっていたのだ。
所定の1時間が過ぎた。しなしな延長を求めるギャルにきっぱりと「帰る」、言ってやった。社会のルールとして年長の僕が払おう、そう思った。ジェーシービーカードで払おうとすると、誰かが、そのカードで払うんですかというので、ジェーシービーカードはとりやめて、ジャックスカードで支払った。
ちょっと高くついたけれど、近くの飲み屋でアライたちに、感謝されたから、いい。滅亡しなかったから、いい。僕は、5回ほど都合二名のギャルからふ〜ふ〜してもらった。なあ、これ、ほとんど、ギャル二人とキスしたのと変わらないんじゃね?れろれろれろれろ、激しく舌を動かしたせいか、今、口内炎。