「手をつないで一斉にゴール」が全国各地で大流行している!?
昨日のエントリに関しまして、高市氏の公式サイトの中にある「手をつないでゴールインする徒競争が全国各地の運動会で大流行」という文章に反応をいただきましたので、ちょっとググってみました。
「徒競走 ゴール 平等」や「徒競走 順位」などで検索をかけたところ大量に引っかかったのですが、その多くは「らしい」「そうだ」「と聞いた」など、伝聞をもとにしたもので、それらの前後に「うちの学校は違うけど」といった言葉がついているものも多くありました。一方、そういう事実が「ある」という前提で書かれている文章も多くあったのですが、実際に自分が見たとか、具体的な自治体名が挙げられているということはなく、伝聞を鵜呑みにして書かれているのではないかという感は否めませんでした。
では、そういう事実が「まったく」ないのかというと、そうでもないらしい。
こちらの掲示板では「こういう説があるが、実際にみた人はいませんか」という質問があり、「地元の幼稚園の運動会で実際にやっている」という回答があります。とはいえ、他の回答はいずれも「リレーの選手を足の速い順に選ばない」といったもので、「手をつないで一斉にゴール」目撃談は上の1件だけでした。
それからこちらのブログのブログ主さんの母校で実際になされていたという話もありました。けれども、ブログ主さんのご卒業後の話のようで、直接に目撃したということではないようです。
こちらのブログのコメント欄では子どもをも持つ親御さんに取材したところ実際にあった、というコメントがあります。
というわけで、実際にないわけではない、が、いわれているほど行われているわけでもない、という感じではないでしょうか。
ではなぜこれほどまことしやかにこの話が広まったのか、なのですが、数年間に読売が記事にしているようです。読売のサイトではもう当該記事を読むことはできないので、こちらのブログで一部の引用を知ることができるだけなのですが、
実は、運動会でリボンなどを与えて順位を明確にする学校は少数派だ。東京都小学校体育連盟の調査(1997年)では、都内の小学校の約8割は、運動会で子どもたちの順位をつけないようにしている。ゴール前で手をつないで一緒にテープを切らせたり、足の遅い子には距離の短いコースを走らせるなどの工夫もしている。
ということです。東京都の8割も!と一瞬ビックリするのですが、これは「順位を明確に示すことをしていない小学校が8割」ということだと思われ、その多くはリボンを与えたり等旗の前に座らせることをしない、という程度なのではないかという気がします。例えばこちらの市議さんは等旗を使わないことを「行き過ぎた平等教育」と批判しているようです。
けれども順位を明確にしない、というのは走り終わった後まで誰が一番で誰がビリだったかを分からないようにする、ということであって、ゴールした時点では順位は明確につくわけですよね。個人的にはそれで別にいいじゃん、と思うのですが。
というわけで、「手をつないで一斉にゴール」という現象は、事実としてないわけではない。けれども「大流行」というほど広まっているわけではない。というか実数としてはかなり少ないのではないか、まあこれが「大流行」といえるのならば、「邪神デビューボが世界中で大ブレイク!!」といってもいいんじゃね?という程度ではないか、というのが調べてみての印象です。それがこれほどまでに広がったのは、前のエントリのコメント欄でid:kmizusawaさんが書いておられたように、これが多くの場合左翼批判、平等教育批判に用いられることによるのではないかと思われます。「行き過ぎた平等」とやらを批判するために最も極端な事例を挙げる、それが「リボンを配らない」「等旗をつかわない」といったより一般的な事例とゴッチャになって、「全国各地で大流行!(でも目撃談は少ないよ)」ってなことになったのではないかと推測します。あくまでも推測ですが。
ところで、「行き過ぎた平等教育」の事例として「手をつないで一斉にゴール」と並んでよく言及され、また批判されているものに「タイムが近い生徒を一緒に走らせ差がつきにくいようにする」というのがありました。「遅い子が目立たないようにする」という理由づけがいわれている通りならば個人的は「なんだかなー」と思いますが、タイムの近いもの同士走らせるってそんなに悪いことですか? 力の拮抗したもの同士で走った方が子ども達もより競争心を燃やすと思うんですが…。
余談ですが、うちの小学校は等旗もリボンもありましたが、トラックを半周するのにスタートラインとゴールラインは一緒(つまりアウトコースの人は不利)でした。これは子ども心に「不平等だ」と思ったものです。あと体力テストの斜懸垂も(背が高いので)。
追記:あ、もしかして「手をつないでゴールインする徒競争が全国各地の運動会で大流行」って「30人31脚」のことだったりして。いや、あれは肩を組むのか。